昴くんはなにもしない 作:あまも
書いてたけど短いしどこにいれるか困っていた短いやつ二本です。
閲覧ありがとうございます!
阿笠博士が、誇らしげにお手製の猟銃を見せてきた。
ノータイムで躊躇いなく手が電話に伸びた私を必死に止めてくる。
アウトです阿笠さん。それは流石にダメです阿笠さん。私も恩あるあなたを警察に売りたくはなかったけれど、この町はいくら和製ロアナプラでも、この国は銃火器を持つのも作るのも基本NGなんです阿笠さん。ええい老体に無理に力を込めたくないのだ。
「電動!電動のおもちゃじゃよ!!」
電動のおもちゃだったらしい。やれやれ、びっくりしてしまった。焦らせないでほしい。
とりあえずすっかり丸くなった頭を軽く革手袋で擦っておいた。ほのかなピーナッツバター臭……
「麻酔針が撃てるんじゃがの」
バーロー、アウトじゃねーか。
阿笠さんは新一くんの装備に腕時計型麻酔銃を発明した。まずここでもうワンアウトね。
その麻酔針に使用されている麻酔薬は、ゾウも昏倒する威力らしい。ツーアウト。
そしてこの度、その麻酔針を使用できる、この麻酔銃(充電式)を作りました、と。
完全電動で火薬も火も一切使う必要がなく、反動も少ない。小銭やコインを入れると射出可能で、秘密は中身の電磁石のコイル。これを使って、電磁力でコインを飛ばすので、結構飛ぶし当たると痛いけど、ちゃんと調整すれば狙った所に当たるそうで。
なるほどなるほど──
「──もしもしポリスメン?」「やめるんじゃ!」
止めないで下さい主犯の方。薄々、いつかやると思っていたんです。全自動ポテチ配膳装置なんてまだ可愛かったのに、最近新一くんの装備作り始めたらどんどん調子に乗っ…ヒートアップしていって。
ついにこんなことに…!
機構や内容を聞いて確信した。完璧アウトです。武器等製造法違反!!
「これ、レールガn、じゃなくて……コイルガンじゃないですか!」
「おお、良い名じゃな。……なんじゃ、もうあったのかのう?」
「グゥ…」
ワシの自信作なんじゃがのう、などと言っているが。
3Dプリンタで作れる凶器の1つなんだよなぁ…!
よくもまぁ、こんな外見を普通のライフル銃のように加工できたなと感心もするけれど、話を聞いてて何より凄いと感じたのは、これが充電式で、連発式で……
入れる小銭の金額によって有効射程距離や威力が変わるらしい。
お前、そこでファンタジー出すのかよ。
確かにアルミや銅は弾になるけど。ニッケルとか亜鉛の混ぜこみで威力が変わるって、何?
一円玉なら本当におもちゃの威力で、輪ゴムでっぽうよりは痛いらしい。自分に撃つな。
五円玉、及び五十円玉だと空気抵抗の関係で命中率が下がる。
十円玉は結構痛そう。
百円玉が飛距離が出て、五百円ともなると...阿笠さん、五百円は勿体なくて試してないらしい。試験検証しなきゃダメじゃないですか。
で、本体に謎のツマミがついており。
これを回すと、麻酔針を撃ち出せるようになるとのこと。
しかしその弾…もとい、針が、まぁ太い。コナンくんの麻酔針は目を凝らさないと分からないほど細いけど、これは普通に裁縫針以上釘以下サイズ。どうしても飛距離を出そうとすると風の影響を受けてしまうのだとか。太くはしてみたものの、これでも距離はそれほど出せない、と。
そしてこれも試してはいないらしい。
おい待て。絶対にこれ刺さったら痛いだろ。
しかも、謎のツマミは他にもまだ回る。カチカチ動かして、端まで行って、なんか高い笛の音のような、独特な機械音がなり始め、内部機構が虹色に光った瞬間戻した。
まだあったのかファンタジー。
聞けば、新一くんに渡したキック力増強シューズみたいに威力を変えられるようにしてあるそうで。
もちろん最大火力は試してないと?
え?試した?
「一円玉で試したんじゃがのぉ……発射したら、無くなってしまったんじゃよ」
融けてるーー!!!!!
…………な、なんで…なんでこんな……
威力によっては逮捕確定なのに、それは、それはあなた……
「もしポリ!」「止めるんじゃ!」
止めないで下さい、こんなん放っておいたら、いずれこの街は無法地帯と……既に無法地帯? 確かに……
「ホレ、以前優作くんとハワイで射撃訓練に行った時の結果が、とても良かったと優作くんが褒めておったじゃろう。それを聞いてな、ワシはピンと来たんじゃ。
新一が、万が一どうしようもない状態になった時。颯爽と昴くんがこの銃で、犯人達を無力化して救い出す!」
それはいずれ、いるはずのFBIの異次元の狙撃手が担当するので私の仕事じゃないんだよなぁ。
「つまり、私が麻酔銃くださいって言ってたのに渋っていたのは、これを用意していたからなんですか」
「うむ! サプライズのつもりでな!」
いきなり銃火器見せられてどうして喜ぶと思ったんです?火器じゃない?やかましいわ。
「あの、優作先生の言葉のその先、おぼえてないんですか?」
「その先?」
「彼は私の銃の腕を、確かに褒めてくれました。褒めたその後に、続けたんです」
『昴は、人を武器で傷付けるのは向かない性格だな』
「そんなこと、優作くん言っておったか?」
「言ってたんですよ。私もそう思います」
私だって、万が一の事を考えて、ひとまず狙撃というのを試してはみたのだ。訓練場の教官のおじちゃんが、グリーンカード取ってFBIになるべきだとか言ってきた程度には一応才能はあったらしい。
問題は、性格。
「怖いじゃないですか。傷付けた相手が…生きてるの」
銃なんて、明確な殺意の形だ。それを人に向けといて、報復で銃口を返されたらと思うと、恐ろしい。
基本、みんなやられたらやり返すのが普通の人の考えだ。よっぽどの聖人でもなきゃ、ハンムラビ法典方式で返してくる程度はしてくると思っていい。
それが、銃なんてお手軽に相手を殺せる物でのやり取りになっては、当たり所によっては私は生かしてやったのに殺されました!なんてことになりそうで。
はー怖い怖い。簡単に殺意みなぎる世界だから余計にね。気を付けないと。
疑われる理由なんて、無い方がいいんだから。
「なので、作っていただいて、とってもありがたいのですが……そちらは封印指定ということで」
阿笠さんが額に汗を垂らしながら頷いてくれたので、この玩具のことは私も内緒にし……
…………いや、アイツならあるいは…使いこなせるか…?
■
久しぶりにちゃんとしたお店に来た。デパートや百貨店に入りにくいと思ってしまう私は小市民。
服とかにあまりにも興味が無さすぎて、ちゃんとした保管方法を知らず、適当に有希子さんに任せていたのだけれど……
ついに、どうしてもフォーマルなスーツが必要そうな時が来てしまった。
というわけで久しぶりに引きずり出した服をクリーニングに出すとなったものの、有希子さんに激推しでオススメされたスーツ自体が絶対にいい物なので変な所には出せなくて、ちゃんとした店に来たというわけ。
そこでまた久しぶりの顔を見た。
浅黒い肌、黒い髪を束ねた精悍な青年。
「お、三船くん」
やぁ、と声をかけると、三船拓也は人の顔を見て早々に顔を引き攣らせた。
「ゲ、沖矢センパイ……」
ホー……? なんです?その反応は……
三船社長は三船電子工業の若くて優秀な社長どのだ。
私の大学の後輩で、会社を継ぐため院には来なかったけれど一時期良くおはなししていた仲でもある。
……仲ではあるのだ。彼からしてみたら“良い”、仲、ではないのだろうけれど。
まぁ……悪いことはするもんじゃないよね。
「おやおや、そんな嬉しそうな声出して。スーツの仕立て直しですか?三船社長どの。成長期ですねぇ」
「……ただのクリーニングですよ! むしろ、アンタこそなんでこんな所にいるんだよ」
ホー…………? 誰にそんな口を……センパイやぞ?我、センパイやぞ??
いやいや。別にね。憎まれ口なんて良いのですよ。そんな睨まれると困っちゃう。
四井の令嬢との仲をぶった切ろうとしたこと、まだ怒ってるんだろうか。
あそこと無理に懇意にしなくても、三船は結構頑張れると思うんだけどなぁ。
「私も同じですよ。クリーニングです。今度ちょっと海外に研究旅行行ってくるんですけど、とても素敵な女性のエスコートの予定がありまして。
……あぁ、三船社長どのは、もしかして四井のご令嬢との御付き合いですか?大変ですねぇ〜」
「チッ」
おやおや舌打ちなんかして。
ホントに好き嫌いを隠すのが苦手な人だな。
彼はあまり人に、特に女性相手に媚びへつらうタイプではなく、どちらかと言えば鈴木グループのようにみんなで一丸となって頑張るぞい!するタイプだから、現状は彼も不本意だろうに。
「そんなに嫌なら付き合いなど、やめてしまえば良いのに」
「……このあいだなんて、オレは先に帰るって言ったら、なら取引を断つ、とか言いやがった……クソっ」
「ホー……。“また”私たちが力を貸しましょうか? いつでも開発のご協力致しますよ」
「阿笠研究所か……アンタの紹介じゃなければ喜んで頼むんスけどね」
「まぁ。ひどいですねぇ。こちらは良いご提案ばかりしているではないですか」
「アンタが金額吊り上げ過ぎなんだよ!!」
彼の会社はいじめがいが……げふん
彼の会社は、社長を筆頭に社員みんな若くて、挑戦心に満ちた新進気鋭の社風で、良い物を作ると阿笠さんも応援している所。
ただ、阿笠博士は興と気分と調子が乗ると、既製品の性能を軽く上回るものをヒョイと作ってしまう無自覚系の天才肌なお人だ。
つまり、私が彼の会社の面白そうな商品を見せて、阿笠さんが興味を持ったその時、その商品の上位互換が生まれるのである。
私は上位互換のそれを彼に見せて、「どう?面白いよね」とニコニコする。
……なんてのをやっていたら、こんなにも嫌われてしまっていた。
だって……彼らはちゃんとそれを買い取って、より良いものを作る努力してくれる人達だから……小遣い稼ぎにちょうど良くて……
こういうことを度々やっているので、阿笠博士の名前は結構、知る人ぞ知る系の有名人だったりする。
………………
「ジャンジャンバリバリ」って、こういう事だよね?!
沖矢昴って、金稼ぎ系でテンション上がってはっちゃけるタイプって認識で合ってたよね?!
正解が……わからない!
まぁまぁまぁ。さておこう。
此処で会ったが数ヶ月ぶり。毎度のお約束の忠告タイムといこう。
「……三船社長、ホントに困ったらいつでも力になりますから。
だから、早くあのお嬢様とは手を切りなさい。……あれは良くない人物ですよ」
お嬢様って方々。
事件によく巻き込まれるからか、知り合いに結構多いお坊ちゃまお嬢様の方々。
実は、鈴木園子さんみたいなご令嬢は希少種なのである。
6割は鈴木綾子さんみたいなお嬢様。
あまり良くないお嬢様が3割ほど。
そして、たぶんこの世界においての“加害者”にも“被害者”にもなりやすそうな、とても良くないお嬢様が1割。
四井の麗花さんは、この1割のタイプだと見ている。
だから、この頑張っている後輩が事件に巻き込まれないか心配なのである。
容疑者って辛いよね……この間なったから判るよ。
凄く焦るし、「犯人は……あなただ!」って指さされたらどうしようって思うとそれだけで挙動不審になってしまう。
あの事件以降、博士に頼んで、私はメガネに録画機能つけたからね。1人行動とかする時は気を付けなきゃアリバイ無くなって大変な目に合うんだから。
しかし、そんな心配する私へ、三船くんはキッ と、力強い、覚悟した目を向けてきた。
「…………わかってるよ。……アンタに言われんでもわかってんだよ、そんな事……
次で最後だ。
次のパーティーで、オレはアイツから離れる。とっくにそのつもりだ」
「!」
おやおやおや。
散々言い続けて来たが、ついにこの時が。
ついつい、その丸い頭を撫でてしまう。新一くんばりの速度で撫でてた手が弾かれたが。
「ホー……そうですか、とても良い決断です」
「ケッ! いいか、絶対に阿笠博士を驚かせるようなモン、作ってみせるからな!」
「ふふふ。ホントですか?良いですねぇー……」
この彼の向上心が、私は大好きだ。
ホント、いい子なんだよなぁ。
応援したくなってしまう。
……応援の仕方が問題あるって? いやいや、このタイプはこれが一番成長が早いから。
「……ところで、その次のパーティー、孤島か、山奥か、辺鄙な所だったりしませんか?」
「あぁ?昔からヨットクラブのメンバーで使ってる別荘だからな。山奥といえば……そうだけど、それがなんだよ」
「……………………ホー」
わァ……事件起きそう~
「な、なんだよその意味深な顔。……
…………そうだ。阿笠博士と連絡とりたいし、オレの連絡先教えときますよ」
「 は 、」
スッ…と、
不意に三船くんが尻ポケットから取り出したのは、黒くて薄くて、アンテナの出てる小さな機械。
け、携帯電話……だと……?!
「────三船くん、それ」
「へ?」
「い、いや…なんでもありません。すいませんね……“ピッチ”でも良いですか?」
「良いけど……や、待て待て。阿笠博士の研究所の番号教えろよ」
「……いやー、窓口は私なので……」
見る限り、まだ機種は旧い。折りたたみでもない。だが、間違いなくケータイだ。
教えてもらった番号を、PHSに登録。試しにかけてみると、三船くんのケータイから着信音が流れる。
通じている……だと……?
「しかし……沖矢センパイ、PHS使ってんスね」
「ああ、前に仕事で貰ったんです。……もう一つ電話番号ありますけど、欲しいですか?」
「いや!いらねーよ……アンタら、電話回線……いや、無線でもなんかやってるのか?」
「さぁ、なんのことやら……」
色々電波飛ばして回ってるのは間違いないね。
番号札のお呼び出しをちょうど良いタイミングとして、三船くんとは別れた。
携帯電話が出回って……普及している……?
何が切っ掛けだ……?
携帯電話まで来たなら、もうスマホも時間の問題じゃないか?
スマホ……渡していいのか……?
……私はガラケーは持ってないし。まだしばらくは渡したPHSで凌いでもらおう。
ついに、ちょっとずつ技術が追いかけて来たかぁ……PCはまだまだ最新には程遠いけど、どれぐらい保つだろうか。
ちゃんと、逃げ切らないと。
とりあえず……報告するかぁ……
劇場版1作目でばんばん携帯使われてるけど4作目は普通に公衆電話スタートなの、あの頃の携帯の普及率は自分の身の回りではどうだったかなと必死で思い出しています
PHSの息が長いのはわかるんですが……
閲覧ありがとうございました!