昴くんはなにもしない   作:あまも

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投稿していたと思ったら投稿できてなかったです

投稿前に修正できたから良かったんですが、寝る直前に予約投稿はダメですね、前も失敗しているというのに。

閲覧ありがとうございます!


65-1:続々登場探偵さん

 

 

 

 紙飛行機楽しいね。

 

 昔は紙飛行機といえばスカイキングばかり折っていたから、他の紙飛行機……いわゆる紙飛行機らしい紙飛行機ってのをあまり作ったことが無かったのだけど、真っ直ぐ飛ぶのはそれはそれで見ていて気持ちいいねぇ。

 

 飛びっぷりが清々しい。途中でやる気なくすのも面白いし。

 

 

 いいねぇ、今のは2階に届いたぞ。

 やっぱり前に重心付けるのが大事だ。

 

「……あなた、動かないは動かないで、ものすごくまわりを散らかすのね」

 

 ため息をつきながら、灰原さんが玄関の方に飛んでいった奴を持ってきてくれた。

 

 後でまとめて回収しますのに。

 

「ちゃんと片付けますよ」

「……博士の新作のそれで?」

「ええ、小型ドローンの試作機!かわいいですよね」

 

 傍らに置いていた、手のひらサイズの小さなドローン。

 

 私の車から降ろした荷物に混ざっていた、山林の調査用のドローンを見た阿笠さんが『これじゃあ!』とか言ってふた晩ほどで意気揚々と持ってきてくれた、新開発の『れでぃばぐくん』とかいうやつである。デッキからレベル3以下の……いやいや。

 

 阿笠さんのデフォルメされた小さな顔がついているのがなんともいえないが、丸いフォルムと私用にと赤く目立つ色に塗装された本体が、てんとう虫みたいでとてもかわいらしい。

 

 どうせなら突き詰めて生体模倣とかしてみたらどうだろうかと冗談で言ったのに、聞いた阿笠さんはここ数日、熱心に昆虫の動きやらを見て、軽量素材を買い漁っておられる。

 今は動画でてんとう虫の動きを見漁っている段階。かわいいもんね、てんとう虫。

 

 これでガチてんとう虫サイズのドローンなんかを持ってこられたら、困っちゃうな。

 小さいは小さいで可愛くて良いけど……使い所に困るじゃん?

 どう考えても犯罪利用しか思いつかない……盗撮か?

 

 どうせなら荷物運搬できるような大型とか、安定、長距離、航行時間も長い耐久性高いやつとかあったら山や田舎で便利なんだけどね。

 幸いドローン操縦の資格は私が持っている。

 農薬散布や害獣駆除のジャンバリに使えるのである。

 

 ………………え、これ使えるよね?

 一時期、世からドローンという存在が無くなっていたけど、復活してきた今ならまたこの免許使えるよね?問題ない?

 

 

 れでぃばぐくんは小さいながらもパワフル。

 

 モーターとプロペラ音を鳴らしながら、軽快に飛び上がったれでぃばぐくんは、垂らした紐の先にマスキングテープくっつけたクリップを取り付けて、散らばってる紙飛行機の元へ急行。

 ぺとりとくっつけたそれを、そろりそろりと揺らさぬよう持ち帰ってくる。

 

 設定甘めなクレーンゲームみたいで面白い。

 結局景品がとれる方が嬉しいんだから。

 

 3機ほど回収した辺りで、自分用のお茶を出していた灰原さんが怪訝そうな顔をして聞いてくる。

 

「まさか、飛ばした順番に回収してるわけ?」

「ええ。その紙飛行機にも番号が書いてあるでしょう。それは確か8番機だったはず」

「……そうね」

 

 1、2、3と翼に書かれた同じ形の紙飛行機。

 どこに何番機が飛んでいったか、投げた本人である私が覚えてる限りで順番通り拾いに行くれでぃばぐくん。

 今のところは、上手いこと順繰りに回収出来ている。

 一夜漬けとか……その瞬間だけ覚えとくのは、こうして得意なんだけどねぇ。

 

 これで大学合格したまである。

 

「あきれた……よくそんなくだらない遊び、思いつくわね」

「趣味ですからねぇ」

 

 RPGも好きだけど、目に見えて結果が出る、作業ゲーとかのほうが成果が分かりやすくて好きである。

 そしてゲーム以外でも、単純作業とか、どこをどうすればもっと効率良くなるか考えるのはチャレンジゲームのようで、ただなんも考えずにやるより楽しい。

 

 先程2階に上がったものの他にも何機か上にいるから、だいたいどこら辺に落ちて、どれくらいの勢いだったから滑ってどこまで行ってる……とか予測しながら、見えないギャラリーの飛行機を救出する。

 

 いいねぇ、ビンゴだ。

 吊り上げた機体をそっと持ち帰ってくる小さなドローン。

 こういうの、健気で、かわいく思える。機械は素直でよろしい。

 

 小さくっても力持ち!

 

「阿笠さんもたまにはいいもの作りますねぇ」

「ほっほっ。喜んでもらえたなら何よりじゃよ」

 

 キッチンでお米研ぎながら動画をみていた博士が誇らしそうに髭を撫でている。

 

 改善点をあげるなら、このコントローラーの操作性が最悪過ぎる点と、機体の位置を直接目で確認しないといけないあたりだろうか。

 カメラとかつけてモニターで操作できたら良いかもしれないね。

 あとレバガチャより普通のテレビゲームのコントローラーのほうが慣れてるから、あっちでも操作出来たらもっといいかも。

 それと――

 

 

「あっ」

「こんにちは、試しに肉じゃがを……おや」

 

 裏口が開き、外の風が入り込んできた影響で、紙飛行機を吊り上げていたれでぃばぐくんの挙動が、フラフラと怪しくなってしまった。

 

 

 それと――風の影響を受けすぎかもしれないね。

 元々小さい上に、自分よりずっと大きな紙飛行機を持ってたし、仕方ないけども。

 

 紙飛行機を吊り上げていたクリップを離して、何とかこっちまで帰還させた。おおよしよし。

 

 橋波さんが鍋を持ってやって来てくれたのだが、誰が来たのかを確認するや否や、私がれでぃばぐくんを回収している間に灰原さんはさっさと地下へ潜ってしまった。

 さっきまでそこにいたのに。

 

「また逃げられてしまいましたね」

「ほっほっほ……哀くんは人見知りじゃからのお」

 

 肩を竦めている橋波さんは、特に残念そうという様子でもないが、中々彼と灰原さんの仲は進展しないようだ。

 

 いっそ、私のフリしてこっちに住んでみるとかしたらなんか変わるんじゃね?

 

 なんで避けてるのか知らないが、うわさの“匂い”とやらのせいではないかと新一くんと小林くんに教えられている。

 小林くん曰く、『たぶん、初めて会った時は気を張りすぎてたんじゃないか?』とのことなので、橋波として新しい拠点で過ごしてたらいきなりすみかを焼かれて追い出されたので、正体バレしたのかとか、心配で警戒していた……のではないか、と……

 

 ……なんで意思疎通可能な喋れる人間の内心を考察しなきゃならんのだ。動物でもあるまいに。

 もっと内心さらけ出して行こうずェ……

 

 

 そんな橋波さんが持ってきてくれた鍋には肉じゃががころころころりと。

 ぶっちゃけ私が作るより見た目は遥かに小綺麗だ。

 ちょいとつまんでみても、ホロホロのじゃがいもはホクホクと適度な水分量でほどよく味が染みている。

 

 小林くんにでも教わったの?

 

 近所の奥様に?ふーん……美味いじゃん。

 

「教わったレシピが家族用だったので、この通り多くなってしまいまして。良かったら皆さんの夕飯にでも」

「おお!それは助かる」

 

 阿笠さんがニコニコで受け取っているが、見るからに肉をそのまま1パック丸ごと入れてそうな肉多めの肉じゃがに喜んでるのがよくわかる。

 よそう時は灰原さんに頼むか。

 

 ルンルンと嬉しそうな顔でこちらの鍋に中身を移している阿笠さんを見ていたら、横から視線。

 こちらを見ていた橋波さんと目が合う。

 なんぞや?

 

「いえ……機嫌はだいぶ落ち着いた様子で」

「ああ……ええ、まぁ」

 

 にこりと笑顔で言われてしまった。

 これはこれはお恥ずかしい。

 

 

 今日は午前中から昼過ぎまで、大学でお偉方と口論――うん、口論してきたからね。

 

 念の為にと送迎は阿笠さんにしてもらったが、行く時も帰る時も、私は家から庭から車からと盛大に文句言いながらだったもんで。

 朝は野菜たちに水やりしてくれている橋波さんの横で管を巻いてウダウダしていたら嫌々出てきた灰原さんに『早く行きなさいよ、うるさいわよ』とか近所迷惑がられてしまい、帰ってきてからもこの橋波さんが心配して顔だしてくれるくらいに大騒ぎしてしまった。

 

 

 そんな私が苦い顔してるのに、橋波さんも、鍋を洗っている阿笠さんもクツクツホッホと笑いを堪えておられる。

 

 なんだいなんだい。

 大体、ちゃんと大学からの支援はしっかりしてて素晴らしいとか、言う気はあったんだよ。

 ちゃんとあったのに、無駄に搾れるところは搾ろうとかしてくる方々が文句言ってきやがってるのが悪いんだよ。

 彼らからは、今の研究室を仕切ってるのは私1人に見えてるわけで、それがつっつける穴に見えたってんだろう。

 実際はヒロキくんもノアズ・アークも、いっちゃん汚い大人のする事という代表例みたいなF(ファッキン)J(ジャック)T()R(リッパー)おじさんに翻弄された上に、私を通して社会の利権絡みなおじさんやおば……おねえさんたちの泥沼争いをちゃんと知ってしまっている。

 彼ひとりでもどうとでも出来るだろうけれど、それでも今の彼の立場は“子供”だからな。

 出来るとやれるとその実力が確かにあっても、世間とルールがそれを許しちゃくれない。

 

 新一くんも言ってるけど、『早く大人になりたーい!』って子供が言ってるのは、周りの大人だって少なからず同じこと思ってるのである。早く大人になってひとり立ちしてくれんかなって。

 

 でもヒロキくんがひとりでもやれるってわかってるのは、私やノアズ・アーク、そしてARATAの社員くらいなものだ。

 樫村さんや私が前に立ってるからね。

 

 

 結局のところ、私が不甲斐ないばかりに、私をつつけば利権がポロポロ零れてくると思ってる方々であった。

 

 

 軽率に怪我して、突きどころのある書類提出した私の不徳の致すところで……いや私はちゃんと手続き通りやったし!!

 唯一良かったのは、全部の矛先はちゃんと私に向いていて、ヒロキくんには連絡が行ってなかったことだろう。

 身動き取れない私なんて、醜聞外聞の盾になるくらいしか出来ないからね。

 ARATAに難癖もつけられてなくて本当に良かった。

 

 外部協力の相手にARATAの力も借りてるのだけど、どうもそれも気に食わなかったらしいというか……

 新興のぽっと出企業にサワダヒロキを奪われたくなかったとかじゃないの?

 

 元々協力してくれてるだけなんだってのに!

 

 あと不都合が無ければ、たぶんヒロキくんは将来的には素直に東都大学に進学してくれるだろうからそれまで大人しく待ってから交渉すりゃいいのにさ。

 

「フーム……折り紙とドローンで気も紛れておったんじゃがのお」

「これは、再燃させてしまったでしょうか」

「なに、する事が無くなった寝る前にでも勝手に燃えてたじゃろうから心配いらんよ。せっかくじゃから愚痴でも聞いてやってくれ」

「いやいやははは」

 

 なんだいなんだい!

 阿笠さんも橋波さんも笑いおって。

 こちとら一生懸命に生きてんのよ!

 

「いえ、あなたは随分と……事前に聞いていた話で、僕が考えていた“あなた”のイメージと違うと、興味深く見ていました。“守るもの”と定めたものには全力で向き合うんですね」

「……守るもの?」

「ええ。阿笠さんや、コナンくん、小林さんからは、あなたは『責任を負うのを嫌う』と聞いていましたが」

「それはその通り、なにも違いませんよ。私は”責任”という言葉が大っ嫌いですからね」

 

 何をするにしても邪魔してくる、立場だの、資格だの、責任だの……社会生活ってそういう決まり事が多くて困る!!

 やりたいのひと言で誰も彼もが好き勝手してたら、大混乱で世はまさに世紀末!になっちゃうからね。決まり事ってのは大事なのもわかってるけどさ。

 

「なのに、途中で放り捨てることは出来ないんですね」

「なのに」

 

 今の文脈繋がってたか?

 言いながら、橋波さんはキッチンカウンターから離れた。

 何をするのかと思えば、先程れでぃばぐくんが落としたクリップと、その先の紙飛行機を拾ってきて、わざわざ私の手元まで持ってきてくれる。

 ありがとナス?

 

「落ちる前に捨てれば良いと分かっているのに……あなたはきっと捨てられないのでしょうね」

「はぇ?」

 

 なんの話だこれ。

 私は大学の偉い人達の文句を言っていたはずなんだが!

 橋波さんはそのまま、まだ水の滴る鍋を持ってにこりといつもの笑顔で振り返った。

 

 

「では、私は愚痴に付き合いたくないので帰りますね」

 

 

 そのまま、橋波さんはそそくさと裏口から出ていってしま……

 

 ……おい、そこは長話でも付き合ってくれる所じゃないのかよ!

 

 お兄ちゃんだろ!仲良さげなフリして親睦深めて、あわよくば灰原さんとの距離縮めるんだろ!

 

 逃げるな!もっと興味持って!!

 

 あっ!しかもこっそり阿笠さんも地下に行こうとしてる!

 私の愚痴聞いてくれても良いじゃない!

 

 

 寂しんボーイはほっとくと、何しでかすか分からんぞまったく!

 

 

 

 ■

 

 

 ところで、新一くんが高校生たちと一緒に真純さんとエンカウントしたそうな。

 

 高校生たちには学校で会うのが先だと思っていたが、まさかまさかの街中でバス乗車中にばったり遭遇だそう。

 

 その後事件勃発、そして無事解決、と。

 そこはほら、米花町の日常だからね。

 

 探偵ってのは目の前で事件が起きたら首突っ込まずにはいられないからね。

 

 しかし、まさかまさかの偶然遭遇とは……探偵たちは引かれ合う(“惹かれ”ではない)運命なのかねぇ。

 

 だというのに、いまだに遭遇していないあたり、安室さんは全力で新一くんを避けているんだろう。

 

 でもそろそろ会っちゃうんじゃないかな?

 最近ポアロでご飯食べる事が多いのだと、蘭ちゃんが食事作る手間が省けて喜んでたからね。

 てか下が飲食店やってんだから、貸し出してるビルのオーナーが金落としてやらないでどうすんだよ。

 なんでツケ払いしてんのさ。ちゃんと払ってやれ。

 

 いや、そう。真純さんと新一くんのエンカウントだ。

 真純さんから鬼電鬼メール鬼メッセージがすぽすぽすぽぽぽと通知が鳴り止まないレベルでお届けされて、なんだなんだと出てみれば、

 

  『あの子はいったい誰なんだ!?!?』

 

 

 ……とのことで。

 あれ?江戸川コナンくん、知らなかった?

 

 よくよく聞けば、情報としてこの米花町にやけに賢い少年がいるという話は知っていたけれど、面と向かって彼と出会うのは初めてだったそう。

 

 そうなんだねぇ。

 

 そうしたら、その “江戸川コナンくん” が、昔会った憧れのあの子にソックリだったとかで……

 

 

 

 まぁ……だろうなぁって。

 

 

 

 真純さんと会ってから、私もやっぱりなんかどっかで見たけどいつのどこだか思い出せないからと秀吉に聞いたのである。

 

 そうしたら、『海で兄妹一緒に会っただろ』、と呆れ返った返事が返ってきた。

 その時の詳細、日付、同時にその時の事件の話を聞き、ノアズ・アークにその日の検索出してもらってこっちもようやく思い出せたんだけどさ。

 

 確かに私、あの子に1回会ってたのな。

 

 

 有希子さんに誘われて、海に連れてかれてグロッキーになってたら、偶然秀吉に会って、一緒に売店で涼みながら流木チェスしてた記憶がある。

 その時に紹介されてたんだが、私は“可愛らしい女児向けの水着を着た可愛らしい女の子”、ってイメージが強過ぎて、今のボーイッシュな彼女に中々結び付かなかったのが原因っぽい。

 

 そんでまぁ……その時“有希子さんに誘われて”ついて行ってるので、当然そこには彼女の愛息子である当時の新一くんもいたわけだ。

 

 探偵ってのは人の顔憶えるのが得意だからね。

 

 今の新一くん……高校生のはずの新一くんが、当時の顔そのままで“江戸川コナン”やってたら、真純さんからしたら『あの子は工藤新一の何なのさ』ってなるだろう。

 

 隠し事はしたくないから、一旦本人がそういう設定にしている中のやや踏み込んだ方の『工藤夫妻の内緒の息子2号』とされている事は伝えたが、あの賢さを目の当たりにしてしまったなら、ほんとにござるかぁ?になっちゃうだろう。

 

 探偵ってのは人の言う事をまず疑うのが得意だからね。

 

 ……ホントのこと、言っても良くない?

 あまり探られるくらいなら、最初から教えといた方が良くない?

 

 

 ちなみに話を聞いていた灰原さんから断固として『ダメよ』と却下されてしまったので、相談待ち。

 ダメでござるかぁ?

 

 

 ちなみに何故かその後またもや実はまだあったらしい肉じゃがを持ってきた橋波さんから、以前の話に出ていた知り合いの新人探偵さんを紹介して欲しいと頼まれたが、私の愚痴に付き合ってくれなかったので却下した。

 ダメでござる!

 

 

 明日の検診で、動いていいかどうかの判定が下るが、その前に大学でぽてぽて歩き回っちゃったのがどうなるやら……

 

 ダメにならなきゃいいんですがねぇ!

 

 






後半は別日ですかね
時期がズレていますが、本当に知らなかったかどうかは定かではありません

探偵ってのはカマをかけてくるのが得意ですからね



読んでいただきありがとうございました!
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