昴くんはなにもしない 作:あまも
仕様でなんかおかしいんですが、おかしくないつもりの所がわかってなくておかしかったらまだわからないので教えてください
いつもありがとうございます
閲覧ありがとうございます!
本堂くんの保護の話をしていた時のこと。
私や小五郎さんでは高校での生活中に口出しできないから、彼に自衛してもらうしかなかった。
仕方がないから、腹括って小林くんか零くんか、それかくたびれお兄さんの風見さんに頼んで稽古つけてもらおうか、なんて話すら出てたんだが、そんな悩み話を聞いていたノアズ・アークが、ヒロキくんに相談したそうな。
なんか良い方法…ボクらのセキュリティとかで解決できることはないかな?と。
そしたら、そこにたまたま遊びに来ていた秀吉が、それなら良い方法がある、とご提案くださりまして。
彼イチオシの、高校生探偵に、調査と護衛をさせたらどうかな?とのこと。
なんでもその子、工藤新一について大変興味があるため、その彼が在籍してるという帝丹高校へ転校してでもその依頼、受けても良いよと、めちゃくちゃ乗り気なのだそうな。
このタイミングの高校生探偵で、工藤新一に興味があって、羽田秀吉経由でツテがある……って、なんだ……?
秀吉が騙されてる説以外になんかある?
■
彼女の名前は世良真純!イギリス帰りの帰国子女系高校生探偵!
昔馴染みの友人に、『頼りない男子高校生の護衛ができて強くて頼りになって怪しい動きを見たら慎重に調査してくれるまぁまぁ暇な人なんてそうホイホイ居るのか』と聞いたらホイホイ出てきたのが彼女の履歴書だったぞ!
あまりにも都合がよすぎる!何だこの子!!
誰よこの女!
「僕の妹」
秀吉が、ごくごく当たり前の事のように答えてくれたが、僕の妹?
「お前の妹だ〜?………………ああ、羽田じゃなくて世良か」
「そうそう」
そいや養子だったっけな。羽田さんちにあんまり行かないから実感無いんだよね。
盤面が気付いたら
はぇー、截拳道。……た、たい……けん……なんて読むんだ…?
「新一くんにご興味が?」
「うん。その子が通ってるのは工藤新一も通ってる帝丹高校だよって言ったらすんごい喜んで、乗り気だったよ」
ほぇー、ファンかしら。
憧れのあの人?(洋服の 山のリズム)
「なんだそれ」
「ブルーマウンテン」
「なんだそれ。王手」
「ぎゃあ」
あっ!コノヤロー、人の陣を更地にしやがって!
将棋はホント、味方がすぐ寝返るから嫌い!!
もっと私に忠誠を誓えよな。チェスを見ろチェスを。
アイツら絶対に裏切らないんだからね。えらいわぁ。
「……写真を見る限りは……可愛い子ですね」
「うん。真純は可愛いよ。ヤンチャだけど」
コイツが親戚縁者に対して行う評価……極端過ぎる傾向にあるから、めっちゃ“ヤンチャガール”ってことだな。
………………妹系?
「妹だけど?」
後ろの棚からチェスを持ってきてくれたが、普通に将棋でいい。どうせ負けるならまだ完膚なきまでに負けた方がいい。
「いえ、そうではなく。性格的に」
「ああ。……うん、僕から見たら、だから一概には言えないけど、どちらかというと弟系かもね。男兄弟と、あの母さんと育ったから…」
「なるほど」
秀吉の中々フクザツな家族関係は今それほど問題ではなくて、秀吉が弟系かも、と評した性格がポイント。
ふむふむ……。
これ、蘭ちゃんへ向けた、新一くんを奪い合うためのライバル枠……
かと思ったから却下したんだが、弟系ならば話が変わってくる。
可愛い系ってことは、登場自体のポストは恋のライバル枠、だろうけど、これは……
恋愛にそれ程興味無いほうの、女友達系親友枠と見た!!
すなわち、園子さん系列!
服部くんや本堂くんではカバーしきれない、女性だからこそできる蘭ちゃんや灰原さんの護衛枠。
園子さんの経済力の他に欠けている、蘭ちゃんの土壇場のクソ度胸と戦闘力を補う、単体での推理力を補おうってんだな。
あれだろ。
恋愛ゲームにおいて、攻略キャラの親密度とかイベント情報とか教えてくれるすごい親身になって助けてくれるのに、何故か当人のルートがなくて絶対に友情のまま終わる、モヤモヤする枠!
顔を上げて、目の前の唐変木を見る。
「……どうかした?昴」
見られていることに気付き、目が合って、へにゃと笑って首を傾げた顔。
顔を下ろして、履歴書のちょっとだけ勝ち気そうに微笑み、正面を向いているウェーブの強い髪を肩より短く切りそろえたその子の顔を見る。
妹ってんなら、たぶん笑い方も似てんだろ。
これであのへにゃ笑いされたら……色んな人が「ワ」ってなりそうじゃない?
…………………………!!
「あ、なんか閃いた「閣下!!!!!」うわ」
秀吉の顔を見る。ついでに邪魔な丸メガネもぶんどる。
なんだコイツ顔が良いな。もっと頼りなくしてろこのすっとこどっこいの唐変木め。由美さんは待ってるんだぞ。……ごめん、待ってないかも。
「お前、やっぱり酔ってるだろ!おい、昴!」
「秀吉でこれってことは、この子は更に可愛いってことですよね……」
「お前がそういうつもりないのは知ってるけど、だからって妹をそういう扱いさせるのは僕も許しちゃおけないからな!?」
どういう扱いだっての。
メガネを取り返そうとしてくる秀吉の顔を掴み、上下左右しっかり眺める。うん、すこぶる顔が良い。何故これであれほど頼りないのか。いや、『太閤名人』してる時はビビる程かっけぇもんな。普段からあれで歩ってたら、そりゃもう由美さんは毎日気が気じゃないだろう。
…………あの人そういうの気にするのか?秀吉への怒りばかり見てるから、嫉妬とかしてる所が全く思い浮かばないな。
「お
べちべちしてくるおっさんのもやしパンチ如きではこのカイワレは折れない。ざぁこざぁこ。
でも将棋とか未来予知とかすごすぎてキモい。
考えるに、この造形、キャラ設定、そして由美さんの(一応)彼氏。
コイツ、まさか…レギュラー……だったのか……?
いや、賢すぎる。
私、コイツ以上の記憶力に出会ったことないもん。
秀吉自身も、ドヤ顔で『世界一かもね!』とか言ってるから、下手すると工藤優作と同じ、緊急お助け枠の位置かも知らん。
血縁ってのは恐ろしいことに、顔が良い人間の親類は軒並み顔が良いのである。
工藤氏ばりに賢い知恵袋がバックに付いた、美少女高校生探偵(追加メンバー)ってのも考慮するとだよ?
暴れた秀吉が、私の手から何とか抜け出してメガネも奪い返し、めっちゃ睨んでくるが、太閤名人ならまだしも、お前に睨まれても全然怖くないんだよなぁ。
「はは、かわいいやつめ」
「ノアズ・アーク!コイツ酒どんだけ飲んだんだよ!!怖いよ僕!!!」
『相当飲んだのは間違いなくて……ごめんね秀吉お兄ちゃん、ボクの管理不十分で怖い思いを……』
なんか言ってら。
……ノアズ・アーク?
「ノアくん、向こう、どうでした?」
「ああ、まるで普通……昴、君酔うとかなりタチ悪いな」
『これ怖いよね。わかる』
何分かりあってんじゃい。
私について調べてたのってこの追加戦士美少女高校生探偵であってたのかってのが重要なんだよ。
「彼女が私について調べたなら、壁に阻まれてロクな情報取れてないはずですが」
『うん。秀吉お兄ちゃんの言う通り、この人のアドレスだったよ。
4枚目まで来てたから、結構やる人だと思う。途中でボクが止めたからそれ以上来てないけれど、3枚目から動き方変わってたから、本気でこられたら結構危ないかもね』
はぇー、すっごい。
あれを3枚砕いたんか。
セキュリティというかシールドというか。
情報漁られた時のための壁は幾つかあり、それぞれ砕かれた際にギミック作動するように設定してある。……シールドトリガー発動!
私は未だに、シールド増やすのは違法だと思ってるよ。
『すり抜けかな。1枚目は割られて、2枚目以降はそのままだったよ』
はぇー?
……………………攻め方が変わったんだ?
「秀吉、妹さんってPC得意?」
「ん? ……いや、僕があまり知らないからわかんないけど、パソコン使えない子ではないよ」
ふむむ……?
ポジション的には、本堂くんがパソコンで情報を集める調査タイプだと思ったんだが……
謎が深まっちゃったな。
『お兄ちゃん、これ何について悩んでるんだい?』
「真純が善悪どちらかを決めかねてる……いや、善であっても、“誰のため”の善なのか、を見定めてるんじゃない?」
『そうなんだね。派閥があるのかな?』
「“工藤新一”で引っかかったなら、新一くんにとって良い結果となるかが重要なんだろう。真純の性能は、昴のお眼鏡にかなったらしい」
『そうなんだね。……じゃあ、
勝手に決めないで相談すればいいのに』
「それだ!!!」
秀吉が私の声にビックリしている。
だがそれよりも、ノアズ・アークのその提案だ。
めんどくせぇから相談しようぜ!!!
『……他に、相談することは?』
「パソコン講座?」
『ヒント、昨晩』
「秀吉!チェスでお相手してあげますよ!!」
「なにこの酔っ払い」
ヤダヤダ、相談する必要ないやい。
クリスさんに酒飲まされただけだい。
■
秀吉の部屋のソファーを借りて仮眠と水分補給とをがっつりめに行って、ようやく多少マシになった。
頭が変にフワフワしていた気がする。あれか、酒による多幸感というやつか。
呆れ顔の秀吉から、何やら酷い棋譜を見せられたが、これは……ああ、足代わりの礼に研究に付き合えって事ね。よいよよいよ。
ノアズ・アークに時間計ってもらいながら、私がノアズ・アークと秀吉の所のペンちゃんというセコンドつけて挑んだが、振り飛車研究中の相手に振り飛車したところでなぁ。
負けてしまって、ノアズ・アークやペンちゃんが悔しそうにしているのを他所に秀吉はホクホク顔で棋譜書いてたから、なんか良い発見があったんだろう。こんなんでも礼になったなら良かったけど。
将棋は苦手だからわからん。見た目も分かりにくいし。
……なんで成り代わったり、寝返るんだか。
「真純にはなんて伝えとく?」
「ますみ?」
『さっきの、紹介してもらった、調べてきた探偵さんだよ、お兄ちゃん』
ああ、はいはい。
「1度持ち帰らせて下さい。検討してみます。なるべく早めに解答を」
「わかった。慎重な件なんだね」
結構ね。
本堂くんが関わると慎重にならざるを得ないからな。
あの弱点はちゃんと保護してやらないと――
「あ、そうだ。服」
私の酒臭かった服!
「はいはい。乾燥機かけてるから」
「サンキュー閣下!」
助かるザマス〜!
服を回収して、秀吉に感謝を伝えつつ、別れて上階へ。
ノアズ・アークのログを見ないことには、状況がさっぱど掴めないからな。
長丁場の戦いになる。
こいつはハードな戦いになるぜ…! と気合い入れていたんだが、出迎えてくれたヒロキくんが、先に該当箇所と思われる部分を引っこ抜いてくれていた。
……サンキューヒロ!
でも、知ることすら危ない情報かもしれないから、あんまり知らないところで迂闊にそういうことしないでね?今回は助かったけど。
「……お兄さんがそれ言うの…?」
ヒロキくんたら、なんだいその目は。
私がブーメラン投げたみたいな言い方だが、知ってると危ない情報とかはしょっちゅう零くんや景光くんに殴って止められてるからね。
ヒロキくんからパソコン借りて、ノアズ・アークも離して…
さてさて。
見てみますかね!
■
正直、あの夜のことはあまり覚えていない。
どんなに頑張って断片的な記憶を繋ぎ合わせても、断りきれずにカラフルなグラスを煽ったあたりで、私の意識のシャッターは閉店ガラガラ店仕舞いだよ帰った帰ったと音を立てて閉まっている。
ヒロキくん曰く、ノアズ・アークが深い階層に隠し、ご丁寧に暗号化までして封印していたらしいあの夜の記録。
本来、AIの保護領域を強引にこじ開けるなんて、あまり褒められたことじゃない。
何がどう狂って、データに支障が出るかわからないからな。
……けれど、あんなに心配されてしまっては。
その理由を、私はどうしても知っておく必要が
あるわけで。
モニターの中、泥のように重いデータの層を、感覚だけでかき分けていく。
ようわからん。なんやこれ。知らんがな。ざっくりと単語だけでより分けていき、幾つかハズレを引き当てながら、たぶんここら辺かねと何回目かのサルベージ。
……あった。
■
引き摺り出したデータは、複数のカメラ視点が混ざり合った、歪な映像記録。
ノアズ・アークがネットの海を駆け巡り、あるいは私のメガネやスマホのレンズ越しに、あらゆる防犯カメラやスマホのレンズを経由して「私の姿」だけを追いかけ続けた、執念のログだった。
……うわ。この時点で見たくないなぁ。
これほんとに見てもいいやつ?
学習のためとはいえちょっとストーカーじみてて怖ぇ〜。
再生されたのは、地下のお店の隅っこで、真っ赤な顔をして俯いている私。
いつもなら「もうこれくらいで」なんて取り繕ったスマート沖矢昴が頑張って切り上げているはずなのに、映像の中の私は、信じられないくらい馬鹿みたいなヘラヘラした顔で、次々に持ってこられた色とりどりのグラスをカパカパカパカパアホみたいに飲んでいる。
隣の美女が映像でも美人。なぜこの人が私の記憶におらんのや。
せめてこの笑顔だけでも焼き付けとけよ馬鹿。
……さっきと別な意味でみたくないなぁ。
……アホ、もうそれ以上はダメだって。
画面の中の自分に忠告したくなる。
明らかに目の焦点が合っていない。
それは何杯目だろうか。
映像の中の私が、ガクンと首を落とした。
静かな店の中で、ノイズ混じりの映像からも明らかにだいぶまずそうだが、この時の私はどうやらバカながらに賢かったらしく、体調の測定用にスマートウォッチ付けてたらしい。
お前はその“念の為”をもっと別のところで使えよバカ。
私のバイタルが異常な数値を叩き出しているのがわかる。
心拍数は跳ね上がり、呼吸は浅い。
冷や汗が止まらず、濡れた前髪が、額に張り付いている。
顔色なんか赤通り越して紫超えて土気色、
そこで横の美女が、にんまりと曲げた口から、唄うように、死にかけの私に詰問している。
あの時、季節外れのハロウィンで、誰と会ったのか。誰を連れてったのか。
最近の開発状況は。
大学や近場、毛利探偵事務所、ARATAや、群馬。何か、誰か、接触してきた者はいないか。
など、など、など。
映像の中の私が、朦朧とした中でポツポツと何やら素直に話している。
……あー、これ。
その映像に重なるように、ノアズ・アークの当時の思考ログが翻訳できた。
『お兄ちゃんの心拍が不安定』
『体温が上昇しすぎている』
『アルコールによる急性の中毒症状と判断』
『……なんで。なんで、あの人、笑ってるの?』
『お兄ちゃん、なんであの人にそんなに……許してるの?』
………………うっわ、
今まで、「人間」を学習しようと前向きだったノアズ・アークの思考が、その瞬間には真っ黒な大量の読み込みきれないデータで塗りつぶされている。
︎︎さっきのログだって、表層近くを掬いとっただけだ。下にはまだまだ色々ある。いやぁ見たくないっす。
自分では動けない、助けに行けない。
レンズ越しに「虐められている」としか思えない光景を見せられ続け、あの子がどれだけ絶望したことか。
︎︎だいぶ前に、クリスさんに対して調べたりなにか妨害したりするのは止めさせてたんだっけな。………
……わ、悪いことした気がするッピ!!!
映像の最後、ようやく店を出された私が、道端でうずくまって吐いているところを頭だの背中だのを犬の如く撫で回されながら、美女に介抱されてるところで記録は途絶えていた。
次が知りたいなら次のログを探さなきゃならんが、もう充分じゃない?
……なーほーね?
そりゃあ、拗ねるどころの話じゃないよね。
あの子にしてみれば、この『開発者の友にして教育役』たる私を、あの美人が壊そうとしているように見えたわけだ。
モニターを一旦消し、私は口から漏れた嘆息をそのまま垂れ流した。こりゃー、まずい。
椅子の背もたれに体を預ける。どうしよう。
自業自得とはいえ、これはあまりに分が悪い。
このデータを復元してしまった以上、私は「見てしまったこと」を白状して、あの子に、そしてヒロキくんに、心配させたことを謝らなきゃいけない。
けれど、あの子のことだ。
「……これ、謝るだけで、済んでくれますかね……」
きっと、これからしばらくはアルコールの成分を感知させただけで、家中の電子機器から警告音が鳴り響くことになるだろう。
うーん、困った困った。
それでも、勉強のためにあんなに必死に私を追いかけてくれたAIと、その生みの親に、今さら「放っておいてくれ」なんて言えるはずもない。
︎︎ここまで自由にさせてきた以上、恥ずかしいから見んといてなんて言ったら逆にやましい事あるに違いないとか思っちゃうだろ。
てか、さぁ。
正直、映像の中には、私がクリスさんに明かしてはいけないだろう情報を喋ってる所は無かった。ゾンビのおじちゃんだの、秀吉のことなんかクリスさんは前から知ってる。ノアズ・アークのことは喋る前に将棋ゲームで流せたから良かったが、最近の人物として本堂くんを匂わせてしまったのはまずい、程度かな、
となると、ね?
その店へ向かう前の、私の呟きのログ。
ノアズ・アークが、これを見やすく残しててくれて、真っ先に翻訳できたそれ。
「『私は水無怜奈は知らない、
水無怜奈の居場所も知らない、
水無怜奈を知らない』
………………ねぇ」
……水無怜奈?
誰ぇ?
読んでいただきありがとうございました!