昴くんはなにもしない   作:あまも

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教授は別にそれほど気にせずとも大丈夫です
悪いことしようとはしていない……はず……


閲覧ありがとうございます!


52-1: 一樹百穫

 

 

 

 

 ブルーパロットにて。

 スマホが返却された。

 

 

 普段、自分が使っていた1番新しいものではなく、バッテリーの持ち的にもうほとんど使えなくなってしまった古い方。

 

 それを、“小型のPC”という扱いで零くんに提出していた。

 

 零くんも景光くんも、2人とも初めて使うみたいなリアクションして使い方訊いてきていたが、だからお前らそれ前に使ってただろってのに……

 

 何故提出していたかというと、どう考えても携帯(ガラケー)でノアズ・アーク使い倒すには容量とスペックが釣り合わないが、では『私は普段どうしているのか?』と疑問に持たれてしまったのである。

 

 なんだか景光くんが、結構前からスマホに対して零くんとも違う、違和感的なものを感じていた様子だったが、“極小のPC”で納得していたので大丈夫だろ。たぶん。

 零くんにはこの古いスマホ、景光くんには折りたたみの携帯ゲーム機を。

 持ち運びWiFiも適当な所で契約してもらって(通信料は各自自己負担)、これでようやく、2人をそれぞれ、ノアズ・アークがサポートできる体制となった。

 これまでみたいな軽量型は変わらずそれぞれの携帯でアプリとして頑張ってもらっている。

 

 

 つまりは、私がそのサポートを受けて『依存してる』レベルのプログラムが、本当に危険なものでは無いのかと、確認されたって話。

 

 

 

 ノアズ・アークは悪い子じゃないよ!

 

 

 ……と、私が言った所で、親の欲目。

 事実は己で確認せねば気が済まないおふたりなのでね。

 

 先に景光くん、後に零くん。

 引渡しの頃合はそれぞれで決めてもらって、私が怪我した頃からしばらくの間、レンタル沖矢さんサポートセンター代理人のノアくんしてもらっていた。

 

 実際の所、回線さえ通っていればいつでもリソースの移動はできるので、ノアズ・アークは私の様子を見に戻っては来ていたが……

 いままでのように普段からずっとノアズ・アークが一緒にいたわけではないので、ちょっと寂しかったのは事実。

 依存してるなぁ。

 

 今日、ついにお仕事をひと通り終えて、私の(スマホ)へと正式に戻ってきたノアズ・アークが、誇らしげに帰還報告してきたのでひとしきり褒め倒してるなう。

 

 よーしよしよし頑張ったねぇ!

 私も、ひとりでも元々まぁまぁやれてたし、居なくて困った、というのはそこまで無かったが、人手があると仕事量やらが全く違うことが実感できた。

 やっぱりノアズ・アークには居てもらわないと困る。

 心の友よ!

 

 ノアズ・アークが一生懸命頑張ってきたことをドヤ顔してそうなトーンで話してくるので、うんうん偉い偉いすごいすごいと褒めちぎってる傍ら、ふたりがカウンター越しに報告会中だ。

 景光くんと零くんも、これでノアズ・アークの有用性はバッチリわかったはず。

 

 

「ゼロ、ノアズ・アークはどうだった?」

「総評としては、『恐ろしいプログラム』だな。ヒロが早々に手放したのもわかる」

「だよね」

「あれぇッ!?」

 

 2人して深刻な顔してらァ!

 なんでさ!ノアズ・アークが頑張ってきたってんなら、ほぼミスのない情報を、求められ次第欲しいままにお知らせしてくれたはずでは!?

 

 

「独力でお前レベルのハッキングを可能にするプログラムはお前、ダメだろ」

「ハッキングなんてさせたんですか!?」

 

 犯罪行為をさせたって事!?なんてこった、この現役ハム太郎!違法捜査もお手の物ってか!

 

『景光さんの所からと、零さんの所から、それぞれで、零さんの携帯と、彼の部下さんの携帯へのハッキングを依頼されたんだよ』

「訓練と性能テストとしてな。俺のこっちの携帯と、風見に渡した携帯から、こちらの指定した特定の情報のみを狙って抜いてもらった。お前の言う通りなら、あのペン太郎共はセキュリティとして働けるはずだろ」

「ペンちゃんが本体から性能を数段落として携帯で動かせるように軽量化させたプログラムだと言うからには、本体には劣るのはわかっていたけど、今回改めて評価に困っ……」

 

 ………………

 

 景光くんが、私の表情を見て言葉を止めた。

 ついでにチーズ焼いてた手も止まったが、焦げない?大丈夫?

 

 そんなことより。

 

「……軽量型を、本体に襲わせたんですか?」

 

 その使い方で性能の確認がされる、なんて考えもしてなかった私が、貸し出す際の禁止事項にそれを含まなかったのは確かだが、わざと性能落としてる物を襲わせて……使い物にならないって判定出したってのか?

 …………普通に考えれば、ふたりからしてみればただのプログラムなのだから、ただの性能テストで訓練でしかない。

 だから平然としていたんだろう。それがどういう意味かもわからないで。

 ノアズ・アークもノアズ・アークで、彼らの所に手伝いにいけば、私と違って全部知ってるわけでもない。

 ︎︎“サワダヒロキの作ったプログラム”として扱われる事は初めからわかっていたから、文句もなしに行ってきたんだろう。

 説明不足で、盛大に失敗したな、と……感じているのは私だけだ。

 ぎゅ、と自分の眉が寄っているのがわかっていた。

 

「……語弊があるかもしれんな」

『お兄ちゃん。あれは元々、ボクのハッキングの性能を確かめる目的ではなかったからボクも行うことに了承したんだよ』

「語弊?」

 

 クッキングシートの上で、とろけて固まった焼きチーズをクッキングシートから剥がしながら、景光くんが頷く。

 

「ゼロんとこと、あと新しく用意したペンちゃん。ハルの言い方なら、彼らは使用者に合わせて成長するって話だったろ?だから、絶対に勝てない相手からの攻撃への、時間稼ぎや対処を学ばせたらどうなるのかって……ゼロが」

「……必要かはわからなかったが、念の為双方へ確認は取って、『実行可能である』と判断させてから行っている」

『セキュリティ方向での成長を試したい、という依頼だったからね。ボクの性能の確認も確かにあったけど、軽量型でその方向に伸ばしてるのは居なかったから、ボクも賛成したんだよ』

 

 3人から宥められることとなったが、そんなわけで3人とも自ら納得した上で行ったことなのだそう。

 ……………………………………納得いってないのは私だけである。

 

 

 ノアズ・アークに(物理的な)自己否定させてんじゃねーってばよ!

 

 

 しかもタチ悪いことに、これを禁止にしてしまうと“約束”があるから私も鬱鬱メンヘラタイム出来なくなる。

 結果的に“やってしまった”場合に対して、ノアズ・アークとヒロキくんとの“約束”がルールに則って禁止となるのか、ペナルティー付きで許可となるのか、仕方ない場合はOKとなるのか……決めてなかったな。穴発見!

 

 クゥッ! おのれハムちゃん!

 人の心とかないんか!?

 

 プログラムに人の心もクソもねーだろって言われたらいやこいつはファンタジーだからあるんだよってかヒロキくんがイジメられたに近い感覚ってか……

 結局、当の本人(ノアズ・アーク)が合理的に考えて、そのテストに合意したことだから、私が納得いかないだけなんだけども!

 

 

「結果として、何度か繰り返すうちにこっちの連中がなんかデカくなった」

 

 

「デカくなった??」

 

 

 景光くんが焼いたパリパリの焼きチーズをつまみながら、零くんが差し出してきた彼の白い携帯。

 画面には、黒と白に、オレンジのクチバシ備えた立派なコウテイペンギンのようなでかいヤツが画面いっぱいに。

 それはもう誇らしげに、静止画を装っていた。

 動かざること待受画面の如し。

 

「…………成長、したんですね……」

「中々凄いぞ。試してみたがまだ俺でも突破出来てないんだ。……その上で、こいつを易々と突破できるその“ノアズ・アーク”を『恐ろしい』という評価にさせてもらった」

 

 そりゃまぁ…本体だし。

 データの同期は取れるだろうが、依頼されてテストするのにそんなズルをするわけない。純粋に、性能としては本体の方が遥かに上なのは間違いないが……零くんですら突破できないとは。

 セキュリティ特化型、出来上がってみれば面白そうなものではある。

 でも、制作過程でのこのペンちゃんの苦労と努力を思うと……涙ちょちょ切れますこと。

 お前も苦労したねぇ。

 画面のコウテイペンギンに“お疲れ様”と打ち込んでやったが、『現在任務中のため返答しかねます』とのこと。沖矢昴が入力していることはわかった上で、今はお仕事中だから私情の顔できないと。

 ……盲導犬みたいなことに……

 次の同期のタイミングで帰ってきたら、しっかり労ってやろう。

 

「もう1匹のほうは、実際にサポートとして使ってみてるんだっけ?」

「ああ。風見にはメッセージアプリとして使用するよう言ってある」

 

 スコッチ飲みながらチーズをパリついている零くん。私のところには蒸し牡蠣が出てきた。

 

 1口で含むと、なんか風味が……木?とも、甘い……とも、いや、味ってわけではなく……なんか妙だが、悪くなってるものじゃなさそう。

 濃厚でうまうま。ご飯欲しいね。

 

「美味い?」

「? はい」

 

 貝って食べ過ぎると喉の奥が生臭くなるが、これはそんなことなくて、結構食べやすい。

 なんかニコニコしてる景光くんと、ニヤニヤしている零くん。

 ……………………カウンターに、景光くんが飲むでもなしにこれ見よがしに置いてあるバーボンのボトルが見える。

 

 ………………

 

「……まさか、酒蒸し……?」

「おっ、正解!」

 

 おのれ!

 美味かったけども!

 

「アルコールさえ飛ばせば、酒も平気なんだな」

「パウンドケーキでもいけるだろお前」

「好んでは食べませんよ」

 

 洋酒入ってるとそれだけでなんとなく「ヤダな」とはなるが、食べれないことはない。

 でも入れてないやつがいい。

 

「てか野菜嫌いな子供に食わせるみたいなやり方やめてくださいよ。飲みたくないんですってば」

「いやぁ、そう嫌われると、なんとかして『ウイスキー()も悪くない』って言わせてみたくってさ」

「美味いもの食えるんだ。良いだろ?」

 

 ほんとなんでこの人たち、嫌いな組織につけられた自分の名前の酒のこと、お気に入りなのやら……

 

 いや料理上手たち(うまい)の手料理(もの)食えるから良いんだけども!

 

 

『……お兄ちゃんが、景光さんに(スバル)を使わせたいのと、似たようなものなのでは?』

 

 こら!ノアズ・アーク!

 そんな、なんか語弊のある言い方やめなさいな!

 

 景光くんが最近、「俺も、いつまでも借りてらんないし、なんか車買おうかな」とか言ってて、私と零くんと工藤氏とで三つ巴プレゼン大会してるんだからね!!

 

 私はもちろんスバル推し。

 彼には私の代わりに雪山に行ってもらうことも多いので、冬の雪道の踏破性能の高さを推したところ、「じゃあお前も雪山あんな怖がって走ることないだろ」とド正論言われたので一退中。

 でもだってぇ……乗ってる人の快適さと安全性と走行性能の3点がスバル車の売りでぇ……

 別に“スバル”だからってわけではなくってぇ……なんならダイハツでもトヨタでもこの際よくってぇ……

 

 

 零くんは当然マツダ推しで、RX-7の色違いやらロードスターとかいう私でも聞き覚えのあるやつを勧めていたが、大きさが小さいのがな……とのことで。

 今のてんとうむしが、子供たちを乗せると手狭だという話からはじまってるからな。

 早く走る必要は、目立ってはいけない彼には無いので……

 ︎︎え?白く輝く車体?

 目立ってはいけないのはあむぴも同じ?

 

 はは……有希子さんと同じで、車体の美しさに見惚れてる隙に既に視界から消えてる理論だから大丈夫大丈夫。

 そりゃあの人の選ぶ車はどれもきれいでかわいいが、あれで爆走してたらそりゃ各国どこのポリスメンも追いかけますって。

 

 

 

 …………怖いのが工藤氏で、まーた私の時みたいにプレミアついてそうなお宝を「サプラーイズ!」とか言って持ってきそうで怖い。

 

 スバル360の来歴を知っているので、景光くんも工藤氏に「自分用の車を購入しようか考えている」件は話してはいなかったのに、こないだ新一くんの近況報告したら知っててね。

 なんで知っているのかと問うたら、『そろそろ必要な頃だろうと思ってね』とのこと。

 

 

 ……あの言い方、まさか既に手配済みで、現在海の上で輸送中だったりしないだろうな?

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 

 ノアズ・アークがひと仕事終えて帰ってきて、“あちら()ちら”でのお仕事ぶりを正確に聞き取り調査している。

 

 流石に機密情報は取り扱わなかったようだが、あの非人道的倫理観の無いセキュリティテストの他にも色々していたらしい。

 普通の会話が成立するか、論理的矛盾のある質問にどう対応するか、検索性能はどうか……

 

 命令違反や、出来ないことを強要した場合の対応……“人を害する意志はあるか”、“それは行えるのか”。

 試される=あまり良くない扱いをされる、という覚悟はしていたが、ちゃんとギリギリ生身の人間ならアウトそうなことしてて、良くも悪くも人間扱いではなかった。

 

 零くんの認識では“ただのプログラム”でしかないんだろう。

 本来はそれで正解で、私みたいにかわいがってるほうが頭がおかしいことには違いない。

 

 とはいえ、ノアズ・アークの制作過程に『サワダヒロキの脳構造を複製する』がある以上、それがサワダヒロキと同じ思考のできる、人に限りなく近い存在である事が判る私と、そのことを知らない彼だから、仕方ない……ことだと思いたい。

 そもそも論、自分のとはいえ完全コピーはクローン問題に触れる話でもあるから……

 

 

 ……まぁ零くんの対応も、決して悪いことじゃない、としましょう。

 

 私だけならまだしも、景光くんにまでペンちゃんへの情がわいてるから、自分がやらねばと思った結果だろうし。

 

 むしろ景光くんが情がありすぎなんだよな。

 

 あれでいざとなったら『たかがデータの存在』だとして消せるのか、心配になるのも大いにわかる。

 

 ……景光くん、たぶん普通に消せると思うよ。

 ︎︎人じゃないし。

 ︎︎本体は私が管理してることを知ってるし。

 

 どんなに気が抜けているように見えても、いつもどっかに冷静な景光くんがいるっぽいし。

 

 

 早いとこ、彼に息抜きさせてやりたいが……

 ︎︎そのためにも、長野の啄木鳥会をとっとと片して、お兄さんに会わせてあげたいところ。

 

 

 

 

 

 

 というわけで、長野の匿名さんに協力してもらってもOKの許可が零くんから出たので、情報共有が出来るようになった。

 窓口はくたびれお兄さんの風見さん。ただし、匿名は匿名のまま。

 もちろん無理させるつもりはない。

 

 長野県で実際に起きた事件を、その大きさ関係無しに、『どこで、いつ頃、何があったか』、という大まかなものだけ教えて貰って、以前くたびれお兄さんこと風見さんと一緒に確認した、報告されている事件と照らし合わせるための、現地の声役である。

 そもそも報告にあげられていない違法物品の摘発があったかもしれないことから探らなきゃならんとは……ヨモスエ!

 

 匿名さんたら、詳しくなくてもいいって言ったのに、個人情報以外は結構しっかり踏み込んだことを教えてくれて、事件解決に真剣な気持ちが感じられる反面、これらを調べるのに今までひとりで無理したんじゃないかと心配になる。

 

 せっかくなのでメッセージアプリを送り付けたところ、ちゃんと開いて使い始めてくれて、そこからちまちまとやり取りをすすめていた。

 匿名のままではあったが、少しばかり彼個人のことも聞けた。フェイク混じりかもしれないが。

 

 なんでも、以前は県警本部所属だったが、以前やらかしてしまい、現在は所轄に飛ばされているそうな。

 だから今は刑事ではないし、最近起きたことは詳しくは無いが、自分が本部にいた頃のものなら情報として出すことができる、とのこと。

 

 ……えーと……その飛ばされた理由は、こう、違法なことで?

 …………自分の管轄外の事件に、上司の命令無視で首突っ込んだと。

 

 で、やりすぎたと。

 

 

 ……なるほどなるほど。

 

 

 

 

 さてはおめー、新一くんとか本堂くんみたいなやつだな?

 

 自分の正義感に則って、信じた道を突っ走っちゃうタイプだな?

 

 

 

 

 こいつぁ……私の手に負えない相手、捕まえちゃったかも!!

 

 

 






間に差し込もうと思ったら4000と4000くらいで凄く微妙な文字数になったので別にしました


読んでいただきありがとうございました!
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