昴くんはなにもしない   作:あまも

25 / 154

夏の暑さにはお気をつけください。
秋の話ですが今暑すぎて暑い描写していたらリアルな感情が混じってしまっている説があります。温暖化と思って見逃してください。


閲覧ありがとうございます!


11-1:環状線と爆弾魔

 

 

 

 

 小五郎さん……に隠れて新一くんが、黒川氏の事件を解き明かし、その数日後に黒川邸の炎上。

 

 というのを聞いて、ニュースを見て、オクトーゲンが大量に盗まれたと続き、ここで大体確定。

 ついに始まったか……時計仕掛けの摩天楼。私が唯一、理解(わか)ってる話。

 

 しかし、時期が違う事に疑問。

 

 だって今、ゴールデンウィークじゃない。

 夏の終わり、秋の始まり、まだまだ暑いが9月。

 しっちゃかめっちゃかになってはいるが、あんな明確に5月4日に起きた東都大騒ぎ事件とわかっているのにその日付が頼りにならないとは……今後もそうなってくると、困ってしまう。

 にわかのうろ覚えでも劇場版のいくつかは冬の雪山や新一くんの誕生日や夏の海や紅葉の頃を舞台にすることくらいはわかっているのに。

 あ、あと経緯はわからないけど爆破されるシンボル的な建物は知ってる。

 

 というか時間がめちゃくちゃなことを、今更かと深く考えなくなってしまっていた自分が怖い。

 

 注意していきまっしょい。

 

 

 さて、犯人はモリアーティなあの人だと勝手に断定している私だけれど、既に2件、放火と窃盗……いや、HMX持って行ってるし火薬取締とか爆発物製造、所持も引っかかるはず。

 

 ヨシ、悪人OK!

 

 早速悪いことをした人の話を、正義の味方に密告密告。………………あ、証拠。証拠がまだ無い。

 探しながらで良いか。家で変装したか、外で変装したか。さて、どこかに映ってないかな。髭もじゃ浮浪者モリアーティ。家から黒川邸までの道のりや、工場への経路沿いの店や施設の防犯カメラ……ノアズ・アークが手伝ってくれるらしい。

 ええとね、この森谷帝二の家から、目的地までで、見るからに怪しい男探してる。

 

 電話が繋がった。

 

「もしポリ〜?」

『二度と俺にそれでかけてくるな。あとお前、それで前めんどくさい問答になっていただろう。止めろ』

 

 やや潜めた零くんの声。確かに、ポリスメンなんて言って誰かに聞かれたら困るか。

 最近気が緩んでしまってたな。絶対隠したい相手にバレてしまったからかな。これはいけませんね。

 

「いやぁーつい。……では改めて。盗まれたHMX、探してる人いませんか?」

『知っているのか?』

「心当たり、程度です。証拠は今漁っています。ただ、これから仕掛けるかもしれない場所の心当たりもあるんですが、時間帯がわからないので、見張り役が欲しくて。

 上手くいけば、現行犯で捕獲できるかもしれませんが、現状は明確に証拠、とは言えません。それでも良ければお伝えできます」

 ノアズ・アークが通話の内容だけで私の欲しているところを読み取ってくれたのか、施設カメラの映像も勝手に解析し始めてくれている。そうそう、こういうのが欲しかった。便利〜

 

『…………今は手がかりが欲しいところか。わかった、話してみろ』

「怪しいのは建築家の森谷帝二です。彼は、自分の建てたものを爆破するつもりです」

『はぁ?』【え、自分で作ったのに?】

 

 零くんの困惑の声と、ノアズ・アークからの純粋な疑問の提起。常人にはすぐには理解出来ないよね。でも陶芸家とかで考えると、ほら想像しやすい。

 納得いかん!パリーン!のあれ。

 

『……そういうことか』

「えっわかるんですか?」

『完璧主義者程そういう、不完全なものを自分が作った事が許せない、その不完全なものに、自分の名前が付くことが許せない。そういうことだろう?』

 

 たぶんそうです。

 流石完璧主義者。同類の考えはわかってしまうんだなぁ。

 

 そもそも規模が違うし、中に人がいる所がアタオカポイント。素直に彫刻家でもやってろ。芸術は爆発だ!って言っても何故か大丈夫だから。

 

 ……ガウディの建築物のいい所、理解できないんじゃないかあの人。世間の声を信じろよな。

 

 

 ノアズ・アークに手伝ってもらっても、伊達にモリアーティやってないのか、それらしき者は見つからなかった。ご老体のくせに謎に潜伏上手いのやめろ。

 

 日程がおかしいせいで、日付でこの日までには確実に仕掛けられているはず、と言えないのが難しいな。どうなってんだ。近日中なのは間違いないんだけど。

 

 この後見付かる爆弾は確か……少年探偵団に渡された爆撃機(ラジコン)、ネコチャン、線路……そして摩天楼のメイン舞台、米花シティビル。

 この中で、最も公安として動き易いのは東都環状線の線路の爆弾だろう。そして場所が明確にわかるのは、彼の設計した橋の上の爆弾。

 あれは毎日線路の点検はされるので、遅くても決行日の前日以降に仕掛ける……はず。そこからなら、犯人の動向はわかりやすいだろう。

 

「というわけで、橋の上の見張りをお願いしたく」

『わかった。それくらいなら問題無い。そこに犯人が現れる保証は無いが、可能性がある、として伝えておく』

「ええ、それで大丈夫です。そこに犯人が現れたとして、もし取り逃してしまっても次と次の候補はあります」

『どれだけやらかす気なんだ……』

「そりゃあ……、自分の手がけた不完全品の全てでしょうね」

 

 ■

 

 結論、線路に仕掛けに来た所を一度取り逃すも、駅前の木の下……もとい、ネコチャンのケージを置きに来た時点で捕縛され、森谷帝二は御用となった。

 

 

 

 時計仕掛けの摩天楼、完!

 

 

 

 

 あまりにも呆気ないって?

 

 

 ……………………内容を知っているのに、新一くんに怪我させる事件を放置はしておけないでしょうよ。

 

 こちとら河川敷に景光くんと待機してたんだからな。

 小学生に物をあげて悪戯しようとする男が現れないよう見ていたけれど……あの子供たち、普通に目敏くて妙な所に良く気付く連中だった。

 私たちが2人して何をするでも無くキョロキョロと周囲に目配せしていたのを気にして「お兄さんたち、探しものしてるの?」と来た。

 親切心からくるものだろうけど……話してる間に簡単に騙されてしまって、チョロくて心配になってしまう。

 

 

 

 無事事件が一段落ついてから、手伝ってくれた2人になんでどうしてとめちゃくちゃ詰められたけれど、これだけは事前にわかってたんだもん、仕方ないじゃん……

 

 あ、新一くんには何のフラグかわからないから、「ももたろう」と「赤と青、どっちが好き?」と、事件の経緯と森谷帝二の犯行動機を教えてもらった事にして説明しておいた。

 まさかの少年探偵団みんな東都環状線に今日乗っていたらしい。本当に何か起きる前で良かった。

 

 

 

 ■

 

 群馬の山奥にて。

 

 視界いっぱいの緑の色は、遠くを見やるとグラデーションに色付いて、山頂近くは色とりどり錦の景色。

 ……空は高くとも秋の陽射しは遮られて尚未だ元気いっぱいで、徐々に上がってきた気温と山歩きという運動は中々過酷。まだまだ夏の終わりの初秋の頃。冬は遠そうだ。

 

 

 幽霊屋敷(幽霊屋敷じゃない)の事件から無事出所して、田舎にて保護観察中の昭夫くんからの要請で、こんな電波も満足に入らない山奥まで来ている私。

 人が頑張って耕して良い感じに実り始めたばかりの、まだまだ成長出来たはずの芋達が猪に荒らされて、もう少し山の上の集落では庭の柿の木に熊が来た、なんて話も。

 他にも猿などの被害が出ており、村の有志を募って柵を建てたり巻狩したりと、害獣対策を行うというので、そのお手伝いに来たのである。若い人手は大事なのでね。

 

 来る途中、普通に道路脇を疾走している猪の群れを見た時はこりゃ一大事と納得してしまった。

 

 それもこれも気分転換、というやつ。

 

 東都を少し離れたかったというのもある。最近ポコポコとそこら辺が爆発してばかりで。

 おかげさまで群馬に来てからのこの一週間、この村で事件も事故も起きていない。

 やはり主役から離れることが大事。

 

 

 もう一つ、ブルーな気分の原因。

 教授が組織の人間だったかもしれない、と新一くんから教えられて、零くんにクリスさんへと確認してもらってみたらその通りだったので、こちとら落ち込み具合が半端ないのだ。

 

 大学に置いておくデータ選んでおいて良かったな。しっかりした警戒心持ってるヒロキくんに感謝。

 私?

 心底いい人だと思っていたのに。やっぱり私は人を見る目が無いらしい。

 

 

 彼はコンピューター関係の取引全般を一手に引き受けていたらしく、彼が居なくなってしまって、組織は彼の行っていた取引を再分配することになって少し忙しいと、零くんがぼやいていた。

 

 一方のその零くんに、探偵業開始届出を自分で出して自分で受理したから、近いうちに米花町で探偵業を始めるので、そこにお前を所属させておいたと言われるなどしている。

 始め()のに所属させておいた(・・)、なの何かの間違いかと思ったが、始まってないのにもう、私は探偵の零くん……安室透の助手扱いでの所属となっていた。

 全部事後報告である。

 

 ……なんでアイツ、自分で仕事増やしているんだ……?

 

 事務所や社屋を持たないフリースタイルな営業していく予定で、基本的には私のこれまでの仕事を、私の顔と名前を出さないように行うためのガワの役割なのだとか。

 「全責任は俺がとる……ってコト?!」と言ったら後頭部をスパンと殴られて、ついでに用意しておけと書類をいくつか投げられた。

 違うのか?そういう意味だと解釈したんだけど。

 

 何はともあれ、零くんは着々と、私の監視体制の準備を進めておられるのである。

 

 なので準備が整う前に、こっちも準備しておいてるってワケ。

 

 

 午前中、朝早くから一等暑くなる前で昼まで。畑仕事や猟友会のお手伝い、午後と昼から自由時間。

 この自由時間が、私の主目的。

 

 今現在の技術レベルでは、パソコン通信や電話回線を利用した通信が主流。そんな低レベルな今のうちに、ノアズ・アークとヒロキくんと、一緒に作った色々な“種”を、アチコチにばら蒔いておくためにこんな山奥の、通信設備もロクに無いような所に来たのだ。

 こういうド田舎は公民館とかの設備が誰でも自由に貸し出しされており、パソコンなんて使う若い人はいないしイベントが無い限り人気(ひとけ)も無いし、利用履歴も上手いことやれば残らない。まさかの監視カメラもないという有様であった。

 

 防犯……とは……

 

 見かけない人が来ていた事実は、人と人の距離がいやに近い村人たちの記憶には残るだろうけど、有希子さん仕込みの景光くんカスタムお手軽変装(カツラとメガネoffと目をかっぴらく)で印象変えときゃ大丈夫大丈夫。

 変装見せたら景光くんに初手「…誰だお前」と言ってもらってるから大丈夫大丈夫。

 さも正式な公務員の顔で、公民館のパソコンと電話回線から色々と放流している。

 

 現状、前まで使っていたブラウザやらシステムやらなんやらまとめて無くなっちゃったからこんな小細工仕込む羽目に……

 いやいや、今 頑張れば後々楽になるだろうし。

 ……ただ、ノアズ・アークが楽しそうにノッて来て種まきしていたから、変なシステムに成長させたりしそうで今から少し怖い。成長するのが彼の最も重要な性質で、そんな彼が作った物か……いやはや本当に怖いな………………。

 ……………………あれ、名前なんだっけ……?Torじゃなくて、“私”が少しビックリした記憶だけはあるんだ。玉ねぎじゃなくって……

 

「小林さん、この印刷が縦向きにならなくって……」

「ああ、大丈夫ですよ。ここはですね……」

 

 時折、こうして公民館のおばちゃまに機械関係について教えながらの作業。

 ちなみに偽名は景光くんも使っている小林。探偵の助手と云えば、小林かワトソンの名前が多いでしょ?という安直な経緯から来ている。

 

 勝手に来て勝手にやっているが、こうしてお返ししてるのだから許して欲しい。

 いずれの先にも迷惑はかけない。予定。

 

 なぁに、これらの種で悪い事をしなければ、わざわざ調べる人もいない。悪いことするから調べられてしまう。やましい事なんて何も無いって顔しておけば、やましい事なんて無くなるのである。

 

 というか、零くんにバレたら雷じゃすまないからね。

 いつか怒られるなら、いっそ先にやっちゃっておけば「やっちゃったならしょうがない」ってなるからね。

 さっさとやる事やっちゃわないと。

 

 

 ■

 

 そんなワケで、来たりては山、なのさ。

 畑の方は一段落して、村の各地に仕掛けた罠は明日様子見。最悪、猟友会と一緒に巻狩……なんて事になるかも、らしいが、そこは明日のお話。

 

 自由時間ということで、公民館の仲良くなったおばちゃまやおじいちゃまたちに教えて貰って、来たのはとある清流。小さく広場になっていて、大人なら深い所でも股下程度の深さ。借りてきた小さな竿に、そこら辺の石の裏の虫をつけて垂らしておく。

 

 ソロキャンならぬ、ソロ川遊びである。

 

 昭夫くんも誘ったんだが、断られてしまった。なんとなく彼から“罪悪感”のようなものがヒシヒシと伝わってくるので、受け入れてくれたこの村の方々のために少しの隙でも何かしたいんだろう。

 

 仕事してなきゃ不安なタイプにならなきゃいいが。

 

 ……どこかの誰かも怪しいから、様子見しておかないと。

 昔からその傾向はあったけれど、きっと身の回りの人がたくさんいなくなってしまったり、ブラックな所に行ってつかれてしまっているんだろう。

 

 適度な息抜きは大事。

 私が息抜きし過ぎな気も……しないでも……ないが…………

 

 

 やっぱ海より山だよ山。適度な日陰!水の音!釣りのこのボケっとしてられる時間!

 来年の夏は山に行こうかな。阿笠さんの別荘の方も、片付くだろうし……

 

 後は電波が入ると最高なんだが。場所によってダメになっちゃうのがいただけない。

 

 

 

 ■

 

 

 朝早く、まだ陽も顔を出して間もない頃から、私の携帯に阿笠さんからのお電話。

 

 新一くんが連れ去られたらしい。

 

 

 

 

 有希子さんに。

 

 

 

 そっかぁ。

 

 

 どちらかといえばどうでもいい内容だったので電話を切る。

 

 それじゃあ今日も一日頑張るぞい、と宿にしていた昭夫くんのお家の蔵から出ると、続けて私の携帯に着信。

 

 

 そうしたら、今度は工藤氏からで、『とある依頼で群馬に行った有希子と新一の様子を見に行くんだけど一緒に来るか?』とのこと。有希子さんの誘拐の理由がなんとなく察せるような気がする。

 

 有希子さんが単独で日本に。阿笠さんがびっくりするくらい急に、新一くんを連れ去って、依頼が来たという群馬に。

 そして工藤氏も単独で日本に来ている。二人を見に行く程度には自由がある。

 なら予定が詰まっている事は無いだろうから……

 

「……もしかして喧嘩中ですか?」

 

 有希子さんの性格的に、工藤氏の予定が無い時に彼の頭脳をアテにしない理由なんて、彼に対しての不愉快な感情があるから、くらいしかない。

 

『ハハハ。その通り』

「女性関係ですか?酒に酔って女性に……」

『藪内家というのだが、ブラジルから帰った叔父が本人か知りたいらしいんだ』

 

 話が変えられてしまった。女性関係らしい。ダメ親父ムーヴは小五郎のおっちゃんだけにしてくれ。…………わざとじゃないよね?

 

 藪内家の場所を聞くに、この村ではないがそう遠くもない。車でぷんと行ける距離。

 しかし近くに駅があるわけでもないようで。

 

「では、後ほどそちらに行きます。優作先生、足はありますか?」

 

 つまり、一人でタクシーで来て一人でタクシーで帰る、なんてことがあるかもしれない。

 

 

『ああ。タクシーで行こうかと思っていたが、昴が来てくれるなら駅で待っていようかな』

「わかりました。では到着予定がわかりましたらお知らせください」

『よろしく頼む』

 

 と、いうわけで……今日は罠の確認だったはず。

 申し訳ないが、抜ける旨を伝えて来ないと。

 

 

 





明夫くん×でなくて昭夫くんでしたね、2巻の方に出ているほぼモブです。この話では群馬に関わる時のキッカケにちょいちょい出ます。ほぼオリキャラですね

正直パパンはd……開き直ったので

説明文に追記しました。
感想、評価ありがとうございます

読んでいただいてありがとうございます!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。