昴くんはなにもしない   作:あまも

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この話とか本当に「なにもしない」ですね

こういう動きの無い話があったりなかったりします。

よろしくお願いします。

閲覧ありがとうございます。




5-3:闇の男爵(3)

 

 

 

 

 

 江原さんが『闇の男爵(ナイトバロン)』の格好で自室から飛び降りて、下の像の剣にモズのはやにえの如く、突き刺さって死んだらしい。

 

 

 何その死に方怖過ぎない?

 

 

 それで、その落ちてきた江原さんはどうも自殺では無さそう、という事に当然新一くんが気付いて「あれれ~?」して他殺であることを周知。

 その落下した時間帯である午後10時頃に、何をしていたか聞き込み調査されていたというわけなんだが……

 

 ここに、部屋で一人で寝ていた男がおるじゃろ。

 

 

 無い、無いよ!

 私のアリバイどこにもないよ!

 

 一応弁明として言いくるめ発動、

『私は今回友人との複数人部屋で、いつ部屋に人が戻って来るかわからないのに、寝たフリして殺しに行くようなリスクはとりません』っと。紙に書いて見せた。

 

 他にも今野さんや佐山さんなど、部屋で一人でいたという人が何人か居たので、一旦はまぁそれでいいでしょうと許されたものの……

 

「あなた、なんで喋らないのかしら」

 

 なんてことを指摘されてしまう。

 やだなぁ、佐山さんてばそんなに睨みつけないで欲しい。怪しいけど。確かにこの私、怪しいけどね。

 

 喋ってた人が喋らなくなったからって人を殺した理由にはならないじゃん!

 どう巡り巡ったら関係してくるってんだ。人狼ゲームじゃあるまいし。

 

 関係ない事が確定している話を、する必要ないのに話さなきゃいけない事を……自分の欠点である事実を語る事に、やや苛立ちが出てしまうのは許して欲しい。それもこれもあんな水没が無ければ……

 

 

『元々、私は発声に補助器具を使用していた身体障害者です。夕方の件で補助器具が故障したため、こうなりました。』

「(それとも喋りましょうか?この声で)」

 

 あえて強くわかりやすい言葉で書いた文字を見せながら、眉根を寄せて酷く掠れた低い声で唸る様に言えば、顔を引き攣らせた佐山さんと、その後ろのツアーメンバーと横溝刑事。

 意味が伝わってなくても良いんだよ。普通に喋ってる健常者の見た目で珍妙な声なんて見てて面白いだろうが。

 

 一人だけ、金城さんがサングラスをズラして私の書いた文字を見て、目をキラキラさせている。あんた……やっぱり目、悪くないじゃん。

 

 博士のパトロンは大歓迎ですぞ~

 

 

 ……しっかし、どうも佐山さんが私に噛み付いて来る。私に何かしらの不快感でもなきゃそんな睨まないだろうに。俄然怪しいな。

 佐山さんがそんなに熱い視線で見つめてくるもんで、前田さんからの圧力もすんごいから、そろそろやめてほしい。

 上条さんなんかは、私の事を怪しんではいるけれど、私の言いくるめの内容を彼女なりに良く吟味して、行動の予測の付きにくい子供もいる部屋である事が決定的に引っかかってくれているらしく、彼女から見ては真っ黒ではない、と。

 金城さんたちは、私からもお互い白っぽいなぁって思ってそう。なんだかとっても好意的な気配だ。

 

 今野さんはいい加減、その『あなた、画面越しで会話するタイプの方ですよね?』の同類見る顔で眼鏡クイクイするのやめなさい。チャット弁慶してるけど。

 

 

 ………

 やばいやばい……ゲーム設定で始まったせいで、実際に命散ってる人がいるのに思考がゲームから離れてくれない。

 もっとちゃんと、証拠ありきの話をしないと。

 

 

 ……だから私の無実の証拠が無いんですってば!!

 

 

 ■

 

 さてさて、調査開始である。

 

 でも私は容疑者ドラフト第1位。

 

 私が突き落とされた時、アリバイのある人は金城さんたちのみ。ホテルの人に手伝ってもらいながら部屋に荷物を運んでいたそうだ。

 これは金城さん、私視点完全白確ですね。

 

 毛利探偵殿には「ヒッジョーに疑わしいけど、コイツがやるか?お前人担げるかぁ?」との言葉をいただいている。

 いつものお手軽トンチキ推理で槍玉に上がらなかった時点でも、一応犯人ではなさそうと思ってくれてるようだ。

 

 ……ちなみに、言わないけど私は細身の成人男性くらいは担げます。

 

 

 一方の我らが名探偵。

 まずはこの疑わしげな目つきで見てくる名探偵に、私の無実を証明せねばならない。

 どうやって?

 

 ……とりあえず警察の目の前で私怪しくないよの顔しとこう。

 

 ■

 

『というわけで、役立たずですがお側につかせて下さい。』

「監視させようって事ね。わかった」

『怪しい行動も控えます。』

「それは最初から控えて欲しかったかな」

 

 てへぺろコツン。膝叩かれた。

 

 つい先程、佐山さん、蘭ちゃん、新一くんの3人がエレベーターで出会った『闇の男爵』出現時には、私は小五郎さんと一緒に警察の人達の前に居たので、今回はアリバイができた。

 でも小五郎さんのトンチキ推理を思うと、共犯者だろうとか言い出す可能性があるから油断ならない。

 

 これより手はポケットにイン。新一くんの金魚のフンさせていただきます。

 

 一応、名目上はコナンくんのおもり。裏では常に人目、刑事さんや小五郎さんの目の届く範囲にいる事を心がけて、今後一切の自由行動の利かない状態にセルフで身を置く。

 

 グッスリしたから体力あるし。水分補給以外の全ての判断を新一くんに任せた私はただのでくのぼうです。

 クーラーの効いた館内ならいくらでも歩けるもんね!

 

 

 各人の部屋を回る警察の後についていく。

 私が、怪しまれているのを晴らしたいので、先程のような事が会った時アリバイ作りのためにせめて警察の目の前で過ごしていたい事を伝えると今更?と小五郎さんにまで言われてしまったが、ええい、過ぎたことはもう良かろう。

 

 1901号室にて。

「……そのひと、なんでついてきてるの」

「あー、コイツはさっきみたいな事がある時、自分が誰かと一緒にいた証明が欲しいからと、この名探偵毛利小五郎の目の届く範囲に居ると決めたようでして……」

「……フーン? アリバイ作りみたいじゃない?」

 

 やっぱり佐山さんに噛み付かれてるなぁ私。

 

 

 2001号室にて。

「ところでその沖矢という男……お主、様々な企業に顔を出しておったな?」

「それはどういう意味ですかな?金城さん」

「ホッホッホッ……奇妙な発明品を売りに来る、営業の男の名前が沖矢だったはずじゃよ。そういえば最近はどこにも顔を出しとらんようじゃが。

 ……おお、そういえば、『闇の男爵』の被害にあった企業ばかりじゃったな……」

「………………オメー」

 

 白い目が探偵たちから向けられている。む、昔やった怪しい動きのこと言うのはやめてくださいよ!

 阿笠さんの発明品のパトロン作りと小銭稼ぎのために、一時期、集中的に売り込みかけてた時があるだけだ。……その時期?

 

 留年が決まった一昨年から去年にかけてさ!

 なぜか暇が出来てしまったからね!!(半ギレ)

 

 ついでに『闇の男爵』のターゲットの規則性探してた頃だからそうなってるだけである。……このおじいちゃんめ、それが予想出来てるだろうにそんなことを言いおって……!

 

 

 2002号室にて。

 回りくどい言い方で、金城さんに怪しい所を作ろうとしている今野さんの発言に引っかかって、ついつい新一くんのメモ帳にチクりメモをカキコ。

 

『おそらく、金城も今野も機械を人間みたいに接するタイプ。手塩にかけた息子(プログラム)、大事な里美(PC)って』

 

 調子の悪いテレビやPCや回線を、怒鳴りつけたり応援したり励ますアレのひどい版である。新一くんもこのポンコツ!とか怒ったりするやつね。

 

 得心のいった探偵たち。じゃあお前もそういうところあるのかとは新一くん。

 じゃあってなんだじゃあって。

 プログラムに名前つけるじゃん。そして私の扱っているのはAI。

 当然、たまに“あの子”とか人間みたいに呼ぶ時は……正直ある。“うちの子”とかも呼ぶ。

 

「そういえば……アナタもパソコン持ち込んでますよね?何故、それに文字を表示させないんですか?」

「ああ、確かに沖矢のやつ持ってたな」

「部屋では出してたよね」

 

 いやいやいや、立ち話してる中、PC持ち歩いて一々文字打ちしてるような奴はいないでしょ。

 ……そんなキャラクターがいたような……

 

 

 2102号室にて。

 好き勝手やるコナンくんを小五郎さんから投げ渡され、部屋を追い出された。そろそろ目障りだったらしい。

 

「『ツアー参加者全員に、彼を殺す動機があるって事よね!』

 ……だ、そうだけど、どうなの?」

 

 ハッカーに強い憎しみを覚えないコンピューター関係者はいないとのことだけど、……どうなのってどうなの新一くん。

 

「人を殺したいほど憎む理由になるのかなって」

 

 それは……そうねぇ……

 

『なります。』

 

 人の恨みの話か。

 こういうのは、手っ取り早く大事な人を殺された人に置き換えてみればいい。

 喋れたら、もう少しわかりやすくまとめるのだけど。

 

『収穫を目前に 何者かに畑を潰された特別な 金リンゴ農家がいます。犯人の証拠は無く、再起の資金もなく、途方に暮れた失意の農家は、自ら命を断ちました。

そのころ、駅前では何者かが大量の希少な金リンゴを売っていました。実はその金リンゴは件のリンゴ農家から盗まれた物で、希少性を狙って、畑を潰されたのです。

 さて、真相を知った際、遺族の行動は?』

 

「……その“盗んで売り捌いた何者か”を強く恨むだろうね」

 ひとつ頷く。

『という話ですね。同じことをやり返したくなるのが“人の恨み”なのではないでしょうか』

「そう……」

 

 私や金城さん、上条さんのように、作った物が奪われても、まだやり直せるだけの気力と時間と力と財力があったなら、そこまで恨むものでもない。因縁がある、という程度だろう。

 だが時間も、力も、財力も無かったなら……

 

 うん、やっぱり今野か佐山かな。そして私に噛み付いて来たから佐山が怪しい、と。

 

「おい、コレどうする?」

「ああ……防犯ロックのカケラか……」

 

 鑑識さんの方に駆けていく新一くんについていきながら、やっぱり、私自身は犯人の決め打ちから入るんだなと考えて……そして自嘲してしまった。

 

 自分が黒く見られたからって、他を黒く塗って目を逸らさせようとするのは……黒い奴のする事だろう。

 

 

  ■

 

 

「ね、スバルさん。ルームサービスってどう頼んだの?」

『フロントに直接、注文の紙を持っていきました。その足で、あなた達にルームサービスで済ませるというメモを渡したんです』

「ルームサービスが来たのはそのすぐ後?」

『ええ、なのでみなさんと同じ時間に食事しています。その後ずっと寝てたので…』

「そう……」

 

 今野さんのパソコン通信の話から、私のアリバイに繋がるかと期待したんだろうけど……悪いが寝てただけである。

 

 さて、色々分かってきたけど、名探偵の方はどうかな。

 おそらく名探偵も、私の無実を証明するより、真犯人を見つける方が話が早そうだという認識のようだけど……

 

『私のアリバイ、ありそうですか?』

「え?さがしてないよ」

 

 当たり前じゃんな口調で素っ気なく言われると、頭にタライが落ちたような衝撃だ。

 

 防犯ロックのトリックの仕掛けを1902号室で試しているのを横で見ながらのそんな話だった。

 

 なんてこと言うんだ。もっとこう……知り合いの無実の証拠なんて、ボロボロになるまで、証拠を探してくれるものなんじゃないのか。こんな、こんな……

 

「だって、初回で襲われた人で、3回目の『闇の男爵』の時にはアリバイがあるだろ」

『その3回目は共犯者かもしれないじゃないですか』

「……共犯者?」

 

 その発想は無かった、みたいな顔だ。嘘でしょ名探偵。

 

 会話か作業音かで、気付いた蘭ちゃんが中から顔を覗かせるので、トリックの説明がてら実行。

 そして無事、このトリックで可能、という事が証明された。

 椅子を戻す新一くんは、取って返してまた部屋を出る。

 トリックを刑事さんの前でやって見せようという魂胆らしい。

 

 いい加減、深夜とも言える時間になってきたので、新一くんを止めようとする蘭ちゃんに、『見ておきますので』と苦笑とメモを見せる。

 さっきからこのメモのページ、開きっぱなしなのである。

 

 

 ■

 

 

 

 結局、決め手はこの地域特有の強風、『姫風』なるものにより、部屋の位置と時間の問題は解け、真犯人は割り出せた。

 

 佐山さんである。

 

 私の大体の予想は当たってたし、動機もほとんど合ってはいた。

 ……上条さんじゃないけど、悪質なハッカーは本気で滅して良いと思う。

 やっぱり熱暴走ポップアップに【よしやれ】ボタン再実装すべきではなかろうか。

 

 

 何はともあれ。

 一件落着……なのだけれど。

 

 

 でも、なんか釈然としない。

 

 前田さんの無実の証拠を、必死に探していた蘭ちゃん。

 …………一方で私。なんか……「まー、コイツそんなしないでしょ~」くらいの緩さで適当な捜査を……私1人ずっと焦って慌てて心配していて……

 

 な、なんか釈然としない!

 

 おかしいだろ!前田さんが、佐山さんの知らない間に勝手に共犯者やらなかったら、私が最後まで容疑者だったのに!

 

 

 事件翌日の、結局宿代は私が半額の全額負担した帰りの車内で、憤慨する私に慰めの言葉をかけてくれるのは蘭ちゃんだけである。

 

 わかる、わかるぞ。人を見る目が無い私でもわかる。

 

 全員「うわめんどくさ……」って思ってるだろう!面倒くさい私ですみませんね!

 

「でも……スバルさん、…………1回目の『闇の男爵』に襲われてる時点で、たぶん……みんな、なんとなくちがうのは……わかってたから……」

 新一くんは夜更かしから来るおねむと奮闘中だ!子供か!……子供だね!

 

「そうそう、阿笠博士の作ってくれた物を壊してまで、そんなことする人じゃないって私たち思ってたし、きっとあの時、他の人たちもそう思ったんだと思いますよ!」

 うそだよ蘭ちゃん、あの時、他の人たちに「わざと落ちたんじゃない?」って言われて私は……

 あれ、あの時それ言い出したの佐山さんだな。……最初から噛み付かれてたわ。

 

「そもそも、オメー……泳げねーんだろーがパソコン小僧。ったく、ゲームばっかやってんなよ~」

 小五郎さんが面倒くさそうな顔を隠しもせずに言い放つ。お、泳げるよ……この身で泳いだこと無いけど……

 

 三者三様、慰めてくれてるのはわかるんだが……この……なんだ

 

 なんか私への信頼なのか、それとも適当なのかわからない、この微妙な投げっぱなし感はなんだい新一くん!

 どちらかといえば適当にあしらわれてるよね新一くん!!

 

 

「『なんかはぐらかされてる気がしますね。あと寝てていいですよコナンくん。』」

 

「へっ」「えっ」

「……オイ、それどうやってんだ?」

 

 小五郎さんの恐る恐る聞いてくる声。

 

「『音声入力した文章を合成音声で読み上げさせています。運転中に手も目も離せないので』」

 

 PC使えたらこれくらい楽勝楽勝。

 ワイヤレスイヤホンマイクを皆から見えない右耳に着けておいたのさ。

 

 ルームミラー越しに後ろを見ると、小五郎さんも蘭ちゃんもビックリ顔だ。

 助手席のコナンくんは眠気が吹き飛んだらしい。足元に置かせてもらっていた、私のノートPCをマジマジと見ている。

 

 機械音声がどこからともなく聴こえてくる様子を、「車が喋ってるみたい」だなんて蘭ちゃんの新しい発想は面白いので採用。

 今度誰かに悪ふざけでやってみようかな。有希子さんあたり喜んでくれそうだ。

 

「お前……それで話してれば良かったんじゃねーか」

「『こんなの どう考えても不審者でしょう。それにこんな事してたら主催とかではなく本物のナイトバロンの製作者の疑いがかけられてしまいそうで。』」

「…………ちがうの?」

「『ちがいます。』」

 

 少なくとも、『闇の男爵』を作った覚えは無いですね。

 昨日ずっと疑わしそうな目してたのはそういう事か名探偵。

 

 阿笠博士という超科学(ファンタジー)者がいるおかげで、この3人の前では文明の利器がバンバン使えて楽で良いわぁ。

 私の記憶じゃ、技術はここまで来てたはずの物が軒並み全部逆行しただけなんだけども。

 

 なんで私の周りだけ残ってんの?怖……

 

「(つーかオメー、そういうコンピューターウイルスとか、作れんじゃねーのか?)」

 

 隣の新一くんが、小声で囁いてくる。返事出来ない時にそういうこと聞くのやめなさい。

 

 作ろうと思えば作れるけど。

 

 ……てか作ったことあるけど。

 

 …………使ったこともあるけど。

 

 

 おうおう、ジト目はやめなさいな新一くん。

 そんなの教えるわけないだろ。

 

 ハー、骨折り損のくたびれもうけ!(投げやり)

 強いて言うなら上条さんと金城さんと仲良くなれたので儲け儲け!(やけくそ)

 

 ジャンジャンバリバリ!!(自暴自棄)

 

 





本人のイメージでは、株でお金を稼いで大学院生やってる人、らしいです。


閲覧ありがとうございました!
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