昴くんはなにもしない   作:あまも

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あまり好きな話ではないです
が、入れるところなかったので差し込みました

閲覧ありがとうございます


56-1:わかものわからんもの

 

 

 

 

 事件は無事解決し、事務所まで戻ってきた御一行。

 ポアロで待っていた私は、小五郎さんへの依頼として出した分、鳥矢町で何が起きていたかを聞いた。

 

 ……星を見るよう誘導して、頭を上げた所を背後から銃で撃ったって……ホントに射殺事件だったの?そう見せかけたなにか別のものだと思ってたんだけど。

 

 …………一般家庭のお話で間違いないよな……?

 

 

 どんだけ流出してるんだろうか、銃火器。

 見つけた販売ルートや売り子さんは定期的にくたびれお兄さんの手柄になっているが、大規模なものはこんなネットでチマチマした調べ物程度で見つからない。

 またPCと回線ごと借りて、漁る時間設けた方が良いんだろうか……くたびれお兄さん、前々からくたびれてはいたけれど、めっきり目の周り落ちくぼんできて疲れてらっしゃるのよね。

 阿笠さんに沖野ヨーコさんのライブチケットの抽選、応募させてみるか……

 

 

 

 ……え、多少お金はあっても、一般家庭のはずだよね?

 ……怖や怖や。

 

 

 ひと通り事件の流れはノアズ・アークが教えてくれて聞いていたが、そも今日は日曜日で件のバイトに関しては調査も聞き取りも出来ず。

 不審者として目撃された証言が射殺事件側で上がっていたため、警察側の見解としては犯人が外部の犯行と見せるための……極論、意味のないバイトだったのでは?と、たったそれだけで片付けられてしまった。

 

 ……一方で、そのバイトの男のブログ内での証言から、水無怜奈似の女が事故で吹き飛んだところを見たガキ、こと透司くんに、怪しい女(新一くん目線ではメイビーベルモットさん)が話を聞きに来てしまった事がわかった。

『取り立て屋が、彼女がどこの病院にいるのかを探っているのでは?』と、小五郎さんが推測を立てて、彼女を保護してるという“警察の連中”にそれを伝え、警備強化するか移動するかしてやれ。とのこと。

 

 了解ですやで〜……

 というお話は、新一くんからFBIさんたちにヨロシク伝えといてもろてね。

 

 そうなると、ここからはあまり猶予がない。

 新一くんと赤井さんがFBIの他の方と共有しているかは知らないが、組織随一とうたわれる情報収集特化の“バーボン”やベルモットが水無怜奈の居場所を探るために動いていたことはわかっていても、彼らがどこまで知ってしまっているかは、小林くんや私からの情報でしかわかっていなかったはず。

 

 

 てか、()と……今は奥穂町にいる、善意で口止めしてくれてるだけの小林くんは、逆リーク源にもなりうる。

 小林くんはともかく、私のことは信用してなさそうな赤井さんのことだからな。

 既にほとんどバレてると見て警戒してるからこそ、彼自身はあまり病院から離れていないのかなと思っている。あんだけフラフラしてたのに、大人しいもんだよ。

 

 ︎︎私たち、バーボンやクリスさんに頼まれたら喋らざるを得ないので、その警戒は正解だ。

 

 

 オススメされていた警備強化は、FBIの人員の特性上、外国人であるだけでこの日本国では目立ってしまうから難しかろう。

 だから日本警察と連携しろとあれほど……誰も直接は言ってない?マジ?

 

 ……コホン。

 であれば残る手段の“移動”する……とは思うのだけど、出来ればその前に本堂くんの誤解を解いておきたい。

 

 本堂瑛海に対して、こちらが本堂瑛祐の身柄を確保しているため、彼女がこちらと協力するしかない状態であると脅……お分かりいただいて、スパイ活動に貢献していただけたらこっちだって協力してやることもやぶさかではない。

 CIAさんと面識ないから、どういうお仕事されてる方なのか知らないんだが。

 映画見れば大体わかるのかね。

 

 ……うん、本堂瑛祐(弱点)を確保してるこっちのが優位だから、彼女はこちらの言うことを聞くはず。

 だから、移動とかする前に……目が覚めて貰えたら助かるんだけどなぁ。

 

 それとも何か、きっかけが必要?

 それこそ、本堂くんが直接会いに行くとその瞬間、目が開き――!みたいな?

 

 うーん。有り得そう……

 

 

 

 あ、新一くん。

 ついでにFBI側(赤井さん)に、小林くんが『今度こそ共有して、()()()()合わせろよな』って素敵な笑顔で言ってた話もしておいてね!

 

 あれ、2度目はないって顔だったからホント、隠し事しない方がいいと思うよ。

 

 

 

 

 

 ……さてこちらは本題。

 本堂くんを家へ送ることに。

 

 したんだが。

 

「――それで、ついに“眠りの小五郎”を拝見しまして!スパーッと見事に解決する鮮やかな推理!あれが沖矢さんの仰った、毛利探偵の真の姿なんですね!」

「え、ええ……」

 

 なんか、ちょっと目を離した隙にものすごくキラッキラの輝く瞳で熱量感じる程度に熱く語ってくれたんだけど…………

 

 

 

 あの…………これ、何????

 

 

 ■

 

 

 これまでの、みんなから以上の『胡散臭い人だなぁ』って目が、180度コロッと変わって……

 い、いやかわいいけど変わりすぎて怖い……

 リシくんを思い出すくらいの感激と感動がここに。

 

 

 大体の理由はわかるんだが、どうにもそれだけではこの反応はあまりにも。

 新一くんがわざと、盗聴器の電源切ったあと、合流するまでの間で何か囁いたかやったかしたんだと思う。

 それしか理由が思いつかない。

 

 

 何したんだ、新一くん!!

 小五郎さんじゃなくて本堂くんに麻酔打って、洗脳でもしたのか!?

 

 

「……あの、それで。……実際のところ、君の思っていたものと違いはありましたか?“毛利小五郎”は」

「そうですね、少し、思っていたものとは違いましたが……けれど、何となく見えてきました。……いえ、『見せてくれた』んですね、沖矢さん」

 

 キリッとした表情は、『わかってますよ、僕には!』とでも言いたげな、“ぜんぶりかいした”ようなお顔。どういうわけだか、彼から……欲しかったはずの、信頼を感じる。

 

 怖いよ〜っ!

 マジで何?

 君の中での私の評価に一体全体何が起きたの?

 

 

 …………す、素直に来られるとそれはそれで捻くれ者な私の方が斜に構えてしまうといいますか、『何企んでんだテメー……』と、彼の脳内が心配になるんだけど、何とか堪えてみる。

 

 

 歩み寄り、歩み寄りをね……こころがけましてね……

 

 

 甦れ、会話術特化のパーフェクト沖矢昴!

 

 

 ………………いや、この後クリスさんとのお楽しみ会控えてるもんで。

 パーフェクト沖矢昴が心の中で既に席取って正座待機してる時点でもうパーフェクトじゃないから無理だわ。

 

 あれだもん、ライブの生配信の時間待ってるもん。サイリウム振る準備してるもん。

 

 今朝新一くんにも言われたが、ぶっちゃけ昨日連絡来た時からもうテンションおかしかったからな。

 取り繕っても、いつもの私でギリギリさ。

 ……新一くんに「変なテンション」って言われた時点でおかしい?……うーん、正論。

 

 

 

 ……新一くん以外の要因なら、一応何となく……“聞こえていた”のでわかっている。

 盗み聞きしていた現場の様子、その会話。

 

 

 どうやら毛利家が神対応した結果、パーフェクトコミニュケーションしてしまったらしい。

 

 やはり真面目な時の大黒柱と組織関係者相手の時のエンジェルは補正値が違うな。

 流石はヒロインとそのお父上だ。

 

 本堂くんの中で、最も引っかかっていたものは

『沖矢昴が、怪しんでいた様子から一転して協力的に振る舞い始めたこと』だった。

 

 ……まぁ確かに、予定は途中で変えたけども。

 

 それがあまりにも怪しくて、怖くて、警戒していたそうだが、言われてみれば警戒されて然るべきことはお互いにしてたのは事実。

 

 そこは今朝、無事和解したじゃん?

 

 となっても、だとしても、何故だかやけに親身になって面倒見てくれる。

 

 毎度機会があるたび送迎してくれたり、奢って話聞いてくれたり……関係ないはずの調査に依頼料なんて代わりに出してくれたり。

 

 

 これが何故なのか、そこに理由はあるのか?

 あったとして、それは悪意からなのか……それとも、善意からなのか?

 

 

 ……これを、本堂くんは小五郎さんに訊ねたところ、それに真っ先に答えたのが蘭ちゃん。

 

 曰く。

 

「自分と似てる、と思ったんじゃないかな」

 

 ……とのこと。

 

 そりゃまぁ、この抜け作と呼ばれる私と比べ、ちょっとわざとらしさすら感じるドジっ子具合。

 そういうところは似てるとは思ったけど、だからって親身になるもんでもない。

 

 ここにさらに追撃したのは小五郎さん。

 しぶりに渋って絞り出した苦々しい言葉が、「これはオフレコだがな」と口からぎゅむぎゅむ押し出されてこんなことを。

 

「あいつの親父、……殺されたらしいんだが、犯人が未だに解ってねーんだよ」

 

 

 

 

 ……………………との、ことで。

 工藤氏や小五郎さんたちが考える、沖矢のお父さんの事件に『事件性があった場合』の、考えられる状況を、ザックリながら伝えてくれちゃったのである。

 ……つまりは、私の母親とされる人の企てた殺人計画だったんじゃないか、とか。

 

 その後、盗み聞きしてしまって申し訳ないくらい、毛利家から見た沖矢昴()がダイレクトマーケティングされてしまった。

 

 私は、父親の死の真相を明かすために、かつてひとりで暴走していた時期があったらしい。

 ………………そんな時期、あったっけ????

 

 それを、江戸川コナンくんの親戚にして、蘭ちゃんの幼なじみの工藤新一の父親、大作家、工藤優作と、この毛利小五郎が熱き心で(?)沖矢昴の無茶を諌め、無謀を咎め、大人と協力することを教え込んだのだとさ。

 

 

 そんなことあったっけ……?

 

 事件の進捗の話はしなかったが、それでも親愛なる家族の死の真相を探って無茶した学生時代、という辺りが、小五郎さんが考えた、本堂くんと私の共感出来るポイント。

 そしてここまで調査しながら、教えこまれ学習した知識で、同じく無茶してる本堂くん(お前)を放っておけなかったんだろうと…………

 

 そうだけど、そんな大したことではなくて……とか、間違いはないけどそういう気持ちもなくて……とか、言いたいことは山ほどあったが。

 こっちからの適当な事やら、工藤氏や阿笠さんからの共有されてた情報やら、小さな頃から見ていた蘭ちゃんの言葉やらが、もこもこと。

 ……暖かく。

 ︎︎言葉の端々から、彼らが私のことを純粋に、変だ変だと言いつつもまとめると「いいやつ(ひと)」だと言ってくれているのが…………

 

 どうにも気恥ずかしくて、むず痒くて。

 

 ポアロでひとり悶えてたら梓さんに「デート、よっぽど楽しみなんですね」とか生暖かい目ってので微笑まれ、別の勘違いされるわで、大変だった。

 

 

 彼のアパートの前で、彼がこれまでに無い調子の笑顔で手を振って、「ありがとうございました!」と入っていった。

 

 信頼度高まったなら良いけど……これ反転アンチの前触れじゃないよね?

 大丈夫かなぁ………………

 

 

 

 

 まぁいいや、今日はもう、私はクリスさんとのお楽しみ会でドキドキが止まらんのですわ。

 

 私は水無怜奈は知らない!水無怜奈の居場所も知らない!水無怜奈を知らない!

 うん、ヨシ!!!

 

 

 

 

 

 

 ■

 

 

 

 ……知らない天井だ。

 

 

 こいついつも知らない天井してんな。

 

 なんかこの天井……高くない?

 間接照明とかオシャなもん付けやがって…………

 

 ……いや、マジで知らない天井じゃん。

 

 何ここ。どこ?何??

 ︎︎頭が重い。

 天井から吊り下がったキラキラした照明も、常人なら白い壁とかでシンプルにしそうな所をあえて黒に意味わからん抽象画とかいう無駄な感じのオシャ具合も、どれも覚えがない。

 

 

「…………う、ぐ…………っ」

 

 首を巡らせて周りを見ていたら、ぐわりと頭が割れそうな痛みとともに猛烈な吐き気。

 体を起こそうとして、すぐに断念した。

 

 あっれぇ?まだそんな時期じゃないはず……

 

 全身の倦怠感が尋常じゃない。

 くらくらどころかぐわんぐわんにチカチカと。世界が回ってる。

 き、キモイよ〜!

 

 …………なんとなく、数回深呼吸して吐き気を堪えていたら、こんなんなってる理由に気付く。

 この……鼻にこびりついて離れない……吐き気をひたすら増長させて催すような、熟れすぎた果実のような……発酵した匂い。

 

 

「……クッソ、これ絶対酒だろ……飲まされたのか……?」

 

 

 最悪。

 がさがさの自分の呟きでもギリギリと痛む頭。

 意味わからん。何なの?

 

 

 なんとか原因の一端を思い出せないか、痛む頭を目ごと押さえて昨夜を辿ってみる。

 

 断片的な記憶が、火花のように脳裏に蘇るのだけど、よくわからん。

 約束……えーと、約束して、たよな。それでその場所行って……地下にある会員制の何たらって、なんかこの部屋みたいなオシャな部屋があって……えーと……?

 

 色鮮やかなグラス。抗えない凄まじい美貌。なんだかわからんでかい花の匂いと、グラスから拡がったアルコール臭。

 

 そして……顔だの耳だの髪を、撫で回された、ような……気が……しないでもない……?

 

 えー、と、そうだ。ものすごく甘やかされて、蕩けるほど楽しかったはずだ。

 それなのに、今の私の体たらく。

 見るも無惨な有様だろう。いつもの数倍だらしない。

 

 自分の体が、自分のものではないように重い。寝返り打つのもやっとだ。

 

 

「ノア……、ノアズ・アーク。そこにいる?」

 

 調声機が無いらしい。声がガッサガサに掠れている。

 枕元から、聞き慣れた幼い少年の声が返ってきた。

 

『……お兄ちゃん。おはよう……ううん、全然おはようじゃない。……顔色が最悪だね』

 

 声の調子は暗い。私のこのザマを見て、呆れているのかね。

 シンガポールの時より酷いぜー……これ。

 

「……ふふ。ごめん……すいませんね。ちょっと……昨夜は、羽目を外してたみたいですね」

 

 なんとか這いずるようにしてベッドを出て、ゾンビのようにものを頼りに立ち上が……無理かも。

 ベッドに上半身を預けて、手探りでノアズ・アークの声を探す。

 枕元に、携帯とメガネ、そして調声機が揃えて置いてあった。感触で気付いたが、手袋も無い。装着しつつ他の装備も探す。

 イヤホン……イヤホンはどこだ……?

 

『荷物はデスクの上だよ。……行ける?』

「ありがとう。なぁに、大丈夫ですよ、大丈夫」

 

 少し動いたらちょっとマシになってきた気がする。

 

 

 デスクの上には、手袋と別の携帯、阿笠さんのイヤホンケース、そして、クリスさんの筆跡で『おやすみ、私の小鳥』と書かれたメッセージカード。

 カードのロゴが、外資系の高いホテルのやつ。ってことは、ここのやつかな?

 えーと………………西多摩グランドホテル……ここ、西多摩?

 メモには貴重品は備え付けの金庫に入れてある事と、支払いは済んでいること、昨夜は楽しかった旨。楽しんでもらえたなら、良いんだが……

 

 ぐるりと、無駄に広い部屋を見渡す。

 ……意識高そうな内装だ。好みじゃない。暖かさがない。

 

 

「……クリスさん?」

 

 

 声を出して呼んでみるが、当然、返事はない。

 

 彼女はとっくに、この部屋にはもう、いない。

 

 ……夢みたいで、夢で終わった。

 シンガポールの時はおやすみもおはようもいてくれたのに。

 

 

 ヒン…………昨夜が楽しかった事しか覚えてないよ〜!

 

 

 とりあえず一発けろんちょしておいて、水をがぶ飲み。そしてもっかいけろんと。

 何度か繰り返す。

 だいたい苦いのに、腐ったもの食べたみたいな、変な甘ったるさがあってキモイ。

 

 

 よろよろと、ノアズ・アークに最悪な顔色と言われた顔をどうにかすべくシャワーに向かい、ガラス張りとかいう恥ずかしいオシャ空間に辟易した。

 備え付けの無駄に良い匂いのシャンプーが、どれが何やら……めんどいからシャンプーだけでいいのに、どれがシャンプーなのかわからん。

 今、細かい文字読みたくない。視認性最悪か?

 

 ︎︎シャワーから出て、荷物のそばに「着ろ」と言わんばかりに揃えられていた、お高そうなブランドの袋に入ってた服に着替え、身支度を整え、フロントに電話をかける。

 朝食付き?持ってきてくれるの?え?給仕付き?

 はぁ……すっごいッスね……?

 スープだけとか出来る?出来るんだ……じゃあそれで。給仕さんはいらないです。

 

 チェックアウトが何時までか訊ねると、なんと明日の夜まで取ってあるそうで……えぇ…?

 

 …………ワンチャン、クリスさん、部屋に帰ってくるか……?

 

 えーと、えーとね。

 充電器とか車に乗せっぱなしかな。取りに行かないと。

 

 外出は可能かと訊ねると、「お車を車庫からお出ししておきますか?」と丁寧な声が返ってきた。

 一応まだ良いかな……

 

 ……あぁ、そうだ。車で現地行って……車だから酒は飲めないって断ったのに、無理矢理…………待って、でも私、クリスさんと会ったところまで車できてたのに、ここに車あるの?……

 

 そこで思い出した。

 昨夜の道中、私の愛車を彼女が運転して、いたような……運転姿の横顔もイイッすネとか言った覚えが微かにある。

 彼女が私をここまで運んだのだ。

 

 で、西多摩?

 

 ……最悪だ。

 当然、今の私は酒精が残りまくっていて運転なんてできない。

 

 フロントにいくつか頼み事をしてる間にスープが届き、コンソメスープの塩味が……うへぁ。

 我慢してちびちび舐めるように飲む。

 車、車……

 

 

「……ノアズ・アーク。悪いんだけど、みっちゃんを呼んでくれないかな。……米花の部屋まで届けてもらって、私は助手席で……」

 

 

 言いかけて、思考の霧の向こう側からじんわりと、あいやまたれいとそんな言葉がどこからか。

 お待ちになって。

 

 今、こんなお高いホテルに、昨夜の残り香っぽい酒臭さ全身から漂わせた状態で……景光くんに迎えに来てもらったらどうなる?

 

 

『ハル、お前、何してたんだ?』

 ……なんて、あの鋭すぎる猫目で問いただされたら?

 

 

 車乗れないから帰れない、なんて状態になってまで、私がひとりで酒を飲むわけがない。

 

 

 

 うーん、

 どう答えてもアウト!

 

 ……詰んだ。

 

 何かしらの理由がないと、答えられない。

 景光くんだけじゃない。これが零くんにバレても、新一くんにバレても……みんな、私が「誰と酒なんか飲んだのか」の疑問からクリスさんに辿り着くのは明白。

 

 

 ……死ぬ。殺される。

 不潔だ!とか言われちゃう。

 何もないのに。

 酒浸りなのはお前らもなくせに!みっちゃんマイボトル今月何本空けたよ!

 

 

「……ノア。やっぱりいい、みっちゃんは呼ばないで。別の、何か言い訳を……っ、う、頭が……」

 

 うう、ガンガンってかゴンゴンってかベインベインで頭痛え。ずガツーンですわ。

 またもや波が来て、頭を押さえてしゃがみ込む私に、ノアズ・アークの声がいつになく沈んで、そして心配そうに響いた。

 

 

 

『お兄ちゃん……無理だよ。昨夜のお兄ちゃん、本当に酷かったんだから』

 

 

 ――オワァ!

 

 みみみみ見てたの!?ノアズ・アーク!

 

 

 やだ、ちょっと……はずかし!!

 何処からどこまで見てたのさ。

 何してたとかも見てた?私、変なことしてなかった?

 

 

『……あんなの、全然“楽しい”ことじゃないよ』

「ノア……?」

 

 イヤホンの音量をいつもより下げていたから、良く聞こえなかった。なんて?

 

『……まだ寝てたほうがいいと思うよ、お兄ちゃん。そうだ、新出さんを……本物の新出先生を呼ぼうか? それとも、ボクが何か別の手を考える?

 ……お兄ちゃんは温かいもの飲んで。寝てしまったらいいよ。この部屋、いいお部屋みたいだし』

 

 うん? うん、まぁ、こんな状態で外出は無理みがあるし、誰か呼ぶとそこから景光くん(グレイマン)がフライングダイナミックエントリーしてきそうだし…そうだな、寝るか。

 

「ノアズ・アーク、後でみんなにはちゃんと言いますから。今は連絡しないでくださいね」

『………………うん』

 

 通知祭りになるのも困るし。

 1回寝ればマシになるでしょ、たぶん。

 …………二日酔い、あんまわからんのだけど。

 

 ノアズ・アークの声には、何やら含みが多かった気がする。

 

 

 やはり、昨夜の私は随分な醜態晒したんだろうか。

 

 …………あぁいや、まずいことはなにも言ってないはず……うん。

 どうでもいい世間話と、蘭ちゃんのあれこれくらいしか言ってないな。

 言ってない?

 言ってない言ってない。

 

 ……ああ、えーと、転入生が蘭ちゃんに惚れてるかもしれなくてみたいな話はした……?してる?

 して……いや、して……うーん?

 

「ノアズ・アーク。私、昨夜、本堂くんの名前言いました?」

『……言ってないけど、江戸川くんにライバル登場!とか面白おかしく言ってたよ』

 

 あらまぁ。

 

「クリスさんの様子は?」

『………………さぁ。笑ってたけど』

 

 おやまぁ?

 

 ︎︎なんか素っ気ないな?

 …………ノアズ・アーク?怒ってる?

 

『無理して食べなくても良いと思う。寝なよ、お兄ちゃん』

「……アッ……ハイ……」

 

 ︎︎いつぞやの景光くんのような、淡々とした口調。

 えっと、その……お、お、怒ってる……?

 え、えぇ…?なんでぇ?

 私、そんなに不甲斐ない醜態してたのか?

 あの、ノアズ・アーク?お返事を………

 

 ………………はわわ。

 

 これ……反抗期……ってコト!?

 

 

 





コナンくんからの助言を、ものは試しにしてみたところどうやら本当らしいのでもう少し続けてみて、様子を窺ってみるかぁ、と考えているかもしれません


後半は……なんかあったんですかね。

読んでいただきありがとうございました!
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