昴くんはなにもしない   作:あまも

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なんとか生き残れる可能性を探ってみていますが難しそうな人が一人…


閲覧ありがとうございます!




9-2:大同小異

 

 

 

 

 せっかく人気(ひとけ)のないところに来たのだからと、ついでに方針的な話をする事にした我々。

 

 会場は長閑な山奥、古びた屋敷前。

 BGMは木々のざわめきと森の生き物の生活音。あと時折騒ぐ妙な男。

 視線は屋敷。万が一アレが逃げ出すようなら、その切っ掛けとなりうる物音を察知するのは優秀な私の友達。

 

 せいぜい反省するが良い。

 とりあえず10時ぐらいまで放置しとくか。

 

 

 さて。あと私が話せることはなんだろう。あんまり無いと思うのだけど。

 

 考え事するなら朝ごはん食べて、頭にエネルギーを送るのが大事。昨晩は野菜スティックしか食べてない。

 なんなら2人は何も食べてない。

 

 しっかり食え……おかわりもあるぞ……

 

 麓に4時からやってるお店があって良かった。開店凸みたいになったけど、ドライブスルーカウンターのお姉ちゃんは黒ずくめの怪しい男がキャップ外した瞬間にみせた爽やかあむぴ笑顔でノックアウトだから問題ない。今日も一日頑張れそう。

 

 チキンを挟んだマフィンを齧る。うま。やっぱこれ。これしか勝たん。

 横を見やれば、お顔に似合わず豪快にてりやきやソーセージエッグの挟まったマフィンにかぶりつき、咀嚼しながら思案顔のお2人。

 

 うん……朝の空とこの2人の顔を見るの、いいなぁ。体調がみるみる改善されそう。これが朝活か?

 

 その2人がふいに私を見返して来る。なんだい、チキンマフィンのからしマヨでも付いてた?

 

「……お前はどうするんだ?」

「へ?私ですか?」

「うん。まず、ハルはどうしたいの?」

 

 言われましても。どうしたいか、というかどうなるべきかを決めるのは2人のほうだろう。

 私は別に……そのうち赤井さんに身分明け渡すかもしれないし。

 

「私は直接的には組織とも警察ともあまり関わりがありませんから……みなさんのお手伝いをしたいですね。お2人はどうしますか?」

 

 私の言葉で、今の今まで落ち着いていた零くんが目を鋭くして瞬間湯沸かし器の如く沸き上がった。

 ちょっと、この電動ケトルのスイッチどこ?お高いんでしょう?壊れてない?

 

「直接的に関係無いだと?どの口が……!」

「ゼロ。ゼロ。ハルは自覚ないらしいから」

「そこが問題なんだろうが!」

 

 なんかダメだったらしい。直接関係があるのか?私に?

 

「クリスさんとのお仕事ですか?」

「お前があの女とやり取りをしている事実がある。どう言い逃れしようが、お前はもうこっちに足を踏み入れてるんだぞ」

「…………え、でも仕事内容は他のと同じですよ?」

 

 でもクリスさんだしな。私からの情報を悪用してるんだろうか。してるのかもしれない。

 バーボンさんがそうだそうだと言っておられる。

 マフィンの包み紙を畳んでいた景光くんが顔を上げて、零くんの方を見る。零くんも、何やらひとつ頷いた。

 

「……それって」

「…………一応確認しておくが、ハル。お前、あの女からどんな依頼を受けた?」

 

 連絡してた通りなのだが??

 

「それこそあなたに伝えていた仕事内容ですよ。基本的には素行調査、既にある情報の精査、たまに今回のように、バイト探し中の方へお仕事の紹介……」

「その中で怪しいと思うような物は無かったのか?」

 

「……怪しい人と言いますが、そもそもご依頼で回ってくる人って大体何かしらある方ばかりなんで……」

 

 企業からだと現社長の元部下の息子さんとか、かつてライバル会社を合併吸収した際の相手会社のお孫さんといった、なんかやらかしそうな方であったり。

 個人であればそれこそ真田さんの依頼のような、なにかあったのかもしれない事件だったり。

 ……成実さんのように、何かをされて、身分隠して何かしようとしている人だったり。

 

 この世界、日々色んな人が何かの事件に巻き込まれ、その真相に辿りつこうと日夜情報収集に四苦八苦しているのである。

 恨みを持つ犯人が犯罪を犯すには、恨む相手を恨むだけの理由があり、その逆もまた然り。

 当たり前体操!

 

 結果、依頼人も調査対象も、“怪しい”ところを探すようなものなので、逆に怪しくない人のほうが怪しいレベルなのだ。

 

 というか怪しくない人の調査依頼出さないでしょ。どんだけ疑り深いのか。

 

 ……一件だけあったのは、鈴木のご令嬢の綾子さんのお付き合いの相手が大丈夫な方か知りたい、という鈴木会長からの依頼かな。

 あれは親バカなので良いです。

 お相手の雄三さんは普通に好青年だったので是非暖かく見守ってあげてほしい。

 家族?……う、うーん……素行があまり……かも……

 

「う、うーん……」

「それも……そうだな……」

 

 3人で難しい顔をすることとなった。調査しないと怪しい人が多過ぎるんだよなぁ。探偵が増えるワケである。

 しかしまぁ、興信所でも探偵でもあるまいに、個人情報をバイト感覚でひょいひょいしてたのもまた事実。

 

「そっかぁ……私も清廉潔白とはいかないのかぁ……」

「……いや……だいぶ前からハルは白くはないと思うよ?」

「えぇっ」

 

 景光くんの言葉に、何度も頷いている零くん。

 なんてこった。

 

 この世に、私ほど正義の光に晒され続けて色褪せて白くなった人間もあまりいないでしょうよ。

 

 悪いことしたら秒で見抜いてくる超級天才小説家と未来の名探偵とこの2人が居たのに!

 

「でも、そうか……じゃあ組織とはなんの関係も無いですよって顔しなきゃいけないですね。

 ……今まで通りじゃないですか」

 

 なぁんだ、心配して損した。

 

「違う、そうじゃない。ハル、組織の悪事が白日の元に晒された時、お前もそこに名前が載るんだぞ」

「いやあ、それなら大丈夫ですよ。これまでだって――」

 私の機材の方が上とれるし、ノアズ・アークもいる。あとはあっちの――――――

 

 

「あぁっ!!!」

 

 そういうことか!!

 

「何かあった?」

 

 聞いてくれるか景光くん!

 

「私の自殺の理由が解りました!」

 

「は?」「おい」

 

 そうかそうか、そうだよな私。

 そうするよな、私。私ならそうしたんだ。

 私だから、(Nebula)はそうしたのか。

 

「……落ち着け」「ピッ」

 

 頭頂部に衝撃。零くんの手刀だった。昨晩からそんなにボカボカ何度も叩かれると、ただでさえハードのスペックしかないのにそのハードすら壊れちゃう。

 見れば景光くんはオロオロと困っているし、零くんは零くんで、昨晩見たようなあわれなものを見る目をまたやっている。

 

「その話は一旦保留にしておけ。お前の得意だろう」

「へ?」

 

 零くんたら、私の得意は、私では答えの出なさそうな事を保留するだけで……まぁいいか、保留しとこう。話が進まないって話かな。

 なんだっけな。

 

 ああ、目標だっけ。

 

 長年の謎が解けて混乱しちゃったね。

 

 改めて咳払いした景光くんが、ナゲットにケチャップを付けた物を挙げる。はい景光くん。

 

「まず、俺は組織からも、警察からも身を隠す必要がある。これまで通り、身分は隠して2人のサポートに入るよ」

 

 さくりとナゲットを齧る。伸びた前髪を鬱陶しそうに頭を振っている。陽が出てきたから邪魔なんだろう。

 

「そういえば、ヒロはヒゲ、剃ったんだな」

 

 しげしげと、明るいところで改めて景光くんの顔を眺めていた零くんが思わずといった様子で漏らした言葉に、景光くんは咀嚼していた口を止めた。

 

 だよね。ヒゲ、気になったよね。

 

「むしろヒゲが生えてた事が私には不思議で。

 だって、みっちゃん……ヒゲ似合わないんですよ?そんなかわいらしい顔してるのに勿体ない」

「童顔だから嫌だったんだって!!!」

 

 ははは、吠えてら。

 

 警察や組織では、粗野……威厳……というかそのようなもので年齢を相応に見てもらおうと、ヒゲを生やしていたのだと聞いた。

 てっきり逃亡生活で髭剃りが無かったからかと思っていたのだ。

 

 なら印象変えるために、剃るしか無いよね?

 

 

 ヒゲを剃った結果、無事見事に若返った景光くんは、たぶん今でも学ラン着たら高校生、下手したら中学生でも通じそうなその顔を悔しそうに歪めて、歯噛みしながら、背負っていたボディバックを前に直した。

 中からスポーツサングラスを取り出して掛け、前髪を手ぐしでぽさぽさと。6:4分け、目元多め。

 

 出来上がりはまるで、朝や夕方に、公園で犬の散歩してたら良く顔を合わせるが、挨拶してくれる程度の知り合いの、ランニングしてるお兄さん……のうちの一人、にいそうな青年。

 変装というほどでの変装でもないのに、これまでこの天下の探り屋 零くんにすら見付かってないのだから、そこは隠密スキルの高さか、はたまた髭剃り効果なのか。

 

 笑ってるが、そこの降谷 零くんも大概ベビーフェイスだぞ君。いずれ100億のあむぴとなる者よ。大丈夫か、公安潜入捜査官。務まるのか。

 

 

「コレで、普段は江古田でバイトとかしてたんだ。たまにフリーのライターとして取材活動はしてたけど、あまり人と接触しないようにしてた」

 

 ライターの仕事は工藤氏経由のお小遣いである。潜入捜査の実体験の生の声がたまに聴けるので、工藤氏はホクホクしていた。

 ちゃんと話にフェイクは入れてあるし、作品の参考止まりにしてもらってはいるけれども。

 いやだってあの人物覚え良過ぎて、私の隣のヒゲ剃った景光くん見て開口一番「景光くんだね?……そうか、警察を辞めなければならない状況、か。解った」とか最速で当てに来るんだもん隠せるわけないじゃん。

 ええい、この天才がよ!!

 でも気に入ったからって景光くんを海外に連れて行こうとしないで!執事じゃないぞ!

 

「今メインで使ってる名義は“小林 唯景(コバヤシ タダヒロ)”だ。他にもいくつかあるから、顔を見ても名前は呼ばないでくれ。」

「わかった」

 

 他の名前で私が知ってるのだと、松下と桶川かな。倉庫番と配達員だっけ。バイトの緑くんもいたかな。

 

「俺もハルもサポートするつもりってことは、ゼロがメインになるか?」

「それは困る。俺はまだ組織とも公安とも繋がりがあるぞ。俺の周りで動けば、必然、お前たちにまで目が向くだろう……一応、ハルはこれから俺の監視に入れるが、ヒロは……」

 

 しれっと私が監視対象に。クリスさん……ことベルモットからそう頼まれたんだったか。

 私としても目の届くところに零くんがいてくれたほうが、変に心配しなくていいかな。

 

 ………………ノアズ・アークの話とか、文明レベルの話、どうしようね。

 

 さて、景光くんのこれからの方針か……

 

「あ、では新一くんのサポートしませんか?」

「新一くんって、工藤先生の息子さんだろ。あの……月影島に行った」

 

 景光くんの目元が、サングラスで見えないが、ハッシュドポテトを地面から低い所に横に振るって見せる。月影島での新一くんのことを思い出しているんだろう。

 

「そうですそうです」

「そうか、あの小さいのは新一くんなのか。後で説明しろよ、ハル」

「……話してませんでしたっけ」

「息子2号と聞かされていた」

 

 …………………………やだ、カマかけられた!!

 2人からの視線が痛い……わ、悪気は無くってェ……

 

「ハル……」

「ぜ、全部教えたと思っててェ……そういえば急ぎの案件だったので省略したんですっけ」

「そういう所だぞ」

 

 はい……確認ちゃんとします……

 

 

「ええと……彼、組織の解体を目指してるみたいで、色々と調べものを頑張ってるんです。

 2人が手を貸してくれたら、解決が早まります。是非、御協力お願い致します」

 

「………………高校生だろたしか」

「そもそも子供じゃないか。先に保護しろよ」

 

 

 警察の方々からごもっともなご意見!

 

 

 

  ■

 

 一旦仮眠を取らせてもらって、10時頃に知り合いへの通報である。

 

 「もしもし、ポリスメン?――そうそう、悪いことした人ですよ。

 え?私?違いますよ!やだなぁ。……ええ、ええ、…………違いますって!………………ええ、警察を呼んでいます。はい。…そう。……ですから、警察を呼んでいるんですって。もしポリしたじゃないですか。……ふざけてませんよ、ちゃんと事件ですよ。……最初からそう言ってるじゃないですか!悪いことした人がいるから、警察を呼んでいるんです。…………だから私は何も悪いことしてませんよ。今度こそってなんですか、私、まだ一回も逮捕歴無いですからね。………………ええ、そうです。状況ですか?

 ええとですね……家屋内に銃器を持った男が立てこもり、我々はなんとか命からがら脱出できましたが、内部から発砲音が聞こえます。また、屋内には白骨化した人間と思われる死体も……え?……

 本気です。……ゲームじゃないですし謎解きでもないですよ。ありのままです。

 …………だからふざけてないですって!酔ってもいません。私が酒を飲まないの知ってるじゃないですか。

 ……はい? ………………ええ、ええ……あー…………1人だと危ないかもしれないですね。少なくともあなたは危ないです。……もう、ふざけるならもっと真面目にふざけますから!ちゃんと連絡してる時点で真面目じゃないですか!……え?……ええ……

 あ、はい。……すいません、同行者に代わりますね」

 

 知り合いと問答していたら、痺れを切らした零くんが頭が痛そうに額を押さえ、重いため息吐き出しながら、「代われ」と私の肩を掴んできたので、任せるべく携帯を渡す。

 渡してからそういや零くんは携帯の使い方わかるのかなと思ったが……

 

「もしもし?お電話代わりました。ええ、ああ、すみません、友人が少々動揺していまして。

 ︎︎そうですよね、普通に110番した方が良いかと僕も思います。ですが、彼があなたなら信用出来る人だからと……はい、はい。ありがとうございます!

 では、状況を整理してご説明させていただきます。

場所は――」

 

 普通に耳に当てて、にこやか爽やか物腰柔らかな好青年が流暢に語り出して、そっちに意識が取られてしまった。

 

 誰だお前。

 

 

 あ、あ、……安室 透かこれ!

 あまりの変わり様にビックリしちゃったよ。

 

 ね、景光くん。

 景光くんもそうだそうだと頷いています。

 

 

「――はい、ですから、これは非常に危険な状況であると判断しまして……

 僕たちではどうすることも出来ず……ええ、はい、お待ちしております。どうか、早急なご対応をお願いいたします。はい。……では、失礼します」

 

 ぷちりと切って、そのまま携帯を眺めている零くん。

 あれは阿笠さんに頼んで、別の通信会社で契約してもらった折りたたみの携帯2台のうちのひとつだ。50代からのかけ放題で安く契約出来たから。前時代も1つくらいあった方が良いかなと。お土産渡す時に片方借りてきた。

 

 携帯を返してくれる、手を伸ばした零くん

 ここで一言。不思議そうに。

 

 

「お前、あの薄い板はどうした」

 

 ……もうとっくに見られてる!!

 

 いつのどれだ……?

 いや言うほど私隠してないや。

 

 ……てか零くん、ホントにスマホ、知らないのか?

 

 ︎︎景光くんが公衆電話とか言い出した時から彼のスマホは無くなったけど、零くんだってスマホだったろうに。

 ︎︎ね、景光くん。とみやれば、彼も首を……あれ?目をまん丸くしておられる。

 

 ︎︎え、何その反応。

 

 

 





特に言及は無いです。


土日はちょっと忙しいので描き貯める時間無いかもしれないです。
書く時間が無かった場合、過去編か、if話か、初期稿か、オリ主昴くんの人物設定まとめみたいなのが出ます

もしくは飛んで一番最初に書き出した所まで行くかもしれません。

読んでくださりありがとうございました!
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