昴くんはなにもしない 作:あまも
説明多くて長くなってしまいました
しかもあまり説明してないという
あと前の話のサブタイトルの番号間違ってましたね、直してあります
閲覧ありがとうございます!
トクメイさんと会うために、私たちは長野に向かうことにした。
……のは良いのだけど、ここで考えるべきはルートである。
まず、長野県警にはこのトクメイさんの動きが知られてはいけないのは大前提。
壁に耳あり障子に
相手は長年、人を殺す武器を横流しして売買していた悪い人たちの集まりだ。そんな不祥事を漁って外部に漏らそうとしていた事がバレてしまったら、トクメイさんの命が危ない。
とはいえ、僻地に飛ばされるような自由奔放な捜査をしていた彼でもある。県警のお偉方があぶない
さらに彼の信頼する刑事さんのご紹介で、最終的に大捕物となる時に頼む相手も今回確保出来る。
くたびれメガネの風見さんがドヤ顔公安フェイスで「しょっぴきに来てやったぞ」とどやどや出てきても良いのだけど……一応『自分たちで気付いて、自浄しました』という顔をさせておきたいらしい。後々の対外的な意味合いのために。
まぁ……活動は随分長いことやってたようだから、今更感はあるけどね。
で、その“手柄”を“確実に安全な人物”に任せたいトクメイさんは、ここ数ヶ月意識不明で寝込んでたあのコワモテ警部殿に任せたいのだとさ。
彼が寝込んでる間も活動は行われていた証拠があり、それさえあれば“確実に関与してない人”だからね。
……それじゃあトクメイさんが怪しくなるじゃない!
とも思うが、そこはこうして『解決に協力した』ことで自身の保身をしてるから問題無いそうな。
えぇー……ホンマかぁ?
なにはともあれ、あのコワモテ警部こと大和敢助警部には、長野県警の闇を暴く立役者として活躍して貰うことを目論んでいる。
ほんなら直でとっとと説明しちゃえば良いじゃん!
……と、私は思っていたのだが、どうもあのコワモテ警部は見た目だけでなくそういうところも硬派な方らしく、『そもそもそんな不正が行われていると聞いて黙っていられる人間でもありません。杖振り回して片っ端から病院送りにしてしまうやもしれない』などと心配そうに言っていた。
通話の向こうのやれやれボイスだったが、そんなこと言ってるトクメイさんからも同じ匂いがプンプンしてたぞ。
現にこっそりかぎ回っちゃってるんだから。独断専行『おま赤』はどいつもこいつもこれだから……
この匂い……零くんと同じ香り!
みんなして“自力”ってのに拘りすぎなんだよなぁ。
……あ、いや、零くんが『おま赤』ってわけではなくて……いやどうだろ、私や風見さんへの態度見てたらそうとも言えない……
そんでそんな準備してた連中についてを“優秀だ”とお墨付きなあの警部さんが調べてしまったら最後、裏でエッホエッホと頑張るハムちゃんずに辿り着き、至って普通な一般人である私や小林くんが協力してた、なんてことまで気付かれてしまうと……ちょっとばかしハムちゃんずの具合が悪くなる。
一応、建前上はハムちゃんずには“協力者”ってのは居ないことになっているからね。
あと、“元公安”にして警察に不信感持ってる小林くんについては更に輪をかけて、詳しく探られると困っちゃうからね。
そんなこんなで、この裏での下準備してたハムちゃんずの活躍は、彼らに知られるのはまだ早いのである。
いや、いつかは話すよ?いつかはね。
ちなみに彼“ら”ってのは小さな名探偵のことも含んでるよ!
しかもかもしかもしもしかめよ、景光くん曰く「俺の兄さんは疑問に思ったら全力で調べちゃう人だから、たぶん……俺のことも調べてしまうと思う」とのこと。
そりゃ、どんなに言葉を濁そうとも、かわいい弟が憧れていた警察官になった報告してきて以来特に詳しいことも言わずに連絡も無しに警察辞めてしまっていて、しかも名前変えてコソコソ生きてますって……
家族どころか友人だって心配して調べるぞそんなの。当たり前だのクラッカー!
もちろんダメですよ!
変に首突っ込まれるくらいならむしろ目につくところにいて欲しい、との景光くんの懇願に負けた零くんが、腕を組んで唸りに唸った後、渋々と“ある程度”までは詳しいところを説明しても良いと許可出してくれた。らしい。
いやどの程度だよ!
……恐らく、その会合に私が同席していいということは、私の知る範囲の情報までは彼に開示しても構わない、という許可なのだろう。
とはいえ、内容が相当に濃ゆいのだけど、本当に大丈夫かしら。
そこら辺のお話のタイミングも今回、用意できたらいいなと考えている。
そんなこんなで、行った先でこっそりトクメイさんと先に会って口裏合わせてから、長野県警の信頼できる人たちこと、先程のコワモテ警部と美人警官さんにご挨拶と行きたい……願望。
なので、道中で長野県に向かう私たちの姿を見られてしまうと、『なんで一緒に来なかったの?』と聞かれてしまう。
何故か私相手には目敏い小五郎さんや、よくわからないポイントで目敏い蘭ちゃん、そしてオールウェイズ目敏い新一くんに、私の車を見られたらおじゃんなのである。
些細なことでもティンと来るのが名探偵。「妙だな……」は恐ろしい言葉である。
というわけで、同じ道を使うワケにはいかない。
よって、彼らは南アルプスを北側から迂回するルートで現場へ向かうだろう、と小林くんが推測してくれたので、我々は西は西でも南へ向かったってワケ。
ノアズ・アークに新一くんの現在地を見てもらっても、確かに中央道方面へ向かうらしき動きをしている。
こういうルートの予測は、秀吉なら即座に予測から断定までしてくれるだろうが……
小林くんだって、それくらい出来ちゃうもんねぇ!?
「え、いや、あくまで予測だぞ?」
「なぁに、君が言うなら間違いないでしょう」
「いやいやいや」
謙遜するなって。
どこぞの100億の男が才と能に溢れ過ぎているだけで、この幼なじみだって大概天才なのである。
結構長い付き合いになってきたが、あの疑り深い新一くんや灰原さん、そして生意気な少年探偵団のお子様たちからあれほど懐かれてるんだから。
さて、あちらはお客様を乗せた車だ。
それも大人だけではなく、小さな子供まで乗っている5人乗り。
運転しているのは現役の警察官で、まず無茶な運転はしないだろうし、人道的に女子高生や子供を気遣って、途中で多少の休憩も挟むはずだ。
もっとも、向こうは長野の人間。
東都を出て長野入りしてから――更に言えば飯田から先で――地元民しか知らないような近道を使われてしまえば、こちらの分が悪い。
だからこそ、同じ道を使うのはやめた。
彼らが中央道から長野側へ回り込むなら、こちらは静岡側から南アルプスを迂回する。
これなら道中で鉢合わせする危険も減るし、なにより先回りするならその方が確実だと判断した。
「東名高速へ向かいます」
「ああ。高速は任せていいのか?」
「ええ。ご存知の通り、この車は高速道路の運転が楽なので、ご安心を」
「楽だけどさ……いつでも代わるから、辛くなったらすぐに言えよ?」
隣から心配そうな声。
だから……私の足はもう大丈夫だってのに。
こっちは私と小林くんのふたりで車が運転できる。
対して、あちらは客人に運転させないだろうし、大和さんは少し前の私のように足が不自由だ。
頑張れば彼も運転できないことも無いだろうが……たぶんあっちは行きも帰りも運転するのはあの上原さんというきれいな女性警察官だろう。
いやぁ、美人だったなぁ、彼女。
あれで恩人の事件解決のために警察辞めたり、排他的な家に潜り込むべく結婚までしちゃうんだから、社会的な地位ってのに固執しないある意味『おま赤』タイプかもしれない。
大和警部があんな有様なのも事件捜査中に雪崩に巻き込まれた、とか聞くし……
あれか、長野県警の有能は全員『おま赤』なのか。(ここに隣のイケメンも含む)
しかもあの若さで未亡人属性まで付くらしいじゃん。
それで、足の不自由な幼なじみの歳上の警部さんを支えて、こんな長い距離も運転してくれているんだろ?
……おおっと……?
これはラブコメじゃないか……?
「上原刑事って大和警部のこと好きなんですかね」
「え……いきなりどうした?」
「猛烈なラブコメの波動を感じて」
「また変なこと言ってる……」
困惑声のまま、となりでハムカツサンドを頬張るイケメンである。そのままお答えが放棄されてしまった。
変でもなかろうもん。
ただ……ラブコメだけどどっちかというと、火曜サスペンスで人気出て、月9で連作ドラマになった実写版な大人向けタイプの刑事物じゃない?
■
交代しながら、フォレスターを西へ走らせる。
高速道路は主に私が担当した。
高速道路の長距離巡航には、なんの問題もない。
これこそがSUVの真骨頂だからね。負担の負の字もないと思え!
強いていうなら、若干肩がこるくらい?
目をそらすとフォレスターとノアズ・アークに怒られるので目は正面のままながら、小林くんが私の空いた手にハムカツサンドを乗せてくれて、それをうまうまと食べながら、すっかり陽の落ちた路上を見つめて走行を続けた。
この薄く塗られた和からしが……効いて……
うまい!うまい!
……途中からごぼうの素揚げチップスになったけど。
でもこれもうまい!
最高速度120キロ区間もある新東名は、横を商用も自家用も関係なしにバンバンビュンビュンバビュンとかっ飛ばしていく。
私、あまりこっち方面は走らないんだけど、比較的真っ直ぐな道は確かに走りやすくて飛ばしたくもなりそうなものである。
ま、私は飛ばさないけどね!
道中は、トクメイさんにどこまで何を伝えるのかを吟味していた。
とりあえず既に会ってしまっている大和さんたちにした説明通り、『引き取ってくれた親戚の名前が“小林”だった』話は真っ先に口裏合わせないといけない。
“景光”という名前の方はどうすべきかと暫し悩んだ。
“
小林呼びにしてもらうしかないか……でもお兄ちゃんが苗字呼びって……
「兄さん、“ただし”、とか言うかもね」
「ただし?」
「
「なんでまた?」
「諸葛亮って3人兄弟の真ん中なんだよ」
「へぇ。……ああ、弟さんの名前ですか?」
「そう。でも普通に”弟”とか呼んできそうな気もするし……あまり気にしなくていいと思うよ」
なんせ兄さんだからね!と、上機嫌に体を揺らしていた助手席のイケメンでござった。
賢く優秀な兄貴にそういう微妙な忖度を丸投げする気だ……
逆に言えば、そういう微妙な忖度が可能な人物ってわけだ。
……もうめんどくさいから全部話しちゃえば良いじゃん!景光くんの協力者ってことにしろよ!
「いや、身内は探られるとまずいから」
途端冷静になった隣の静かな声である。
でも協力者のことは守ってくれるんでしょう?
まぁ、顔もソックリらしいしね……
さすがに高速を降りて山へ入ってからは、執拗に私の足を心配して騒がしい小林くんにハンドルを奪われた。
ごぼうチップスをうまうま食って、時折隣の運転席の優良運転手にも押し付けながらのんびりと暗い山道を眺めている。
水分は?いい?そう。
やはり山道でもこの愛車と小林くんのセットなら何ひとつ心配なことは無い。
いやぁ、どこぞの白い悪魔は本当にもう……
ほ、本当にもう……
二度と乗らないんだから……
そうして静岡側から長野県南端へ回り込み、下道を挟みながら距離を稼ぐ。
こちらは先を急いでいたが、だからといって法定速度を無視したわけではない。
ただ流れに合わせて走り、無駄な停車を省き、運転を分担していただけだ。
その積み重ねが効いたのだろう。
どうにか彼らより早く、待ち合わせ場所である新野地区にある、五丈の森への前入りに成功したのである。
■
季節は2月。
指定された合流場所である、長野の五丈の森は車を降りた瞬間にひんやりと冷たい空気が肌を刺した。吐く息も白くなる。
うう……寒いッピ!
車内に呼ぶんじゃだめなのかい!?
だめですかそうですか……
ザクザクと進む小林くんにトボトボとついて行くと、枯れ葉が敷き詰められた木立の向こう。
そこに、ひとりの男性が静かに佇んでいた。
視界にその人物を入れた途端、心臓が、とんでもない音を立てて跳ね上がった。
「アピャ」
寒さで震えた口から変な声が漏れた気がする。
は?
顔が良い。
ちょっと待って、顔が、すこぶる良い。
私の大好きな、クリスさんや妃先生、男なら工藤優作氏や新一くん、“将棋してる時の”羽田名人、そして隣にいる景光くんにも通じる、少し鋭い目をした超絶美形。
スーツを隙なく着こなし、ダンディな整えた髭を備え、その佇まいからしてすでに『有能』のオーラがダダ漏れしている。
しかも、ただの美形じゃない。
その涼やかな切れ長の目の奥には、大人の余裕と知性がたっぷりと詰まっているのがわかる。
おまけに確定で歳上!!
先日、病室で新一くんたちから話を聞いた時は、『上司の命令を無視して管轄外の事件に首を突っ込んで異動処分になった』なんて聞いたから、てっきり新一くんや赤井さんみたいな、己の正義感で独断専行して突っ走る危なっかしい“おま赤”タイプの豪傑かと思っていたのだ。
私の手に負えないヤバい人を捕まえちゃったかも、と戦々恐々としていたのに。
なにこれ!
こんなの、間違いなく物語の中で絶大な人気を誇る“役割持ち”級のキャラクターじゃないか。
顔が良い=有能確定の法則が、私の脳内で完璧な数式として組み上がっていく。
はわわ……
これが『好きすぎて滅』ってやつですか!?
あまりの衝撃と顔の良さに、思わず変な奇声が出かけた瞬間。
真横からスッと伸びてきた手が、私の口をガバッと物理的に塞いだ。
「ちょっ、ハル!落ち着けって!」
「んぐっ!むー!!」
私の口を塞ぎながら、景光くんが焦ったように私の肩をポンポンと叩いてくる。
わかってる、わかってるけど!
だって!あの人顔が良いんだよ!
ウワッ下から見上げた景光くんの困り顔も良すぎるんじゃが!なんだここ!
ここら一帯だけ顔面偏差値が跳ね上がってるぞ!寒さも吹き飛ぶパワースポット!ゼロ磁場!
「はいどうはいどう」
ええい、私は馬じゃないぞ!
どうにか心を鎮めて、じたばたともがくのをやめると、ようやく彼の手が離れた。
冷たい空気を吸い込んで、冬の寒さで頭を冷やす、深呼吸をひとつ。
私は目の前のお兄さんと、隣の景光くんの顔を交互に見比べる。
……うーん、さすが兄弟。
もはや暴力である。顔面暴力。なんだこいつら。涼やかながら朗らかな春の気配の男と、秋の終わりみたいなまだ少しだけ暖かい頃な気配の男である。
厳しい冬!って感じじゃないのがまたヨシ!
イィン顔がいい……
そんな私たちの騒がしい様子を、彼は咎めることもなくただ静かに見つめていた。
呆れたわけでも無さそうだが、表情は変わらず、あからさまに態度を変えることもない。
けれど、弟の姿をじっと見つめるその瞳の奥には、確かな安堵の色が揺れている。
学生時代は少し交流がまだあったらしいのだけど、警察官になったとの報告があったきり音信不通だった弟。
それが今こうして目の前で、元気に私の口を塞いでいるのだ。
安心しないわけがないだろう。
「ええと……久しぶり、兄さん」
景光くんが、少しだけ湿った感情を滲ませた、けれど心底嬉しそうな声で笑いかけた。
零くんと仲直りした時とも違う……複雑さはあまり籠ってない声色に聞こえた。
さっきまで私を制止していた時の慌てた空気はすっと消え、そこにあるのは、素直に信頼する大好きな兄に対する純粋な弟の顔だった。
良かったねぇ、景光くん――
「夜
目の前のイケメンはそう答えた。
――いや、なんて?
え、それ……それ弟の挨拶への返し、それでええんか?
景光くんは「もう、兄さんたら」などと仕方なさそうに苦笑するだけで、ふたりとも解説してくれるつもりが無さそうだ。
の、ノアズ・アーク!
『杜甫の“羌村三首”だね。“夜更けに改めて灯りを手に取り、互いの顔を照らして見つめ合うが、こうして無事に向かい合っていることが、まるで夢を見ているかのようだ。”……会えないことも覚悟してた相手に会えて、嬉しい……って意味で使ったってこと?』
いやぁ、聞き返されても私にもちょっとよくわからないですね……
……つまり……なんとなく、お兄さんは景光くんが危なそうなことしてるってのは知ってた……ってことなんですかね?
なんにせよ、今のふたりの間に流れる空気は温かく、それだけで互いの空白の時間を埋めるには十分なようだった。
兄弟2人は抱きしめ合うでもなくただ相対してひとしきり視線を交わし、再会を喜んだらしい。
ええと……独特な感性ですね……?
私の予想ではもっとこう、涙滲ませながら抱き合って喜ぶ感じかと……
いや、まぁ、お互い死んだわけでもあるまいに、それは男兄弟としてはあんまり無いものなのかね。
あらやだ、西洋かぶれが出ちゃったかしら。
ハグして愛情表現って、日本の文化圏に無いよね。うんうん。
私が並び立つ顔の良い兄弟を目に焼き付けて眼福を得ていたところ、景光くんがいつもの穏やかな笑みを取り戻して、私の方を手のひらで示した。
「兄さん、紹介するよ。こっちは昴。俺の親友なんだ」
「あ、えっと……初めまして。この度は、ご協力頂きまして……」
いきなりふられたもんでドギマギしながらそう頭を下げると、高明さんの涼やかな視線がこちらに向けられた。
「こちらこそ、遠路はるばるのご足労、痛み入ります」
すいと、身体ごとこっちに向いてくれた。
「姓は諸伏、名は高明」
静かに言葉を区切り、彼は傍らに立つ弟へと視線を流した。
「そこにいる愚弟の兄にあたりますが、今の貴方に対しては……これまで名を伏せていた非礼を詫びるのが筋というものでしょうか」
「いえいえ!そんな」
おおお……! 電話越しでも思ったけど、声まで深くてかっこいい! まさに『私が天に立つ』しそうな声だ。
またあの電話の時のように、小難しい故事成語を言われてペースを持っていかれるかと身構えていたけれど、今回はどうやら普通の挨拶だけで済んだらしい。
引っぱられないように気を付けなきゃと背筋を伸ばしていた私は、内心ホッと息を撫で下ろした。
挨拶を終えると、高明さんは静かに懐へ手を入れた。
取り出されたのは、特に何の変哲もないUSB。それを、スッと私の方へと差し出してくる。
「これが、お頼みしていた……?」
「ええ。“啄木鳥会”に関する調査結果をまとめたものです」
「ありがとうございます。確かに」
私がそれを受け取ると、高明さんは静かに頷いた。
零くんたち公安側から依頼し、匿名さん――高明さんが危なっかしい橋を渡って一人で集めてくれていた、長野県警の闇に触れる重要な情報。
この緊迫した『公安関係』としてのやり取りは、たったこれだけで、あっさりと完了した。
この後、大和警部たちが毛利探偵たちを連れて合流してくる。
そこでの景光くんはこの諸伏高明さんの『親戚の“小林”さんちに引き取られた弟』として振る舞うことになる。
毛利探偵たちは、諸伏家に起きた過去の悲劇を大まかにではあるが既に知っているからね。
両親を亡くした高校生と小学生の子供たちが、それぞれ別々に暮らすことになった事情について、なんて繊細なことはそれ以上深くは聞いてこないはずだ。
探偵でもあるまいし……探偵だったわ。
一方で、大和警部や上原警部補には、景光くんが元公安であることも、私が公安の協力者であることも、そして高明さんがその協力者の協力者であることも、絶対に秘密……内緒のお話。
だからこそ、久しぶりに会った弟がこの『小林』である、という事実だけを出し、それ以上の詮索をさせない空気を協力して醸して、それとなく話は流す……予定だった。
口裏を合わせるつもりだった。
ところがどっこい?
「さて……おふたりはこの後、どちらへ向かわれるおつもりですか」
高明さんは、まるでせっかく長野まで来たのだから名所でも巡って帰るのだろうと、そう信じて疑わないような柔らかい表情のまま訊ねてきた。
景光くんがぱちくりと瞬きしている。
「え? やだな兄さん。ここで事件が起きてるんだろ?俺たちも手伝うよ」
そうだそうだ。私も微力ながら手伝うぞい。
それにどうせ観光行くなら、せっかくならお兄さんの仕事が終わってから連れ出して一緒に信州そばでも……
「……『
顎に曲げた指を当て、本当に少しだけ、首を傾げた高明さんである。
……あれっ?
ちょっと今何言ったのかわからなかったが……
景光くんのあれやこれやについて、まだ彼には説明してないはずなんだが?
口調分からなすぎて滅
故事成語はニュアンスで見てください……
読んでいただきありがとうございました!