昴くんはなにもしない   作:あまも

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今どきランキングが残るゲーム、あんまりない気もしないでもない


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71-2:ゲーセンの守護神

 

 

 今日は高校生のみんなを連れて、久しぶりのゲーセンに来たぞ!

 

 

 ここんところ本堂くんの件で忙しかったのから始まって、病院から出れなかったり大学の手続き周りで嫌がらせされたり山に行きたくなったりしてたので、全然顔を出せなかったのである!

 

「ひとりで来てもつまらないですからね」

「ホントにいいのかい?」

「ゲーセンって結構騒がしいんですね……」

 

 本堂くんが辺りをきょろきょろと見回しながら呟く通り、店内には腹に響くような重低音の効いた電子音と、乱反射するカラフルなモニターの光、甲高い音声はクレーンゲームからかな。

 そして見知らぬ誰かの歓声があちらこちらで。

 音と光が店内を入り乱れている。

 眩しいし、騒がしいよねぇ。

 

 そんな喧騒のなか、私は高校生たちへと向き直る。

 彼らには、入院中に暇つぶしに散々付き合ってもらったからね。そのお礼も兼ねているのさ。

 

「今日は奢りますから。皆さん、好きなゲームを自由にやってもらって良いですよ」

 

 さあさ、好きなゲームを、思う存分やるがいい!

 

 

「蘭、前のあの格闘ゲームやりましょ!」

「うん!リベンジマッチね」

 

 園子さんは張り切って、以前のVRゲームへと向かう。

 真純さんと本堂くんが『前の?』と声を揃えて聞いてくるので、案内ついでに両替機で小銭を量産しながら、以前あった些細な件の話をば。

 ヤバいやつと、そのヤバいやつを街から追い出そうと頑張ってた男の話。

 

 あの時は蘭ちゃんも園子さんも、ふたりとも可愛いから悪い男に絡まれたのだろうけど、逆に言えば私やジョディさん、そして新一くんの目の前で炙り出せたので、ある意味助かった。何かあっても彼らがなんとかしてくれたろうし。

 

 あの後、尾藤に食い物にされていた、志水さんの妹さんもすっかり元気にやっているそうだ。

 今となっては、「なんであんな男にしがみついていたのかわからない」と首を傾げているらしい。

 昔から、“恋は盲目”って言うものね。

 

 筐体の向こうから、騒がしい歓声と罵声が聞こえてくる。ゲーマーはお口が悪ぅございますわね。台パンはご遠慮くださいね。

 真純さんが眉を顰め、本堂くんがびくりと肩を震わせていた。

 

 ま、ゲーセンはやっぱり治安がほんの少しだけ悪いから。

 注意しようね!

 

「フーン……って、蘭くんも園子くんも!先に行っちゃったじゃないか!」

「わわわ、また絡まれてたら大変じゃないですか!」

 

 話を聞き終わったふたりは、私が彼らの手のひらに落とした小銭の音で我に返って、慌てて騒がしい店の奥の、蘭ちゃんたちが向かった方に駆けて行った。

 店の中は走っちゃダメだぞ〜。

 

 

 

 今は志水さんが、ここら辺一帯のゲーセンの治安を良くしようとゲーム仲間で協力し、連絡網を強化してくれてるから、なんなら東都内においては街中より安全なんじゃなかろうか。

 あ、いや、警察の目が行き届いていないとかって話ではないですよ?

 

 ……尾藤の手下が報復に来ないよう、この杯戸と米花をテリトリーとして常に見張ってるってのが、志水さんの本来の目的だけど。

 彼のあの執念……悪い方に向かなかったのは良いけれど、あれでもしも彼の妹さんの容態がさらに酷いことになってたら……今頃どんな報復してたかわからんな。

 

 

 やっぱ妃先生なのよ。

 

 

 志水さんのお友だちの店員さんに、私が久々に来店したことを軽い挨拶でお伝えしておく。

 ついでに、もしもの時はあの一緒に来た高校生たちのこともよろしくね、と。

 蘭ちゃんが、前に尾藤に絡まれていた女子高生だと覚えている彼はしっかりと頷いてくれた。

 

 あのゲームは志水さん御用達で人気ゲームだからまだ残っているが、筐体がいくつか見覚えのない物に変わっていて、やっぱり定期的に来ないと顔ぶれも変わっちゃうな、と考えながら軽く流し見ていた。

 

 ランキングに“m44”とかいうのがいる。

 プレセペ?

 ……私の真似っ子ちゃんか?

 

 おもしろいから、後で上書きしておこう。

 

 

 ■

 

 

 蘭ちゃんと園子さんがキャッキャと楽しげに格闘ゲームで殴り合っている。

 これがキャットファイトってやつです?

 

 現実はきゃあきゃあやってるが、モニターには、可愛げの欠片もないむさい髭だるまと筋肉ゴリラが揉み合って殴り合いをしている。

 席に座る女子高生達の方見てれば何の問題もないさ。

 女の子キャラとか、ちゃんといただろうに。

 

 真純さんはその後ろで腕組みをしながら、後方応援団。

 

「よーし、勝った方とボクが勝負!手加減しないぞ!」

 

 なんて好戦的な笑みを浮かべて待機中。

 リアルファイターな彼女だからなぁ……初めてこのゲームをやった時の蘭ちゃんみたいになりかねない。

 怖いな。

 今から他人の顔しとこうかな。

 

 本堂くんはさらにその後ろではわわ顔。

 

「ひぇー……なんか痛そうだし、ちょっと怖いゲームですね……」

 

 なんて、こちらは情けなく眉を下げている。

 

 いやぁ……青春だねぇ。

 学生ってのはゲーセンかフードコートかカドショで屯するもんでしょ。

 そりゃ男子の行くところ?女子高生がどこ行くか?

 うーん……カラオケ?

 

「じゃあ、私は少し店内を見てきますね」

「あ、はい」

 

 そんな元気な高校生たちを微笑ましく見守りつつ、本堂くんにひと言告げてからそっとその場を離れた。

 

 彼らが夢中になっている間に、ちょっとばかりこっちも作業を進めておこう。

 

 

 まずはいつものガンシューティングゲーム。

 よしよし。まだ“M45”の名前が一番上で光り輝いている。先客に荒らされた形跡はない。

 ジョディさんのデータは随分下に行っちゃったな。

 結局、彼女は本当にゲーム好きだったんだろうか。潜入のためには色々と“誤魔化す”こともあるのは、零くんや景光くんで良くわかってるからね。

 一緒に都内のゲーセン巡りしてた時は普通に楽しかったから、仕事とか関係なしに、また日本に遊びに来たりしないかな。

 

 …………あの人って橋波さんの存在、知ってるのかしら。

 ワンチャン、入れ替わりネタを試すならああいうところが良いんじゃない?

 ほら、きっと橋波さんも彼女のことは良く知ってるだろうし、彼女は逆に“取り繕ってる”私しか、知らないだろうし。

 

 え〜おもしろそうかも〜!

 

 帰ったら、橋波さんに聞いてみようかな。

 ……いや、その前にジョディさんが来日予定あるか確認か。

 あの人もお国での本職、忙しいだろうけど……“同僚”が亡くなって、傷心旅行とかの機会はあるかもしれないし。

 

 

 なんて気もそぞろにパカパカ撃っていたら、パーフェクトを取り逃してしまった。

 鈍ってんねぇ!

 

 それでも今月のランキングには載ったからいいや。m44はこのゲームはやってないみたいだし。

 

 

 高校生たちに支給した小銭が尽きるまでは、もう少し時間がかかるだろう。

 それまでに、新顔をいくつか“お試し”しておこうかな。

 

 近くの、空いている真新しい筐体に両替したばかりの100円玉をチャリンチャリンと投下していく。

 いやぁ、わざわざ席空けてくれなくてもいいのよ。杖ついてるけど念の為みたいなもんだから、いくらでも立って待ってますのに。

 

 

 格闘ゲーム……私は反撃持ちのほうが好きである。

 

 レーシングゲームは……これも似てるやつがあった気がするけど、キャラクター重量やアイテムで差別化がされているらしい。

 リアル寄りよりこういうキャラものの方が、事故っても痛くなさそうだから好き。

 リアル寄りのをやってると、頭を金額が過ぎるのよ……マイカーとして、貴重なのに乗ってるせいかな。

 

 スバル360は立派なクラシックカーやぞ!

 

 ほかにもクイズやら釣りやら……色々増えてんねぇ。

でもメダル落としゲームがいちばん、なんも考えずにチャリチャリやれていいかもしれない。

 前まで貯めてたメダル、期限切れちゃったからまた貯めないと……いや貯めたところで何にもなんないけどさ。

 

 楽しいかって?

 うーん……

 

 陣取りゲームみたいなもんだよね。

 こうやって、いろんな画面のスコアランキングに“M45”の文字を刻んでいくのはさ、私が帰ってきたぞいって、みんなへのお知らせにもなるし。

 

 なんせ、この“沖矢昴(からだ)”の動体視力と反射神経があれば、大抵のものは初見でもゴリ押しできてしまうのだ。

 

 

 それにしても……いやぁ。

 映像が綺麗。

 ちょっと前までドットの荒いのばっかりだったのに。

 時代がしっかり戻ってきてるのを感じるのと同時に、ちょっとだけ、あの荒いカクカクした……バグまみれのゲームが懐かしくなっちゃったりする。

 バグはあったらあったで挙動が面白いから、それはそれでいいんだよねぇ。

 

 ゲームとして成立しないようなのは、発見次第修正パッチ入るし……

 

 

 そうやって、杖を突きながら片手間で、新筐体の記録更新ツアーをしていると、背後からわらわらと足音が近づいてきた。

 

「沖矢さんたら、こんなところでやってたの?」

 

 とは、プリクラでも撮ってたのか、来た時よりほんのり化粧が整った園子さん。

 

「あれ? スバルさん、さっき向こうのシューティングゲームの所にいませんでした?」

「ええ、ちょっと色々なゲームを“お試し”していましてね」

 

 本堂くんが不思議そうに画面を覗き込んでくる。

 ちょっと待ってね、すぐ終わるから。

 

 

 ……で、君もプリクラ混ざってきたの?

 あらやだ、青春じゃん。

 真純さんが見せてきた小さいシール写真には、小さいがしっかりと4人同じポーズ同じ表情で、仲良し4人組が写っていた。

 ひとり、“彼”がやや恥ずかしそうに付き合わされてるのがリアルだ。

 そして“彼”が混じっているのに違和感が仕事してないのも、なんというか、これが顔パワーかと。

 

 真純さんのお陰で、男の子がふたりと女の子がふたりでバランス良く……ん?

 

 ………………

 

「園子さん、これ彼氏さんに見せない方がいいと思いますよ」

 

「ええ?なんでよ。こんなに結構、かわいく盛れてるのに」

「いや……浮気とか言われてもいいなら良いですけど」

「「浮気?」」

 

 4人が顔を見合わせて、そのプリを眺め、そして3人が顔を上げて真純さんと、プリを交互に見比べている。

 

 シールの中には左に蘭ちゃんと園子さん、右に本堂くんと真純さんが写っている。

 本堂くんが、後ろで辛うじてズボンなのが判るせいで、前の上半身しか見えない真純さんも『男性なのでは?』と思われてしまいそうな、そういう誤解が発生しそうなプリとなっていた。

 

 まぁ……つまり……これ本堂くんは一見男性に見えないけど、男性だとしても恥ずかしがって隣の蘭ちゃんから少しスペース開けてるから、『ああ、付き合わされてる男友達だな』とわかるのだけれど、その下でベッタリくっついておそろっちポーズしてる仲の良さそうな園子さんと、真純さんが……

 

 理解した途端、本人含めて笑って流せているから良いが、あの無敗の格闘家が勘違いで真純さんにライバル心抱くのは……

 

 あぁ〜ありそう〜!

 バトルラブコメお決まりの展開でありそう。

 なんならサスペンス要素まで絡み合い、どちらかが容疑者として険悪な雰囲気のまま捜査に加わる流れな気もする。

 もしくは本気の勝負が始まる直前に園子さんが割って入るか、蘭ちゃんが力技で止めるかして、現場がてんやわんやの騒ぎになる未来が見える。

 

 頼むから、そんな未来はご遠慮願いたい。

 が、ありそう〜!!

 

 いや、あってほしくないんだが!

 

 真純さん、そういう感じの勘違いで周りをドキドキさせる起爆剤なんです?

 

 

「じゃ、真さんにはコレ、見せないようにしておこうかしら!」

「いやいやいや」

 

 説明しながら見せなきゃ。隠したら隠したで、なんかわからんが神のいたずら的な風で彼の目の前にぺらりと現れて、この男は誰ですか!ってなりそうだもん。

 ら、ラブコメのタネがこんな所に撒かれているとはね……

 

「ああ、そういえばゲームは終わりですか?」

「あ、そうそう。奢って貰った小銭、使い切っちゃって」

「あっちのバイクのレースゲーム!世良さんと蘭が競り合ってたのよ!白熱してたわ!」

「いやぁ、蘭くんは運転の才能もあるなんてね!」

「そ、そうかな……」

 

「……まぁ……毎回ボクはビリなんですけどね……」

 

 色々試してきたが、4人で一斉にやれるレースゲームがお気に召したらしい。

 将来的にも送迎して貰えるであろう園子さんはともかく、現役バイカーな真純さんと競り合ったの?

 そうかそうか、蘭ちゃんはバイクの才能もあるのか……

 小五郎さんも、マイカーでもないのにシレッと事故回避出来てるもんな……

 

 本堂くんは元気だせって。

 でもバイクに憧れて免許取ろうかなとか考えてるらしいけど、大丈夫そう?

 あっちにリアルな車のレーシングゲームあるから、後でやってみる?

 

 

 ■

 

 真純さんが、今しがた私がプレイしていたパズルゲームのランキング画面と、隣の落ちモノゲーの画面を交互に見比べて、目を丸くした。

 

「おいおい……この1位、『M45』って……『スバル』のことだろ?そっちのも。……まさか沖矢さん、ボクたちがゲームやってる間に、この辺のゲームのランキング、塗り替えてたのか!?」

「わ、ホントだ!あっちのゲームも!」

 

 M45で気付くんだねえ。

 あとあっちのは前からあるやつだから、更新されてないだけかな。

 

「いやいや。ちょっと頑張っちゃいましたね」

「あ、こっちのパズルゲームもだ……」

 

 すっかりランキング画面の“M45”の文字に気を取られた本堂くんが、キョロキョロと周囲の筐体を見ながら歩き出し――ドンッ、と。

 通路を歩いてきた、『私はヤンキーです』と自己紹介してる見た目な男の肩に思いきりぶつかってしまった。

 

「いてぇな! どこ見て歩いてんだテメェ!」

 

 男のドス黒い声に、店内の空気が一変する。

 

「ひっ、ご、ごめんなさい……!」

 

 ビクッと縮み上がる本堂くん。

 ある意味才能かもしれない。

 よくもまあ、こんなにドジを……わざとじゃないってホント?

 

 しかし、その横でスッと世良さんが前に出た。

 あの構え、完全にやる気である。

 

 護衛、やってんねぇ!

 

 初撃をいつでも叩き込めるよう、リラックスしつつも重心を落としている彼女。握らない拳が彼女らしいけど、あれって初撃目潰しのパターンもあるからって、マジ?

 そして蘭ちゃんも、園子さんを庇うようにスッと前に立ち、鋭い視線を男に向けた。

 

 おっとぉ……血の気あふれる武闘派女子高生たちだこと。

 

 私が間に入って止めるべきか。

 いや、あの構えはもう手遅れか……?

 

 そう思った矢先だった。

 

「おーっと! すんません兄さん!」

 

 男と真純さんたちの間に、くたびれたシャツを着た青年が、まるで見えない壁を作るようにスッと滑り込んだ。

 

「いやぁ申し訳ない!こいつらウチの地元の後輩でして、田舎から出てきたばっかでキョロキョロしちゃってて!ほらお前らもちゃんと謝れって!」

 

 青年はペコペコと頭を下げて調子良く宥めながらも、互いの距離を絶妙な間合いで引き離している。

 

「チッ……ガキの面倒くらいちゃんと見とけや」

「いやホントすんません!兄さん怪我ないっすか? あ、これお詫びって言っちゃなんですが、そこの自販機でコーヒーでも!いやいや受け取ってくださいよ!」

 

 青年がポケットから小銭を押し付けるように渡すと、男は面倒になったのか、舌打ちをしてそれ以上は突っかかることなく奥のメダルゲームフロアへ消えていった。

 嵐が去って、ぽかんとしているのは真純さんと蘭ちゃんだ。

 

「あれ……?ボクの出番は……」

「え、えっと……?」

 

 構えた拳のやり場に困って、完全に肩透かしを食らっている。

 

 

 間に入った青年はくるりとこちらを向くと、私と目を合わせてニッと笑い、軽く会釈をしてきた。私も手を振り返す。

 見覚えは……無いかな。

 誰ぇ?

 

 しかし、ちゃり、と彼の腰の、チェーンに付いたキーホルダーが鳴った。あの格闘ゲームのキャラクター、“ルータス”のロゴである。

 なるほど納得。

 

 志水さんのゲーセン互助会、しっかりと機能しているじゃないか。

 さっきのやんちゃそうなお兄さんも、そのキーホルダーを見たのだろう。

 あんな風に角を立てずにトラブルを未然に防ぐやり取りも、なかなかどうして慣れたものだ。

 素晴らしい治安維持活動である。

 

「……さて、気を取り直して。せっかくですから、みんなで遊べる音ゲーでもやりましょうか」

 

 去っていった青年から気をそらすために、私が何事もなかったように促すと、狐につままれたような顔の高校生たちも、ぞろぞろと音楽ゲーム筐体へとついてきた。

 

 言うて私は苦手なんだけど、高校生がやってるのは良く見かけたことがあるからさ。

 楽しいんじゃない?

 

 さてさてそれではじゃあどうぞと促したが、4人とも初見さんらしく、首を傾げてどういうゲームなのかの説明を聞く姿勢である。

 周りも何故か、さっきまでやってただろうに、空いているのに誰も手を出そうとしない。

 

 あの……上手い人、誰か解説しながら、やってみて、ほしくってぇ……

 

「沖矢さんがやって見せてくれるんじゃないのかい?」

「えっ」

 

 私でござるか!?

 

 い、いやぁ……音ゲーは苦手で……

 

 蘭ちゃんや本堂くん、真純さんからの期待のこもった眼差しと、園子さんからの面白がるような腕組み泰然お嬢様姿勢。

 

 こういうの、景光くんにやらせると軽ーくカッチョ良くやってくれちゃうから、景光くんにやらせたい曲の解放のための段位保持であってぇ……

 

 や、やりますよぉ……

 

 選曲方法を教えながら済ませ、ゲームスタート。

 上から降ってくるノーツに合わせて手元のボタンを叩く、仕組みは王道のヤツだ。そのまま、来たやつを来た通りに叩けばいい。簡単だね。

 

 しかし、私にはリズム感なんてのはないのである。

 

 しかもこんな人前で、音楽に合わせてノリノリで叩くなんて器用なことはできない。

 

 

 じゃあどうするか?

 

 

 飛んでくるアイコンが判定ラインに重なる瞬間を、ただただ見て、その通りに指を動かすだけだ。

 

 BGMの裏拍だの、メロディのタメだの、そんなものに私が合わせたら勝手にズレてミスが出るのでね。

 音は無視して画面のピクセルとピクセルが交差するタイミングをこの動体視力で捉え、物理的な反射速度でボタンをペチペチと叩く。

 

 そうです。

 もちろん、パワープレイ!

 

 これは果たして音ゲーをやっているのかと言われたら、うん……

 もはやモグラ叩きか動体視力テストだよね。

 身体でリズムを刻むこともなく、ただ正確に指だけが動いている状態だ。

 

 それを後ろで見ていた高校生たちは、歓声を上げるでもなく、ただただ静かに……引いていた。

 

 

 ごめん、ごめんて!ね!

 やっぱり、こういうのは楽しそうにプレイする人のを見るのが一番だよね。

 

 いたたまれなさに、思わず顔を覆いたくなる。

 ジョディさんが周りの目も気にせず、純粋にゲームを楽しめていたのは、間違いなく一種の才能だ。

 私などは、どうしても羞恥心が勝ってしまい、こんな不器用な振る舞いしかできないのだから。

 

 だから、あんまり見ないで!音ゲーは苦手なんだよ!

 





モブキャラはモブキャラなので気にしなくて大丈夫です


読んでいただきありがとうございました!
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