昴くんはなにもしない   作:あまも

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中々かなりお待たせいたしまして……申し訳なく……

だいぶ悩みましたが別に隠したところで意味もないのでオープンに行くことにしました。
隠しごとなんてよくないですもんね

皮膚移植は盲点でした……感謝!!

ちょこちょこニュアンス変わってるところが増えてます

閲覧ありがとうございます!


57-3:川魚とミントの人

 

 

 

 

 

 「ただいま戻りましたー!見てください阿笠さん、大漁ですよ大漁!」

 

 玄関を開けるなり、私はなるたけ声を弾ませてリビングへと踏み込んだ。

 

 背負ったクーラーボックスからは、がらりと鳴る音。

 保全組合のおじさんに釣果を見せたら、持ち帰り用にと快くわけてくれた氷と一緒に、二十センチを優に超える立派なイワナと、それより僅かに小さいイワナ、そして薄ピンクのかわいいヤマメが二匹、横たわっている。

 

 だが、出迎えた二人の空気は、私の期待していた「おお、すごい!」という歓声とは程遠いものだった。

 

「……おかえり。山男さん」

「あ、ああ、昴くん。……無事で、何よりじゃ」

 

 ソファで腕を組む灰原さんは、さながら逃亡犯を追い詰めた敏腕刑事のような眼光。

 隣の博士は、なぜかいたたまれない顔で、湯呑みを握りしめている。

 

「……おや?何か変なものでも見ましたか?顔色が優れませんよ」

「変なものを見せられたのよこっちは……説明してくれるかしら?」

 

 灰原さんが指差したのは、私が地下の研究室横の倉庫に、空砲持ってく代わりに詰めてきたもの。

 車に乗っけていた実包。

 携帯用ケースごと置いてたから、中身確認してくれちゃったのか。

 

 いやぁ…帰ったらロッカーに入れるつもりでぇ…や、本当は即座に入れないとなんですけどぉ…

内緒にしといて欲しいのねん!

 

「というかそもそもなんで猟でもないのに銃積んでたのかしら」

 

「あははは、いやだなあ灰原さん、物騒な想像は禁止ですよ。あれはあくまで熊よけ、あるいは万が一道に迷った時の合図用としての『念のため』ですから。

 ほら、群馬の山は深いですし。もちろん、猟銃等所持許可証も、火薬類の譲受許可も……あ、いや。

 ………………これについては阿笠さんの研究室の正当な実験用の備品を一時的に拝借しただけですので、法的にはクリーン!ホワイト!真っ白ですから!」

 

 朝急いでたからなぁ。

 私はキッチンへ移動しながら、突っ込まれる前に言葉で押し流してみた。

 灰原さんたら、目が怖いのだわ!

 

「それから、この魚だって密漁なんて疑わないでくださいね。私はちゃんと遊漁券、しかも奮発して年パスを持ってますから!川の管理人のおじさんとも、以前に真空管の修理を手伝って以来の顔馴染みでしてね。アッキーの村おこしも結構頑張ってて、他のお客さんもちらほら居る中で私とみるやいなやあの熊みたいな顔でノシノシ寄ってくるんですからまったく……」

 

 髭面のおっさんがにこにこしても怖いだけかと思いきやこれが意外と可愛い。ギャップってやつかね。

 まな板の上に、見事なイワナとヤマメを並べる。

 

 

「見てください、この魚体の張り。やはり春の渓流魚は塩焼きに限りますね。

 博士、お腹空いてるでしょう? 今すぐ捌きますからね」

 

 実はもっと釣れてたのだが、管理事務所前でU字溝に管理人さんの持ち込んだ炭突っ込んで何匹か食ってきちゃったのである。

 何人かいた他のお客さんも持ち寄ってきてちょっとしたお昼パーリーしてきたのさ。

 

 釣りたてのヤマメはうめぇのよ…

 

「……ねえ博士。この人、あんなに深刻な顔で『自分探し』に行ってたはずなのに、なんであんなに元気なのよ」

「いや……あー……。まあ、あの子は昔から、発散しきると急に社交的になるというか、変なスイッチが入るんじゃよ……」

 

 背後でボソボソと交わされる密談など知らぬ、知らーぬ!

 可愛い女の子2人組のお客さんから貰った山塩で焼いたらめっちゃ美味かったから、阿笠さんと灰原さんにも食べさせてやるからな!

 ヤマメのぬめりを取り、内臓を抜いていく。グロめ!

 

「そうそう、山奥でキビタキを見かけたんですよ。まだ時期が早い気がしたんですが、あいつも私と同じで、美味しい空気が吸いたかったんでしょうねえ。あ、灰原さん、そんなにジロジロ見なくても大丈夫ですよ。私は別に、自分が不安定だから行ったのではなく、この先を見越して今のうちに行ってきておいただけですから。出発前も精神的にはまったくもって元気だったんですからね。

 嘘じゃないですよ、ほら見て!私の目は今、曇りなき(まなこ)で君を見ています!」

「細くて見えないわよ」

 

 実際は、帰り道も反射光やらで眩しい西日に目がやられてて若干ドライアイ気味。

 やっぱり真面目なんて取り繕うもんじゃないね!

 

「……はい、博士!串を打つの手伝ってください。手は洗ってきてくださいね!灰原さんは、このカボスを切っておいて。

 ほら、手が止まってますよ!新鮮なうちに焼かないと、魚にもおじさんにも失礼です!」

「誰よおじさん」

 

 

 キッチンに充満する、川魚特有の清々しい匂い。

 ミントで整った私の鼻には、酒の匂いなどよりこちらのがよっぽど良い匂いに感じるね。

 酒なんて…酒なんて!!

 正直、酒はマジで予定外過ぎて色々狂ってしまったんだけど……まぁまぁ。

 クリスさんのちょっとした悪戯だよね。

 

 

「……博士」

「なんじゃ、哀くん」

「この男、山男じゃなくて釣キチなの?」

 

 失礼な。

 私は実は釣りは苦手だぞ!

 とくに海釣りとか、いつ背後から突き落とされて転落するか、わかったもんじゃないからね!

 

 別に夏の海の日差しとか遮るものがないからとか潮風がべたべたしてやだとか干潮満潮で帰れなくなったら嫌だとか、そんなことは、そんなことは全然ないからね!

 

 

 

 

 じゅうじゅうと火の上で脂を弾かせるイワナを眺めながら、ついつい笑みが抑えきれずににやけてしまって、灰原さんにまたもや引かれてしまった。

 

 だってぇ……

 これにて、私の鼻は、クリスさんに飲まされた酒の残り香も、ノアズ・アークに見られた恥ずかしいログの気まずさも、全部この「香ばしい塩焼きの匂い」で上書き完了!なのである。

 ミントの匂いもさっぱり解決。

 

「さあさあ、焼けましたよ!春の恵みを召し上がれ!」

 

 私は満面の笑みで、皿をテーブルへと運んだ。

 ……だから引くなって。

 なんも入れてないよ?山塩美味しいよ?

 

 

 

 ■

 

 

 

 香ばしい煙がリビングを満たし、絶妙な塩加減で焼き上がったイワナとヤマメがテーブルに並ぶ。

 みんな食べないだろう頭を貰って味見したので、味は間違いなし!私の舌が間違えてる説?……うーん?いやいや。

 

 先ほどまでの空気はどこへやら、博士は「これは美味そうじゃ!」と箸を伸ばし、灰原さんも毒づきながらもしっかりとヤマメの身を解している。

 

「……で。結局のところ、どうなのよ」

 

 カボスを絞り、身の詰まったヤマメを口に運んだ灰原さんが、不意に顔を上げた。

 ご飯にワンバウンドでヤマメの旨みがついた塩をご飯に残す流石は合理的な配分……っと、どう?

 

「『どう』、とは?」

「江戸川くんから聞いたわ。あなたが昔から、時々ふらっと消えてなくなってしまうことがあるって。今回の山行きも、その……“自分を保つための家出”だったんじゃないの?」

 

 私は箸を止め、少しだけ首を傾げた。

 

「おや。新一くん、そんなことを?……まあ、否定はしませんよ。正直、ここ最近は少しばかり予定が立て込んで、頭の中がパンク寸前だったのは確かですから」

 

 話しながら、自分の分のイワナを一口頬張る。

 白身の淡白な甘みと、優しい味わいの山塩。美味しいご飯をかっこむ。

 今の私には何よりの特効薬だ。

 

「…………でも、見ての通りですよ。群馬の冷たい水に足を突っ込んで、気の早いキビタキに声掛けて、管理人のおじさんと魚食べて……。そうしているうちに、なんだかどうでも良くなりましてね

 中身がどうなっていようが、今はこうして釣ってきた美味しい魚を食べてくれる家族がいる。それだけで十分、お釣りが出ますから」

 

 つとめて、柔らかく見えるように二人に笑いかける。阿笠さんにはもちろんだが、灰原さんにだって感謝してるのだ。

 

「リフレッシュは完了しています。おかげさまで、今の私はフルチャージです」

 

「……そ。せいぜい、次のパンクまでに少しは“タンク”でも作っておくことね」

 

「意外と最近はパンクしてないんですよ?これでも」

「いつものは?」

「あれはただの肩こりと寝不足ですね」

「寝なさいよ」

「灰原さんが言いますか」

「………………」

 

 引き分け!!

 

 

 

「というか、昴君。予定が結構立て込んでたのは事実じゃろう」

「ああ、例の彼から伝言よ。『ダメだったので、園子さんと一緒に、毛利探偵達が戻ってきたら調べてみます』だって」

「ぇぇーへへぁ…」

 

 阿笠さんから心配そうな目をされているし、灰原さんの言う『例の彼』ってのは本堂くんだろう。

 

 調べるかなとは思っていたが、まだ調べる気があるのか本堂くん……

 

 

「…………ところで、“立て込んでる”って、何かしら」

 

「あれ、灰原さんに教えてませんでしたっけ」

 

 

 阿笠さんには伝えていたが、そういやあれ昼だったから灰原さんは学校行ってたっけかな。

 阿笠さんを見ると、「う、美味いのお!」とか言いながら顔を逸らしてイワナとご飯を頬張っている。

 

 

 ……教えとらんかったんかい!

 

 ジト目の灰原さんだが、なるほど、だからかとこちらは納得してしまった。

 

 …………いやねー…………

 今朝の一撃、結構痛かったもんでさ。

 

 

「私、近いうちに入院予定でして」

「はァ?」

 

 

 うーん、今の声、無性に『ヤな感じ〜!』を思い出してしまった。

 似てるねぇ灰原さん!

 

 

 

 ■

 

 

 

 灰原さんの呆れ顔がさらに深まっている。

 ごめんて。阿笠さんなり新一くんなり、話してるもんだと思っていたんだよ。

 

「入院? ……入院って、あなた」

 

 灰原さんの手が止まり、茶碗と箸をテーブルに置いた音が静かに。

 

 私はといえば、先程から行儀悪く組んで上げていた、左の太ももから膝のあたりを手のひらでぽすぽすと軽く叩いて見せた。

 

「ええ。実は足のほうの皮膚と中身が、どうやらズレちゃったまま合わなくなってしまったみたいで。……もうずっと前から智ちゃん……新出先生から、『すぐ検査しろ』『今すぐ処置だ』『紹介状書いたからすぐに行け』って、追いかけられてましてね。

 ……まあ、やりたいことを優先してブッチし続けていたんですが、いよいよ年貢の納め時が来まして。そろそろ観念して、数日後に入院することにしたんですよ」

「………………」

 

 灰原さんは無言で立ち上がり、私の足元まで歩み寄ってきた。表情は硬い。

 

「……ちょっと、冗談じゃないわよ。博士、知ってたの?」

「あ、ああ……。昴君がどうしても、今はやらねばならんことがあると言うて聞かんかったんじゃ。病院から痛み止めをどっさり貰ってくるのを条件に、ワシも……」

 

 博士がいたたまれなそうに顔を逸らす。

 あの適当な説明でも、大体何が起きたかわかってしまったらしい。灰原さんの目が、今度は絶対零度まで冷え込んだ。向けられてるのは私である。

 エィン……

 

「……信じられない。あなた、自分が今どんな状態か分かってて山なんて行ったの?

 病院でそこまで言われたってことは、皮下組織の炎症がもう臨界点よ。そんな状態で、一体いつから……」

「実はほら、あの殴られて階段から落とされた、あの事件の時にね。……ちょっと足を捻りまして。まあ、ただの捻挫だと思って、というかただの捻挫ではあったんですが、その後もなーんかヤバそうだなとは思いつつ……まぁ、いつもの事ですし。手持ちのサポーターでガチガチに固めて、強めの消炎剤で散らしていたんです」

 

 触ってみてもらえばわかるが、今めっちゃ熱いんだよねここ。そりゃメンソール君もすぐ飛びますよ。

 

「いやねー、ほら、MT(マニュアル)じゃなくてAT(オートマ)車ですからね。右足さえ生きていれば、左脚使わないので運転に支障はありませんし。

 川の水も、ちょうどいい冷え具合で。さっぱり気持ちよかったです」

 

 ひきつれてたまに“ぴりっ”やら“バリッ”やらなるのはいつものことだし、こうしてうっかり裏が「ワッ…アッ」ってなるのもたまにあることだし。

 慣れっこなもので、いつもなら早めに智明くんに怒られながら、新出医院で処置できる程度で終わるんだけど、今回はほら……本堂くんの事とか、あったしね。

 

 ……諸々含めてなるべく早く片付けたかったのだけど、長引いてしまった。

 灰原さんが腕組んで、足をパタパタと鳴らしている。

 

「……バカじゃないの? それだけ引き伸ばしてたんなら……血管を収縮させて誤魔化してるつもりでしょうけど、恐らく内圧は限界よ。医学を少しでも齧った人間なら、一歩も動かさずにストレッチャーに乗せて緊急搬送レベルよ! これであの彼の面倒見て、挙げ句に工藤君の手伝い? 正気とは思えないわね」

 

 彼女の指が、ズボンの生地越しに私の患部へ触れようとして――ぴくりと震えた。

 触れる前に気付くとは、やりおる。専門でもなかろうに。

 

 私の足元から漂ってくるのは、ミントによく似たメントール系に混ざって、湿布臭さがツンとしたはず。灰原さんなら気付いちゃうかね?

 触っただけでも結構熱いよ!

 

「……ねえ。あなた、妙に顔色が悪いけど。痛み止め、ちゃんと時間通り飲んでるの?」

「ええ、もちろん。先生に言われた通りに。

 ……ただ、なんだか今日に限って、効き目が薄いような気がするんですよね。やっぱり、歩きすぎたせいでしょうか」

 

 ちゃんと阿笠研究所に到着した時点でも追い痛み止めしてあるぞい。

 飲んどきゃなんとかなるはずなんだが、疲れかな……なんて考えてから。

 

 私はふと、数日前の記憶を思い出した。

 

「……そういえば、灰原さん。数日前に、もし……仮にですよ? 意識を飛ばすほど大量にお酒を飲んでしまった場合、その後の薬の効き目に影響が出たり……なんてことは、あるんでしょうか?」

 

 灰原さんの眉間が、見たこともないほど深く寄った。

 

「……はあ? あなた、この状態で酒を飲んだの?」

「い、いや、望んで飲んだわけでは……。ちょっとした不運で、胃の中のものを全部お返しするくらいには……」

 

 後ろでオロオロとしていた阿笠さんが、はて?と首を傾げて空に目を向けておられる。

 酒嫌いの私が、吐くほど飲んだなんてことが、阿笠さんに聞かれてしまった。ちょっとまずい。

 今は目の前の小さなおねいさんの方がもっとまずいが。

 

「……最悪ね。アルコールを分解するために肝臓がフル稼働すれば、薬の代謝スピードも狂うわ。おまけに嘔吐で脱水症状を起こせば血流も悪くなるし、炎症は悪化する一方よ。恐らく、医者の見立て以上に病状を悪化させてしまったのね。

 薬が効かないんじゃなくて、あなたの体が薬を受け付ける余裕を失ってるのよ。普通に処理能力がもう残ってないの。正真正銘限界なの。……本当、救いようのないバカね」

 

 

 ……なるほど。

 

 酒を飲まない私には盲点だったが、あのクリスさんの悪戯は、こんなところで私の足を追い詰めていたらしい。

 いやでもクリスさんに会いに行ったら酒飲まされる可能性はあったし、彼女にも足のこと、言わなかったのは私なのでぇ……

 

 

「あはは……。まあ、なるようになりますよ。

 実際、今日一日歩き回れたんですから、まだ私の体も捨てたもんじゃない」

 

 ……まぁ、いよいよ限界の気配はするが。

 精神的にはホント、今日でサッパリしてるからね。

 

 イワナの身を解してご飯と一緒に食べる。

 うむ、美味い。

 

 本堂くんのことは小林くんや安室さんに頼むことができなかった以上、やらざるを得なかった。 

 渓流釣りも、今やりたかったからやっただけだ。

 いや本当に、あまり動かないし、熱も冷えるしで良いかなって思ってたんだよ。アッキーが頑張って、道とか整備進めてくれて上流にも行きやすくなってたし。……歩いたけど。

 

 医学的に最悪? ……は、そうなのかもしれないが、おかげで私の心は今、これ以上なく軽い。

 

 ……もちろん、管理人さんたちと炭火を囲んで焼き魚パーティを楽しんだ時、冷えた足を足元から炭火の横で楽しく温めてしまったことは、今の彼女には口が裂けても言えない。

 言われてみれば、確かに来た時よりも帰りの車の方がちょっと大変だった。

 疲れだと思ってたんだけどな……

 

「まぁまぁ、灰原さん、そんなに怖い顔をしないで。

 明日の予定をこなしたら、私は大人しく病院へ出頭しますから。元々その予定でしたし。……それまでは、このサポーターを剥がすのは勘弁してください。今これを開けたら、せっかくのイワナの味が分からなくなります」

 

 若い頃にやったのよ、修学旅行帰りに。

 中々ハードな体験でしたわ。

 

 灰原さんはため息をひとつ。

 阿笠さんに何か指示して地下に向かわせて、自分は冷蔵庫と風呂場から小さな保冷剤と分厚いタオルを持ってきた。

 

 ぐるぐる巻きにした保冷剤を投げつけられる。ほのかにひんやり。

 

 更に阿笠さんがエッホエッホと持って来てくれた、薬箱から手に取った、じゃらりと何やら漢方くさい瓶が追加で投げつけられる。

 

「……明日も動くつもりなんでしょう。……いいわ、せいぜいもらった痛み止めを、胃が壊れるまで流し込んで、最後まで『元気な山男』を演じ切りなさいよ。

 ……その胃薬飲んで少しは保護してやりなさい」

 

 灰原さんは吐き捨てるように言うと、呆れ果てた顔で自分の席に戻り、乱暴にカボスを絞った。

 

 

 まさに小さなおねいさんだ。

 大きなバカとしては、むず痒い限りである。

 

 ……そう。これでいい。

 

 あとのことは、あとの私がなんとかするだろう。

 

 

 

「……ところで、明日の予定って?」

 

 

「人に会うんです。

 

 『お兄ちゃん』なんですけど」

 

「………………」

 

 

 再度、『ヤな感じ〜!』と同じ声が聞けるとはね。

 

 

 

 





火傷痕の下、衝撃などでズレた皮膚とお肉が自然と上手くくっ付かず、治せないまま熟成されたタイプの怪我です
たぽたぽ!

朝にその患部の直下の膝裏叩かれてるものとする。


読んでいただきありがとうございました!
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