昴くんはなにもしない   作:あまも

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なにもしないが正解なんですね。
なんでなんかしやがったんだか。
余計なことしかしないな。

閲覧ありがとうございます!


9-1:悪霊退散

 

 

 

 零くんにお許しを頂いて、景光くんと二人で喜びあって、改めて友情を分かちあった私たち。

 

 それではいざゆかん、阿笠栗介の別荘へ!

 

 と、これまでよりもこころなしか軽快に走るRX-7に乗って、再度やって参りました郊外の屋敷。

 

 来る道中、景光くんから屋敷の隠し部屋に死体があった、という話を聞いて零くんがまた胡散臭いものを見る目を……何故かルームミラー越しに私に向けてきたので、私じゃない私悪くないと必死に弁明していた。

 

 

 実際、今回 私何も悪くないぞ!

 

 

 屋敷を貰えると聞いて

 行った先で何者かの出入りを察知して

 過去に届いた手紙から、屋敷の住人に世話になっていた何者かが住んでいた可能性があり

 その手紙が届かなくなった事から、何者かは屋敷を出ていったか、屋敷の中で孤独死したのではと考察して

 しかし屋根裏部屋が怪しいまでは予測したものの、探索不足でその道は開けず。

 

 屋根裏部屋で隠れ住み、かつての住人にも暗号を送るような人物が、誰かに追われていないはずがないので、もしかしたらその人物に殺された可能性も視野に入れて。

 

 

「だから、死体があったのかも、ということで私は探索が得意で、万が一その何者かを追う人物が現れた際には荒事にも対応できる、景光くんに依頼を」

「……あれがほぼ答えじゃね?」

「ああ、大体合ってると思う」

 

 話を聞けよな。

 後部座席の真ん中から、身体を伸ばして前の席の間に顔を出すと「邪魔」の一言で零くんに押し戻されるし。

 

 零くんや、私の扱いが雑ではないだろうか?

 

 今だって、到着して早々に後部座席のドアの外で拳握り締めて立ってるし。

 

「良いからさっさと降りろ。殴るから」

「なんでですか!殴られるのに降りるわけないでしょう?!」

「お前は俺を怒らせた。その報いを受けろ」

 

 なんでや、私頑張ったのに。

 

 嵐の海を遠泳した景光くんが一番頑張った?

それはそう。

 ここで反対側から出たら更に殴られそうだな。

 

 

 

 何故か2発、頭上にたんこぶが出来るほど強かに殴られた。泣く泣かないで人の事からかっただろうとのこと。

 ちゃんと腫れてるのに、これそのうち消えるタイプのこぶだ。謎の再生力……これがギャグパートの怪我か。どうやるの?

 

 

 

 さて改めましてこちらのお屋敷。相変わらず、ツタの跡や外壁のヒビはあっても、しっかりと建っている。

 

 景光くんはここで見つけた遺体を、私に通報させる為に来た。

 

 

 ついでに。

 

「不審者がまだいるのは間違いない。昼間に俺が来た時、物陰から見ている奴がいた。恐らく、ハルの予想通りあの遺体の人物を狙っていた何者かだ。

一応鍵は締めていったけど……やっぱり、誰か侵入してる」

「不審者いたんですか」

 

 景光くんがペンライトで、扉を少しだけ開けた隙間を照らす。その先を見ると、扉にぶら下がった糸と、小さな虫ピン。普通に通ろうと扉を開けると抜ける仕組みだそうで。

 それはちゃんと抜けていた。

 

「このまま屋根裏部屋に行くか?ゼロ」

「俺はその方がいいと思う。ハルは?」

「そもそも屋根裏部屋、どうやって行くんですか?」

 

 この3人組の時、気楽で良いな。2人が色々進めてくれるから。

 阿笠さんと一緒だとこうはいかんよ。

 工藤家やヒロキくんも、いざとなったら私が盾になるべく気を張ってるし。

 

 だってこの2人、私より先に全部気付くじゃん。動く隙無いって。

 

 

「ええとね。まず暗号があったんだ。この…こういうやつ」

 

 景光くんが見せてくれたのは絵画の裏や、燭台の下、トランプの裏に描かれた模様。

 

「ああ、昔届いていた手紙のと同じ暗号ですね。月とか星とか、太陽の」

 

 工藤氏が分で解き、私がうんうん唸ってなんとか解いたあの手紙。こやつ、ひとりで、物に書いてある所から暗号解いたの?

 

「やっぱりそうか。実はこれが、それぞれ他の暗号の描かれた物を示していたんだけど、全部解いても、あまり意味が無い暗号でさ。どうも、何か鍵が別にあったみたいな……」

 

 『〇〇をみろ』といった短文で描かれたそれら。なにが書いてあったかを述べていく景光くんの言葉と、それらの配置を思い出すに……確かに、法則性は感じられないけれども。解けそうでしっくり解けなかった理由の大部分は予想できた。

 

「あぁ……なるほど、どこかの場所を示していたはずなのに、ということですか。…………おそらく、阿笠さんが飛行機の模型とか、物を動かしてしまったんですね。

 元々この屋敷、物をそのままにしておいて欲しい、という遺言だったんです」

「だからか。結構悩む羽目になったんだよな。“かびん”と“ろうそくたて”、“だんろ”と“さら”、“れこーど”と“にんぎょう”、“とらんぷ”と“ぶつごじてん”で、気付けはしたけど……」

 

 景光くんは言いながら、部屋の真ん中でその動かされなかった物同士を指差しで繋いでいき、何度も部屋の真ん中をくるくると動いて見せて

 ……最後に天井の、ライトを指差した。

 

「あの溝を合わせたら開いたぞ」

 

 みぞ。

 

「え、アレが仕掛けだったんですか」

「ハルは暗号も見ないでわかったのか?」

「わかってるわけないじゃないですか。

 掃除しててアレには気付きましたが、動いたので努めて触らないようにしていたんです。ヒビだと思って……だって、古い建物で動いちゃダメなものが動いたら、壊れかけか、壊したかと思うでしょう」

「あー……」

 

 なんだ、惜しいところまで来てはいたのか。でもそうと知らなきゃ、私はアレに触らなかったろうし……他者の視点は大事ってことね!

 

 

 

 ここで、いつの間にか離れていた零くんが、ドアから出てくる。

 

 ライトも持たず、月明かりだけを頼りに上下真っ黒な人が足音無く歩いてくるの普通に怖いんだが。

 

 隠密としてその頭はどうなんだと言いたい金髪をチラチラきらめかせて、零くんは親指を立てて寝室を示す。

 

「あの寝室のベッド下の箱、確認した方がいいぞ」

「おや」

「阿笠博士が予定していた宝探しの宝だと思うが、……ひどいことになっている。恐らく不審者の仕業だな」

 

 おやおや。

 

 おやおやおや。

 

 見に行ってみれば、なるほど、ズタズタのボロボロで、ナイフが突き立てられたおもちゃ箱。

 

 ひとりかくれんぼもかくやな有様のクマのぬいぐるみが、飛び出た目とはらのわたを飛び散らせている。仮面ヤイバーフィギュアはばらばらの惨殺死体の如し。墜落したような飛行機のプラモデル。

 事件現場はここにあり。

 

 かわいそうに。

 

 阿笠さんが、子供たちの笑顔のため、ワクワクしながら頑張って用意していたというのに。

 

 

「……ホー……?」

「ハル?」

 

 

 目的が何かは知らないが、下手人はよほど求めている目当てのお宝があるらしい。どれだけの価値があるものなのやら。

 

 阿笠さんの、子供たちへの思いやりより価値があるのか見てやろうじゃないか。

 

 

「みっちゃん、れーくん。今、周辺に……声が聞こえる距離で、こちらを窺っている人はいますか?」

 

 私の言葉に、瞬時にそれぞれ静かに目配せと、耳を澄ませて集中している2人。

 

 そしてほぼ同時に「「いない」」との判定をいただいた。

 

「俺が確認した奴は、あまり隠れるのは得意じゃない様子だった。あれと同じなら、確実に近くには居ないぞ。遠くとか、他のがいる可能性はあるが……」

「さっきさらっと全部屋見てきたが、建物内部に誰もいないのは間違いない」

「来てからずっと、外を見える位置は確認しているけど、窓から覗いてる奴もいないはずだ」

 

 よく分かってない私にちゃんと説明してくれる手厚い介護。あまりにも頼りになりすぎる…

 

「ありがとうございます。であれば、屋根裏部屋のギミックと、遺体の確認だけして一旦帰りましょうか」

 

「お? わかった」

「……その理由は?」

 

 私の提案に、戸惑いつつも景光くんは頷いてくれたが、零くんは首を傾げる。

 

 んもー……2人とも分かってるくせに。

 

 

「罠を張りましょう」

 

 

 ■

 

 

 潜伏が3人の中で一番上手い、景光くんを残すことを、最後まで渋っていた零くん。

 

 しかしこの車が離れないと、獲物は屋敷に近寄って来ない。

 むしろ、ならば誰を残すんだと。私はモヤシだし零くんが残っても、もし景光くんが逃げるとするなら逆に車と共に逃げる可能性となる。

 身の安全が心配?……景光くんが木っ端な相手(恐らく一人)に?

 

 尚も渋る零くんに、しょもしょもに眉を下げた景光くんが

 

「俺を信じてくれないのか?ゼロ……」

 

 と仔犬のように頼み込むことで最終的に負けて、零くんは私を車の助手席に押し込んで、夜食兼朝ご飯のファストフードを、当てつけみたいな派手なエキゾーストノート響かせ爆走ダウンヒルでパシって買って来ることとなった。

 

 

 零くんと車内で、何か会話があったかって?

 

 あのぶん回し危険運転の中で?

 私は掴めるところ掴んで足を踏ん張ることで精魂尽き果てたよ。

 

 

 ドライブスルーで頼んでる所で、見張っていた景光くんから、『罠に獲物がかかった』と連絡が入ったので、こんどはヒルクライムされて(ドリンクもあるので大人しめ)戻ってきたってワケ。

 

 

 私決めた。二度と零くんの助手席に乗らない。

 

 彼は運転上手いから、想定外さえなければ事故らないと頭ではわかっていても、どうしても自分がダメだと思うと、足元に無いのにブレーキ踏んじゃうんだもの。

 こりゃ左足筋肉痛確定だな。

 

 

 

 白く薄明かりが稜線を照らし始めた、朝焼けの空に高らかに銃声が鳴り響く。

 

 おー、おー。ご機嫌だこと。

 

 箱罠にかかったハクビシンみたい。

 

 

 屋敷の前に停めた私たちの元に、どこからともなく景光くん。……彼もだけど零くんも……この人達、マジでどこからでも出てくるな。どこにいたのかわからない。

 

 

「ヒロ。無事か」

「ああ、もちろん。犯人、やっぱり俺が一度見かけたあの男だったよ」

 

 朝焼けの空の下、爽やかな森の景色をバックに、カッコイイRXと美形な野郎共が、ホットコーヒー飲みながら語り合っている。

 

 ええやん。これだよこれ、私が見たかったのはこういうのだよ。

 

 次点で見たいのは、クリスさんと有希子さんが旅客機か観光列車のプレミアムな席で楽しくお話ししてる所かな。優雅にシャンパンとか置いてさ。

 見てぇなぁ〜!

 

 

「みっちゃん、上手く罠にかかりましたか?」

「ああ。屋根裏部屋の奥に、目当てだろうあの20ドル紙幣の原板を目につくように置いといたからな。一番奥まで行って、喜んでるところで階段を閉じたよ」

 

 窓は外から板を打ち付けたので、外開きのあの窓は開かない。

 身軽な零くんが一瞬でやってくれました。

 出るのはともかく降りるのはどうするのかと思ったら、私が数日前に刈り込んだ草の山にそのまま飛び降りて、ころりと何事もなく出てきたし。イーグルダイブかよ。

 

 

 ……まんま箱罠だよね。

 

 

 屋根裏部屋で、遺体の検分を終えた際。

 2人にこの、博士の真心へのおかえしの、私の気持ちを込めた計画を伝えた時。

 

「阿笠さんの真心こもった宝にあんなことをする人ですから。よっぽど、この20ドル紙幣の原板は素晴らしいお宝なのでしょう。

 ならば屋根裏部屋への道を開けておいてあげれば、きっとゴキブリホイホイから逃れられないゴキブリの如く入っていくでしょうから。

 大好きなお宝と、ずっと何年も探していた人との感動の再会ですよ。涙無しでは語れませんよ。その逢瀬を邪魔するなんて、そんな……ねぇ?」

 

「趣味が悪い」

「ごめんね、ハル。ゼロに同意」

 

 とのこと。真顔だった。

 

 ……確かに、数年ぶりの再会を果たした人達に言う言葉では無かったかもしれない。

 

 

 阿笠さんの用意した箱の中のかわいそうなお宝たちは、景光くんが持ってきてくれたのでこのまま持ち帰ろうと思う。器物破損の物的証拠ではあるが、このままではかわいそうだし。

 

 屋敷の屋根付近から聞こえる発砲音的に、奴はまだまだ色々、元気に壊してる様子だし。

 

 処分されたり壊されるとまずいかな、と屋根裏部屋で見つかった物も、景光くんは持ってきてくれている。

 その中の手紙は特に、犯人……奥田倫明に偽札を造らされていたことを証明する重要な証拠であり、なぜ彼があの屋敷で隠れ潜み、ひっそりと生きていたのかの説明として提出できるはずだ。

 

 抗不整脈薬は、彼の死因に繋がるだろう。

 

 そして……60号か80号程のサイズの、女性の顔の描かれた大きめなキャンバス。

 その微笑みは、絵であっても惚れ惚れしてしまう。きっと彼にとっての、もっとも“美しいもの”を切り取ったのが、この絵なのかな、なとと。

 

「キレイな人ですね、阿笠定子さん」

「ね。少ない画材で、それでもそこまで描いたんだから、きっと素晴らしい腕だったんだろうね」

「阿笠博士の伯母だったか。絵のモチーフにしたくなるほどではあるが……それ以外の感情もあったんだろうな」

 

 当の本人たちは皆亡くなっている。あとは好き勝手な想像で語るしかないけれど、3人が集まって同じ発想なら、きっと正解ではあろうもんよ。

 

 

 

 ヤケになったのだろう、連続した発砲音があり、ガシャンガシャンと物をひっくり返す大きな音。

 なにやら怒号も聞こえる気がするが、今はちょっと眼福を楽しみたいので耳に注意がいかないな。

 跳ね階段の機構、壊してたらどうしようかと一瞬頭をよぎるが、それでいよいよ出れなくなったらその時はその時か。

 出てきたなら? ここにはファイターが2人おる。

 

 ほなええわ。

 

 

 はー、山の上だと耳が遠くなっちゃって。なんも聞こえないですわぁ。

 

 

 気にしちゃった景光くんが、チラ、と屋敷の屋根裏部屋辺りを見る。

 いいのいいの。気にしないの。

 

 零くんなんて何一つ気にしないで「お、野うさぎ」とか言って森の奥を眺めてるんだぞ。

 

 

「アレ……通報しないのか?」

「しますよ。そのうち。

 でもほら、まだ朝早いですから。そんな、殺人事件でもないのに警察の方を起こしては悪いです」

「殺人事件……ではないけど……」

「警察のかた……?」

 

 はた。青いたれ目と、大きな猫目。視線が交差する。

 

 ………………うん!

 

 

「ささ、チキンナゲットでも食べてこの景色を楽しみましょう」

 

「というかドア全開にしておけよ。匂いがこもる」

「ゴミの袋どうしましょうね」

 

 

 後で別の知り合いの警察の方に連絡するか。

 

 

 





人を顎で使うんじゃないよ

でもそれぞれ(自分が動いた方が早い)とか(このメンツなら自分がやるべきだ)とか思うだろうと思うと、いよいよやること無くなるんですよ

他人の車に乗るとブレーキ遅過ぎて疲れる人と信号止まりすぎて疲れる人といますね

よんでくださりありがとうございました!
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