昴くんはなにもしない   作:あまも

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読み返されると……修正間に合ってないところもありますので……なんか「ん?」みたいなのあったら教えていただけたら嬉しいです
自分で書いてて解釈違いしてる事もある
誰だこんなこと書いたやつ!!!()

というわけで少しだけ変わってます!

主人公の勝手な想像が大いにある話かもしれません

誤字脱字報告、いつもありがとうございます!すいません!
閲覧ありがとうございます!


57-2:雷の声は未だ無く

 

 

 

 

 

 物は試し。

 ポアロの一角を借りて、本堂くんとお茶しながら信頼度測ってみようかなと。

 

 

 これでもしも渋られたら、現在放課後の公園で少年探偵団と共にサッカーに興じて遊んでる高校生……毛利小五郎のヤホー知恵袋攫ってきて隣に座らせるしかあるまい。

 

 

 

 本堂瑛祐に、再三聞いてきた、『何故水無怜奈を姉とは別人だ』と認識したのかを、三度目の正直で聞いてみた。

 

 

 そうしたら、なんとまぁ、こんなすんなり?くらいのすんなりさで答えてくれちゃって。

 

 これまでの私の苦労はなんだったのかしら。

 江戸川コナンくんちゃんさんの保証パワー、すごいッスね。

 

 今度から首に保証書でも引っ提げて歩こうかね。多少私の胡散臭さがマシになるやもしれん。

 

 

 …………それはそれで胡散臭い?うーん。

 

 

 

 

 本堂くん曰く。

 

 

「血液型、ですか」

「はい。あの女……彼女が人気アナウンサーとして有名になったキッカケになった生放送があって、そこで報道中の彼女が、自分から輸血に名乗り出たんです。その血液型が、姉さんのものと違うんですよ」

「記憶違い、とかでもなく」

「はい。姉さんは、昔大事故で輸血が必要になった僕に、自分も倒れかけるくらい血を分けてくれたんです。だから、“僕と同じO型”のはずなんです」

 

 本人は実に真っ直ぐな目だった。

 

 自分がO型、だからその姉も、O型のはず。

 絶対不変の変わらぬ真実。

 だからこそ、水無怜奈は姉ではない、絶対的な理由と断定出来ると、何も疑うことなく信じているその目。

 

 

 はいはいはい。

 なるほどねぇ。

 

「もし成り代わっているのだとすれば、そういった"設定"も本来の人間に合わせてくるのでは?」

「それは……あの女が有名になったキッカケで、かなり初期の頃の生放送なんです。だから、あの女も咄嗟に、偽善者ぶることだけ意識してたから、うっかりしてたんだと思って……」

 

 些細な理由は勝手に若干のヘイト加えて整合性をとる、と。

 もうちょっと考えたり、疑ってみたりしてみるべきところを、思い込みで思考止まっちゃったか。

 

 

 なるほどねぇ。

 

 ……ノアズ・アーク?

 

 

『うん。血液型は基本的には変わらない……けど、稀に特殊な理由から、変わったり、変更になることはあるよ』

 

 ……私もあまり、そういった医学的な難しい話は詳しくない。

 大学で『じんたいのふしぎ』兼ねたそっち方面を担当してたのはヒロキくんとノアズ・アークなのだ。

 メンデルの法則とかABだのOだの…お勉強モードじゃなきゃ話聞けないからな。

 

 今の私は……優しいお兄さんだぞ!難しい話はわかりません!

 

 DNA探査プログラムも取り込んでるノアズ・アークくんなら、そんな頭の弱いお兄さんにもわかる解説してくれるはず。

 カンペになってもらおうか。

 さーて、3つ、3つ……

 

「本堂くん。3つ、です」

「3つ?」

「はい。血液型が違う、というケース。

 ︎︎君のパターンで、可能性を考えてみましょう」

 

 私は、何を言われるのかと背を丸めた彼の、コーヒーを持つ手をそっと握りこんだ。

 驚いて顔を上げた彼の瞳を、逃がさないよう真っ直ぐに見つめる。

 

 おう、逃げずに聞けや。

 

 真面目な話は目を見て話せって言うもんね。目も開けてあげよう。

 ……窓際の席にしたから、西日が眩しい。

 

 ……耳に吹き込まれるノアズ・アークの説明聞いてたら、別に難しい話じゃなさそうだなこれ。

 私でもわかる! 昔見た!

 ︎︎

 

 

「聞いてください。

 ︎︎可能性は、大きく分けて3つあります」

 

 細かいことはあるかもしれんが、これまでこちらで調べた結果からすると…ね。

 

「1つ目は、特殊な疾患による変質。

 ︎︎極めて稀な例ですが、特定の病気によって赤血球の性質が変化し、検査結果が一時的に書き換わってしまう現象が存在します。ですが、これらはあくまで一時的な混乱に過ぎません。以前窺った君の言葉通り、よくうっかりの怪我で病院のお世話になっていたならばこれは無いでしょう」

 

 本堂くんが、ホッと息をついた。

 

 自分の意見が肯定された。

 だからこそ、少しばかり気を抜いたんだね?

 

 彼の手に込める力を少しだけ強め、安心させるように。

 

「2つ目は、出生時の誤判定。

 新生児の血液検査は精度が不安定なことがあり、成長してから本当の型が判明するのは、それほど珍しい話ではありません。君が覚えている『O型』という情報自体が、最初のボタンの掛け違いだったという仮説です」

 

「それは……ありえません。だって、僕は昔から怪我ばかりしてて、大怪我してしまった時なんて、姉さんから血をわけてもらったんです。だから、血液型が間違ってるなんてことは有り得ません!……出生届の通りに、間違いなく、O型の姉からO型の僕に、輸血されてるはずです。……そ、そうです!出生時の母子手帳が母の昔の職場にあります!それなら……」

 

 ほほう。

 

 ……その怪我をした時期は?って話。

 ︎︎ま。それは一旦置いとこうか。

 こちとら本題の話を聞いて欲しいのである。

 ……まったく、こういう人の顔色だの内面見るだの、苦手だってのにさ。

 私は探偵じゃないのだよ!

 

「そうですか。……出生時の記録はあまり当てにならないと、ご理解いただけますか?

 ……そして、私が考える限りでの最も現実的で、かつ重い意味を持つ3つ目。…………それは、骨髄移植による変化です」

 

 困惑に揺れた彼の視線を、眩しくてまた閉じかけた目を開けて、真正面で繋ぎ止めたまま、私は努めて穏やかな声で説く。

 

 彼の手を握る力を少しだけ強め、私は声音を一段と落として。

 ……慎重に。

 

 

「ええ、最も留意すべき3つ目。……白血病などによる骨髄移植に伴う変化」

 

 

 記録はとっくに調べてある。

 この3つ目こそが、辛かろうし辛かったろうが、事実で間違いない。

 何一つ隠蔽も工作もされていない、真っさらな証拠として、ドナー登録と、施術記録は残っていた。

 

 いやまぁ、それをどうやって手に入れたのかって言われたらあむぴが3日くらいで『どうとでもなるはずだ』してくれちゃったんですけど……

 

 ……知らん間に勝手に身体弄られてたとか、嫌な話だよね。

 なんで誰も教えてくれなかったのやら。

 

 

「“もしも(・・・)”……君が幼い頃、重く、苦しい病を患い、哀れに思った“適合するはずの誰か”から骨髄を分けてもらっていたとしたら、話は全く変わってきますよ。前提が全て変わります。

 血液を作る工場そのものが、ドナーのものに入れ替わるため、君自身の血液型は、ドナーの型へと完全に書き換えられるのですから」

 

 絶句する彼の瞳を見つめたまま、私は穏やかに、けれど確信を持って。

 

「たとえ生まれた時がO型だったとしても、移植を受けた後の血液がA型や“AB型に”変わることは、医学的に見て十分に起こり得る事例です」

 

 特殊……あまりにも特殊な、事例だけどね。

 ただ、本堂くんがそのお姉ちゃんから血を分けてもらった大事故の以降、輸血が必要な程の大怪我してないってのは良い事だろう。

 

 輸血前は必ず、例え自己申告があったとしても、万が一の為に血液検査はしてるだろうからね。

 

 

 ねっ!いつぞやの蘭ちゃん!!!!

 ダメだぞぉ、思い込みで突き進んだら!

 

 

 眩しくて限界なので、私は目を閉じた。

 まだ目の中で緑とも赤ともつかないモヤが暗闇を焼いている。

 まぶし……

 

 もう一度開けて本堂くんを見るが、緑の陰に隠れて顔が見えない。

 まぁ、聞いてくれてるはず、と信じよう。

 

「本堂くん。君が信じている『自分と同じO型のはずの姉』という記憶。

 それは、君を救うために、自らの血を分け与えた、彼女の献身の証明だったのかもしれない。……そうは考えられませんか?

 何か、心当たりはありませんか?幼い頃、良く頻繁に、病院に行っていたとか……怪我のついでに、何らかの検査をしていた、とか」

「あ……」

 

 ︎︎は、と目を見開いた本堂くん。

 おや、ありそうなの?

 覚えてたなら話は早いんだがな。

 

「たとえば……転んだ拍子に打った場所とは別に、腰のあたりに鋭い痛みを感じるような、特殊な検査を受けた記憶はありませんか?」

 

 小さな子供の頃の大病のことなんて、覚えていたくない辛いことも多かろう。

 ……言っといてなんだが、痛い記憶なんて覚えてられたら困るな。

 かわいそうになってしまう。

 

「他には……そうだな、君の胸元に、かつて小さなチューブや装置を埋め込んでいたような跡や、何かを確かめたかのような跡はありませんか?」

 

 身体の中心、脊椎を前からなぞるように、自分の胴体を上からなぞってみる。

 本堂くんは確か……骨髄穿刺は胸骨で行ってたはず。

 胴体の真ん中、臍の上……みぞおちあたりを指さしてみる。

 

「……っ」

 

 ……息を飲む様子を見るに、物理的な心当たりはあるようだ。

 うんうん。いいね、納得する事があると説が補強されるだろう。

 

「病室の窓越しにしか、お姉さんと触れ合えない時期はありませんでしたか?

 透明な壁に遮られた、静かすぎる部屋とか。

 ︎︎…………いえ、これは大事故の記憶とダブりますかね。忘れてください」

 

 無菌室やら集中治療室やら、もし覚えてたら思い出させるのはかわいそうだろう。

 あんな、何をするにも不自由でしかない部屋。

 

「……思い出してみてください。怪我の手当てにしては、少しばかり物々しすぎる処置は記憶にありませんか?」

 

「……ハッキリ、とは……ありませんが……」

 

 自分自身の記憶は曖昧らしい。

 けれど、ちゃんと謎の傷跡は残ってるようで、自らの胸の真ん中をさすっている。

 

 ヨシヨシ。

 難しいかとも思ったが、なんだ、ちゃんと話を聞いてくれたじゃないか。

 

 江戸川様パワーかな!!

 

 

 

 

 

 

 マスターが持ってきてくれたおかわりのコーヒーに、角砂糖を4個落として崩しながら、考え込む様子の本堂くんを眺める。

 ︎︎今日はマスターだけの出勤日だからこんな話をしている。

 ︎︎マスターは口が堅い人だからな。

 ︎︎いや、梓さんが口が軽いとかいう意図ではなくて……零くんも今日みたいな日は“別の仕事”らしいし。

 

 あまりひとりで考えるのは良くないが、今の彼はこれまでの自分の唯一絶対の理論が崩れかねない話をされて、ビックリしちゃっただけだもんね。

 

 

「自分の体を信じられないのなら、一度、駅前の献血ルームを訪ねてみてはどうですか。

 もちろん、お菓子やジュースが目的でも構いません。年齢制限もありますし、量は取れませんが……せっかくだから蘭ちゃんや園子さんも誘って、健康診断みたいな気分で、気軽にね。

 ︎︎……君の体に流れる『絆』の正体を、正確に証明してくれるはずですよ」

 

 希望があれば、直接『杯戸中央病院』で検査の予約入れてあげようか?

 

 今から行っても、夕飯前には真相がわかるだろう。

 

 なんなら医大でも行って精密検査でもしてみる?

 

 ︎︎……献血ルームの身近で公的な場所で「断られる」経験は、あの彼には何よりの証明だろうと思うんだが。

 

 

 なんにせよ……彼が今日までこうして、お姉さんを捜し歩いて、はるばる東都までひとりで来られるほどの元気な体でいられる事実が、それ自体が、その日、苦しい苦難を乗り越えた証なのでは?ってね。

 

 文字通りの『血を分けたきょうだい』が、昔も、そして今も、形は違えど本堂くんの健やかな生活を守り続けてくれている。

 

 

 

 そこは、事実のはずなのだ。

 

 ちゃんと向き合ってほしいね。

 

 

 

 ■

 

 

 

 そろそろ私の限界が近いので、阿笠さんの研究室から空砲など持ち出したりと朝から荷支度してたら灰原さんに見つかってしまった。

 

「……物騒ね」

「ただの空砲ですよ」

 

 空砲といえば蛍の森の前で会った赤い車の赤井さん。

 今回はちゃんと分かりやすく空砲だもの!

 この通り、箱にデカデカと『空砲』って、書いてるからな!

 

「出掛けるのかしら」

「ええ。山へ芝刈りに」

 

 

 川で洗濯してくれる灰原さんがおられるからね、安心して研究所を離れられるなと思って言ったら膝裏殴られた。

 ひ、膝?!

 

「いって……」

「で、何しにどこへ?」

「え、い、いや普通にリフレッシュしに山へ……」

「何しに、どこへ??」

 

 

 最近みんなして、私に2度聞き返してくるんだが…答えてる途中でしょ!

 

「えー、と。……川で遊んでせせらぎ聴きながら山の空気を楽しみに、群馬の山奥までひとりで行ってきます」

「…………この時期に?」

 

 

 春じゃん。

 ついでに時期は遅いが蕨やぜんまいとか山葵採ってこようかなとも思ってたかも。

 あ、いや、初夏だっけ?ん?

 新一くんたちが花見行ったし、春……春だよな?

 

 

「いつなんどき、組織に動きがあるかわからない、しかも“あの彼”がどう行動するかもわからないのに、今?」

「むしろ今しかないんですよ」

 

 本堂くんは献血行ってみるそうで、献血のお姉さんたちに色々聞いてみるつもりらしい。

 ︎︎そこから、病院へのツテや紹介が貰えたら、そっちに調べに行くつもりかな。

 

 直接病院で検査ではなく、献血ルートなら、問診での「断られる」場合の説明を貰ったら、私の疑念の話で不審がって、ちゃんと係の人に聞いてくれるだろう。全然関係ない人に「移植経験」を説明されたら、彼だっていよいよ認めたくなるんじゃなかろうか。

 本人が「誤解かもしれない」可能性を考えて、確認しようと動き出したなら、その最中に事が動き出すことはない……はず……と信じてるけど………………うーん。

 あと零くんも、クリスさんに探り入れに行ってるみたいだから、組織の方もまだ猶予はあるだろう。

 

 

「だからこその今ってわけです」

「ひとりでコソコソ用意してたのは?」

「いやぁ……この通り、何かしら言われるやもとは思ってまして……」

「後ろめたさはあったのね」

 

 

 おっしゃる通りにございます……

 

 みんな忙しくしてる最中だ。

 新一くんや毛利探偵御一行は、花見ついでに呼びに来た服部くんたちと、件の『探偵甲子園』なるものに行くらしいし。

 

 

 

 灰原さんの視線は冷たい。それはもうとっても。

 

 

 

 でもねぇ。

 

「私もひとりでリフレッシュしないと、そろそろまずいので」

「“まずい”?」

「パンクしてしまうので」

 

 灰原さんがピンと来ないようで、きょと、と首を傾げている。

 

 

 まぁ……色々と?

 

 この後また、動けなくなるタイミングが悪い時に重なると、いよいよ“まずい”からね。

 

 

 

 

 ■

 

 

 都会の喧騒を離れ、静かに流れる水の流れる音と、木々の揺れるザワザワとした風の音。

 散らした石の苔臭さと土の臭いの中に、ぽかりと、キツイミントの匂い。

 

 

 春の群馬、その山奥にある渓流に、私はひとりで立っていた。

 

 

 脛まで水に浸かり、まだまだ痛いくらい冷たい水が長靴を透かして冷ややかに足元から熱を奪っていく。

 じわじわと伝わってくる感覚は、少しばかりあったまっていた脳を冷やすには丁度いい塩梅。

 

 手にした竿の先、透明な水面を流れていくウキを見つめながら、考えるのは大きなメガネ。

 

 本堂瑛祐。

 

 彼が信じていた『血液型』という名の絶対的な“誤解”は、彼を救った姉の献身がひっくり返してしまうはずだ。

 自分がO型であり、ならばその自分に血を分けてくれた姉もまたO型であるはずだという盲信。

 それは、幼い彼が病魔と戦い、自分の一部を他者のもの……実の姉の骨髄へと書き換えられた、なんて過酷な記憶を、脳も、周りの人達も一緒になって封じ込めていた結果の誤解だったのかな、などと。

 

 ウキが岩の影へと滑り込む。

 水の中に魚影がチラチラと見える。

 こっちから見えてるなら、あっちからだって見えている。

 

 私はただの、新しく生えた木ですよ〜っと。

 

 ……魚が餌を追うように、彼もまた、自分が『信じたい』真実だけを追ってここまで走ってきたわけだ。

 

 私があの場で可能性を言わなかったなら、彼は自分を救った姉の面影を『偽善者の成りすまし』として憎み続けて、ひとりで突撃していたかもしれない。

 それはそれで、彼女が目覚めるキッカケになるかもしれないが。

 

 ……酷な話だよ。

 自分を救った奇跡が、自分を苦しめる呪いになっていた、なんてさ。

 

 

 水ポチャしたら悲しいので、機器類は今だけ水辺にウエストポーチごとまとめて置いてある。

 だから、今だけは、ノアズ・アークも近くにはいない。

 ︎︎いつもならノアズ・アークくらいならいてもいいけど、今日この時くらいはね。

 ︎︎…………ちょっと怖いの見ちゃったし。

 

 

 

 

 

 

 …………たまにこうして、何も無い時間がないと、私は息が詰まってしまう。

 

 

 無性にどこかに行きたくて仕方なくなる。

 

 

 ……昔はこれでよく、阿笠さんや景光くんたちを困らせてしまった。

 

 外に出たい。どこかにいきたい。光が暖かいところに行きたい。

 でも、誰の目にも留まりたくない。

 放っておいてほしい。構わないでほしい。

 

 でもどうか、見捨てないで欲しい。

 

 

 

 クソガキである。

 

 あの頃の私は、スカした大人ぶって、実際はなんも出来ないメンヘラクソガキとかいう、本当にクソめんどくさいガキであった。

 ぶっちゃけ今もじゃない?正論やめろください。

 

 阿笠さんや工藤氏たちは、よくもまぁ見放さずに、居場所を提供してくれたものである。

 つくづく頭が上がらない。

 

 ……目を離してくれる大人、なんてそんな酷い人はあそこにはいなかった。

 そんな、フラフラポヤポヤしてる自己陶酔でもしてんのかみたいなクソガキを、放っておかずに……いいや、私でなくとも、子供から目を離せるほど、無責任な大人が、周りに居なかった。

 工藤氏は常になんでも見透かしてきて、どこへ行こうが自宅から1歩も動かずに居所を見つけてしまうし、景光くんや零くんなんかは私が逃げることを許してはくれなかった。

 ……帰ればいつも阿笠さんは出迎えてくれた。

 

 

 みんなまとめて、心配から来る紛うことなき“善意”なのだとわかっていても、当時の私には息苦しくてねぇ。

 めんどくさいクソガキがよ。

 

 一人暮らしを始めてからは、あのひとりっきりの事故物件アパートだの、こうしてひとりでフラッとお出かけだのしてもなんも言われなくなったから、随分マシになったが……

 

 最近怪我やら引っ越しやら怪我やら“お酒”やら、全然『ひとりの時間』ってのが無くて……いやぁもう本当に。

 挙句、近々の予定が盛り沢山。ノアズ・アークとヒロキくんのコクーンテストプレイまで追加された。

 

 

 危うく発狂して逃げ出す寸前だったもんでさ。

 

 

 ぽか、と、ミントの匂い。

 

 

 これ、景光くんたちといる時に彼らに匂いつけるわけにはいかないから、1人にならんと使えなくてさ。

 久々で沁みることしみること。

 おいしおいしね。

 

 ︎︎ペパーミントの香りを肺いっぱいに吸い込む。

 ︎︎溜めた息ごと、長く吐き出す。

 ︎︎水中の魚には、きっとこの匂いは届かないはずだ。

 

 

 ……人付き合いが本当に苦手なのに、最近はもっぱら本堂くん専任だったから、尚更ここのところはキツくてね。

 

 少しの時間でも、人から離れて、自分だけの『なにもしない』時間が必要なのである。

 

「次来れるのはいつですかねぇ」

 

 独り言は、瀬音にかき消されて誰の耳にも届かない。

 ……失礼、水辺のノアズ・アークが聞いてたか。

 

 

 水無怜奈。

 もとい、本堂瑛海。

 愛して護り、慈しんだ実の弟に恨まれ、実の父をその手にかけ、あちらこちらから正体を疑われながらも、沈黙を守り通して牙を研ぐ。

 聞く限りでは、恐らく組織へ潜り込んでるCIAの人員は彼女だけ。

 ……その孤独は、おそらく零くんや赤井さんにも計り知れないものがあるはず。

 もしかしたら、景光くんはわかるのかもね。

 

 

 ふと、竿先に確かな手応え。

 沈んだウキに、アワセて竿をはね上げる。

 

 キラリと鱗を輝かせて跳ねたのは、小ぶりな岩魚。

 丁寧に引き寄せ、慎重に針を外して再び流れへと戻してやった。

 ︎︎これは、まだまだ小さいからなぁ。

 

 

「引っかけてしまってわるかった。デカくなったらまた来てくれよ」

 

 次は阿笠さんへのお土産サイズになって帰ってきてくれたまえよ。

 それまでは達者で暮らすがいいさ。

 

 

 

 本堂くんは今頃、小五郎さんや蘭ちゃんに置いてかれたからと、園子さんと一緒に、献血ルームの椅子に座って、自分の体に流れる『真実』と向き合っているんだろうか。

 ︎︎誘われたが、私の血なんて使えるものだかわからんし。

 

 

 しばらくの後に届く結果は、彼と周りをどう動かすんだろうか。

 

 

 

 …………姉のための勇気かな。

 

 ここからどうなるのやら。

 

 私には、『赤井秀一は死ぬ』ことしかわからない。

 無事に“死ねる”んだろうか。

 

 ……どう、“死ぬ”んだろうか。

 

 

 遠目に、木々の隙間に見えたキビタキが、黄色い身体をちょこちょこと動かしてるのが見える。

 ︎︎この頃にはまだ早いはずだが、気の早いやつがいたもんだ。……冬の間に痩せた体を太らせようと、頑張って飛んできたんかね。

 

 あいつらわりとどこでもいるからな。

 

 

 

 私は再び、毛針を水面に落とした。

 春の陽光が、水面に弾けて乱反射し、まぶしくて少しだけ目を閉じる。

 

 いやー……本当に、まぶしい。

 開けてらんない。

 

 

 …………けれど、あのポアロの西日よりは、幾分か清々しいな。

 

 

 っぱ、ひとりは最高やな!

 

 

 





初期のもそうですが、描写が気合い入ってるのは初期の頃に断片的に書くだけ書いて満足して「どこで入れんだこれ」になっていた話を流用してます

もっとアホっぽいはずなんですが

読んでいただきありがとうございました!





ちなみに禁煙パイポです。
隠れすぎてただの1度も出せなかった設定ですね。
ゴミは持ち帰りましょう!
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