昴くんはなにもしない 作:あまも
ちょっと結構長いので、分けようかと思いましたがキリが悪いので長いまま行きます。
和解出来てたら嬉しいなぁ。
閲覧ありがとうございます!
零くんへ向けていた銃(?)口を下げ、顔を青ざめさせるは、私の、そして零くんの昔馴染みの友人、景光くん。
何か言おうとしては、口を閉じてを繰り返し、適当な言葉を探しておられる零くん。
そしてその零くんに腕掴まれて、立ち上がろうとしていた中腰で止まっていたが、キツくてクッションに尻もちついた私。
ここに昔馴染みが3人揃った。2人が警察学校卒業して以来だ。
いや〜元気そうで良かった〜……
「――――おい、ハル――」
地の底から響く。
臓腑も背筋も凍るような、恐ろしい声。
掴まれていた腕がミシミシ言いそうな程、力強く握られて、いて、いや痛い痛いって痕付いちゃうって。折れる折れる。私の腕が逝ったらいよいよ私、何もできなくなるって。
そのまま腕を引っ張られて、首に腕が伸びてくる。
「――お前!なんて情報を!俺に黙って!」
のわぁギブギブギブ!
首をガッチリホールドされて、絞めつつ岩石のようなゴツゴツした拳をこめかみにゴリゴリと。やめてやめて!
助けて!
助けに来てしまったからには助けて景光くん!!!
「あー……バレちゃったか。 でもハルにしては長くもった方だよな」
ただでさえ血行不良でこめかみとかツボ的な痛みもあるのに!!
腕を下ろして、苦笑してる場合じゃないぞ景光くん!!
私にしてはってなんだ!
こんな、こんな世界屈指の探り屋が、人の癖を幼少期から見比べている友人だなんて……
隠し通せるわけがない?
それはそう!
「ヒロ!!お前もお前だ!!何故、今までどこで何してたんだ!何故、俺に一言の連絡もなかった!?俺がどれだけお前を探したか、ライの奴をどれだけ…っ!!」
ぐえぇ絞まる絞まる。首はアカンて。また変声機壊れちゃうって。
景光くんは、零くんの怒りの声に顔をしかめるが、一歩も引かない。むしろ、零くんの目を見据えた。
「ゼロ!俺は…俺は確かに生きてる!そして、お前に何も連絡できなかったこと…本当にすまないと思ってる!
でも、これには理由があるんだ!お前を…お前たちを守るための、唯一の方法だったんだ!」
「ハッ、守るだと?誰が誰を守るって?俺はヒロの死を信じられず、探して、探し回って、それでも見つからず死を受け入れそうになっていた!悲しみ、ライを憎み、そしてお前!この!阿呆は、俺に碌な情報を与えず……何を隠していた!お前ら二人は、俺を小馬鹿にしているのか!?…………こちとら、……ずっと、っ」
お、泣くか?感動の再会で泣くのか降谷零。
「――泣くわけないだろうがこの大馬鹿野郎!!」
私が零くんの反応を窺っていたのがバレて、頭を殴りつつ、投げ飛ばされてしまった。
クッション目掛けてとはいえ、友人の扱いか?これが?
だいたいここ私の家……ああ仁王立ちでそんな、まるでDV中の殴られてる嫁の視点。怒気がすごい。
怖すぎィ!
「……ゼロ、一旦落ち着こう?な?ほら、ハルもこんなんなってるし」
「みっちゃん助けてぇ……れーくんが家庭内暴力を……」
「ハル。ハル、今ふざける所じゃない」
「貴様ら……!誰のせいだと思って……!!」
特大の雷が、この日この時この場所に落ちたのだった。
■
「改めて。こちら、正真正銘のみっちゃんです」
「ヒロだよ、ゼロ。心配かけてすまなかった」
「……本物なのは疑っていない。――――無事でよかった。ヒロ。本当に……」
荒御魂と化した零くんを、なんとか2人がかりで宥めてようやく、話が出来るくらいまで落ち着かせることができた。後は国歌でも斉唱しとけば大丈夫だろうか。ダメ?
「だが、ヒロ。なんで無事なんだ。
お前は……
一旦景光くんと零くんで事情の話をしている間に、土足で入ってきた景光くんの足跡や、零してしまった緑茶などを片付ける。引っ越しの時の掃除用具をそのまま使ってるけど、そろそろ新しいの買うか迷う。
あれ、表に景光くんの乗ってきた車が、アイドリングで放置されてら。
「みっちゃん、外の……」
「ライに協力してもらったんだよ。彼はFBIから潜入していたNOCだったから」
ライ、の単語を聞いただけで、零くんの表情が一瞬歪んだ。FBIと聞いて、更に歪みが続いた。
思いつくことがあったのか、彼はまた、怒りと嫌悪を表していた表情から、苦々しい顔になる。
「そうだ。…………ああ、そうか。そう、だ、な……俺が、お前を追い詰めたのだと、ずっと考えていた」
「……あの時、駆け付けてくる足音があったから俺たちが慌てていたのは本当だ。決定的な場面を見られてしまってはまずいから。
だからライにもロクに説明出来なくて……ぶっつけ本番だったんだ。彼も、色々便宜をはかってくれて……」
状況がよくわからないが、ライってのが本来の沖矢昴となる男、赤井秀一のはずだ。景光くんが逃亡した時、誰に助けてもらったのかを聞いたからね。
本来、ライとバーボン……こと赤井さんと零くんは、組織で組んでいた時はあったけれど、色々あってとんでもなく拗れてしまったと、前の友人から聞いている。
その一番の原因が、同じくウイスキーの名前を与えられた、スコッチという人物。
私は、潜入していた頃の景光くんがコードネームをもらってたという話は聞いていない。
しかもそれが、スコッチだったなんて。
なんだよ、みっちゃんてば重要人物じゃん。
誰だよモブとか言ったやつ。こんな美形がモブなわけないだろ。
そりゃ優秀なはずだよね。とある団体の潜入捜査官やってたけど、ヘマやって追われる事になっちゃって、なんて笑ってた時は、しょうがない人だなぁなんて思ってたのに。
「ヒロ、お前はどうやってあの場から無事で、逃げることが出来たんだ?」
そこは私も気になるところ。事の始まりは私がしらせたけれど、逃げ出す時どうやって逃げたのかは聞くに聞けずじまい。回収とその後の保護は私がやったけれど、そこだけは組織の内情だし、私が顔を出すのは違うかなと。
聞けるのかな聞いてもいいのかなと近寄ると、前のめりな零くんに手のひらを向けている景光くん。
「ちょっと待ってね。ハル、さっき何か言いかけてたけど何かあったか?」
「あ、いいですか? 外に車、アイドリングで置いてますね?近所迷惑なので……」
「ああ、そうだよ、もしもの時はハルを乗せて逃げようと……あ」
今日はみんな、よく途中で中断するなぁ。
話してる途中で言葉がストップ。キョロキョロと、私と、零くんを見て、頷く。
「場所を変えて話をしないか? 行きたいところがあるんだ。……逃げないよ、大丈夫だって。ゼロ」
「……移動は、構わないが……」
「え、みっちゃん、どこに行こうとしてるんですか?」
「ほら、アレだよアレ。さっきの、俺が見つけてしまったところ。本当は、ハルを連れていこうとしてたんだよ。途中で電話が切れたから、すごく焦ったんだぞ」
……ああ!阿笠さん家の別荘か。
納得しかけたが、山道じゃないか!
「ますますダメです!あの車に3人乗せて山道なんて!私が車を出します!」
「山道? なら俺が車を出すぞ。…………お前たちに足を任せてられないからな」
行くのはいいけれど、逃げるのは警戒されたままってことでね。
「……言っておくがな。
その俺に黙っている『やむを得ない事情』とやらを聞くまでは堪えてやっている。だが、もし納得できなければ…お前たちには相応の報いを受けてもらうからな」
ヒィ。
キロリとひと睨みして、外へと向かうのに立ち上がってくれたが、降谷 零ってば怖いんだからまったく。
……受ける予定はないけれど、相応の報いってなんだろうね。
■
尻に派手な
そんだけの速度が出せてしまうもの。
運転席に零くん、助手席に景光くん。後ろに私が怖々乗って……私があまりに怖々だったので、零くんが訝しんでいたが、カーチェイスの定番の車と危険運転上等なアンタの運転する車に乗ることに怖々してただけだ。
「そういえば、れーくん。私の監視の方々、今日はひとりもいませんね?」
「俺が来るからな。下がらせた」
景光くんが駆け込んで来るところ、見られてたら不味くないか?と思ってたから、ちょっと安心した。景光くんの車は元々私のものだし、家の前に止まってても違和感は無いとはいえ、ね。
国道に乗って、運転がある程度安定したため、景光くんが話を始めるようだ。私は一応屋敷までの道を手元でスマホに表示させておいた。話に夢中になって、道間違いましたとか言ったら大変だからね。
「じゃあ…どこから話せばいいか……
一番ゼロが知りたいのは、俺がなぜ、生きていたのにお前に会うことを避けなきゃならなかったか、だよな。なら……
……ゼロは、組織への潜入は警察庁の公安として入っただろ?俺が組織に潜入する時は、警視庁の公安として潜入した。これは知ってるよね」
「ああ。だからまさか組織でお前と会うなんて……接触するまで気付かなかった。それがどうした?」
おっと、これは情報を挟む必要がありそう。
私は後ろから言葉をかける。
「ああ、その前にひとつ。
すいません。実はれーくんの協力者になる前、私、みっちゃんの協力者として、彼の潜入先での情報収集や改竄のお手伝いをしていました」
「そうか。よし、目的地に到着したら殴る」
「ええっ」
理不尽では? 補足したのに……
過去の事じゃないか!
運転中なら零くんの手は飛んでこないと思って、今のうちに色々伝えておこうと思ってたのに、予約システムになってしまった。
「まぁまぁ……」
運転中、隣の景光くんが宥めるという二段構成でなんとか零くんの怒りを鎮めてもらいつつ。
……景光くんが宥めてくれてる?なら、今のうちに話しちゃったほうがいいか。
「実はあの頃、Nebulaの試験運用を行ってまして」
「だろうな。どうせ俺やヒロの事を調べさせていたんだろう」
……大体察しついてるじゃないか!
「……ええ、そうなんですけども。それで、みっちゃんの状況を逐一確認していました。ある時、Nebulaがその不穏な動きを拾ってきてくれたんです」
それは、景光くんが公安所属の警察官、潜入捜査官である事を伝える、リーク情報の文書。
前の席で、静かにハンドルを握りしめる力が篭ったのが音で分かった。RX-7ちゃんがかわいそうだから、リラックスリラックス。
ほら、隣の景光くんがわたわたと、まぁまぁbotと化している。頑張れ景光くん。まだ続くぞ。高速道路に乗り、軽快に速度を上げていくRX-7。
「Nebulaから伝えられた私は、そのリーク情報を改竄しました。幸い送られる前だったので、送信先をフェイクにすり替えて……代わりの文面を作成してから、元のアドレスで正式な送信先へと送りまして、一旦架空の人物へと疑いを押し付けました。
ですが、あの瞬間だけの……その場しのぎでしかなく、その隙に犯人を探したのですが、誰がそのリーク情報を流そうとしていたのかを、私は突き止めることが出来なくて……」
あの時の組織の新人くんには悪いけれど、一応“疑いあり” にしてたから、即座に殺されることは……無いと思うんだけど…………思ってたんだけど………………前の席からバーボンな気配と、景光くんのとんでもなく罪悪感刺激されてそうな苦い顔見るに、相当この二人、当時頑張ってたなこれ。新人くん大丈夫だったかな。
…………………………こわいから気にしないでおこう。
「いつまた、リーク情報が流されるかわかりませんから、その事を私はみっちゃんに伝えました」
「……俺は、その事をハルから聞いて、すぐハルにその対処を止めさせたんだ。
その情報が、どうも警察……俺を、俺たちを潜入させている側から出ている物とわかったから。最悪、ハルまで危険になる」
運転席の後ろに座った私からは、景光くんの苦々しい横顔と、ルームミラー越しに剣呑な零くんの目付きしか見えない。
前の席、空気悪いな……速度制限大丈夫?ここ80キロだよ零くん。
「……ああ、大体わかったよ。お前たちが何故俺に教えなかったのか。
どこまで連中の手があるか、わからなかったんだな」
それは概ね、はい。景光くんがうん、とぽつり呟き、首肯した。
景光くんに止められてしまったため、私はそれ以上の警察の調査が出来ず。景光くんが言うように、零くんはリークの気配が無いことから、警視庁がヤバいのか、それとも景光くんが潜入に手を貸してもらったりした、潜入捜査官であることを知る人の中に敵がいるのか……警察そのものがヤバいのか、わからなくなってしまった。
………………あれ、この時もしかして、Nebulaは警察について調べていたのか……?
「ああ。このままでは、最悪俺だけじゃなく、協力してくれたハルや、俺と組んでたゼロにまで調査が及ぶ可能性が出てきた。だから、俺は……早急に、組織から抜けることを計画したんだ」
「……それが、あの海への転落か」
「ああ。でもそれには、あのビルから、俺を死なないように撃って、海へ落ちた俺を探さないでいてくれる、そんな都合のいい存在がほしかった。
ゼロには頼めなかった。万が一ってことがあるし、……あの頃の俺には、ゼロのことは信じられても、ゼロの後ろは信じられなかったから」
「………………ああ。そこは、わかる。わかりたくはないが、理解できる」
だが、と、なんか今までと違う感じの怒気が零くんにみなぎりはじめたな。舌打ちしそうな……いや、してる。今したぞ零くん。
「だが。 言うに事欠いて、それで頼ったのが……ライなのか?なんで、あんな……」
あれれ?ライ……こと赤井さん、スコッチ殺してないってもうわかったはずなのに、いまだに零くんに殺意みなぎってるの何?どうしてぇ?
「ハルが、公安以外からの潜入捜査を行っている人物を調べてくれてな。本当にいるかはわからないけど、とは言われたけれど、それが『FBIからの潜入で、外見が黒髪のくせ毛、長身で、緑の目、目元が特徴的な、……射撃、特に狙撃技術がとんでもなく凄い人』ってことだけで……でも俺たちならわかるだろ?」
「ああ……ライだな」
そんなわかるほどそのままなのか……たぶん2人とも、狙撃の腕前で確定したんだと思うけど。
……ただ、私からすると、その“ライ”が、私の知っている原作での赤井秀一なのかわからない。
もし居なかったら、いたとしても、もし中身が違かったら、潜入捜査官じゃなかったら。話は変わっていた。
……どうだろう。このライは赤井秀一なんだろうか。面識がないからわからない。あったとしてもわからないんだけどね。
「みっちゃんの逃亡準備が整ったと同時に、私からの情報で、その、ライさん?にみっちゃんが警察官であるという偽のリーク情報をひと足先に流したのです。それが計画のスタートの合図でした。
元々のリークの送信と同じ暗号化の手法で、組織の方にも情報を流して……そして、ライさんからも組織にその情報を伝えることで、ライさんが、みっちゃんを追い詰める命令を自然な形で受けられるように誘導しました」
あ、これを計画したのは景光くん自身で、私は情報を流しただけだよ。
どんな計画してたかも知らないから、この後どうなったかを、私が回収するまで、景光くんがどう動いたのかを知らない。
撃たれて落ちたってマジ?
景光くんが話し出す。零くんは静かに前を見ていた。
「あの夜、嵐のコンテナ港の監視塔。予定通りなら、ライが俺を撃ったフリで発砲して、俺は俺の血を染み込ませて、胸に穴を開けたジャケットを残して海に落ちるだけだった。
けど……予期せぬ出来事があった。
誰かが来たんだ。階段を駆け上がってくる足音が聞こえた。俺は焦って、計画を変えようとして、ライに自分の銃を渡した。あれは…フェイク弾が入ってたんだ。リアルな血糊が出る弾で」
あぁ、私経由で阿笠さんに頼んだやつか。当たると気絶しそうなくらい痛いし、当たり所によっては骨もいくときあるけど、穴は開かないやつ。潜入中、人を殺す命令を受けた際、殺したフリをするのに使えて助かったとはきいていたけど、自分にも使ってたんだなぁ。
ネーミング、『ハロウィン弾』とか言ってたけど変えた方がいいんじゃないか阿笠さん。
「ライにはそれがフェイクだって言ってない。……俺も焦ってたんだよ。だから、撃てって、それだけ頼んだんだ」
車が揺れた。蛇行運転ほどではない。速度が出ていたから、そうとわかるだけ。零くんのハンドルを握る手がわずかに震えたんだろう。そろそろ高速を降りる頃だ。大丈夫かな。
「…まさか……」
「ライは拒否した。当然だ。彼だって動揺してたからな。でも、足音はすぐそこまで来てた。俺は……ライにこれ以上、余計な疑いをかけたくなかった。ここまで命がけで協力してくれてた奴を、無駄に危険に晒したくなかったんだ。
だから……俺は自分で撃った。自分の心臓を。フェイク弾で。
後は、その撃った銃をライに投げつけて、海に飛び込んだんだよ」
零くんが、静かに息を呑む。赤井さんへの怒りが、困惑と、そして景光くんへの複雑な感情へと変わってそうな、見るからに動揺した目を、チラチラと横へ。
一番大事な所だけど、ごめんやで、道も一番大事な所なんだ。
「……高速、次降りてくださいね」
囁くと、静かな車内に思ったよりよく響いた。ああ、という返事には力がない。それでもちゃんと左車線に入り、徐々に速度を80前後に落としていく所は、どこか冷静なままなんだろうなと。
「…自分で………」
「……その後ライがどうしてくれたのかは、俺も、ハルもわからない。現場も見ていないし、連絡を取るのはお互い危険だから。
でもゼロの反応を見るに……あいつ、もしかしてそのまま自分で殺したと証言してくれたのか」
赤井さんへの恨みが崩れ落ち、自身の誤解の深さに愕然としている。零くんは口元をぎゅっと結び、視線を前方に固定したまま、何も言わない。車内の沈黙が重くのしかかる。
死体を目の前で確認出来なくしてしまった所を見せたのだから、彼だって何らかの処分を受けただろうし、変な疑いはかけられただろう。
や、その組織でどんなのを許して、どんなことを許されないのかわからないけどね。そういうもんじゃないの?トドメとかの確認って大事なんでしょ?
「ライには、俺の血が染み込んだジャケットを持ち帰ってもらうつもりだった。でもそのまま落ちたからさ。ジャケットは脱いで、別で流したんだけど回収されて良かったよ。
……ライは今も、俺の情報を誰にも明かさず、秘密にしてくれてる。たぶん、FBIにも伝えて無いんじゃないか」
FBIに潜るのは、私もちょっと骨が折れるので気軽には出来ない。でも零くんのあのそぶりなら、赤井さんは生きてるはずだ。組織抜けたかはわからないけど。
原作通りなら抜けてるんだっけ?
「みっちゃんは無事、私が……彼に付けていた発信機を頼りに、泳ぎ着いた所を回収しました。阿笠さんの小型酸素ボンベがあったとはいえ、あの弾で撃たれた状態で、あの嵐の海を良くもまぁ……」
「別の意味で死ぬかと思ったけどな。
ライも命かけて協力してくれてたから、ライが確認出来なくても、確実に死んでいるだろう状況は必要だった」
「あの時、れーくんから私に連絡が入っていたのは知っています。申し訳ありません。あの時は一刻も早く、みっちゃんを回収して手当するのに手一杯で、電話に出られませんでした」
零くんは無言だ。それはそうだろう。今のうちに情報流し込んどけの勢いで伝えてるからね。
「その後、みっちゃんは元の生活には戻れないため、私の世話のもと、故郷の山奥で隠遁生活を送っていました。……あの頃の私の傷心旅行、本当に各地は回ってましたが、実は毎回みっちゃんの所に寄っていたんですよ」
「群馬と長野の県境に、ずっと昔、秘密基地作ってた事があってさ。あそこは人が来ないし、来たとしても『久しぶりに来てみたくて』と言える場所だったから」
ゆっくりと、零くんが息を吐き出す。高速道路を降りて、赤信号で止まり、シートに凭れた彼から怒りや動揺は収まっていた。
代わりにより深い困惑と、友の行動への理解が混ざり合っている声色で、「……なるほどな」とだけこぼした。しばらくの沈黙。RX-7のエンジン音だけが響く。
青信号に変わり、走り出すと、沈黙に耐えかねた景光くんがまた口を開いた。
「ゼロ。俺はお前を信頼してるし、信用してた。今だって信じてる。でも……俺に、そしてお前に命令してる上層部は、もう信じられなかったんだ。組織に潜入して、いろんな裏側を見た。疑問に思うことがたくさんあった。もし俺が警察官だってバレて組織に捕まっても、上層部は平気で俺を見捨てるって、あの時の俺はそう思ってたんだ」
山道を登る。暗く、街灯のほとんど無い道を、反射板とガードレールの白さだけを頼りに車は登っていく。ヘッドライトの灯りに誘われた羽虫が、綺麗だったフロントガラスに当たり、何かの破片を残していく。
徐々に速度を緩めていくと、路肩に現れた待避所に、車はするりと入り、停車した。
零くんはハザードをつけて、その手をそのまま自身の目にあてる。しばしの沈黙。
「一部の腐敗は、俺も感じていた部分はある。ハルの判断も、理解できなくはない。
だが、どうしても……言わせてくれ。
なぜ俺には何も言えなかった。
俺はお前たちを……守ると、誓った……友人だったはずだ」
ハザードランプのカチカチという音だけが残る。エンジンがカンカン鳴ってるのも奥に聞こえる。暗い森がヘッドライトに照らされて。
うーん。と、ですね。
「みっちゃんの判断は正しかったと、私も思います。あなたがライさんを恨むことになっても、私が不審と見られるだろう行動を取っていても、みっちゃんの命と……れーくん、あなたの安全には代えられませんでした。ライさんも、私も、その計画で了承しました。黙るという選択を選んだのは私たちです。
みっちゃん生存をあなたが知れば、その情報が上に漏れる可能性があり、そこから組織へ流れた可能性は捨てきれなかった。そうなれば、あなたも危険に晒される。
それだけは避けたかったのです」
わかってくれと言う必要は無い。零くんはそれをもうわかっている。
「すまなかった。ゼロ。俺はお前のことが心配で……お前にまで万が一のことがあったらって……
ゼロは俺たちを頼りにして、巻き込んで……危険な目に遭わせたくないって思ってたんだろ?
俺も同じだ。だから、黙ってたんだ。
……本当に、すまない」
零くんの目は、まだ前方を向いたままだが、そのルームミラーに映る表情は明らかに和らいでいた。
彼は深く、深く、ため息をつく。
「……分かった。…………俺は……馬鹿だった………お前たちを疑って…………。ライは、あれは、……」
和らいだ表情が、赤井さんで曇る。そこだけはダメだったか。
そんなに嫌なの?
まぁまぁまぁ。そこはおいおいね。
「疑われても当然の行動でした。しかし、れーくんが今、真実を理解してくれた。本当に感謝いたします」
「……ゼロ、ありがとう」
零くんは、運転席のシートに深く身を沈める。目的地はもう少し先だが、目を覆った零くんが落ち着くまでもうちょっとかかりそう。
泣いてる?と景光くんに指と顔で訊ねると、景光くんは首を左右に振った。
なんだ、茶化してやろうかと思ったのに。
「しかし……これから、どうする。ヒロも、ハルも……これからどうするつもりだ」
「それは、これからご相談させていただければと思います」
零くんの協力が得られるなら、出来ることはグンとふえるからな!
え?隠してただろって?
バレちまったからにはしゃーないしゃーない。
バレた理由が誰のポカだって?
しゃーないしゃーない!
景光くんは、零くんの顔を改めて見つめた。目と目を合わせて、そうして頭を下げる。
「ゼロ。お前が冷静になってくれて、話を聞いてくれて……本当に良かった。ありがとう」
景光くんの言葉に、零くんは初めて口元に微かな笑みを浮かべる。それは、悲しみと安堵、そして友への深い信頼が入り混じった複雑なものだったと思う。
私に人を見る目はないけれど、友人の顔色くらいは窺えるはずだからまちがいない。
「ああ。本当に……お前たちが無事で良かったよ……」
本当はもう少し喧嘩してたんですが、景光さんが喧嘩両成敗アタックするまで止められなかったのでお互いに大人になってもらいました。
話中断しまくってますが無理やり短くしようとした名残です
事件現場を海沿いにしています。あと景光さんの水泳技能を振りました。たぶんクリティカル出してる。
読んでいただいてありがとうございます!