昴くんはなにもしない   作:あまも

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高明さんわからなすぎていくら捏ねても正解が見えずこんなんなりました
ちょっと非公開にして追記やらしてたら色々と妙なことになりました。更新情報で混乱させていたらすいません。1話更新です。

未だにしっくりのしの字も来てませんが高明さんに笑っていて欲しい人生だったと大の字になっています


閲覧ありがとうございます!


73-1:所轄の孔明さん

 

 

 

 

 景光くんの事情については、高明さんにはまだこちらからは何の説明もしていない。

 

 今の彼の立場だとか、彼が巻き込まれているのはどういう状況なのかとか。

 話したいこと、話すべきことは全ての裁量を景光くんに任せてある。

 

 兄が優秀である事をわかっていて、それでいてなお兄を巻き込むことをよしとしなかった景光くんだ。

 どこまで話すのかは、今後新一くんへの説明にも通ずるものかと、しっかり見学させてもらう……つもりだった。

 

 だから、予定ではこのあと、少しずつ口裏を合わせながら話していく……つもりだった、はずである。

 

 なのに。

 

「…………」

「…………」

 

 私と景光くんは、揃って固まってしまった。

 私はともかく、景光くんすらフリーズするとは。

 意外と、景光くんも油断してたんだろうか。

 

 

 私たちがポカンと再起動中な様子を見て、高明さんは「ああ」と小さく息を吐いた。

 困らせてしまった、とでも思ったのだろうか。

 

「失礼。少々、先走りましたか」

 

 そう言って苦笑を浮かべる。

 その表情は穏やかだ。……穏やかっていうか、先程までどこか、こちらを探るようだった目が和らいだからそう感じたのだと思う。

 景光くんにそっくりで、またもや「兄弟だなぁ」とひとりでしみじみしてしまった。

 

 彼には、責める色も、探る色もない。

 

「敢助くんから話を聞いた折、私にはひとつだけ……腑に落ちぬ点があったのです」

 

 静かな声で続ける。

 

「風の便りには、『弟は警察を辞めた』……とだけ聞いておりました。

 しかし実際には、それだけではない状態――名を変え、容姿まで変えて生活している」

 

 一度だけ景光くんへ視線を向ける。クッと高明さんは口の端を上げた。

 

「なにより――『親戚に引き取られたから姓が変わった』――などという、奇妙な説明」

 

 

 ……あーっとぉ……

 

 やっぱりそこ来るよね。

 親戚の名前なんて、当事者以外は知らない話だが、逆に言えば当事者だけは爆速で嘘が看破出来てしまう。

 

 いや、それこそ口止めしに来た目的ではあるんだけども。

 

 

「ですが」

 

 

 高明さんは、そこであっさり首を振った。横に。

 

「その説明が事実か、否かについては、私にとっては大した問題ではない」

 

 ……え?

 

「重要なのは……弟がそこまでして“身元を伏せる必要があった”……という事実のみ」

 

 その一言に、景光くんが静かに顔を上げた。

 高明さんに、真っ向から……普段はスポーツサングラスに隠していた目をさらけ出して、同じ瞳が向かい合っている。

 

「ならば、それには相応の理由があるのだろう、と。……お前が“隠した”ことに理由がある以上、それは軽々しく、こちらが問うべきではない」

 

 淡々と。

 

 あまりにも当然の結論を述べるように、高明さんは言った。正面から尋ねることはせず、景光くんが何をしているのかは『無理に説明しなくてもいい』と 、そういうことらしい。

 

「そう判断し、それ以上は考えぬことに致しました」

 

 …………。

 

 …………え。

 

 待って。

 

 今ので終わり?

 探らないの?聞かないの?

 

 いや、この人、新一くんとか服部くんみたいに食らいついたら離さないサメちゃんの如く隅々まで絶対調べるタイプなんじゃ――あ、いや、あれか。

 歳をとると賢さレベルに応じて踏み込み禁止ラインが見えてくるから、工藤氏や零くんみたいにあえて足を止めることを覚えるものなのか。

 いや、歳上だしな。

 やはり大人か。

 これが大人か。

 

 大人ってやっぱりすげぇや。

 

 

 そんな私の考えを読んだかのように、高明さんは少しだけ笑う。

 

「もっとも。……『(おお)わんと欲して(いよいよ)(あき)らかなり』……先ほどの君たちの反応で、私の推測は概ね間違っていなかったと、確信を得てしまったのですが……」

「…………」

「…………」

 

 いやぁ……

 私はよく、それこそ周りの人たちみんなからカマかけられて「スバルさんは隠し事向いてないよねホント」(By 新一くん)と言われるほどバレバレな男なので、ぶっちゃけ私からバレるのはよくあ……っちゃダメながらよくあるんだが、まさか景光くんまで気を抜いてしまったとは。

 

 あれか?

 どうせ話すし、という緩みと、久しぶりのお兄さん力に負けたか?

 

 いやいやこんなん負けるって、この顔だもん。

 そしてこの声だもん。

 無理だよ絶対全部バレるじゃん。

 工藤氏からお茶目さとあの自由度と有希子さんを除いたような人じゃん。

 

 

 そんな私たちを見比べた高明さんは、ほんの少しだけ、表情をさらに和らげた。

 

「久方ぶりに兄と会った弟が、一瞬だけ気を緩めた……もしくは――私へ、事情を話す気があった、ということでしょうか。それならば景光の反応にも得心がゆく。

 ……ふむ……なるほど。事情の一端は、察しました。全容までは見えておりませんが、十分でしょう」

 

 何を!?

 

 ほんの一瞬だけではあったけれども、何かを安心したかのような微笑みだったと思う。

 

 いや、わからん。こっちがなんもわからんて。

 今見たのも目の錯覚かもしれない。

 

 あまりにビジュが良過ぎて、目がやられた幻覚かもしれない。

 声が良すぎて気を取られてしまっているかもしれない。

 

 高明さんは訳知り顔――さっきからずっと全て解ったお顔をしているが――の目を伏せて頷いた。

 

 

「……知ろうと思えば調べることは出来る。……が、調べる必要が無いと判断した以上、その労を費やすつもりも毛頭ない。

 そして、苦労してきた弟が、その苦労を語ってくれるというのならば……そのような話は、用事のついでに聞くべきものではない」

 

 景光くんへ、『話すつもりだったならそれはそれで、中途半端に終わらせるつもりは無いからな』と釘を打ってきている。

 

 ん、いや、うーん……どうだろう。言葉は強いのに、表情が穏やかだから、その言葉が景光くんを気遣ったのかどうかもわからない。

 全然読めないな。わからない。

 私はどっかの探偵さんたちや秀吉みたいな、人の顔で心読む妖怪じゃないんだぞ。

 

 

 そして彼はやれやれ、とまた首を横に振り、幻覚だったのか、元の冷静そうな高明さんが戻ってきた。

 クッソ、穏やかフェイス、網膜に焼き付けておけば良かった。

 

「……お前が、この兄を巻き込みたくないのであれば……その意志は尊重するつもりだ」

「……兄さん」

 

 景光くんが、小さく笑う。

 こっちの彼にも、驚いた様子は無い。

 

 むしろ、またより一層の尊敬を深めた、安心しきった笑顔だった。

 

 

 

 いや……

 ここまでずっと、常に気を張って警戒して、零くんや私、そして新一くんたちを手伝って、見つかれば“死”のリアルデスゲームのミッションこなしてきた景光くん。

 その彼の大好きな、信頼できる、このお兄さんに合わせるために、零くんと一緒にこの長野県警が関わるゴタゴタを調べてきたわけだが……

 解決前にこうして会わせることは、私の想定外だったものの、いざ会わせてみれば予想通り。

 景光くんは本当に気が抜けて、安心している様子なので……そこは結果オーライ。

 

 零くんの予想通りかはわからないが、高明さんのほうもこの弟に『何か』があるのはわかってくれてるようなので、もしもの時に匿ってくれるつもりもあるんだろう。

 彼の避難先が確保できたのはとても良いことだ。

 

 

 で……結局、話をするしないは本人たちに改めて任せるってことで……一旦ね?

 本人たちはそれで満足で、安心かもしれないけどさ。

 

 

 私は安心できない。

 別のことに……別の“流れ”に気付いてしまった。

 

 ぞわり、と背筋に寒気が走る。

 

 このタイミングで……こんなに優秀な人が現れた。

 

 今まで私の周りには、勘が鋭い人は山ほどいた。若くても、鋭くて目敏くて、ある意味恐ろしくて……将来有望な子たち。

 

 新一くん、服部くん、真純さん。

 証拠を並べて、積み上げて、人を見て。

 人によって確信を持つタイミングは様々だし、本当に野性の勘としか言いようがない、説明のつかないようなとんでもない鋭さを示す人もいた。蘭ちゃんとか、……本堂くんみたいなね。

 

 少年少女の努力と奮闘、そして成長は少年漫画の醍醐味だ。

 友情、努力、勝利……とはちょっと違うジャンルながら、そこには友情や、信念や、正義、恋愛、家族愛……様々な青春がある。

 子供は守られるべき存在で、彼らはどんなピンチでも、概ねはなんとかなるように“なっている”はずだ。

 だから、私は彼らの“命”の心配をしたことは、実はあんまりない。

 怪我したとか、それこそ新一くんがあんな小さい体で爆風に飲み込まれたとか、灰原さんが銃弾を受けたとか、服部くんが崖から落ちたとか蘭ちゃんが銃弾を避けたとか本堂くんがすっ転んだとか、怪我はまぁ、心配だが、若いってそういうことだから。

 ……なんか今違うのがあった気がするな。

 

 まぁ、怪我はあっても……“子供”は、なんとかなるものではある。

 

 

 

 でも、大人は怪我では済まない場合ってのがある。

 “責任”ってのを、大人は取らなきゃならない。

 

 

 この人は『大人』だ。

 

 最小限の情報だけで真実に辿り着いてしまえる……弟を心配して、幼なじみを心配して、動いて、たまにやり過ぎだと怒られてしまう……そんな大人だ。

 

 

 

 これはまずい。

 

 

 

 ただでさえ工藤氏や秀吉に加えて、零くんや赤井さん、それに景光くんが“主人公”の味方サイドにいるのだ。

 そこに、こんな有能で人気が出そうな“登場人物(キャラクター)”が増えたってことは?

 

 

 

 この後、誰かの離脱フラグ!!!

 

 

 

 赤井さんが既に離脱してる?

 

 ばっかオメー橋波さんがいるだろうが!

 

 ここでこんな優秀な人が出てきたら、『殺すために出した』なんて言われるかもしれないが……可能性は充分あるだろう。

 新キャラが有能で物分りが良くて友人に“少しばかり苛烈だけど優秀な人物”も居るときたもんだ。

 脳裏に浮かぶは、様々なキャラクターとしての優秀な人物たちの『死』である。

 真っ先に思い浮かんだのは『軍がやばい』のひと言だったが……いやいや、シャレにならんて。

 

 この人、『警察が危険だ、景光』とか言って亡くなったりしない?

 弟がなまじ優秀だもんで、主人公の動機づけにひと役買うためのポジションじゃないだろうな?

 

 …………もしくは……

 

 まさか、景光くん“が”退場したときのための……代わりの人材……だったり、する……?

 

 

 ■

 

 

 勝手に脳内で膨らんでいく、この眼福兄弟の生死についての考察。

 

「各得其所。お前にも在るべき時と所があるだろう」

「でも」

 

 まだ高明さんはなんか言ってるが、また小難しいこと言ってるのでよくわからん。

 なんだ『巧詐は拙誠に如かず』って。韓非子?へぇ。いや、今聞いても脳みそのシワ滑ってくだけだから説明しなくていいよノアズ・アーク。

 

 景光くんへ向けたものなんだろうから。

 ……私は結果待ちでいいかぁ。

 

 ポケットにおさめたUSBを手袋越しに感じながら、なんとなく話半分で聞こえてくる、協力したい弟VS今回は必要と思ってない兄の戦いを、どうしてお兄ちゃんはこんなに断ってるのかと考えてみた。

 

 どうやら、今回の事件については既に大和警部たちが毛利探偵に助力を願って迎えに行き、わざわざ御足労してもらった彼らが居る以上、お株を奪っちゃ失礼ってもの。

 そして既に大和警部たちの事を知っている私たちに彼らを紹介する必要もない。

 だからこそ、無理に景光くんが顔を出す必要も無いから、協力はしなくとも良い、という話……らしい。

 

 ちゃちゃっとやって事件終わらせちゃった方がいいんじゃないかという景光くんの意見に賛成な私だけども、変に口挟むと飛び火しそうだから黙っている。

 うーん、顔が良い。

 

 ……それとも高明さんが、“名探偵”のお手並み拝見したいのだろうか。

 小五郎さんはあんまりだけど、そのわきのちんまいのが“名探偵”ってことは、この人なら直ぐに気付いてしまうだろうし……

 …………え、実はもう犯人がわかってる事件を、あえて名探偵に捜査させようとしてるとかじゃないよね?試してみようとかしてさ。

 

 わかんねぇ〜!

 だめだ、ふたりの顔が良い〜!

 

 

 やる気満々だった景光くんがなおも食い下がっているが、高明さんとしてはそもそもの目的であるデータの受け渡しと、ついでの“確認”の範疇だった景光くんの存在が確定できて大満足な結果となったので、ここでお開きにしておきたいの?

 これ以上はまた別の話ってこと?

 

「これは私の家の鍵と住所だ。今夜はもう遅い。景光、彼をそちらに案内するように。……遠回りにはなるが、こちらの道路に回れば県道に出る」

「兄さん!」

「……明日は観光でもしてから帰るといい」

 

 鍵とメモを景光くんに押し付けると、呼び止める景光くんの声に応えずに、高明さんはそのまま振り返って歩いていってしまった。

 

 

 おう、死亡フラグみたいな立ち去り方やめーや。

 

 健康とか恋愛とか人生については語ってないからまだ今回はセーフっぽいけども。

 

 まだ何か言いたげに後ろ髪引かれまくってる景光くんを促して車に戻る。はいどうはいどう。

 

「馬じゃないぞ!」

 

 お前さっき私にもはいどうしてたろうが。

 

 

 運転席に戻った景光くんは、物にあたる訳ではなく、ちゃんと高明さんに示された方向へと車を向かわせている。来た道を少し戻る形だが、彼の言う通り、こちらの方が走りやすい道っぽいとのこと(ノアズ・アーク調べ)。

 

「大和警部たちが近道で来るから、俺たちに遠回りで森を出るように言ったんだよ」

「……ああ!」

 

 そういえば、顔合わせしなくていいなら「なんで来たの?」って言われたらマジで困っちゃうだけだし、鉢合わせしないほうが良いのか。

 

「……あれ、口裏合わせは?」

「ああ……兄さんがああ言ってるなら、本当に余計なことは何も口出ししないつもりだと思うから問題ないよ」

 

 景光くんは、安心、とはかけ離れた表情でそう言った。

 眉寄ってるし、不服たっぷりではあるようだ。

 

「ホォー?」

「口を滑らせないハルみたいなもんだね」

 

 ふむ、それはあまりに完璧すぎるな。

 情報管理のしっかり出来てるハルくんだね!

 ……ん?

 

「今私の事、情報管理出来てないバカって言いました?」

「言ってない言ってない」

 

 言ってなかったか……

 

「ハルはそのままのハルでいてね」

「やっぱりバカにしてません?」

「してないしてない」

 

 

 ︎︎おいこら!

 2回繰り返すのは嘘ついてる時って聞いたぞ!

 

 

 私の抗議に、運転席の景光くんは悪びれもせずにカラカラと声を上げて笑った。

 ︎︎先ほどまでの少しだけ緊張していた弟の顔から、いつもの頼れる幼なじみの顔に戻っている。

 ちょっとは元気が出てきた様子。

 

「嘘じゃないさ。俺は本当にハルに感謝してるんだ。……色々と、ね」

 

 そう言いながら、彼は赤信号で車が停まったタイミングで、上着の内ポケットから小さな黒い機械を取り出した。

 その小さなスイッチをカチリと押し込む。

 

 ザザッ、という短いノイズが鳴った直後だった。

 

『お前の気の済むまでそばにいやがれ!高明(コウメイ)!』

「うおっ」

 

 小さなスピーカーから、車内の空気を震わせるような怒鳴り声が響き渡った。

 間違いない、大和警部の声だ。

 

 

 私が思わず変な声を出して座席にのけ反ってしまったのに、景光くんは涼しい顔でレシーバーの音量を少しだけ下げている。片手はちゃんと車を運転中だし、視線も前のまま。

 

 

 待って。待って待って。

 

「みっちゃん。君、その手に持ってるそれ……」

「ん?ああ、これね。最新型の小型レシーバー。ゼロが貸してくれたんだけど、阿笠博士が作ってくれたものより音質が良いよね」

「たしかに格段にノイズキャンセリングの性能はいいですね……じゃなくて!」

 

 それ、どこを拾ってる音なのさ!

 

 私の問いに、景光くんはにっこりと、それはもう見事な微笑みを浮かべた。

 

「兄さんの左足、革靴の踵だよ」

 

 その微笑みのまま、さらりと言ってのけた。

 

 

 さっき私の口を塞いで止めた時、やや激しい動きの中に紛れて、高明さんの視線がそっちに向いた一瞬の隙に投げて仕掛けさせてもらっていたらしい。

 

 あの感動的な兄弟の再会シーン。杜甫の詩を引用してエモい空気を醸し出していたあの裏側で、この男は実の兄の靴に盗聴器を仕掛けていたというのである。

 

 

「うっわ、公安じゃん」

「元、だよ。それに江戸川くんも最近練習してるよ、盗聴器投げ」

 

 うちの子に変なこと教えないでください。

 

「本来の目的のためにも、長野県警動きを見てみようかなと。それと……江戸川くんたちも巻き込まれているからね」

 

 レシーバーのスピーカーからは、大和警部の声の他に、しっかりと小五郎さん御一行の声も聴こえてくる。

 ちゃんと合流出来たんだねぇ。

 

 ……しっかし、この顔が良い男は、やることがえげつないですわね。

 

 この男、優しくて料理上手で気のいいお兄さんの皮を被っているが、その中身は命がけのデスゲームを潜り抜けてきたゴリゴリの諜報員だったのをちょいちょい見せてくる。

 怖いわぁ、この都市伝説男。

 

 顔に負けて完全に気を抜いていた私とは大違い。

 

 

 景光くんの運転する車は夜の道を走り、高明さんに指定された住所へと向かう。

 その間も、小さなスピーカーからは長野県警の面々と、毛利探偵一行の会話が丸聞こえだった。

 新一くんのわざとらしい子供の声が聞こえたり、大和警部の状況説明や、高明さんが静かに推察を述べる声。

 

 

 赤い壁……ねぇ。

 

 “赤壁”といえば?

 

 

 

 諸葛孔明!

 

 

 

 ……ってことは、高明さんの登場回で間違いなし、か……

 

 

 ひとり納得していた私だが、しかし、車が県道に入りさらに距離を走ったあたりで状況が変わった。

 

 

ザザッ、ピ――――

 

 

 スピーカーから耳障りな音が鳴り、パタリと人の声が途絶えたのだ。

 

「あれ。壊れた?」

「いや、有効範囲から出たみたいだね。さすがにあのサイズの送信機だと、山を挟んで何キロも電波を飛ばすのは無理だよ」

 

 景光くんは残念そうにレシーバーの電源を切った。

 そりゃそうだ。

 漫画や映画のアイテムじゃあるまいし、物理的な距離の壁はどうしようもない。

 

「で、そこでこちら」

『ボクの出番ってワケ』

 

 車のスピーカーから、ノアズ・アークが声を出したと思ったら、次いで先程途切れた音声の続きが。

 は?

 

『衛星経由でデータの取得をしてみてるんだよ。この間のお山で、お兄ちゃんたち、電話での連絡取りにくそうにしてたでしょ?』

「あれから阿笠博士と色々試してみたんだ。試作中だけど、結構上手く使えてそうだな」

 

 

 いやいやいや……

 

 なんでもない事のように言ってるふたりだが、これちょっとした情報革命では?

 

『どうかな?』

 

 くっ……

 褒めてもらえると信じて疑わないノアズ・アークの声……!

 

 よ、良いんじゃないですかねぇ……?

 

 

 いいのか、これ……?

 

 

 






諸伏兄弟が事件捜査を一緒にする未来もありましたが作者が逃げました。
なのでこのあと諸伏さんが犯人に頭殴られたり屋敷が燃えたりします


あの事件って1日で解決してます……?



読んでいただきありがとうございました!
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