昴くんはなにもしない 作:あまも
ナチュラルに精神力や行動力が凄い一般人もたまにいるのが米花町だと思っています
閲覧ありがとうございます!
様々な紙飛行機を確認した結果、名探偵とお兄ちゃんとボクっ娘探偵曰く、“米花町”の、“電波の入りにくい”、“高いところ”で、誘拐監禁されている、“元船乗りの社長さん”が助けを求めているのだという。
その居場所の特定の為、正義感に溢れた高校生達は研究所を後にしてめいめい走り出した。
モールス信号でもなんでもいいけど、直接“ベイカ”と書くのでも良かったんじゃないだろうか。
何故イカに“べ”にしなければならなかったのか……
犯人に知られるのを恐れた?
ここ数日でこんだけ騒ぎになってんだから、今更じゃない?
「犯人にさえ解かれなければいいものですからね。これはダジャレに近い、一見くだらないように見えますが、暗号なんて突き詰めればほとんどはダジャレみたいなものです。それだけ『解ける』対象の範囲を広めてるのでしょう」
「話題になればなるほど、解いてもらえる確率は上がる?」
「むしろ、代田社長自身は外の情報が取れる状態にあるとは思えません。下で“迷惑野郎”などと言われ、自身の誘拐ニュースに紛れて悪戯話としてニュースで報道されてるなどとは知らない可能性もありますよ」
「ああ」
橋波さんが丁寧に教えてくれるので、ちゃんと私の中での解像度も上がってきた。
そうか、それはそうだ。
情報が取れるなら、誘拐犯が自殺した話も知ってるはずか。
「それに、当の本人は必死ではあれど、状態は悪くなる一方。思考の巡りも同じこと。……むしろ、それでも尚手段を考えて、助けを求め続け、不自由な状態でも只管にこれほどの
並大抵の人物ではないようだ」
「それは本当に」
下らないダジャレとか言ったの申し訳ないな。彼なりに、必死で頑張ってる結果だろうに。
「……助かって欲しいですね」
「フ……その為に、彼らが走って行ったのでしょう?」
それもそう。
ちなみに、橋波さんは行かないのかと出発前の高校生たちから視線を向けられた彼は、携帯弄って中継の連絡役の用意していた私を無言で指さして、ひとつ頷いていた。
それだけで、高校生たちは同じく無言で頷いて出発してったんだが、あれはあれか。
『コレの見張りが必要でしょう』と『確かに』のやり取りだったのか?
動くなって言われてるんだから、そんな動かないってば!!
なにはともあれ、走り出した高校生たちだ。
テニス部とはいえガチガチの体育会系ではない園子さん。
きっと疲れちゃって、ガチガチの体育会系どころか俺よりつえーヤツに会いにいく系修羅の世界の住人な空手部の蘭ちゃんには追いつけないだろうから、ここから1番近いニュー米花ホテルの展望台に向かってもらっている。
そこと、反対側で高いところとして適当に……確かあそこ、吉田さんの住んでるマンションだった気がするが、28階建てと中々の金持ち……ゴホン。色々お高いマンションへ、フッ軽な真純さんに本堂くんを送り届けてもらっている。
帰宅部な本堂くんは体力がないから、ピックアップしてもらってバイク輸送だ。
私の足が完治したら、体力作り一緒に頑張ろうな。
あと、せっかくだからついでに研究熱心な引きこもりにたまには外の空気吸えと、シャトー米花の秀吉に屋上デッキから周りを見渡してもらってるので、こんだけ見渡せば流石にどっかからなんか連絡あるだろ。
部屋の特定が出来次第、真純さんに突入してもらおうかなと。
本人も『大仕事だね!』とヤル気に満ちておられた。
おそらくは……犯人の仲間はいないはずだから、そんな張り切ることはないはず。
最悪のケースとして、犯人の仲間がまだそこに!とかあったらコトだから、武闘派を最終突入メンツに選んだけど……これでもしもなんかあったら?
そん時は、この私と同じ顔のお兄ちゃんがどうとでもしてくれるだろう。
いや、だったら最初から、この人ひとりで良くないか?
との私の視線は、手帳のいらないページで作った小さなイカを眺めているご本人にスルーされてしまった。
流石に事情聴取で警察署に連れてかれたり、携帯の番号押さえられると困るのか、あまり派手に動きたくないそうな。
私は、高校生達の連絡のやり取りの中継と……警察と救急への連絡待機。
あと……これが一番重労働。
「ですから、そこまで心配せずとも皆さんなら大丈夫です。君は戻りなさい」
『スバルさんは蘭が……アイツらが心配じゃねーのかよ!』
「連絡はしますし、直ぐに出れる人も居ます」
ここでコピー用紙でイカの紙飛行機を2機目折ってる人とかさぁ。
イカも中々良く飛ぶし、飛距離も出るけど、私の作ったスカイキングの滞空時間には勝てないって。
なんか新一くん、蘭ちゃんが飛び出したと聞いてか、それとも自分が行くつもりしてたのか、授業中の学校抜け出して来てしまってるらしい。
学生は余計なことせず、勉学に励みなさい!
そこら辺でなんかしてるだろうくたびれメガネのお兄さんが動いてくれるかはわからないが、正義の人として、緊急事態であれば手配は手伝ってくれそうな気もする。
もしもの時にも、他にも呼べば来てくれる人もいる。
「警察や救急も待機してもらってますから。今、君が現場に来ても出来ることはありません。戻りなさい」
『でも……』
私と、そして目が合って頷いた限りでは橋波さん的にも、おそらくは現場の部屋にまだ犯人の仲間がいる、という可能性はかなり低いんだよね。
新一くんも頭ではわかってるだろうに、蘭ちゃんが突っ走りそうで、そして僅かにでも残る彼女が傷付く可能性が怖いから「自分が行かなきゃ!」と焦ってるんだろう。
これが“愛”ってやつ……かな……
「わかりました、そこまで言うなら、移動せずに落ち着ける場所で停止を。君はむしろ、蘭ちゃんと連絡をしてあげてください」
『なんだって?』
「常に電話をした状態で、彼女の状況が分かるようにしてあれば、君も彼女に即座に指示が出せるでしょう。
とにかく、今すぐ、“
何を電話しながら商店街駆け抜けてるんですかまったく……」
『は!?ちょ、どこで見て……』
なんか言いかけてたが切ってやったわ。
あのラブコメの波動で焦っちゃう名探偵はどうして蘭ちゃんのこととなるとこんなにおばかさんになるのやら。
平日の昼間にどう見ても小学生が、電話しながら街中走ってたら目立つなんて話じゃねーだろがい。
カメラの映像は消せても、人の記憶は消しにくいんだぞ。
■
園子さんが見つけてくれた。
米花タワーマンションの東面、36階。そこに紙飛行機の散乱したベランダのある部屋があり、そこで確定であるはずと橋波さんも真純さんも、新一くんも肯定してくれたので、場所は特定完了だ。
私のほうから警察と救急に連絡して、既に向かってもらっている。
……千葉くんも目暮警部も、その他知り合いの刑事さんたちは軒並み出払っていて、最初はイタズラだと思われてしまったのだけど、めんどくさくなったので毛利小五郎名探偵殿の名前を出した。
ネームバリューって大事。一瞬で話ついたわ。
口裏合わせのお願いを小五郎さんに頼んだ所、『情報が確かなら構わねーが、イタズラに使ったら承知しねーぞ』とのこと。
独特な名前を読み上げているアナウンスと賑やかな音を背景にしてる電話であった。
あの人、またギャンブルに手を出してんじゃなかろうか。
ホント、懲りない人だなぁ。
何はともあれ、救助は要請したのだ。
だから、決して直接行く必要なんか無いはずだった。
「――突入したですって?」
「おや」
研究所の裏口を開けて、どちらが先にイカ飛行機をダイレクトで潜らせるかを橋波さんと競っていたら、そんな連絡が来たのでビックリしてしまった。
なんでも、米花タワーマンションの前まで辿り着いた蘭ちゃんが、1万円札で出来た小さな紙飛行機を拾ったそうな。
電話で何やら真剣な表情で話をした後、意を決してエントランスに飛び込んでったのだとさ。
その話を聞いて、橋波さんが顎を擦りながらひとつ頷いた。
「……なるほど。1万円札の紙飛行機まで飛ばした、となると、被害者本人が最後のチャンスとして、なんとか見付けて欲しいという一心から放っている最後のメッセージと考えられますね。一刻の猶予もない、と判断したのでしょう」
同じことを電話の向こうで、状況説明してくれてる真純さんも言っている。
恐らくはそのようにして、監禁されている社長さんが危険な状態だと “ 焚きつけて ” 蘭ちゃんを突入に駆り立てたのは新一くんだろう。
そんな事言われたら、蘭ちゃんならそりゃ行っちゃうよね。
……とはいえ、高層マンションのセキュリティと言えばシャトー米花が思い浮かぶ。
見知らぬ女子高生が、突然やって来て部屋見せて!なんて……出来なくない?
「部屋まで入れるでしょうか。ベランダからになりますかね」
「上の階のベランダから非常用の避難梯子を使えば行けるでしょう」
「ああ……なるほど?」
高層マンションを毛嫌いして、小さなアパートや平屋とか一軒家の賃貸物件ばかり見てたから、そういうのよくわからん。
法律で義務付けられてるんだ?
や、そもそもその上の階の方、家に入れてくれるの?
「そうですね……向かいのニュー米花ホテルからベランダの様子を見たのは確かですから、それこそ『ベランダに不審者が見えた』、『ひとりでの確認は危ない』とでも言って上がり込む……でしょうか。
やや強引にはなりますが、あのマンションは一般向けの物件です。今の時間帯であれば専業主婦や在宅ワークで、ひとりで自宅にいる可能性が高い」
はへぇー。
橋波さんが、自分がやるとしたらのシミュレーションでもしてるのか、イカ飛行機をぱさぱさと振りながらそんな侵入経路を教えてくれた。
他人の家に上がり込む手段が、すぐ出てくる人たち怖すぎる。
これがかわいいかわいい小学生な江戸川コナンくんなら、『ごめんなさぁい、おトイレ貸して欲しくて……』で終わる話である。
小学生って便利やな。
それで気を許したら家捜しされるんだから怖いわ。
『ボクも行った方がいいかと思ってついてきたけどさ、マンションの人に事情を話して、警察の人たちと一緒に行った方がいいかな?』
「そうですね、先に管理人さんに話を伝えておいてください。間もなく警察が来る旨と、マスターキーの用意を。よろしくお願いします」
『了解だ!』
ちなみに今、現場前には蘭ちゃんだけじゃない。
電話をこっちと繋ぎっぱなしにした真純さんが、蘭ちゃんの後ろからついてって見守ってくれている。
彼女が、蘭ちゃんはエレベーターで37階まで上がったのを確認してくれたので、見事に橋波さんの言う通りに新一くんから手段を伝授されて実行してると見える。
橋波さん、マジで新一くんと同じレベルで考えられてんのね。
中身がスケスケ!
なのに確定出来ないのがこの男!
新一くんと同じで、これと決めたら一直線な蘭ちゃん。
……そういうところを、クリスさんは“マイエンジェル”とか言ってるのかね。
人を助けるのに、損得勘定抜きでどうにかしてやらないと!と思っちゃうってのが、やっぱりヒーローやヒロインの素質なんだろうな。
身の回りにはそういう人たちが大勢いるようで、けれど考えてみれば確かに……
ごちゃごちゃ言わず『咄嗟に体が動いてしまった!』な人たちは実は少ないかも。
あれだな、ヒーローの第1歩だ。
『君はヒーローになれる!』……ってね。
橋波さんは、さっきから私が連絡とっていると口出しせずに静かに眺めている。
電話の相手、誰だと思う?
かわいい探偵さんだぞ!
■
真純さんから、救急搬送で代田社長が無事病院に連れて行かれて、ご家族の方も慌てて車で駆け付けたのを確認した旨を伝えられた。
『Case closed! これにて解決、だな!』
彼女の明るい声が、流暢な英語で事件解決を宣言してくれる。にっかり笑顔が目に浮かぶような、晴れ晴れした声だ。
「はい、お疲れ様でした。お手伝いありがとうございます。別途追加費用を計算して出しますので、後ほどご確認を」
『いいよいいよ、大丈夫さ!ボクも丁度暇してたしね。でも、そうだな……強いて言うなら、ガソリン代だけヨロシク』
「ええ、もちろん。ではまた、よろしくお願いします」
『ハーイ!お疲れ様!』
繋いでいた電話が切れる。こちらからかけてるので電話料金はこっち負担だから大丈夫だろうが、充電大丈夫だったかな。
現地解散、じゃないが、本堂くんは無事解決したと聞いて、家も近いしそのまま徒歩で帰宅。
蘭ちゃんは事情聴取のため警察に行ったので、小五郎さんが帰宅した
園子さんのお迎えを橋波さんに頼んだら、それは承諾され、スバル360をパタパタ言わせながら出発して行った。
それは良いんだ……
ヒロキくんと秀吉にも、無事解決したのは伝えてある。秀吉はなにやらぶすくれてたが。
今度チーズでも持ってってやろう。
間もなく小学校も掃除の時間が終わって、帰宅の頃合い。ちゃんと学校に戻った新一くんは、小五郎さんと一緒に蘭ちゃんの迎えに行くだろうし、園子さんを送った後の帰路で、灰原さん拾って帰ってきて貰えば良かったかな。
いや、それだと灰原さんが嫌がるか?
郵送用の封筒に糊付けしながら待ってたら、赤い車体がぷるんと入ってきた。
裏口から橋波さんが、夕飯の食材を入れたエコバッグ片手に帰ってきてくれたので、真純さんからの報告を伝える。
「代田社長、病院で無事にご家族の方とも面会できたようですよ」
「ホォー……『Case closed. 』ですね……」
………………ん?
冷蔵庫に食材を入れてる橋波さんを見る。
にこりとした顔は私と同じ。
今、なんかアメリカンというかクイーンズな感じの、つい数分前に聞いたのと似てる英文だった気が……
「……チルドが一杯ですが、豚肉は何処に入れれば?」
「一杯?……つみれのパックを入れ替えて、冷蔵庫の見やすいところに置いておいてください。今夜そっち使うので」
「カット野菜は野菜室で?」
「良いですよ」
細かく、何処に何入れるか聞いてくれる橋波さん。
退院初日に工藤邸の冷蔵庫見たらヤバかったもんな。
「肉と魚はチルドに入れろと聞いたので」、とか言って、それなりに大きいはずのチルドをミッチミチに詰め込んでたもんな。
ハムだのソーセージだのベーコンだの、そのままでも食べられるような肉が山ほどあった。
顔に似合わず肉食系男子……
この人に買い出し頼むと、お肉をついつい買っちゃうのか、
灰原さんと私による、阿笠さんの食生活改善のための野菜・魚主体の冷蔵庫だったのに……
橋波さんも、魚食べなさい!
てかちゃんと食べなさい!
実は朝コーヒーだけで終わらせてるだろあんた!
「今回、ご協力をお願いしていた方はお知り合いですか?」
「ええ。友人づてに紹介してもらった駆け出しの探偵さんです。お小遣い稼ぎのため、こういった雑務も手伝ってくれるので助かってますよ」
「なるほど」
橋波さんが少しだけ頭を傾けていたが、すぐに頷いてにこりと顔を戻し、牛乳を詰め込もうとしてたので上の段に横向きで入れてもらう。
入らないものを入れようとしないの!
探偵の多い町、米花町。
そんなこの町で駆け出しの探偵さんこと真純さんは、ちゃんと自分でも仕事見つけてるようだけど、まだあむぴほど忙しくはないようで、今回のような“ちょっとした事件”は「どんどん教えてくれよな!」とのことで、手伝ってくれるそうな。
本格的に高校に通い始めたらこうは行かないだろうが、今はイギリスの方での依頼の精算と、こっちに来てからの身の回りを固める準備がようやくひと段落着いた頃で若干暇してたというのもあるだろう。
帝丹高校のテストも終わった。
すなわちいよいよ真純さんも帝丹高校に通うことになる。
新一くんが休学中だからか、転校生はまとめちゃいたかったのか、なにかの力が働いたのか定かではないけれど、同じクラスの2年B組になれそうだと喜ばしいメールが来ていた。
………………真純さんの制服姿、見てみたいかも。
彼女がパンツスタイル以外を着てるの、見たことないや。
気分的には入学式だ。
制服デビュー見たいかも〜!
い、いや別に生足見たいわけじゃないよ?彼女がそういう、“女子の制服”を気にせず着れるなら、思ってたのとは違う普通な女の子だったんだなと思えるってだけでさ。
︎︎そういうつもりじゃないからね!
そういうつもりじゃないです
痴漢と間違われる出会いは変わらなさそうです
読んでいただきありがとうございました!
解説する程でもない小ネタや没ネタやらifやらが溜まってきたけど公開するほどのものでもないし特殊すぎるのでひとりで楽しんでますが聞きたいというかたがもしも奇跡的にいらっしゃったら作者ついったーまでご連絡を……(非公開)
非公開なんだよなぁ