昴くんはなにもしない   作:あまも

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お待たせいたしました……

あまりにもしっくり来ないもので、何度か書き直しまくっていました。最終的に短くなったのでやや無理やり継ぎ足しています。
ここら辺からダメなことと明かしていいことと入り乱れてるのでしばらくのんびり進行かと思います。気長にお待ちいただければと思います


閲覧ありがとうございます!


57-1:散らかった部屋の箱

 

 

 

 ヒロキくんに借りた部屋から顔を出し、様子を窺おう…と思ったら、扉のすぐ横で待機してたヒロキ君と目が合って心臓止まるかと思いましたとさ。

 

 だから、怖いって!

 

 

「……お兄さん、どうするか、決まった?」

「えーと」

「どうするか、決まった?」

 

 

 ……えーん!怖いよ〜!!

 

 ヒロキくんが中学生がしちゃいけない顔で下から覗き込んでくる……ノアズ・アークのじっとりさとまたひと味違う声で、怒りを表して…い、怒りか…?これ…

 

 大丈夫?違うものだったりしない?こう……失望とか、混じってない?

 ヒロキくんに見捨てられたら、私この世界生き抜けないから……!

 

「……えーと、美味しいチョコとか…」

「バレンタインじゃないんだよお兄さん」

 

 あかんか、流されてくれへんか……

 これ、どうするのが正解だ?

 

 今後ともよろしくしたとてのところでだし……

 二度としませんなんて確証ないし……

 謝ったからって、反省するものでもないし…

 

「……コクーンの点検、手伝ってね」

「ハァイ……」

 

 渋々妥協みたいな顔で提案してくれたが、それこそ私がえぇ?と思う事だったから納得しかねるんだけども「さもなきゃ…」みたいな顔されて脅されたので通すしか無かった。

 やだぁ!何されちゃうんですか私!

 

 ……仕方ない。

 ノアズ・アークの【禁忌】指定の確認後のコマンド解除は作者しか出来ない。

 ここで解除してもらわないと、私はめんどくさい“鍵”探しにいかないといけなくなる。

 

 ………………どうせこの感じだと今回の鍵は18階にいそうで、それでもよかったんだが、このヒロキくんとノアズ・アークを放置していてはいよいよなんか私の身が危なそう。

 

 

 なぁに、なんだかんだでこの子たちが人の事閉じ込めるとかはしないでしょうし!

 まぁ後ほどね!宥めすかしてなんとか、ね!

 

 

 

 

 

 近いうちに、どうせしばらく外出しなくなるだろうし。

 

 

 

 コクーンもどこも、似たようなもんでしょ!

 

 

 ■

 

 

 【禁忌】解除してもらったノアズ・アークから水無怜奈についての分かっていたことを教えてもらい、再度まとめるに……

 

 こいつぁ、近いうちに事が起こりそうな気がする。

 クリスさんは水無怜奈について、直接私に訊ねることはなかったが、FBIや新一くんの動向は探っていた様だ。

 最初っから、1番の目当てのその情報を抜くより他の情報で取った方が今後のためにも良かったから、そうなったんだろう。

 無茶してまで隠さんでも良かった気がしてしまうが、結果論だね。

 億が一にも漏らしちゃならん。新一くんや景光くんたちや、FBIの用意ができてからでないと。

 

 

 「……“水無怜奈”」

 

 

 口の中でその名前を転がしてみるが、手応えがない。

 新しく教えてもらった情報が馴染むように脳内で整える。

 繋がっていなかった線を結び直していく。

 本堂くんの実の姉。組織の幹部。病院にて入院中。

 

 元々、私の脳内の、どこかの棚に名札つけて大事に置いてあったであろうこの名前。

 

 クリスさんと飲むことになる直前、店の前で、私は確かにその名前を復唱していた。

 それは忘れないように、ではなく。

 

 

 ――「絶対に思い出さないように」するために。

 

 

 ノアズ・アークが残したログには、クリスさんへの解答に不自然な反応が記録されていた。

 

 特定のキーワードに触れそうになると、無理矢理にでも別の話題へと逃げている。

 

 “先日の鳥矢町での事故”、で、何故か”最近交通事故が多いですよね“、なんて、先日の…爆発炎上した車の人を助けられなかったとさめざめと……白々しく泣いていた。

 

 お前、普通にあの時切り捨ててただろ。

 

 …………今その質問に対しても、私の頭は『はて?』と、特に何も浮かばない。

 事故、事故……ノアズ・アークの読み上げてくれる、FBIが目撃した事故の話でようやくそこの抜けた穴が埋まる。

 箱を一から組み立て直すのは、ちょっとだけ面倒だ。

 

 

 これは、私が自分自身の棚にあったその名札のついた箱を、ひょいとどこかにやってしまった結果。

 ただでさえとっちらかった頭の中で、せめてものなけなしの棚に、名札つけてまで取り出しやすくしてた大事な情報なのに、それをぶん投げる。

 結構大変だが、かくしごとを確実にしたい時には便利な技である。

 ドわすれ! もしくは『1、2の……ポカン!』だな。

 

 酔って理性が溶け出しても、どれだけ美人に詰問されても、散らかった部屋からその箱を探すより、手元にあった近い話をした方がずっと早い。

 なんてったって、探し出そうとするだけで、他の事ばかりがごろごろと、頭に浮かんでくる。

 

 大抵は、箱を放り投げる前に、縄なり旗なり色付けるなり、ちゃんと目印つけて投げてい……られたなら、いいのだけども…

 今の私には、その目印がなんだったかが思い出せない。

 

 今回は余程急いでいたらしい。

 隠すべきものを決めるのが、ギリギリだったって所かな。

 

 

 結局元のデータがどっかいってしまったから、ノアズ・アークの保存していたデータを入れ直して貰ってるってわけ。

 

 めんどくさいのですわ〜!

 

 

 ■

 

 

 『水無怜奈』を再び頭に叩き込んだ後、ヒロキくんとノアズ・アークに半ば強制的にコクーンのテストの予定を詰め込まれ、まだ寝てろとかなんならここに住めと言うヒロキくんにバイバイして、シャトー米花を出てきた。

 

 ノアズ・アークがシャトー米花の部屋の購入を検討してる…!

 

 阿笠さんのために木馬荘に引っ越したばっかりなのでダメです。

 

 高層マンションってさ、風ごときで揺れたり、隣の家で事件起きて巻き込まれたりするから嫌なんだけど。

 でも秀吉がここまで巻き込まれたこと2回くらいしか無いし、シャトー米花だと意外と治安が米花町の他の家よりまだマシ説はある。

 わりと少ないか…?

 

 だいたいまだ中学生のヒロキくんに何ができるってのさ。

 

 一緒に暮らしたところで防げない時は防げないんだから、気にせず心配せずで良いでしょうに。私だってそうなんだから。

 

 

 ……ノアズ・アーク、車内ステレオから変な昼ドラ流さないの。

 昼ドラみたいな現場なんてどこでもあるでしょ。悲しいことに。

 

 

 

 

 

 帝丹小の前に車を停めて待っていたら、私の車を見つけて一目散に掛けてくる小さい少年。

 くっついて来ていた少年探偵団は、私の車と乗ってるのが私と見るや否やそそそと離れていって、新一くんの後をてくてく歩いてついて来たのは灰原さんだけである。

 …………円谷くんだけ、ぺこりと頭を下げて2人を連れて帰っていった。

 ふむ……

 

 相変わらず、新一くんは小さいなぁ。

 

「スバルさん!珍しいね、小学校に来るなんて」

「おや、昔や以前はよく学校にお迎え頼んでたのはどちら様やら」

「あ、れは……悪かったよ、アンタが子ども嫌いだとは知らなかったんだから」

 

 スバル360やこの車を、赤くて珍しい形だとベタベタ素手で触りまくるお子様やら、好奇心旺盛な目で見てくる中学生やら、天才作家様の息子さんはお迎え付きでございますかの嫉妬やらなんやらの目やら色々あったねぇ。

 

 別に直接関わるでもないからそれは良いんだが。

 

「乗ってください、おふたりとも。研究所までお送りします」

「…………なんの狙いがあって?」

「ふふ。ただの相談事ですよ」

 

 小林くんも乗ってなかろう。

 いつぞやの拉致監禁でも思い出したのか警戒する新一くんをよそに、灰原さんが広い後部座席に女王のごとき構えでどっかりと乗り込んだ。「早く出せ」の顎での指示。

 失礼、女性に“どっかり”はないな。ぽっすり。

 

 新一くんは助手席ね!

 

 

 

「で。相談というか聞きたくて。

 新一くん、本堂くんに正体、バラしたんです?」

「ブッ」

 

 私としては水無怜奈について改めて脳内に叩き込んだ後、本堂くんの反応の変化から考えた結果の、“新一くんが何やったのか”の3つの説から1番無さそうなのを選んでみたんだが、やっぱり無かったか。

 片眉あげて「はァ?」じゃないからあながち間違いでもない。

 なので。

 

「毛利小五郎の正体ですね」

「……知ってたの?」

 

 知ってたというかその窺うようなちょっとだけ悪いことした気持ちが無きにしも非ずなお顔であるのを、チラ見した限りで確信したと言いますか。

 

「彼に、自分の仮説の正しさの証明と、そして予想は間違うこともある、という事実を教えたのですか?」

「そんな大層な考えはねーよ」

 

 新一くん、プランCである『沖矢昴を信頼させる』を私自身が放棄した上、毛利小五郎と江戸川コナンと同行させて事件に向かわせたことから、私の予定変更先を読み取って先回りしてみたそうな。

 

 

 それこそが、『名探偵毛利小五郎の正体は、この幼い少年、江戸川コナンだった!』である。

 

 

 ミソは、新一くんが明かしたのは『江戸川コナン』までだ。

 工藤新一説も本堂くんの中では浮かんでるはずだが、流石に『体が縮んでしまった!』は常人には予想できんて。

 シレッと危うく身バレの危機だった灰原さんがむっすりしながら後ろでふんぞり返っておられる。

 

「つまりあなた、その彼にヒントを与えてしまったの?」

「いや、俺自身……“江戸川コナン”が異質な存在だと思わせたんだよ。スバルさんがよくやってるやつ」

「私?」

 

 私が何をよくやってるってんですか。

 私は一般的な大学院生でしてよ!

 

「どこがだよ」「何言ってんのかしら」

 

 立ち振る舞いが小学生じゃないガキ共が呆れて首振ってやがらぁ!どう見ても大学院生でしょうが!!

 

「ほら、伊豆でやってただろ?わざと怪しく見せるやつ」

「わざと怪しく見せてないんですけど」

「自然と怪しく見せるのでも良いけどさ、つまりそういうこと」

 

 どういうことだってばよ?

 ミラー越しに灰原さんを見る。助けて哀ちゃん!

 

「……ギフテッド?」

「そう」

「……なるほどね。……沖矢さん、サワダヒロキと同じってことよ」

 

 どういうことだってばよ??

 ……ノアズ・アーク!

 

『だから、中学校とかでも遠巻きにされがちなヒロキみたいに畏怖されないように、毛利小五郎という大人が代わりに表舞台に立ってくれてることにしたんだと思うよ』

 

 ノアズ・アークの説明で合点がいった。

 あーね!

 

「なるほど、大人を頼っている賢い少年を見せたんですね」

「そうなるね」

 

 なるほど、得心がいった。だいたい考えてた通りだったが、言葉が遠回り過ぎなのよね。

 ヒントじゃなくて結論から言って欲しいのだわ。

 

 

 つまり中学の頃の秀吉ってことだな!

 

 あのばかは賢すぎて将棋星の言葉で全翻訳してから日本語に再翻訳して話してて、時たまどういう意味かもわからんこと言うておられたもんで。

 

 

「天才扱いはやっぱり嫌だったんです?」

「いや全然」

 

 昔の新一くんもそういう感じだったのかななんて聞いてみたんだが、新一くんばかりか後ろの化学の天才様までどうでもよさそうに話を流してしまった。

 

 自信ありまくりな天才殿の情緒が、常人たる私にはとても、とても…!

 

「だからスバルさんを参考にしたんだってば」

「だからなぜそこに私?」

 

 私くんちゃんなぜそこに。

 阿笠さんの研究所の裏口についたので、めいめい降りていく。

 忘れ物はないですかー?

 

「おお、おかえり哀くん、昴くん。新一も良く来たのお」

 

 にこにこ笑顔の阿笠さんへ、3人それぞれただいまを告げる。

 手洗いうがい!……ヤクルト買ってくれば良かったな。

 

「スバルさん、昔から自分の実力出すの苦手だったでしょ?」

「ええ?誰情報です?それ」

 

 手洗いうがいを済ませ、カウンター周りに自然と集まった私たち。話の続きをする新一くんと、何の話かと灰原さんに訊ねて概要聞いてる阿笠さん。

 

「博士と小林さん」

「ワシ?」「あんにゃろ」

 

 適当なこと教えおって。

 何をそんな話したのか、あとでじっくり聞いちゃるけんね。

 ………………その前にちょいとこの間の夜の話、なんてされたら怖いからやめとこ。

 

 

「本堂に、小五郎のおっちゃんやスバルさんが情報面で守ってくれるから俺は事件解決に専念できるんだよって、さ。……あの人たちは、俺のことを庇ってただけだって教えたんだ」

 

 うむむ、概ね予想通り。

 ただ、その結論はちょっとだけ予想外。

 

 

 まるで美談じゃないか!!

 

 

 ■

 

 

 だいたい事実に間違いないし、江戸川コナンくんは時折米花七不思議に数えられるほど妖怪じみてて怖過ぎるし、怪盗キッド関係で既に目をつけられてしまってるからね。

 あれ怪盗キッドだから許されてるが、殺人事件現場に子供が入り込んで平然と検分してんのは怖いは怖いし異様だし恐ろしい。

 小五郎さんはなんも言わないけれど、彼なりにこの子供らしからぬ子供を守ってやろうとしてくれてるのも間違いない。

 

 つまり大体真実を話したって、ワケ!

 

 

「工藤新一、は隠したんですね」

「ああ。それは話す必要を感じなかった」

「蘭ちゃん狙われてますよ」

「!?」

「恋愛的な意味で」

「!?!?!?」

 

 あらやだ、新一くんたら、なにやら大慌て。

 話さなかったのは良い事だが、てっきり話してしまうか…なんて思ってたよ。

 クライムミステリーサスペンスアクション、ラブコメだからね。

 ︎︎パカパカと口を開閉させ、真っ赤になっていく。

 ︎︎何考えてんだか。

 

「……あ、んたら、あんだけ釘刺しといて……」

「おやまぁ。てっきり男子高校生の青春したがるかと思ってましたが」

「私が許しちゃおかないわよそんなの」

 

 灰原さんがぎゅ、と眉根を寄せてそんな事を仰る。

 

「あの彼から、情報が……そんなくだらないことで漏れたなんて、許さないわよ」

 

「「……あっ、はい……」」

 

 

 やべ、なんか今日の灰原さん、ずっと機嫌が悪い……

 

 なんでぇ…?

 

 

 

 身の回りの皆様、なんかみんなして機嫌悪くない……?

 ︎︎なんなの…??気圧かなんか?

 

 

 

 

 





過去編だの秀吉さんとの友情だのおとうさんの昔話だのあったんですが無駄なので切り取ったら随分スッキリしましたね
やっぱり余計だったかな


読んでいただきありがとうございました!
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