昴くんはなにもしない   作:あまも

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劇場版なんておめーにはまだ早い

読んでいただいてありがとうございます!


5-1 :闇の男爵

 

 

 

 

 

 ゴールデンウィークが明けて、夏がやって来た。

 

 

 

 ────?

 夏……?

 

 

 

 

 時計仕掛けの摩天楼は……?

 

 

 私の、私のスパルタ爆弾解体講習の努力は!?

 

 

 

 

 :( ;´꒳`;)ヒン……

 いいけどね。爆弾についての知識なんてなんぼあっても良いですからね。

 

 

 ──なんで一般人が爆弾に触れる可能性があるんです?

 

 

 

「オォーイ、昴くん」

「はいはい、なんでしょう阿笠さん」

 

 真夏の昼の窓際に快適空間など存在しないので、夏場は素直に1階のキッチンに逃げてくる。一番涼しいのは地下室なのだけど……私があんまり好きじゃないのだ。地下。じめじめしてるわけでもないのに。

 

 

「今度の伊豆旅行の用意は出来たかのう?」

「ええ、済んでますよ。何か持っていってほしい荷物がありましたか? こちらの余裕はまだありますよ」

「悪いのう。このおもちゃを彼の孫娘にどうかと──」

 

 そう、またなんだ。

 伊豆沖の孤島の事件を傍から見ていた私が、今度は伊豆のプライベートビーチ付きホテルに宿泊である。

 阿笠さんの友人とその孫娘さんと一緒に行くミステリーツアーにそれぞれ応募したら、見事阿笠さんが当選したそう。

 この人のこういう抽選、羨ましくなるほど良く当たるんだよね。私はこういう運がとことん無い。

 とはいえ大体が事件のきっかけでもあるから、一概にやった〜と喜べないのが私です。

 

 

 今回は、少し前……少し前? の舞台が伊豆の孤島だったし、新一くんはこない。

 私の予想では私たちのいない東都で何かが起きて、大人を頼ろうにも博士や私が居ねーからなぁ、と新一くんが困る展開だろう。

 なら私が残っておくべきなのでは? と思うのだけど……

 

「しかし珍しいのぉ、昴くんが夏の海についてくるなんて。やはり気になるんじゃな? 『闇の男爵(ナイトバロン)』が」

「ええ、そりゃもう」

 

 工藤氏の描く小説作品の主人公。

 その名前を与えられたとされる、コンピューターウイルスソフト。

 

 今回のミステリーイベントの景品が、その『闇の男爵』のデータだとか。

 

 お兄さんはそれが欲しい。

 

 ちょっとだけね。『闇の男爵』には嫌な記憶がある。でもあれは関係ない……はずだし……

 実際、うわさでしか聞いた事ないけれど、あれ本物は凄くヤバいものらしいけど……、でもあれについて1つ、気になることがあるのだ。

 

 見てみたい。すごく見てみたい。

 

 でももしマジもんだったとしても、私の見たいものは見れない。見れる時まで見れない……クッ

 

「どうしたんじゃ昴くん、そんなに酸っぱいもの食べたみたいな顔して」

「いえいえ……私たちで行くのは良いんですが、果たして私たちで謎解きなんて出来るものかと……不安が少々」

 

 ミステリーとか謎解きには微塵も興味が無いけれど、ブツは欲しい。

 だがしかし、私と阿笠さんのポンコツダブルスで答えに辿り着けるかは……うん……やはり新一くんを連れて行くべきでは?

 

「何を言っておる、昴くんだって中々のもんじゃぞ」

「何を言ってるんですか阿笠さん。私は謎解き推理は苦手なんですよ。適当にアタリを付けて、山勘と当てずっぽうでぶん投げるだけですから」

「そうかのう? ……そういえば、確かにいつも決め手に欠けておる気が……」

「『証拠はあるの?!』とか言われると困っちゃいます」

 

 いわゆる“犯人ムーブ”してる人はある程度わかる。怪しい人の周りを洗えば、まぁなんとなく動機も見えてくる。ここら辺は、世界が世界なのでそういうものだとわかってると自然と見えるものだと思う。

 でもトリックとなるとダメなのだ。頭を捻るのはダメなのだ。

 

 

 ……圧倒的……っ! ヒラメキ不足……っっ!

 

 

「じゃから何を今度は苦いもの食べたみたいな顔してるんじゃ昴くん……」

「……ミステリー……待ち受けてるんだろうなと思ってしまいまして……少々気が重くなって来ました……」

 

 なんか考えてたら一気にやる気がなくなってきてしまった。ワクワクしていた阿笠さんが、慌ててキッチンに駆けつけて来たので何か言う前にアイスコーヒーを差し出しておく。

 

 うーん……やる気スイッチ……やる気スイッチ私のどこにあるんだろう……

 

 1つ。闇の男爵データは欲しい。これは私の一番の目的だ。

 けれど、闇の男爵がどういうものか多少理解のある私は、これが本物では無い可能性の方が高い事を知っている。

 よしんばそれが本物だったとしてもその中身を確認する、たしかな方法が今の私には無い。

 

 むしろ中身を確認する方法のために実物が欲しいのだ。間違いなく本物だと言える、実物が。

 

 むむ……2つ……楽しみにしててくれている阿笠さんのために行く。うん。それは当然。

 人数制限のあるこのイベントに、4人で応募するとか豪胆の一言。その枠に私を入れてくれたのは、私が闇の男爵を欲しがってるのを知っていてくれているから。

 うん、うん。阿笠さんをかなしませるのは悪いよ。

 

 グヌヌ……3つ……3つめは……みつからない。

 デメリットしか見つからない。なんてこったい。

 

 

 あらヤダ、参加の理由が阿笠さんのため以外、ほぼ無いじゃない!

 

 

「えぇ……」

「ど〜せ闇の男爵の扮装した某が現れて怪しい行動取ってワーキャーして……」

(殺人事件が起こるんだろうし)

「私の枠に新一くんねじ込みません? その方が成功率高そうじゃないですか」

 

 キッチンカウンターに突っ伏してチャパチャパとアイスコーヒーのグラスを振っていたら、阿笠さんが動かないのが目に入った。顔を見る。

 

 まゆも口ひげも肩も落として……ひどく、しょげておられる。

 

「ワシは、昴くんと行く伊豆旅行、楽しみにしておるんじゃがのう……」

 

 ……

 ……や、やる気スイッチ! こんな所にいたのか!

 

 すぐさま起き上がって、私元気いっぱいですのポーズ。ハッスル!

 

「もちろん冗談です。わぁ! 楽しみだなァ! 伊豆の海! クソ暑そう!」

「ハッハッハッ、そうかそうか、それは良かった。日焼け止めもちゃんと持っていこうな」

「ええ、ええ。もちろんです」

 

 わぁ! 楽しみだなァ! 私、海入らないというか入れないけど!

 あっ海とか行く意味と必要とか今考えるな私! 保留! 保留しなさい!

 

 

 

 ■

 

 

 

 その日、私の気分は最低値であった。

 最低最悪である。もうマジ無理しんどいぽ。

 

 でも運転はちゃんと慎重にやったし、なるべくみんなの気分に影響ないように明るく取り繕ったし、ビーチパラソルの下の荷物番も任されてとても真剣に業務に当たった。

 近付くもの皆呪い殺す気合いで睨んでるんじゃねぇと小五郎さんに頭にゲンコツ落とされた。ツラい。

 

 そう、小五郎さんである。

 

「スバルさん、暑さ大丈夫?」

「熱中症とか気を付けてくださいね、沖矢さん。ちょっと顔色悪いかも」

「ええ、私は大丈夫ですよ。し…コナンくん、蘭ちゃん」

 

 そして蘭ちゃんに、新一もといコナンくんである。

 長く海に浸かってるのも良くないからか、小休憩に蘭ちゃんと小五郎さんが売店に何か食べ物を買いに行ってる間、私と新一くんは待機を命じられた。2人が離れた途端、新一君がジト目で見てくる。

 

「スバルさん、気配暗すぎ。博士にドタキャンされたの そんなに根に持ってるのかよ」

「阿笠さんはドタキャンなんかしてません! 諸事情です。彼は最後まで申し訳なさそうにしてくださって……」

「で、断りきれなくて仕方なく来たんだろ」

「……………………んんん」

 

 一緒に行く約束をしていたパソコン通信仲間の孫娘さんが体調を崩してしまい、行けなさそう。という連絡が入って、その代わりに毛利さんたちに、阿笠さんはその枠を譲ってしまった。

 

 私の居ない時に全ては起こり、私が知ったのは旅行の直前。

 新一くんに「明日って、朝にスバルさんが探偵事務所まで迎えに来てくれんの?」と聞かれて初めて発覚したのだ。

 

 当然私は愕然としたし、阿笠さんは「あっ、ヤッバ昴くんに言ってなかった」の顔であわあわしてたし、私の気配を察知した聡い少年は、詳しく聞くことすらマズいと考えたのかどちらに加勢するでもなく「んじゃ、ヨロシクね〜」とサッサと退散しやがった。

 

「1枠あったなら、博士が来れば良かったのに……事前に話を私も聞いてれば、喜んで私の枠をあげたのに……」

「まぁまぁ。博士としても、せっかくこの旅行のために予定空けてたスバルさんに悪いなって思ったんでしょ?」

「私の予定なんてあってないようなもの、どうでもいいんですよ……」

「ホントに現役大学院生?」

「私の研究は研究室に顔出す必要あまりないので」

 

 AIの学習についてを主に、関連して人の記憶や遺伝子の流れを少々。

 私のやることは、AIに食わせるためのデータ収集とその管理。たまに集めたものを研究室のパソコンに放り込んどくだけの簡単なお仕事しかしていない。

 集めきってからが忙しくなるのはわかっているので、まぁ今だけね。

 今だけ……いつまで今なんですかね……?

 

 しかしなぁ。AIか。……これもなんだよなぁ。うーん。ため息ばっかり出てしまう。横の新一くんの目がジットリしてきた。

 

「やっぱり何かあるのか? いつもはすぐ立ち直るのに、今日は朝からずっと暗いじゃん」

「え~……夏の陽射しのせいじゃないですかぁ〜? ……えっ、私暗いの朝から出てました?」

「なんとなく。体調悪いだけだと蘭たちは思ってるから、機嫌悪いとは思ってないと思うけど」

「ワ、ワァ……それは悪いことしましたね……私の事気にせず楽しんで貰えてますか?」

「ああ。楽しんでるから安心しろよ。オレから『スバルさん、暑いの苦手なのに今日すっごい良い天気だから、用心してるんだ』って言ってある」

 

 なるほど、だから蘭ちゃんは冷たい飲み物とか届けてくれるし、小五郎さんもこまめに戻ってきては、お小言告げて去って行ってたのか。様子見させてしまったらしい。

 

 め、迷惑おかけしまして……

 

「いや、むしろ荷物見とく必要が無くて助かってるよ。それに、スバルさんがそれ弄ってるおかげで、スバルさんはスバルさんで楽しんでるんだって思ってるみたい」

「あぁ……コナンくんが拾ってきてくれますもんね。…………ふふ。おみせやさん、できますね」

「……ガキの使いじゃねーんだから」

 

 むすくれてそっぽを向く新一くんの頭を撫でると、べちりと跳ね除けられてしまった。私の手元、マス目柄のビニールシートには、新一くんが拾ってきてくれた細い流木やカラフルなシーガラスや貝殻が散乱している。

 おこさまのフリに丁度いいと言いながら、彼も彼で私の様子を見に来てくれていたんだろう。

 

 

「ホラ昼飯買ってきたぞ小僧共! ゴミ片付けろ!」

「ちょっとお父さん! コナンくんが集めて来たんだから、そんなこと言わないでよ! 沖矢さん、ラムネ飲めます? スポーツドリンクもあったんですけど 」

「ラムネで大丈夫です。懐かしいですね。コナンくん、そこのプラケース取ってください。いれておきましょう」

「あ、うん」

 

 こんな良い人たちに、くさくさしてるところ見せて気分下げるのも悪いよね。3人は楽しみに遊びに来てるんだから。

 

 ちょっと気分上がってきたな。光の人たちと絡むと、自分が心良い人達に迷惑かける悪い人に思えてしまって良くない。

 良くされたなら良くし返さないとならない。

 これぞ日本人の美徳!

 

 

 お昼ご飯を頂いた後。

 

 チェスに見立ててシーガラス動かして遊んでいたら、本当に小さなお客さんが来て物々交換のかいがらのおみせやさんやってたのは内緒である。

 新一くんは自分が持ってきた物を覚えてるのか、それともやり取りを見ていたのか、「売れたじゃねーか」とかニヤニヤしてきたので「仕入れご苦労さまです」と返しておいた。

 

 あとそれにかこつけて大きなおねいさん達も寄ってきたことは小五郎さんには絶対に内緒である。

 新一くんや毛利さんたちと話をして、気が抜けてしまったからか、呪殺オーラが一転して暢気なお兄さんオーラが出てしまったらしい。

 

 自慢じゃないけど私の顔は良いからね。

 自慢じゃないって言ってるだろコナンくん。

 別に私は小五郎さんと違って鼻の下伸ばしたりしないぞコナンくん。

 

 

 ■

 

 

 四角くてでっかくて重そうなふっるいパソコン使いに遭遇した。

 

「あなた『闇の男爵』様ですね?」

 とか言っている変な人だ。

 

 昔のゲーセンに良くいたんだけど、ドヤ顔で自分のテクニック見せ付けたくて初心者っぽい人に話しかけてくるんだよな。陽キャなのかよく分からん連中。

 こういうのには触れない寄らない関わらない。興味持つと付け上がるんだ、新しいターゲット見つけてそっち行くまで無視無視。

 

「……返事無し。新しいパターンだ」

 

 カシャカシャと打ち込むキーボードの音のなんとも言えないこの…………

 

 悔しいけどちょっと好きなんだ、この打ってる〜って感じ。

 

 チラっと見てしまった。眼鏡越しに奴はこっちを見ていた。

 

 アーッ! お客様、困ります!! 困ります!!

 

 私の薄型ノーパソの入った保護ケース見て「ホホウ、あなたもですか」みたいな顔されるの困ります!

 

 今回のミステリーイベントに、宿泊費目当てで挑んでるのは小五郎さんたちだけだ。

 

 探偵を名乗ってしまった小五郎さんに、突き刺さる視線は5つ。その顔、名前は見覚えがあったり聞き覚えがあったり。

 誰も彼もが業界の住人のようだ。

 

 ︎︎コンピューター扱ってる大きな会社のオーナー、金城さんなんかはお手伝いさんの林さん分を自腹で連れて来ている。彼はなんだか、私を見る視線が鋭かった。彼、目が悪いとかでサングラスかけてるんだけど。……そんな目の悪いpc会社オーナーなんて、いたっけかな?

 

 ︎︎ソフト会社社長のおねいさんの上条さんにはにこりとされたので会釈を返して、名前はアングラな所で見かけた、既に出来上がってる意地悪そうな髭の男江原さんには……近寄らんとこ。

 

 ︎︎蘭ちゃんの憧れの人こと前田さんは、電子工学科と聞いて話合うかなと寄って行ってみたら、婚約者の彼女、佐山さんに近付く男に見えたらしく、睨まれてしまったのでこっちも近寄らんとこ……

 

 さっきの秒数測定マンは知らないです。誰だあんた。今野さん? 銀行員か……

 

 

 ︎︎上条さんが、私に視線を向け、向けるだけに飽き足らず近付いてきた。それでも尚、マジマジと上から下まで見られている。格好から怪しくてすまない。夏の太陽は嫌いなんだ。

 

 

「それで……あなたは? 探偵さんの助手の方?」

「私は1902号の、元々来る予定だった博士の助手の方ですね。沖矢です」

「あら、1人はそのままなのね。じゃあ、探偵さんを連れて来たのはブラフの可能性がある……ってコトかしら」

「さぁ、どうでしょうね。私は違いますよとしか言えないです」

 

 この形式のミステリーツアーに、自分は主催じゃないからって人間代えられたら困るよね。

 主催さんお疲れ様です。

 よし、博士の分までいっちょ頑張ってみるか。

 

「……どうやら皆様『闇の男爵(ナイトバロン)』に因縁があるようですね。

闇の男爵(かれ)』はいったい何をするつもりやら。無事で済めば良いのですが……」

 

 そんなんで除外される白確が4人もいたんじゃ、せっかく10人参加の推理ゲームなのに、面白くならない。というかゲームが成立しない。

 3人にもぜひ楽しんでゲームに参加してもらおう。お金かかってるからね!

 

 だから1人は怪しいムーブしといてあげよう。

 

 

 

 ……と思ってそんな態度をしたのだけど、新一くん? 私は主催じゃないよ新一くん?

 確かに今回主催をみつけられなくても、3人の宿泊費の残り半額は払うけど、新一くんや? 「オメー…何企んでやがる……!」じゃないんだよ。普通に考えたらわかるでしょ君。

 

 私を『闇の男爵』と間違えるのはやめて?!

 

 

 





後で視点変更とかわかりやすくならないか頑張ってみましたが、そもそも文章が読みにくく理解しにくく申し訳ないです


閲覧、感想、誤字脱字報告ありがとうございます!!
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