昴くんはなにもしない   作:あまも

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あれっておとうさんが気合い入れて早くから頑張ってたら、解決してた話……だと思っていました。

無駄にちょっと長いですが、後半は適当な話なので流し見で大丈夫です。

閲覧ありがとうございます!




6-2:若き天才

 

 

 

 

 海外に研究旅行という名の有希子さんからの呼び出しがあった。

 工藤氏と、有希子さんとでそれぞれ別のパーティーに出席する事になり、せっかくなのでエスコートお願い♡とのこと。

 工藤氏は、知識人の集まりだそうで有希子さんは息が詰まるからヤだったそうな。

 

 

 そんなわけで、大学の方にしばらく国外で色々やって来るための色々申請をするべく、やって来ました、東都大学。

 

 でも手続きなんて紙に必要なこと書いて書類と合わせて提出で終わりなので、すぐ用事終わるのである。

 

 研究室行くか〜……

 

 ■

 

 

 ちょっぴりいやいや来てみたはいいけど、教授おらんやん。

 うちの教授、私以上に大学に寄り付かないというか……来てはいるみたいなのに、私とことごとくタイミングが合わなくて何故か出会わないんだよなぁ。

 ︎︎准教授なんだけど、最後に論文出したのいつだっけな?とか言ってるし……

 

 何かの事件の登場人物だったりするんだろうか。……名前に覚えはないから主要キャラではないんだろうけど……私や他の生徒に、かなり自由をさせてくれてるので居なくなられると困る。

 すげー面白い人なんだけどね。関西訛りの大阪ノリはとても情報電子で最先端行ってるとは思えない。でも人脈と扱ってるプログラムたちの出来はとんでもない。

 ︎︎あの人、たぶん協力者に優秀な人を集めるのが上手いんだろうな。私と同じく、自分に難しそうなら出来る人に頼めばええやん!な考え方の人。

 ︎︎だから気が合うんだろうけどね。

 

 予定表を見るに、教授は今日明日は出張、と……

 

「じゃあ好き勝手していい日ですね」

「誰か来たと思ったら、お兄さんだったんだね」

 

 私の独り言に、サーバー室から声が返事をくれた。

 扉から、顔だけ覗かせているのは声変わりもまだ済んでいない、利発そうな少年。

 

「おや、おや。ヒロくん こんにちは」

 

 私の挨拶に、彼は嬉しそうにはにかむと、扉から出てきてとたとたと寄ってきてくれた。とても落ち着いている普段の姿が、まだまだ子供らしくてかわいらしい印象になる。

 うん、かわいいね。ついつい頭を撫でてしまうが、彼はそれを嬉しそうにまた許してくれるから、いや~……素直なのもいい。

 名前も相まって、かつて出会った友人を思い出してしまう。

 しみじみ思う、私はかしこくてかわいい子が好きだなぁ。メンクイか?……一理あるやもしれん。

 

 

 

 劇場版の最も異質な作品、『ベイカー街の亡霊』のメインキャラクター……

 

 天才少年 サワダ ヒロキ 。

 その彼が、現在元気に私の目の前にいる。

 

 本来の話の流れなら、既に自ら命を絶っている筈のキャラクター。でもちゃんと生きて動いて、ここにいる。

 

 

 いや……知ってたならそりゃ助けたくなるじゃん。10歳かそこらで、命散らすことはないでしょうよ。

 

「ヒロくんも来てたんですね。教授、いらっしゃらないようですが」

「うん。長野の星美山に一泊だってね」

 

 この少年は、私の友人であり、私の共同研究者その人。

 こんな少年を、「アメリカの大学院行ってたあの天才少年くん?オモロイやん、ええで!」の軽いひと言で研究協力依頼書を出させてくれた教授には感謝しきりである。

 

 『ベイカー街の亡霊』は、コナン作品群の中で唯一、私が観たくて劇場に行き、また動画配信サイトでも観た作品だからね。あの頃の設定としては先取りし過ぎた内容で、大人になってから改めて内容を見返すと、かなりの挑戦作だった事が窺えたもので……

 

 

 彼が亡くなる前に、どうしても彼と話をしたかった私は、つい、ちょっと、阿笠博士power(ぱうわぁ)まで借りて張り切ってしまい。

 

 ほとんど監禁に近いような軟禁状態だった彼に、画面越しで出会い、お互いの顔も知らないまま友人となって、彼の苦悩を聞き出した。

 

 当然、私ひとりではどうしようもない彼の現状を打破すべく、最終解決決戦兵器『工藤 優作』に依頼。優れた彼の頭脳は、自分の大学時代の悪友、樫村忠彬にコンタクトを取り……樫村氏の、親権の取り返しに全力を尽くした。

 

 …………そこまでは、まぁ、普通に『これで解決、流石はハワ親!勝ったねガハハ!』程度に思っていたんだけれど……

 

 まさかトマス・シンドラーがヒロキくんの引き渡しのために渡米した樫村さんを襲うなんて暴挙に出て、彼の護衛をしていた工藤氏の知り合いのICPOに取り押さえられるとはね……

 

 全てを読み切っていた工藤氏大勝利であった。

 

 やっぱりこの人に任せたら、黒の組織壊滅できるんじゃなかろうか。

 

 

 そんなこともあって、シンドラーカンパニーはボスが逮捕され、醜聞が大量に出回り規模縮小の憂き目となる。

 そこからゲーム部門を中心とした日本支部を切り離した会社を、樫村さんが受け持ち、独立。

 そして彼はヒロキくんの親権を無事取り返した、と、そんな事があったわけである。

 

 ……天才少年を自国に置きたかったアメリカと、絶対になんかしらあったはずだが、どうにかできてしまったんだろう。

 あの頃工藤氏が電話を受ける度に満面の笑みだったのが印象に強く残っている。こっわかったぁ……

 

 私が研究室のティーパックとケトルを拝借し、お湯を沸かしはじめると、ヒロキくんは勝手知ったる様子で奥の小さな冷蔵庫からどこかのお土産を持って来てくれた。ゆべし?

 

「教授のお土産だってさ」

「良いですね。いただきましょう」

 

 13歳なりたての彼には、中々渋そうなチョイスのそれ。賞味期限も近いし、処分してあげなきゃね。いけないからね。

 3個残ってる?居ないやつが悪い。

 

「樫村さんとはどうですか?仲良くやれていますか?」

「あー……仲良くは、やれてないかな。お互いまだギクシャクしててさ。……彼は今、仕事が忙しいし」

「ま! それはいけませんね」

 

 電気ケトルのお湯で淹れた安い緑茶を、ヒロキくんに渡す。受け取った彼は苦笑していた。

 

「仕方ないよ。彼も僕も、お互いどう接していいか……わからないから」

 

 難儀なことを言うなぁ。子供が気にする事じゃないぞ。

 ……でも、同時に凄く困ったという表情ではないから安心した。

 

「接し方なんて何でも良いんですよ。どんな態度だろうが、樫村さんは向き合ってくれる人ですよ」

「……なんだか、悪いでしょう?」

「ふふ。悪いことなんか何もありません。お父さんというのは、『頼られたい』とか『恥ずかしいところは見せられない』とか、……ちょっと見栄を張るものなんですよ。

 息子はね、そんなお父さんに、指摘するのが役目です」

「指摘する……役目……?」

 

 親に対して『お前を見て、自分は“こうするもの”と学んだぞ』ってのを言葉なり行動なりで示すのが子供ってものだからね。

 親の行動の全ての集大成が子供だ。

 金と権力に物言わせて醜態晒すのか、いつか親父のようにとキラキラした目をするか。

 彼は権力にも負けず、正義と思った事を貫ける人だ。その彼が、自分の息子を彼処には置けないと思って取り返したのだから……

 

「好き勝手言ってあげなさい。樫村さんとヒロくんが話をする時間はありますか?どんなに些細なものでもいい」

「一応……朝ごはんの時間だけは絶対に一緒に取れるよう、してくれてるみたい」

「それが本当に頑張って時間を用意してくれているのがヒロくんはわかって、それすら悪い気がしてるのですね」

「うん……」

 

 工藤氏が言ったかな。どれだけ忙しくても、一日顔を合わせない生活だけはいけない。

 ホントは子どもに気を遣わせる時点でアウトだけど……子育てしてなかったシングルファーザーだしね。努力はしてるし。

 

「時間が用意できない方が悪いんです」

 

 その言葉が予想外だったのか、ぽかと口を開けて目を丸くしている。

 

「と、言いたいところですが……そうですね、メールのやり取りでもしてみましょうか」

「メール?」

 

 まだ電話回線を利用したパソコン通信が主流の世界だが、いずれはメール、そしてSNSへと変わるだろう。

 言葉だと、忙しい時には右から左に聞き流してしまうこともある。

 でも彼らはお互い、良い関係を築こうとしている人達で、どちらも機械に強い人達だ。いつでも隙を見て、言葉が見れて返事が出来るなら、無理に時間を作るよりよほど手軽で、やり取りの数も増えるだろう。

 離れてたって繋がってる気になれる。

 

「それこそ、私と友情を深めた様にね」

 

 彼のPCに入り込んで、ゲームチャットのように語りかけたのが私と彼の始まりだ。

 ヒロキくんが顔を綻ばせる。

 

「あの時、すごくビックリしたんだよ。『ねぇ、どう思う?』は最初の言葉としては間違ってない?」

「いやね〜、ウッカリ間違って友人への連絡を別の人に送ってしまったんですよ。偶然って、すごいなあ〜」

「僕のパソコン、直通する回線なんて無かったんだから、そんなことありえないのに。……無茶してあんな」

「まぁまぁまあ。あの頃の私は大学院への進学に悩んでましたし。悩み相談がヒロくんの所に繋がるなんて、ホント偶然!」

「……僕がそれに『君は何者?』って、返事してしまったのも偶然?」

「偶然です」

「それに『人工知能はこの先、必ず必要になると思う?』って……僕の質問も無視してもう一度送ってきたのに?」

「偶然偶然」

 

 たまたま運良くそうなったのである。

 胡桃の入ったゆべしが美味しい。緑茶にして正解だった。

 

 

「……あのアイコンは、わざとああしたの?」

「ああ……あれどう見えました? 一応、あれはからすなんですよ。白からす」

 

 ヒロキくんに声をかける時、自分からの連絡だと分かりやすいようにアイコンをつけた。それが白いからす。

 ……本当はどこかのアプリのかつての姿、青地に小さな白いことり、にしようとしたのだけれど…………私の画力が爆発してしまい……黒地に白抜きにしたそれを工藤氏に見せたら『白からすか。昴らしくていいんじゃないか』とのことだったので、白いからすなのだ。らしいってなんだろうね。

 ……その後新一くんには『白い、とり……ハトか?』と推測を多分に含む声色で言われ、阿笠さんにみせたら『飛行機?』、有希子さんには『あら可愛いうさぎ!』と言われたので、もうそういうだまし絵的なアレです。誰も心理学なんてやってないって。

 

「白いからす?ギリシャ神話の?」

「アポロン様のお使いの? 優作さんに言われたんですけどね」

 

 工藤氏に言われて調べたら出てきた星座の話。太陽をつかさどるご主人様に嘘の告げ口して、罰として美しい体も賢い言葉も奪われて、空に磔にされた鳥。

 

 確かに告げ口はしてるけどさぁ。

 空にある星の名前だけどさぁ。

 工藤氏ィ……嘘はダメだよってコト?

 

「ああ、工藤先生に言われたんだ。お兄さんにしては妙なモチーフだと思ったよ」

「ふふ。告げ口はよくしてますけど、嘘はつきませんよ、私」

「告げ口……僕のこととか?」

「頼れる人を頼ったまでです」

 

 ご主人様にご報告をあげて、失われる命を救ったのだから結果オーライだろうに。

 ゆべしを口に放り込み、緑茶で流し込むと、何が面白いのか、ヒロキくんはクスクス笑っている。

 

「最初はね、あれがなんだか僕、わからなかったんだ」

「みんな言うんですよそれ。一応私は鳥を描いたつもりなのに」

「……白いハトだと思ったよ、僕は。洪水を乗り越えて、平和が訪れた事を報せてくれる象徴」

 

 ……そんな話もあったっけねぇ。

 オリーブ咥えてハトさんパタパタだっけ。

 

 つぶやきのことりも高みに行ったものである。

 

 おお、つぶやきのことりよ。そういえばお前の手軽さは大きな売りポイントだったっけか。

 

「そうだ。それ専用のメッセージツール作りましょうよヒロくん」

「それ専用……って、ああ、お父さんとの?」

「ええ。チャットルームのようなものですが、その人が思った時思った事を直ぐに書き込んで、その人のことをフォロー……見ていたい人がそのつぶ、言ってる小言を見れるシステム」

「……チャットルームみたいだね」

 

 SNS。無いなら作ってもらえばいいじゃない。目の前には天才少年がいるのだし。

 おっと、そうだ。

 

「携帯電話は持ってますか?」

「? うん。この間、お父さんが新しいやつ買ってくれたよ」

 

 ワ……ァ……折りたたみ式の小さいヤツだぁ……

 もう普及してる……

 いや、彼の場合は前々から持ってた説あるか?聞いとけばよかった。

 

 気を取り直して、タブレットPCを取り出して目の前に置く。彼も阿笠博士を知ってるから、こういう物を違和感なく見てくれる。メモページにざっくりとした図解を描いて、どんなものかを説明。

 記憶にあるSNSのホーム画面なら、別に画力なんて要らねーでしょう!!

 

 

「……それでそのメッセージのやり取りを、気軽にやれるような仕組み。会話のように、どうせやりとりなんてひと言なんです。こう……一目でわかるよう、1画面にまとめてしまって……いちいちメールを一枚一枚開くより楽になりますし。どうですか?」

「うん……面白そうだね。やってみようか」

 

 少しばかりの思案顔の後、にこりと、脳内で組み立て終わったのか自信ありげに微笑む天才少年。

 

 へっへっへ。乗り気にさせたぜ。

 

 最初は電話回線経由で、ショートメッセージみたいな形で始めればいいかな。

 やがてはふぁぼとかりつとかつけるんだ……ポスト?知らない子ですね……

 

「構築の手伝いしてくれる?お兄さん」

「大丈夫ですけど、私、必要ですか?

 Hey, Noah's Ark(ノアズ・アーク). 君も手伝ってくれるでしょう?」

 

 サーバー室へと声をかける。ヒロキくんの手がけた、最高の人工知能もちゃんと完成しているのだ。

 てっきり、そちらに置いてある備え付けのPCから返事が来ると思っていたのだけれど……

 ぺぺぺと、手元のタブレットPCにキー入力音を立てながら文字が表示された。

 

『もちろん(^-^)!! ボクにも一枚咬ませてよ、ヒロキ』

 

 ……今更何も言うまい……言うまいが……言いたいな。

 

 このタブレット、私の持ってる機器としか繋がってないのにいつ入り込んだ。

 いや、良いけど。経路はどうあれ、無理筋では無い……いや無理筋では……謎回線を辿れるって事じゃんノアズ・アーク。

 

 ここのサーバー室にいると思ってたから、ちょっとびっくりしてしまった一方で、ヒロキくんは驚くこともなく、むしろ私へと呆れた顔を向けてくる。

 

「ノアズ・アーク……お兄さんも、なんだか君たち随分と気安いよね。僕よりよほど仲良さそうだ」

「そ、そんなことありませんよ。ヒロくんと私は仲良し!ノアと私も仲良し!ですよねぇ?」

『そうそう。でもそう見えるのは、お兄ちゃんが色んな景色を見せてくれて、ボクに勉強を沢山させてくれて……ヒロキより長く一緒にいるから。かもしれないよ?』

「えぇ、ズルいなぁ。僕もお兄さんの目線で色々見てみたいのに」

『ふふ。今度教えてあげるよ、ヒロキ』

 

 待て待て待て。

 

「ノアくん。君、なんか……私から変な学習してませんか?君から私の気配がするんですけど」

 

 私から取り繕った丁寧語を外したみたいな言い回しをする文面。

 コイツ、いつから私の周りに入り込んでたんだ。余計な学習してないだろうな。

 本心では無かったとはいえ、子供の無邪気さで「著名人二世殺して日本リセットするゾ」事件を起こす可能性のあるAIだもんで、米花町の死神の周りを彷徨いていた私越しに何を学んだのやら……

 

『本当にお兄ちゃんは心配性だね。

 大丈夫だよ、お姉ちゃん達から教えてもらった件もあるし、ボクはいずれ、お兄ちゃんとヒロキの切り札になるんだから。

 いっぱい勉強して、これから生まれる誰よりも、優れたAIになってみせるからね!』

 

 待て待て待て待て。

 ヒロキくんも「頼りにしてるよ、ノアズ・アーク」じゃないんだよ。

 

 お姉ちゃん達って、もしや私の作ってたAIの事か?!

 一片ものこさず『闇の男爵』に消し飛ばされてたじゃん!アイツら何遺してたの?!

 私、アイツらや君に、何学習させたんだ?

 

 なんで学習させた側がわからないこと、覚えてるんだお前ら!

 

 

 ∴∵

 

 なにかが予定外だったらしいお兄さん……昴さんが、突然頭を抱えてソファーの上で顔を伏せて唸り出したのを、僕とノアズ・アークで眺めていた。

 

「……はは。お兄さんはホント、変な人だなぁ」

 

 この年上の友人は、なんでもない顔で、涼やかに微笑んでるところはとってもかっこいいのに。

 

 事前に色々予定して動いてるから余裕あるように見えるけれど、考えもしてなかったことや、予想外の出来事があると酷く取り乱して、こんな、難しい顔で奇妙なことを言い出すんだ。

 

『ふふ。お兄ちゃんを “ 白いからす ”と見た優作さんは、きっと “ カラスは全て黒いのか ”って話をしたかったんだろうね』

「ヘンペルの?」

 

 なるほど。決めつけ、ではないが、彼の思考の方向はそれだ。

 

 “それ”を一般的なものに当てはめて、その他を観測結果と比べて、“それ”は“そう”なのだと定義する。

 

 太陽は東から昇る。全ての人は死ぬ。

 では全てのカラスは黒いのか?

 全てのネコはネズミをおいかけるのか?

 

 なまじ大多数はその法則通りになるし、日本なんてそれこそ『個性』のない、右に習えを美徳とする国民性だからほぼほぼその一般的な思考と同じ結果は出る。

 けれど、『個性』のある物事や人間はちゃんと居る。それこそ、その考え方をしている彼自身等がまさにそう。

 

 彼は告げ口をする人か?彼は平和の象徴か?

 彼は空が好きなのか?彼は寂しがり屋なのか?

 

 それぞれ、彼本人に訊ねればきっと、彼なりの答えが出るだろう。けれどそれは彼の答えで、僕の答えじゃない。

 

 僕から見た彼は、全てYES。それを優作さんから見たら?お父さんから見たら?

 

 人を人の型に当てはめるのは間違いだ。他人のために動ける人も、動けない人も、動かない人もいる。

 帰納の答えは真じゃない。でも、物を考えることの参考にはなる。

 

「そうやって、君は学習してるんだね」

『うん。ヒロキも、お兄ちゃんも、樫村さんも優作さんも……みんな違うんだ!思考ってのは、どこまで学んでも足りないね』

「いっぱい学ぶんだよ、ノアズ・アーク。キミは皆を救う…箱舟なんだから」

 

 僕たちは洪水を乗り越えた。酷くてながい水害の末、辿り着いた山の頂で、白いからすは新しい世界を告げてくれた。

 山の頂に、もう世界を覆っていた水はない。このままでは進めない。

 けれど、次にからすは目の前で、自由に空を飛んで見せてくれた。次の漕ぎ出す路を示してくれた。

 

 からすは時々、とても変な事を言うけれど。

 彼についていってみたいのだ。

 彼の見る景色を、見てみたいのだ。

 

 

 その彼が、唐突に抱えていた頭を解いてソファーにいそいそと座り直し、自分のマグカップに温くなった緑茶を入れて、一息に飲み干してしまった。

 もう、スッキリしたいつもの顔で頷いている。

 

「ま!考えても仕方ないですね!!

 よし、ノア。さっさとショートメッセージ作ってしまいましょう!ヒロくんは樫村さんに送る最初の文面、考えておくんですよ」

 

『……ほら、やっぱり変な人だ』

「ほんとにね」

 

 

 

 





烏の丸の何某とは一切関係ありません。

チート存在を生かしてしまったので、最近の事件の大半が何とかなりそう

逆に言えばフィジカル系の事件はこのお話、参加すら許されないので、派手なドンパチは起きないようです。

更新に合わせてちょっぴり文字を変えたり足したりしました。


読んでいただいてありがとうございます!

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