昴くんはなにもしない   作:あまも

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読み返す度にクラッシュまで早くてびっくりします
意識のどこかで、もうちょっと期間空いてると思ってるんですけど


閲覧ありがとうございます!



60-3:懸懸念念

 

 

 

 

 なんだか杯戸町でド派手な車両爆発騒ぎが起きたらしいっすよ。

 

 

 夕方。

 病室に小林くんが、『いやー、今日は道がどこも大混雑してて参っちゃった』なんて笑いながらやって来た。

 今日は配達のバイトが入ってたらしいのだけど、あんまりにどこもかしこもてんやわんやだったので、台車や自転車、そして足での配達になって一苦労だったそうな。

 

 

 

 

 いったい、何を配達してきたんですかねぇ。

 

 

 

 

「昴、お前へのお土産話はまた今度な。蘭さん、園子さんに……君が本堂瑛祐くんだな?

 俺は小林唯景(ただひろ)!今後ともよろしく!」

「あ、ハイ……お初お目にかかります……?」

 

 右の手を差し出し、握手してくれたその本堂くんの手をブンブンと振っている小林くん。

 

 どったのさ。テンション高いね?

 

 …………たぶん、難しいミッションが成功したかなんかなんだろう。

 緊張してたけど上手くいったから安堵で緩まってるのかね。

 

 本堂くんは、小林くん見て“初めて会う人”って気がしないなら、その感覚は実は正解。

 小林くん、帝丹高校の監視と護衛も遠目にやっててくれたからね。

 ちょっとだけ神経質な彼は、チラチラと小林くんの影になんとなくそれとはわからずとも気に留まってはいたのだろう。

 そういうのを磨くと、こういう怪しい気配に敏感なお兄さん達が出来上がる。

 灰原さんとかの“匂いセンサー”も、そういう視線とかのものなんじゃないかなとはこの小林くんがいつぞやに言ってたっけな。

 

 

「今日はあちこちで事故が重なっててさぁ。こっちはなんも無かったか?」

「ええ!そんなに酷い大騒ぎって感じでは無かったわ」

「杯戸町から怪我人が何人か回ってきたみたいですよ」

 

 蘭ちゃんたちが、散らかしていたお茶のカップやお菓子の袋、ボードゲームの駒などを片付けてくれている。

 午後とか普通に楽しく過ごしちゃってたからね。

 

「やっぱり?目に見えて多かったもんなぁ。

 昴、持ってくものとかは?必要なものとかあれば言ってくれよ。着替えとか足りてるか?」

「それは大丈夫ですけど。……大丈夫だったんです?」

 

 何してきたのか知らないが、杯戸町で何かしてたのは間違いない彼の方が心配だ。

 何してきたのか、いや、何させられてきたんだろうか。

 

「俺? ハハハ! 見てのとおり、ちょっと疲れたが元気だぞ」

「……そうですか」

 

 胸を張ってる小林くんだが、目に見えるところに怪我も無さそうなので、言葉通りちょっと疲れた程度なんだろう。

 無理や無茶はしてない……ってことかな?

 

 きっと後からお土産話は聞けるはず。

 ほんなら今はいいか。

 

 

 彼は逆に、今日の私の様子を……高校生たちに聞いておられる。

 

「昴は安静にしてたか?」

「ハイハーイ!トイレ行くのにひとりで頑張ろうとしてたので、あたし看護師さん呼びました!」

「あと、普通にベッドから抜け出て荷物漁ろうとかしてましたね。パソコンなんて、言ってくれれば持って行くのに……」

「はい。ゲームとか『広いところでやりましょう』とか言ってしょっちゅうベッド抜け出そうとしてましたね」

 

 園子さんたら、「せんせーに言ってやろ」の勢いで手を挙げて宣言。続く高校生たちの密告である。

 

 内緒の約束で漫画とか雑誌奢ってあげたのに!

 特に約束なんて、なくても奢ってた?……まぁそれは、うん!

 

「お前、懲りないなぁ……」

「えへ」

 

 小林くんが呆れ顔。

 

 もう歩けるって……頑張ってるけどさ。

 だって暇だし……彼らになんかさせるの、なんか悪い気がしてさぁ。

 

 

 ■

 

 

 

 みんなが帰ってから、面会時間の終了間際に滑り込んできた来客があった。

 

 金髪を帽子で隠した、色黒イケメンである。

 

 

「おや、(とーる)くん。お疲れ様です」

「満足に動けもしないのに歩き回ろうとしてたとか聞いたぞ、ハル」

 

 何か手提げ袋と白いレジ袋を引っ提げた彼は、見たところには怪我や疲れは見えない。

 そもこうして顔を出してくれたあたり、一応彼も、今回無茶はしていないようだ。

 

「いやねー、ちゃんと早いうちからリハビリ頑張っていかないと衰える一方ですから」

「それはそうだが、ちゃんと医師とのスケジュール通りにリハビリは進めるべきだろ。勝手に動くんじゃない」

「えへ」

「えへじゃないだろこのバカ」

 

 べしんと、安室さんの持ってた茶封筒が顔面に。メガネとハトメが顔に押し込まれて痛い。

 

「これは?」

「人ひとり匿える用意はしておいた。

 もし急遽“何者か”から守らねばならない者が出たら、それらを上手く使え。使う時は風見に連絡すれば機能するように伝えてある」

「あら、風見さんたらまた仕事頼まれて」

 

 くたびれお兄さんこと風見さん。

 またもやよく分からん使いっ走りさせられているらしい。

 あの人も有能なはずなんだけど、零くんからの突発横流し雑務が多過ぎてちょっとかわいそうな気もする。

 

 あの人の所に行ったペンちゃん、風見さんの息抜き時間作れるようになのか、雑務特化になってて、人のオシゴトのサポートAIって言ったらやれそうなことひと通り覚えた様子だったな。

 なんか見た目も相まって、何処ぞの交通系なあの子に見えなくもないシンプルな個体になっていた。

 性格も飾りっけないし……

 遊び抜きで育てられました!って感じ。

 あれ、素体として使えそうだったなぁ……

 

 

 

 しかし……匿う用意とな?

 

 封筒の玉紐を解き、中を取り出さずに覗きでざっと見た感じでは……セーフハウスや臨時の仮名義の口座とか、そういった“人ひとりが引っ越して生活するのに最低限の用意”ひと揃えのようだ。

 もしもの時はこれをそのままポンと、その“何者か”に渡せってことだな。

 

水無怜奈(キール)の奪還は成功した」

 

 顔をあげる。

 静かな顔だが、どことなく落ち着きがないというか……

 ……これ安室さんで合ってる?

 

「ジンや他の連中は疑いはしてないが、江戸川くんや赤井(FBI)が絡んでいる以上、そしてお前が本堂瑛祐を保護してる事や、俺が今回の件で事態を大きくしないよう陽動役を買って出たこと含め……ベルモットはキールを、FBIの糸が付いてるルアーだと察してるだろう」

「ふむ」

 

 つまり……FBI側が、わざと彼女を組織に返したって話で合ってる?

 

 そもそもその前提の、今回の件の決着がどう付いたのか、わからないんだけど。

 

 今のところ、誰も詳しいこと説明してくれてないのよね。

 小林くんも土産話はまた後日、らしいし。

 

「………………お前、ヒロから何か、聞いてないか?」

「何か、というのは?」

 

 いや、だから土産話はまた後日らしいんだってば。

 

 

 安室さんの表情は芳しくない。

 私相手への苛立ちや、ベルモットさんやFBIの話題出した事の他に、何かしら思うところがある……そんな、意志の揺らぎらしきものが、視線がなんだか落ち着かない様子から見てとれた。

 

 今日のことはまだ何も聞いてないから、今回の件で彼が何をしたのか……とかも知らないんだよね。

 

 

 そんで、何かあったの?

 

 

「……あいつ、俺に何か隠してるようなんだが」

「かくしごと……?」

「心当たりは無いか?」

 

 今回の件について……でもないらしい?

 

 ……なんだろうな。

 かくしごと?

 景光くんが零くんに内緒にしとくなんて、あの死亡偽装の件以来、ほとんどないよう、皆して心がけてはいるんだが。

 ︎︎安室さんが買ってきてくれた差し入れのぶどう糖マシマシのラムネやキウイをレジ袋から取り出して机に置いてくれてるのを眺めながら考える。

 

 ふむ……うーん……

 

 

 

 あっ!

 

 

 

「お兄ちゃんの事ですかね?」

「“お兄ちゃん”?……高明さんのことか?」

 

 えっ、誰それ。

 

「誰って……ヒロのお兄さんだろ」

 

 ああ、長野の。

 景光くん曰く、超カッコよくて超頭良くて超頼りになると噂の。

 

「ああ。いえ、みっちゃんのではなくて、私の」

「お前の?

 

 …………お前の??? 」

 

 安室さんが手に持っていたレジ袋がわずかにカサリと音を立てた。

 私が自分を指さして頷いて見せたが、彼ですらも超速理解は難しかったらしい。

 私に突然の身内の発生って、そんな2人して目を剥くような話なんだろうか。

 いや、私もびっくりはしたっけな。

 

 というか、安室さんのこれ……今初めて私の“お兄ちゃん”について聞いた顔。

 

 

 これが景光くんのかくしごとで合ってそう。

 

 てか、今そのかくしごとの真相へのきっかけ、隠してる相手であろう零くんに教えてしまったけど……これ大丈夫か?

 

 バーボンさんは赤井さん死亡の真相に迫ろうとするって噂、聞いたことある気がする。

 なんかもうよくわからないが、バーボンなら『赤井は死んでない』と決めつけて、必死こいて粗探しに来そうな感じは、今の零くんからも感じるからな。

 きっとそうなんだろう。

 

 こうやってきっかけを知る……わけはないから、私、情報開示、早すぎたかね?

 

 

 だってなんなら、赤井さんまだ生きてるじゃん。

 

 

 うーん……

 

 うん、“ 私が ”、“ 橋波さん() ”が現れた件について、なんて隠し通せるわけないし、これは私の判断で話していい範囲……でいいはず。

 

 そのために、私はその詳細を知らない、はずだ。

 

 

 私の知ってる範囲の、私の思った考えまでなら、思う通りに答えて良いんだろう。

 きっとそのはず。

 

 

「なんか、遺伝子的には私の親戚らしい、私のそっくりさんが天涯孤独の一文無しで私に助けを求めて会いにやって来たので、助け合いは大事ですし助けてあげようとしたら、みっちゃんが……『自分が監視するからお前は寝てろ』と……」

 

「OK、大体わかった」

 

 私の言葉の途中なのだが、零くんは頷いてしまった。

 

 わかったんです?

 何を?

 

「お前がまたなんか詐欺られそうなんだな」

「私詐欺られたことありませんけど!?」

 

 驚いて反論したのに、何故か可哀想なもの見るみたいに若干引かれてしまっている。

 

 なんだよ!

 

「お前……ノアズ・アークに感謝しろよ。

 というか俺が今、ノアズ・アークに感謝したくなった」

 

『いえいえ。ボクも小林さんや貴方には感謝してるから、って伝えて。お兄ちゃん』

 

「えぇ?何?」

 

 安室さんが帽子を取って髪をかきあげ、また被り直しながらそんな事を言っていて、イヤホンの向こうからノアズ・アークがそんな伝言を伝えてくる。

 伝言を一応伝えたが、安室さんは神妙に頷くばかりで……

 

 なんなの!?

 

 

 

「お前、この病院に寄付してから、慈善団体に寄付してること多いだろ」

「まぁ……」

 

 史郎さんとの連名とはいえ、寄付の仕方を覚えてしまったので、せっかくだからとノアズ・アークが集めてくれたジャンバリの成果を、貯めてても増える一方なら、社会貢献がてらジャンジャン使うつもりで色々と配ってたんだけど。

 

「そのうちのいくつか、架空だぞ」

「ええっ!?」

 

 そんな、動物愛護団体とか環境保全活動に貢献してる人達を狙ってたのに!?

 

『そっちはあまりそういう悪いことはしてなかったよ。ちゃんと活動してた。そこはお兄ちゃんも、調べてたみたいだし。……その他にさ、お兄ちゃん、“面白そう”ってだけで妙な活動団体にもお金出してたじゃない』

「そりゃ……未確認なのを確認してくれるなんて面白そう以外の何物でもないじゃないですか」

 

 ノアズ・アークが言ってるのはあれだな、UMAとかUAP……まだUFOか? の、捜索してる活動団体への寄付……パトロンになった件だな。

 あれはねぇ、成果なんて出なくても良いんだよ。

 ロマンなんだから。

 

 つまり、あれは詐欺じゃないでしょ!

 

「いや、実際活動してるの、1番胡散臭そうな1件だけだぞ」

『UFO研究所だけね。他は実際は、ただ旅行とかお泊まりとかしてるだけみたいな所とか、本当に特に何もしてないところとかだよ』

 

 ガッデム!

 

「それらの怪しいところの調査を、寄付実行前にノアズ・アークが“安室透”に依頼してくれてな。実態確認してからにしよう、としているようだ。お前に育てられたとは思えないほどしっかりしているプログラムだな」

『えへへ……それほどでも』

 

 珍しく安室さんが手放しに褒めてるからか、イヤホンから聞こえるノアズ・アークの照れたような笑い声が子供っぽくてかわいらしい。

 

 てか、そんな事してたの!?

 ……なんで私にはそれ教えてくれてないのさ!

 

『ボクはちゃんと教えたのに、お兄ちゃんが“活動結果が伴わなくとも、これは仕方ないんですよ”とか“ロマンですからね”とか言って聞いてくれなかったじゃない』

 

 ああ! 5分前の私が同じこと考えてる!!!

 

「……っと、話が逸れたな。

 とにかく、お前がまた騙されてる様子だからヒロが様子見中、さらに未確定のため、キールの件で忙しくしていた俺に余計な心配させるのは避けた、ということだろ。

 それなら了解した。追々話してくれるだろう」

「えっ……あ、ああ、お兄ちゃんのことか……」

 

 脱線しててもすぐ戻れるのがあむぴである。

 

 脱線したら複線ドリフトでそっちに移って別路線行っちゃうのが私だからね。

 なんの話ししてたか一瞬忘れてたや。

 

 

 ………………追々話して、くれるかね?

 

 

「とにかく。まだ水無怜奈(キール)の件は片付いていない。ジンや連中は、あの女を信用するために何か予定しているようだからな」

「何か……“誰か”をこう……おかたづけしてこい、とかです?

 …………これはそのための用意ですか?」

 

 手元にあるハトメ付き封筒。その巻き終わりにはみ出た、ぴょことした玉紐を擽る。

 見上げた安室さんは顔を逸らして、酷く不本意そうに、絞り出すみたいに唸っている。

 

 

「…………………………………………………………まぁ………………………………念の為だ。」

 

 

 すんごい溜めたな。

 

 …………ああ、これ……てっきり本堂くんとか、“お兄ちゃん”とかのこと、知ってての一応の用意か?とか思ってたけど……

 

 

「……透くんが想定してる“誰か”って、もしかしてどこぞのFBI――」

 

「これは!監視のためだから!!」

 

 

 病室の防音、貫通しそうな声出たや。

 照れというか……逆ギレというか……

 

 ……お、おぅ……そっか……

 

 あむぴがこれ用意したのは、監視のためらしい。

 

 もしかしたら危険人物な方が、身分偽って大事な日本の大事な一般市民に紛れてうろつかれると困るから、この書類が使用された際には即座にくたびれお兄さんこと風見さんがその確認に付けるようになってる。

 と、そういう事にしてある………と言いたいらしい。

 

 でもホントのところは?

 

「うるさいな!何だお前その目!

 ……他意はないし、使われないことに越したこともない。お前がこれは、と思った相手に渡せばいい。使い渋ることもないし、……………………………………誰に使えというものでもない。

 その高校生に使ってもいいし、江戸川コナンや灰原哀に何か起きた時や、小林…………それと、無ければ良いとは願っているが、億が一にもお前に何かあったなら、もちろんお前も使ってくれて構わない。

 そいつについては風見の監視が付くが、細かいことは風見に言えば調整はしてやるようにも伝えてある」

 

 さらには、言えば人数分用意してくれるとも。

 やだ、ハムちゃんずったら太っ腹!

 

 

「…………とにかく!! 小林経由でもあのボウヤ経由でも工藤先生経由でもなんでもいいが、何かあった時は迷わず使って良いからな!!」

 

 てか使わせろ!!と、捨てゼリフみたいにひとしきり騒いだ後、あむぴは照れてか、それとも時間が押してたのか、これ以上の言及を避けて病室から出ていった。

 

 おっと、確かに面会時間終了ギリギリだったや。

 時間調整上手いねぇ、あむぴったら。

 

 

 

 ……どうせこの入院期間、時間はたくさんあるし、改めて寄付してる活動団体よく調べよっか、ノアズ・アーク。

 むしろ逆に、その真面目に活動してるってUFO研究所の方が気になるわ。

 UFO資料館勧めようぜ。

 

 

 …………なんだかんだ言いながらも、零くんったら……ちゃんと赤井さんこと昔の恩人(ライ)への借りを返す機会、いつでも窺ってるんですねぇ。

 

 そういう所、変わってなくて……昔から私の大好きなれーくんが見えて嬉しいな。

 ごちゃごちゃ言ってるけど、結局人のことが心配で、何か自分の手助けで事が良くなりそうなら、ちゃんと用意しておいてくれる。

 

 根っこの“ 善人 ”が見えて…………嬉しいなぁ。

 

 

 ま、本当に言ってた通り他意はなくて、ただ効率的に監視するため……ってのもあるのだろうけどね。

 

 

 どうしようかなこれ。

 

 もしもの時の――本堂くんに使おうかな?

 

 





この時コナンくん夜ふかししてるんですね

読んでいただきありがとうございました!






やめて!肺を撃ち抜かれた上に脳天までぶち抜かれちゃったら、いくらあの銀の弾丸と謳われた赤井秀一とてただではすまないよ!



お願い、死なないで赤井!


あなたが今ここで倒れたら、明美さんやスコッチとの約束はどうなってしまうんだ?

策はまだ残ってる。ここを耐えれば、組織を出し抜けるんだから!



次回! 赤井 死す!!


デュエルスタンバイ!






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