昴くんはなにもしない 作:あまも
ぽこあが私を離してくれなかったんです(言い訳)
時系列ちょっと変わってますが、問題ないはず……
後で問題になるとわかったら修正します
閲覧ありがとうございます!
イヤホンから届く、ノアズ・アークによる現場の実況。
なにやらFBI宛にお花が届いたそうな。
︎︎つまり居場所は分かってるんだぞの合図である。
オダマキねぇ。
山を歩いていると、初夏とかに咲いてるのを見かけることもある。
あれは山の野花かね。
︎︎それとは違うやつ?
花言葉は……『愚か』だっけ?
「あ、蘭ちゃん、園子さん。私の車から充電器取ってきてもらって良いですか? それと、お小遣いあげますから、売店で好きなおやつ買ってきて良いですよ」
「沖矢さんたら、太っ腹〜!」
「沖矢さん、充電器はどういうやつですか?」
「普通にコンセント直の、端子が……ああいえ、コレと同じヤツを。端っこがこの通り、楕円の黒いヤツですね」
予定通り、朝から蘭ちゃんたち高校生組が3人とも私の病室に来ている。
小林くんからの依頼で、『勝手に歩き回ろうとして全然安静にしてないで病院に迷惑かけてる私の監視』という指令が出されたそうな。
病院側も別に病気だってわけじゃない私にかまけてる手間が省けるため、普通に居座ってても良い許可が出ており、3人とも宿題持ち込んだりしてにぎやかである。
足の肉がくっつくまで結構かかりそうなのよね。肉こそぎ取ってるし。
さて、女の子2人をわざわざ離れた私の車の、見つけにくいところにしまってある未開封の充電器でもって遠ざけた。
なので、本堂くんのお話が聞ける。
来た時から誰か知り合い死んだんかぐらいの渋面で、言葉少なだった彼。
こっそり園子さんからチクられたが、最近なんだか塞ぎ込んで、一時期は学校も無断で休んで行方不明!なんて時期もあったそう。
︎︎なんでも探してた姉が病院で見付かったとかで、それで心配なのだろう、とのこと。
男同士のほうが話せることもあるだろうから、と園子さんと蘭ちゃんは、そそくさと部屋を退出してくれた。
園子さんはこういう時の気遣いが凄まじいよね。
︎︎流石、次代の鈴木家当主候補(ほぼ確定)。
んで?お姉さん、見付かったんだね。
「……はい。杯戸中央病院で…………」
「水無怜奈だった?」
「………………はい」
俯いたままだが、頷いてくれた本堂くん。
これで違いましたとか言われたら計画ご破算待ったなしなので、そこが合ってて本当によかったわ。
「……けど、姉さんは……その」
「アメリカの正義の味方だった?」
「っ……」
驚いて跳ね上がった肩と顔。
困惑に染まった表情。
まぁ噛み砕いて飲み込むのも中々ハードな話題だよね。
家族がみんなして、自分の知らないところで命張ってたとか。
「話は出来ましたか?」
「…………はい。無茶をしてはならないと、叱られてしまいました」
「本人だと、納得は」
「…………しましたよ!でも……」
おおかた、お話しながら江戸川コナンくんか赤井さんかのどちらか、もしくはふたりがかりで種明かしして、真相を水無怜奈の口から直接本人に全部話しをさせて、最低限だけ教えられたあたりで部屋追い出されたとかそんな感じだろ。
怪我の原因とか、今何をしてるのかとか、何故連絡してくれないのかとか、色々と言いたいこと、知りたいことはたくさんあるはず。
………………それでも、この私の病室に来てくれた、ということは?
「何か疑問に思っていることはありますか?お答え出来ることなら、私でよければ“応え”てみますけど」
「!」
信用があるかは別として、情報取りに来たのかなと。
言うて私も、小林くんに確認取って、開示していい範囲を決められている上にノアズ・アークから与えられた情報しか持ち合わせがないから、本当に応えられるかはわからないけどね。
“出来るだけ”でも良ければ、答えてみせるとも。
「……瑛海姉さんは、今、何の仕事をしてるんですか?」
「危険な仕事でしょうね。悪い人たちがしでかす“悪いこと”を、その人たちの元締めやってる上まで辿って、間違いなく捕まえるための証拠集めを頑張っているんだと思いますよ」
「き、危険……」
「ええ、事故なんてよくあることでしょうし、暴力沙汰にも巻き込まれることでしょう。極めて危険なお仕事です」
「そんな……」
止めさせることの出来ない、力もない子供が知ったところで、何も出来ないわけですわ。
︎︎彼も私も、我々、本当に無力な一般市民やから。
「何をしてるか、具体的なことは知りませんけど、少なくとも人を追跡していたら気付かれて追いかけられ、焦ってハンドル操作を誤って事故るくらいには危ないことのようですね」
「……え、と、それって、姉さんのあの怪我の原因……?」
「さぁ?」
私も見た訳じゃないし、聞いただけだからそれがそうかは知らない話だ。
確定させたいなら、隠されてる状態の情報を漁るしかないが、完全に組織さんが関与してるので。
許しがないから私は調べられない。
「なんにせよ、危険なことには違いありません。その危険な現場に、君を近付けて……相手方や君自身に余計な疑念を抱かせたり、君や君の周りにまでその危険が及ぶことを彼女は恐れたのでしょう」
つまりは零くんと私なのだ。
彼は私が組織に関与する可能性を、調べさせないことで徹底的に排除していた。
私はホイホイ簡単に『気になっちゃったから』、とか新一くんや工藤先生に訊かれたから、という理由だけでちょっとばかし深いところまで探りに行ってしまう様な危なっかしいヤツだったからな。
制限かけとかないと自制しないのは、ほら、あれですよ。
育ちがね。
1度熱中しちゃったら、ついつい集中しすぎちゃう趣味人たちに囲まれてたからさ!(他責)
私の場合、そこに何故だかクリスさんやら教授やらといった、零くんの予想外の知り合いがいたわけだが。
水無怜奈から見た、情報面で守っていたはずの弟が色々行動して、私や、江戸川コナンくんといったギリギリ組織ではないけど色々と詳しい伝手のある者に辿り着いてしまったのは、彼女も想定外だったことだろう。
特に、小さな少年がまさか組織を追ってる者だった、なんてのはホント……初見看破は無理ゲーが過ぎる。
やはりサスペンスホラー。
悲鳴と爆炎と共に現れる小さきヒーローである。
まぁ。
守ってくれてる人を心配して、ちょっと暴走しちゃって、結果その人自身に心配させてしまう辺りとか、ね。
そういう所も、関係性は似てるのかもしれない。
「ですから、余計な詮索はしないことをおすすめします」
変に動いた方が、彼らへの迷惑になる。
頼まれた時にいつでも即座に力になれるよう、動けるように……準備しとくくらいが、ちょうど良いのだ。
彼らは、そういう“普通の人々の平穏な暮らし”を護るために戦ってるのだから。
いつも平和そうにして見せるのが1番の労いなのでね。
え?病床?…………まぁまぁまぁ。
「でも……」
「彼女が愛する君を守るために選んだ道を、他ならない君自身が壊す、なんてこと、あってはならないと、私は思いますが」
「…………はい」
何か力になりたい、と思う気持ちは私にだって覚えがあるし、隙あらばといくらでも手を貸したいところだが、彼らから頼んできてくれた時くらいでいいのだ。
その時、貸せるだけの力を持てば良いのである。
貸せる分だけの力がなきゃ、猫の手にもならんからね!!
ほら見て、これが1点特化育成した結果、ドンパチ始まる前に病院で収容されてる男の姿!
使えねぇ野郎がよぉ……
イヤホン越しの通信の向こうでは、杯戸中央病院のてんてこ舞いっぷりがリアルタイムで共有されている。
あちこちの車両事故やらなんやらに追加で、バスが巻き込まれたそうで、……救急やら見舞いやら外来やら、なんか情報が錯綜してるらしいのでノアズ・アークには手伝いに行ってもらった。
小林くんがFBIの話に混ざれるかは彼次第だけど、橋波さんについて何か教えられてた様子だし、計画に組み込まれているはずだ。
ま、この後水無怜奈が組織に戻るのか、それともCIAとしてFBIと協力するようになるのかはここからじゃわからないな。
少なくとも、目が覚めてるってんなら彼女は彼女の意思で動くだろうし、こんな中途半端で組織から抜けたら捜索が始まって、近くにいる顔の似てる
……ああ。そうか、近くに彼がいるんだよな。
「お姉さん探しにわざわざこちらまで来て、そのお姉さんも見付かって……君はこの後何をするつもりなんですか?」
「へ?」
「彼女が危険なことをしていて、それを君は手助けできないこともわかった。
……彼女を危険な目に遭わせることしか出来ない君は、この後何をするつもりなんですか?」
「――それは……」
ん、本堂くんが青ざめている。
……私の言い方が良くなかったか。
ダメだな、自虐方向に若干スイッチ入りかけてて、自分に似てる本堂くんのことも少し責めるみたいになってしまっている。
だめだめ、彼はまだまだ未来ある若者だ。
大人というのは、若者を導いてやらねばならない。
先達は自分の教訓を下の世代に伝えてこそ。
ここに反面教師の典型例みたいな男がおるじゃろ?
こんなことにはなるなよって話。
「……もし、君が学ぶ気があるならば。
私や、私の友人たちが君に学ぶ機会を用意します」
俯いてしまっていた本堂くんが顔を上げた。
お姉さん譲りな大きな目は、どこかの小さくなってしまった探偵ボウヤのそれにも似ている。
どいつもこいつも、本当に眩しいな。
正義感ってやつかな。
「今の君は『学生』だ。学生の君には、“学ぶ”機会を用意してもらえる特権がある。……今はそれだけの意味しかありませんが、役割には色々な特性や効果があります」
称号システムやらとくせいやら。
役職には、仕事があるからその役職があてがわれるわけだ。
特別な力を発揮する由来はあるもので、“その役割”だからこそできる特権ってのは何の役職にも存在する。
私だって、大学院生やら、開発者やら、天才の友人やら……ここまで色々増やして来たが、それでもなかなかプロフェッショナルには程遠い。
どれも中途半端にしかやってないから、こんな使い道のない男になってしまってるんだろうか。
……プロの友人ってなんだ?
「君の今の立場を、君がどう使うかは君次第です。今後の予定を考えている最中なのでしたら、検討材料に加えていただけたら嬉しいですね」
「……はい!」
あらあら、良いお返事だこと。
……信用されすぎても怖いから、ちゃんと怖がらせとくか。
「君自身こそが、君のお姉さんへの手札の1つとなっている以上、君の身柄というのは重要な役割を持ちます。君という存在は、彼女にとっての『最大の弱点』であり、同時に敵にとっては彼女を屈服させるための『最高の手札』なんです。
君が不用意に動くことは、彼女の喉元にナイフを突き立てるのと同義だと、理解していますか?
……私が君のことを面倒見ていたい理由はそこにあります。
君の自由を制限したいわけではありませんが、どうか勝手な行動はくれぐれも気を付けて」
「はい!」
……んん、……アレェ?
おめーの監視のために、こっちはおめーを手元に置いときてぇから勝手な真似すんじゃねーぞ(意訳)、って脅しだったのに、なんか『全部理解してますよ!』みたいな……
“極めて明るい表情”のまま、頷かれてしまった。
私の言葉伝わってるか?これ。
「沖矢さんも、”誰か”のためにその技術を磨いたんですね!」
「へ? え、ああ……まぁ……」
おかしい、ここで彼の口から『毛利探偵のために』という言葉が出てこない時点で、“誰か”という、毛利探偵とは別の人物のために私が動いてることが察されてしまっている。
えーと……江戸川コナンくんの事だと思ってるなら良いんだが……
………………やべぇ、“本堂くんのことならなんでも知ってますよ”顔で接してきたせいで、今さらよくわからんかったわと聞き返すのにどう聞けばいいか咄嗟に出てこなくて、曖昧な返事しちゃった。
「沖矢さん!杯戸町のほうで交通事故ですって!」
「急患がこっちにも運ばれてきて、下が大騒ぎみたいよ!」
しかも蘭ちゃん達が戻ってきちゃって、聞くに聞けないままである。
一旦今はいいか。杯戸町の話の方が大事だろう。
なーんか盛り上がってんねぇ、杯戸町。
■
杯戸町の病院で手が足りなくて、はるばるこっちにまで運ばれてくるとなると、かなりの大事か、もしくは件数が多いかだろう。
バス巻き込まれてたら、そりゃ多くもなるか…
都内のそんな騒動話、それも“杯戸町の”と聞いて、先程まで何故か晴れやかだった本堂くんのお顔はまた曇ってしまった。
「は、杯戸町……?杯戸中央病院も?」
「かもしれないわね。あ、お姉さん、そこに居たんだっけ?入院中なら受付とか関係ないし、大丈夫じゃないかしら」
いやぁ、園子さん。
本堂くんが心配してるのは、その病院に入院中のお姉さんが、その騒ぎに乗じて何事か事を起こすか、または起こされてしまってる可能性を考えたんじゃないかね。
実際100間違いなくそうなんだけど。
「心配なら向かってみる?何も沖矢さんが大人しくしててくれるなら、みんなで見てなくても良いでしょうし。この園子様が見といてあげるから、蘭とふたりで――」
「おっと、それはやめた方がいい」
おい待て待て。
園子さんたら、しれっとそこの不安定ボウヤ(暫定主人公の恋のライバル)とヒロインを2人っきりで騒動の中に押し込もうとするんじゃない。
絶対巻き込まれて、ちょっと“ドキッ”としてしまうラブコメ展開になるじゃないか。
「今、都内の幹線道路や様々な道が事故の影響で通行止めとなっていて、各地で渋滞が発生し大混雑してるそうですから。到着以前に、ここから出るのも大変ですよ」
「え、そうなんですか!?」
「ヤダ、帰りどうしましょ」
女子高生たちが焦ってるが、そんな夜までかかる騒動でも無い……とは思うけど、仕掛けたのは組織さんでも副次的に起きてるであろう小さな事故や問題なんかは、夜までに片付くかどうか……
使い物にならない、今の私の気にすることじゃ無いな!
「今朝はバスで来たんですっけ?小林くんにバイト終わりにお迎え頼みましょうか」
「小林さん」
私の出した“小林くん”の名前に反応したのは本堂くん。
そいや会わせてないままだっけ。
「ああ、本堂くんは初めて会うことになるのかな。ちょうどいい、夕方に来てもらえるよう頼みますね」
しかし、本堂くんは首を傾げている。なんだいなんだい、まだ気になることが?
「…………いえ、というか……いったいどこから情報のやりとりを……?」
ちょっとフリーズしてしまった。
本堂くんの困惑ポイント、そこだったの?
私が平然と最新情報を伝えている事に、蘭ちゃんも園子さんも気付いていなかったのか、「あら、そういえば」とか先程まで何にも気にせず聞いていた話に首を傾げ、蘭ちゃんは即座にああ、と頷いた。
「イヤホンしてたんですね」
「そうそう。ラジオ聴いてまして」
右耳のイヤホンはついにかなり小さくしてくれているから、ぱっと見アクセサリーにしか見えないかもしれない。
小型化は阿笠博士、得意だから。
最初バカでかいけど、ヒロキくんちの掃除機もバージョンアップ重ねるごとに小さくコンパクトになってるしね。
病院では周りに迷惑かけずに暇つぶしできるとあって、あまりつけたまま部屋の外を歩くのは推奨されてないが……この離れた個室においては、携帯だろうがPCだろうが使い放題なのである。
私自身も別にそういうのが干渉するような機材必要じゃないただの怪我だしね。
お医者先生も『良いんじゃないですか』とあっさり許可してくれている。
でも病院では携帯の使用は気をつけるんだぞ!
お兄さんとの約束だ!
「この個室では通信機器使用OKですから、蘭ちゃんと園子さんはお父様達に現在地のご連絡を。メールでいいとは思いますけど、一応ね」
「はぁい」
本堂くんが何か言いたげだが、あれだろ。
仕方ないから私も枕元の携帯から手打ちで小林くんにメールしてやろう。
さて、長丁場にはならないと……思うんだけどなぁ。
暇つぶし用にゲームやボドゲも、阿笠さんの研究所から持ち込んでもらってるし。
「そこのテレビつけても良いですし、状況見ながら何時くらいに帰るか算段つけましょうか。私、あまり今は君たちを外に出したくありません。危なそうだ」
「はぁーい」
病床ながら、ちゃんと年長者として見てくれているようで、3人とも頷いてくれた。
なんというか、時たまこうして素直にされるといつもこうならかわいいのになぁなんて、ガキンチョ連中への苦手意識というかなんというか……
高校生だろうが子供は子供である。
とはいえ本堂くん、杯戸町の事件となると気にはなってしまう様子。
蘭ちゃんも園子さんも、それには気付いておられる。
「あの……沖矢さん。本堂くんのお姉さんについて何かわかりません?」
「てか杯戸中央病院について何か無いのかしら」
「ああ、それなら……」
園子さんが丁度、テレビをつけた途端、画面に水無怜奈が映っていた。
ちゃんと仕事に復帰するってよ?
……うん、ホラ、元気そうじゃん?
まぁ、あれ合成映像だけど。
組織にも、ああいうの得意な人いるんだねぇ。
それともバーボンさんがやらされてるんだろうか。
言ってくれたら、もうちょい上手く作ってやったのに。
ディープフェイクはまだ世には早いかもしれない?いやいや、元々は結構流れてたんだって。
どっかいっちゃったけど。
ノアズ・アークなら簡単に作れちゃうもんねぇ?
あれまだディープフェイク出る前の話でしたし、ただの合成映像だと思うんですが、誰が作ったんでしょうね
この話においては、海の中で寝不足の女性が居るらしいッスね
読んでいただきありがとうございました!