昴くんはなにもしない   作:あまも

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悩んだ末になるようになれってことでぶん投げてみることにしました
なぁに故事成語言わせておけばなんとかなるなんとかなる()


閲覧ありがとうございます!


72-2:危険なふたり

 

 

 

 

 山梨での発明品発表会に向かった阿笠さんと、灰原さんから、『ビートルがエンストした』との連絡が来た。

 

 

 こないだ直したばっかりじゃないか!

 んもう、おじいちゃんなんだから!

 

 

 でもまぁ、JAFに近くの交通機関までは送ってもらえたそうなので、バスなり電車なりタクシーで帰ることは出来るだろう。

「迎えいこうかと?」と私が言い出すのを先んじて封じてきた灰原さんからの、遅くなるし、時間も読めないので先に休んでて良い、という連絡のお電話だった。

 それでも「お迎えは?」と訊ねたが、ため息混じりに『要らない、断固として要らない』、とのこと。

 私の足はもう大丈夫だというのに。

 

 

「あれ、迎え行かないのか?」

「断られてしまいました」

 

 

 小林くんもいるというのに!

 

 

 今日の小林くんは入れてたバイトが“先方の意向”により急遽休みになったので、遊びに来ていたのである。

 

 ……詳しく言うなら、小五郎さんの探偵業務、浮気調査の手伝いに駆り出されていたんだけど、顔を合わせたその瞬間に、こう……

 小林くんから漂うミステリアスな高身長イケメンオーラに、えー……

 ……いわゆる、“NTR(ネトラレ)”の気配に敏感になっていた依頼人が警戒してしまって、この人を調査から外せとのご意向だったそうで……

 

 

 最近浮気調査で引っ張りだこな“安室探偵”に依頼しなかったわけだ。

 

 それで暇を持て余した小林くんが、“007”でも観るか!と連絡してきたのは半ばヤケクソみたいなところがあったのかもしれない。

 

 ……にしても、小五郎さんはいいんだ……?

 あの人だって、ときおりキメ顔してる時とかかっこいい人なんだがな……

 普段は……うん……今は新一くんのアシストのせいで随分高い下駄履かされて、かっこいいお顔が見えないけどさ。

 

 調子にさえ乗らなければすごくイケおじだと思います。

 

 

 ま、なにはともあれ、小林くんの手が空いているってわけだ。

 私だってもちろんバッチリばちばちお手隙である。

 ……ノアズ・アークは隙あらばコクーンの話題挟まないの。前だってARATAのみんなだけで何とかなったでしょ。

 一旦頑張ってみて。

 どうしてもだめなら“さいつよ”のメンバーでベイカー街の亡霊クリア頑張るから。

 

 

 

 そんなわけで、珍しく暇を持て余した小林くんは「なんなら俺たちで、コッソリ迎えに行ってやろうか!」なんて言って、いくつかのDVDを振りながらニコニコの笑顔なのだった。

 

 えー、どうせなら寛ぎながら集中して観たいし……断られちゃったし。

 

 でも小林くんも居るよって情報は伝えといて損はないだろう。

 

 灰原さんは『バスも電車もある』と言っていたから、あちらからの帰路だとルート的には何通りかあるけど国道20号線走ってたんじゃないかと思うし、となるとバスならそろそろ乗った頃だろうから……バス車内の彼らと連絡を取るなら、メッセージかな。

 と、携帯を開いたタイミングで、丁度良いことに阿笠さんから再度、電話が入る。

 

 ……ん?

 バス、遅れてるとか、乗れなかったか?

 

『博士が、サイフをどこかに落としてしまったみたいなの……』

「Oh...」

 

 やらかした阿笠さんが、バスの運転手に断りを入れている声が灰原さんの背後のほう、電話口からやや遠くから聞こえてくる。

 バスの扉の閉まる音、そしてエンジン音をお見送りしている音。

 

 

 んー……

 

 

 料金払えないタイプの問題かぁ。

 今どき交通系電子マネーとかもあるにはあるけど、携帯には彼らは入れてなかったようだし……阿笠さんは財布にそこら辺のカード類もまとめて入れちゃってそうだ。

 とりあえず阿笠さんのカード類の停止申請しといてあげようね。

 

『今回は財布の中に大事なものは入れてなくて、交通費とか食事代程度の現金だけだったそうだから、停めなくて大丈夫よ』

「おや、そうですか」

 

 灰原さんがもしものために、使う予定のないカード類は置いていけと言っておいてくれたそうな。現に、小林くんがどこから漁ってきたのか阿笠さん名義のカードを戦利品みたいに持ってきた。

 

 それは戻しときなさいね。

 

 タクシーにでも乗れたなら、こっちに到着次第“着払い”できるが、流石に県を跨いではるばる来てもらうのは……そのタクシーの運ちゃんが大変だろう。

 こちらから向かうくらいなら、それこそ小林くんに頼む。

 

 さてさて現在地は?

 今、大月越えたあたりだっけ?

 

 しょんぼりしている阿笠さんでは要領を得ないので、引き続き灰原さん(小さなお姉さん)から、詳しい現在地を聞き出す。

 停留所の名前はアタリをつけてた辺りにジャストだったので、私の勘も捨てたもんじゃないなとやや嬉しくなった。

 やはり大月を越えて、山の方まで来ちゃった所だったらしい。

 

 そのままノアにこちらで検索をかけてもらって近場に休憩できそうな場所は無いか探すも、良さそうな所が見当たらない。

 

 

 うーむ……連絡が来てすぐに、無理やりにでも『お迎えに行くよ』と伝えてこちらを出発していれば、少しでもあちらの待ち時間は少なく済んだろうに。

 

 そっちの勘はダメだったってこと。

 1勝1敗!

 

 

 ふたりの現在地の周りに民家はちらほらあるが、こういうパターンで民家にお邪魔したら事件発生……とかありそうだし、灰原さんは人見知りだ。

 

 とはいえ……外で待つのは辛かろう。

 

 少し長くはなるが、歩いて麓まで行くにしても……子どもとメタボな初老だし……

 

「待ってる場所が無いとなるとな……」

「ですねぇ」

 

 昼ごはんついでに軽くつまめるものを適当に作り始めてくれていた小林くんが、嘆息しながら一緒に考えてくれている。

 いつでも出られるように、既にルートを考えているのか、貸し出しているスマホを片手間に弄り出している。

 私が「行こう」と一言いえばすぐにでも一緒にお迎えに行ってくれるつもりらしい。

 かく言う私も上着着込んでいるからどっこいどっこい。

 

 

 とりあえずちゃっちゃと出発してから話をまとめるか、と、そんな準備中だった。

 灰原さんと繋がっている電話口の向こうから、車のクラクション。

 次いで、女性と阿笠さんが何やら話をしている声が聞こえてきた。

 灰原さんに聞いてみる。

 

「トラブルですか?」

『いいえ……私たちの様子を見ていた車が、近くまで送ってくれるみたい』

「おや、それは良かった」

 

 基本的にはこの世界、日本は日本で、善人は善人だからね。山の道端に困ってそうな老体と子どもがいたら、そりゃ助けてやろうという気にもなるだろうさ。

 

『良かった、のかしらね…………少し気になる点はあるけど、博士も乗り気だし……とりあえず乗せてもらうことにするわ』

「ええ、了解しました。携帯の充電は大丈夫ですか?」

『――心もとないわね……待機出来るところに着くか、何かあったらまた連絡するから、いつでも出られるようにしておいてくれる?』

「はい。メールでも電話でも、いつでもご連絡ください」

『ええ、……頼んだわ』

 

 やや申し訳なさそうな、でもこの展開にほんのりとした不安もあり……といった調子の灰原さんだ。

 彼女は人見知りだからねぇ。

 それでなくとも、知らない人の車に乗るのって怖いよね。

 

 話をスピーカーで聞きつつ、ルートも決めて着々と軽食を拵え中の小林くんが、背筋伸ばしながら決定を待っているが……ひとまずは大丈夫らしいよ?

 

「運良く、東都方面に向かう車が拾ってくれたそうですよ」

 

 …………うん……

 小林くんたら、表情が豊かだね。

 徐々に眉を顰め、うーとかむーとか唸り出した小林くんである。

 

 言いたいことでもあるのかい?

 

「いや……俺、それと似たような流れで江戸川くんと一緒に、宝石強盗犯の車に乗ったことあるんだが」

「ですよねぇ」

 

 私がコクーンで遊んでいた時の話だな。あれも寒い時期の事だっけ。

 

 広い窓の外の景色に目を向ける。

 外は木がすっかり葉っぱを落として寒そうにしている。

 ………………この間夏だった気がするのに、もう何故か冬だからね。なんならこの間知らない間にドカ雪降ったらしいからね。

 ︎︎私は冬籠りしていたことになっているらしい。冬眠か?

 

 

 どうだろう……え、やっぱりもう出ちゃう?

 

 

「でも行き違いになったりしたら困るもんなぁ」

「いっそ、そうなったらなったで、そのまま長野まで行っちゃいます?」

「あー……えー……アリかも?」

 

 灰原さんが警戒気味な口調だったので、ノアズ・アークには彼女たちからの連絡が来たらすぐに知らせて貰えるよう頼んだが……案外大丈夫かもしれないじゃん?

 

 だって死神もとい、主人公は今、毛利探偵事務所のおこたでぬくぬくしてる頃だろうし。

 脇役が危険になるのは大抵、主人公が助けに行ける時だろうから……少なくとも都内に入るまでは安全なのでは……?

 

 それとも、この小林くんが助けに行くと事件が起こる系……?

 小林くんも十二分に主役級だもんなぁ。杯戸で“グレイマン”として都市伝説やってるし……

 うーむ……判断が難しいところ……

 

 

 

 そんな、長野に行くタイミングについての話題を、確認がてら風見さんにメッセージで送ったところ、『もしかしたらそのまま向かってもらうかもしれない』、とのお返事。

 

 あら?

 

 詳しく聞いたところ、トクメイさんが信頼してる刑事さんたちが丁度、トクメイさんが飛ばされた長野の端っこの方へ、事件捜査のため現場に来ているらしい。

 中々複雑な事件だとのことで、助っ人を頼みに彼らはかの名探偵、毛利小五郎を呼びに出たんだって。

 それでこのチャンスに、連絡してきてくれたんだとさ。

 長野県警に探られることなく接触するのに良い機会だから、そちらの予定はどうかと声をかけられた、とのことで……

 

 えー……そんなん……言ってくれれば迎えに来なくともこっちからお送りいたしますのに。

 マジで行っちゃう?

 小林くんなんて、お昼に食べるはずだった揚げてたハムカツを、サンドするための食パンの耳切り始めてるぞ。

 あらやだ、このハムカツ厚切りじゃん。

 

 美味しそう!

「こら」

 

 

 油を切って冷ますためか、バットの網の上でキッチンペーパーのオフトゥンを掛けられてお休み中のハムカツを1枚、味見しようとしたら菜箸で手を挟まれ、危うく揚げられてしまうところだった。

 危ない危ない。

 代わりに素揚げのごぼうに塩振っただけのパリパリを小皿に乗せて渡されたけど、これはこれでうま!

 

 小林くんは本当に、ちゃちゃっとあるもので作っちゃえるあたりが料理上手だよねえ。

 私は手際が悪くて……

 

 

「ん。ハル、連絡が来たぞ」

『お兄ちゃん、メールだよ』

 

 マナーモードの微かな振動音に、一足先に気付く小林くん is 何。

 

 で、灰原さんは灰原さんで、なんだってんだい。

 

 

『ヤバい連中の車だったかもしれない』?

 

 

 ……一体なにがあったんだ!

 

 

 ■

 

 

 メッセージで小出しにされる情報には、『半殺し』だの『狙いは江戸川くんかも』だの『情報を引き出すつもりみたい』だのと物騒な事が書かれていた。

 

 いやいや、なんだってんだまったく。

 

 既に都内には入っているらしいので、さっさとふたりで車に飛び乗って向かう最中も、ポコポコとメッセージが飛んでくる。

 

 あの灰原さんが、相当慌てているようだ。

 

 でも携帯を使わせてるのなら……そんな危ない人たちではなさそうな気もするが。

 

 

 こちらからは1通だけ、『適当な合流出来るところで、止まっていることは出来そうか』とだけ確認を送った。彼らの居場所はわかるからね。

 

 自分たちの身も危険な自覚のある灰原さんたちは、もしものときは逃げることもできる。

 彼女らの回収の前に、彼女の見解によると怪しい人たちの狙いであるらしい、新一くんの捕獲に向かう。

 おっと間違った。

 新一くんの保護に向かう。

 

 小林くんに毛利探偵事務所へ寄ってもらって、いきなりやって来てあれよあれよと連れ出され、困惑してみゃーみゃー言ってる彼を小林くんに担いできてもらった。

 

 ……1階のポアロから、あむぴがニコニコ顔でお見送りしてくれたんだけど、あれはたぶん『また妙な事に巻き込まれてるようだけど、ちゃんと報告はするんだろうな?』の意味が含まれてると思う。

 なので『モチロンですとも』と笑顔で頷いて手を振っておいたから、これでしばらくは保つはず。

 

 場合によってはこの後忙しくなるかもしれないし、もしかしたらくたびれメガネの風見さんと連携する必要はあるかもしれないから……

 

 いっそ風見さんに、零くんへの連絡、頼んどくか……

 

 

 小林くんによって拉致され、後部座席に放り投げられたモコモコの防寒服に包まれた新一くんが、ズレたメガネをかけ直しながら助手席の私へと目を向けた。

 

 ビックリした顔である。

 

 私の車に私が乗ってて何が悪い。

 

「はいこんにちは、し……コナンくん。すぐに出ますから、シートベルトをしてくださいね」

「え、スバルさんまで?なんだよ、なんかあったの?」

 

 今回は拉致ってるので、その物言いは許して差し上げよう。

 キミ、私は普段どこにいる人間だと思ってんのさ。引きこもりじゃないんだぞまったく。

 なんかあったかと言われたら“なんか”はあったけどさ。

 

「阿笠さんと灰原さんが、君を狙う怪しい人物に遭遇したとのことで、ひとまず君を保護しておこうかと」

「俺を狙う……!?」

 

 お、シリアス顔だ。

 またもや丁度よく、車を出したあたりで灰原さんから着信アリ。

 

 ……電話までかける隙があるならもう、本当にあまりシリアスにならなくていいんじゃないかなぁ。

 

「はい、もしもし?ドライブインでお茶してる所ですか?そこ、実はたい焼きが美味しいので――」

『何がたい焼きよ!こっちは水も喉を通らないほど緊張してるっていうのに!』

 

 その緊張を和らげようとしてあげたのに、何がご不満なのか灰原さんは小声で叫ぶなんて器用なことを。

 こっちはノアズ・アークに携帯の位置情報と阿笠さんのメガネの緊急発信信号を逐一報告してもらってるから、数分前から彼らが既に都内に入り、ドライブインにて停まってからほぼ動いていないのは把握済みである。

 

「電話をしてきたということは、今は周囲にその方々は居ない、でいいんですね?」

『ええ、博士が時間を稼いでくれてるわ。そっちは――』

「現在、小林くんと共にそちらへ向けて移動中です。コナンくんも確保しました。状況説明をして頂ければ、アドバイス可能です」

『……そう』

 

 灰原さんの声色がやや落ち着いたトーンに。やはり江戸川コナンの名前は偉大なり。

 

 まぁまぁ、ここに賢いのをふたり用意したからさ。

 ほら、詳しい話をしてみなさいな。

 

 ■

 

 そんなわけで、現場に急ぎながら新一くんと小林くんと一緒に灰原さんの説明を詳しく聞いたのだけど。

 聞いてるうちに、運転しながら小林くんが目をパチクリと瞬かせ、「いやそれ……」と、私の、現在進行形でメッセージでやり取り中の、風見さんとの連絡用のスマホを指差した。

 後ろで新一くんが席の間から顔を出して覗こうとしてシートベルトに阻まれている気配がする。

 こっちはまだだめ!

 

「たぶん、さぁ。これ……大和さんたちに乗せてもらったんじゃないか?」

「あ?……あー……」

 

 覗き込もうとしていた新一くんが、小林くんの言葉にはたりと動きを止めて、空をぐるりと見渡していた。

 ふたりとも、なんだか思い当たる点がチラホラある様子。

 

『つもい』とかは確かに方言っぽいね。

 私は知らない言葉だが。

 しんどいとかつかれたとかを『こわい』って言う……みたいなやつだろ。

 

 となると、『半殺し』ってのも?

 

「半分くらい潰した……もち米ってことかな」

 

 想像しているのか、小林くんが「小豆炊くのは少量よりドカッとまとめてやっちゃいたいよなぁ」などとあんこの話に移っている。

 もう完全に、危機感はどこかに飛び去ったらしい。

 

「ええと……おはぎですか」

 

 おはぎかぁ。小林くんの作ったおはぎが食べたいな。

 彼の練ったあんこは甘さ控えめで、粒あんもこしあんも美味しいんだよねぇ。

 零くんからは「貧乏性」などと言われるが、もち米だけでなく少しだけごはんも混ぜると冷めても美味しいってのはライフハックね。

 

 あぁ、おはぎが食べたくなってきた!

 

「いや、ぼたもちでしょ」

 

 何言ってるんだ新一くん。おはぎだろ。

 ……あれっ、2対1? 小林くんもぼたもち派なの!?

 

 季節で変わる……?

 じゃあ今はなんだってのさ!

 冬?あー……うん……

 

 

 ………………気を取り直して。

 

 

 

 トクメイさんと目される、景光くんのお兄ちゃまが信頼する長野県警の人。

 風見さんからの情報と、『コワモテで片目に大きな傷があって、なんだか物騒な物言いと、車内の様子』に極めつけの『方言』ときて、小林くん……いや、景光くんは特にティンと来たらしい。

 

 

 そうして、トイレに立てこもっていた灰原さんたちと、ドライブインにて無事、合流。

 顔見知りな小林くんと新一くんに取りなしてもらい、なんとか彼女たちの物騒な勘違いは解決した。

 

 

 

 要するに、長野県警のコワモテ警部こと大和警部と、その部下の女性刑事が、毛利探偵を呼びに来ていたってわけ。

 

 その道中、ついでに引っ掛けて来た彼らを乗せた車内で、弾痕やら血の跡やら半殺しやら歌わせてやるやら、長野県警のあぶない刑事っぷりを存分に見せつけてしまって、その会話のあまりの物騒さに2人が勘違いしてしまっただけだった……とさ。

 

 そりゃまぁ、一般人は弾痕見てもなんか穴空いてるとしか思わんて。

 他人の車のシートの隙間見たりしないって。

 

 とはいえそりゃまぁ『半殺し』は怖いでしょうよ。

 

 えー……おはぎじゃないの?

 

「ぼた餅ね」

「ぼた餅じゃろうなあ」

「ほら、ぼた餅だろ」

 

 4対1になってしまった……

 ……ぼたもち?ぼたもちか……

 

 

 

 ■

 

 なにはともあれ、信頼できるはずの警察官相手に脅えていた灰原さんたちを、面白がってからかっていた新一くんを怒鳴りつけた灰原さんと、安堵の表情な阿笠さんはこちらで宥めながら回収。

 代わりに大和さんと上原さんには名探偵をトレードに出す。

 

 一緒に探偵事務所に来ないのかと誘われたけれど、行ったら8対1になりそうだから断った。

 

 そんなこんなで、車内でもずっとプリプリと怒る灰原さんを3人がかりで宥めながら無事帰宅。

 

「知ってたのなら教えなさいよ……」

「いやねー……私はその長野県警の方々は知りませんでしたし……」

「俺も話聞くまで、わからなかったしなぁ」

「来る途中に気付いた時点で教えなさいって言ってるの!」

「まぁまぁ……」

「まぁまぁ哀くん……」

「哀ちゃん、落ち着いて……」

 

 おいおいシレッと名前呼びしてるじゃないか小林くん。

 

 

 しかしまぁ……こっそり“新一くんに”仕掛けてもらった盗聴器で、間違いなく毛利小五郎名探偵にご助力を依頼しに来たのはまちがいなさそうだ。一安心。

 ただ、車内の話を聞いている分にはどうも、大和警部殿は毛利探偵……ではなく、江戸川コナンくんに狙い定めて助力を頼みに来たらしい。

 

 おやおや、賢さが見抜かれちゃってるねぇ。

 

 とはいえ小林くんも新一くんも、彼を警戒してはいない様子。

 だから純粋に、すこぶる有能なほうの味方なのだろう。

 服部くんタイプだね。

 

 大阪の他にも、長野に“味方”と確定出来る相手がいるなら、それに越したことはない。

 

 

 

 なにはともあれ、お迎えが来たということは?

 

 つまり、これから毛利探偵御一行が長野に連行されるってこと。

 

 

 となれば……このタイミング。

 

 行くっきゃないでしょ、長野。

 

 阿笠さん達を研究所に送り届け、用意していた荷物を回収。

 沢山揚げてお休み中だったハムカツに、灰原さんが隣のメタボの腹を見て「なんで男の人って……」とにくにくしげに呟きながらも、美味しそうなそれらが分配されるのを見ていた。

 

 控えめな量が阿笠さんと灰原さんのお夕飯ね!

 ご飯は仕掛けといたから、灰原さんがポチっと押すだけだ。

 

 私が灰原さんたちにお出かけの旨を伝えて荷物を車に乗せている間に、小林くんがちゃちゃっとハムカツサンドを作ってしまった。

お昼はとっくに過ぎてしまったが、おやつと夕飯まとめてみたいなものだろう。

 

 

 乗り込んだ運転席にて、零れないように紙で包まれたハムカツサンドを1口。

 

 うーん。

 やっぱり、うま!

 

「それ俺たちの2人分の夕飯なんだから、あんまり食べ過ぎないようにね、ハル」

「りょうかい」

「おい、それ2つ目じゃないかお前」

「りょうかい」

「了解じゃないだろ、お前さっきごぼう食べてたい焼き食べて、挙句それも食べてたらおなかいっぱいになっちゃうだろ」

 

 おっとバレてら。

 ドライブインでこっそり買って、阿笠さんと分けて食べてたのに。この分だと灰原さんも気づいてたかな。

 だって「いらないわよ!」って怒って車に向かっちゃうんだもんよ彼女……

 

 

 私のフォレスターは、まだ事務所で小五郎さんや蘭ちゃんがお出かけの用意を整えている隙に出発した。

 私たちも長野へと急行する。

 

 自分もハムカツサンドをひと口食べて、うんうんと頷いている小林くんだが、中々上機嫌な様子。

 長野に行くのが楽しみなのか、はたまたお兄さんに遂に会えるとなって楽しみなのかわからんね。

 

 ……やっぱりお兄さんだろうか。

 

 

 あのくたびれメガネのお兄さんこと風見さん経由で連絡を取り合っていた長野の“トクメイ”さん……もとい、所轄の“コーメイ”さん。

 今から向かうと伝えてもらうと、『お待ちしております』との返答をもらった。

 

 どんな人が待ってるんだろう。

 

 彼の声と、聞いた話だけでも既に期待値は高いのだけどね……

 

 

 





この主人公はきれい系や美人系の顔で目は鋭めで知的な美人にめっぽう弱いのですが、更に頼り甲斐のある歳上に特に弱いことを明記しておきます

だから真面目な時の小五郎さんも割とお気に入りらしい
(ただし真面目な時に限る)



読んでいただきありがとうございました!
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