昴くんはなにもしない   作:あまも

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七夕逃しました。

日向さん可愛いですよね


閲覧ありがとうございます!


12-2:幸薄い秘書

 

 

 

 

 

 シレッとついて行ってシレッと同伴者として入り込んだのはいいけれど、なんで私一緒にいることになってるんだ?

 

 このままでは私、事件に巻き込まれるのでは??

 

「会長さん、何か考え込んでらっしゃいましたね」

「うん……気になる事があったのかな」

 

 1人増えるという話をしても、快諾して下さった長門会長。お部屋に伺った際、遠くを見つめるような……物思いに耽る様子を見せていた。

 

「件の初恋の女性について、何か思い出した事でもあったのでは?」

「そういえば、スバルさんはその人について調べることって出来ないのか?」

「おお、ヒトの事調べられるんやから、そういうの得意なんやろ」

 

 やだ、この西の高校生探偵、ちょっと言葉にトゲがありますわね。

 ︎︎服部くんてば喧嘩売られたから買っちゃったもんでちょっぴりピリピリしている。

 ︎︎大人げないと言わないでほしい、こういうタイプはそもそも自分より年上に容赦ないんだ。新一くんでよくわかってる。

 一度舐められたら終わり、なのである。

 

 

 とはいえ、なぁ。

 

「そうですねぇ。約50年前の女性の話なんて私の管轄じゃないので……おそらく今ある情報以上は、あまり出てこないんじゃないでしょうか」

「そっか」

「役に立たんやっちゃのォ」

 

 新一くんが代わりにペちりと服部くんの腰を叩いてくれたので良いのだ。

 古い情報って紙でしか残っていないときがあるから、ノアズ・アークでも調べきれないものが多い。

 ……でも、一応発注しておくか?

 

「調べてみますか?」

「ああ。少しでも何かわかるかもしれないなら」

「わかりました」

「なんや、調べるんなら、情報はあの秘書のねーちゃんが一番詳しいやろ。ほんならついでや、もっかい聞いてみるか」

 

 頷いて、服部くんが早速とばかりに声を掛けに行ってしまった。フットワーク軽いなぁ。

 

 先程私と同じくらいに会社から屋敷に戻ってきたので、あの美人誰よと新一くんに話を聞いたが、半目になりながらも説明してくれた。秘書の日向幸さん。

タレ目で、ちょっとだけ幸薄そうな美人だった。

 父親の形見だと言う、焼け爛れた万年筆を大事にしていると聞いた。

 ……それだけで親近感湧いちゃうね。なんで持ってるのか聞きたいな。

 

 戻ってきた服部くん、情報をまとめた書類を借りてきてくれた。それでもペラ一枚な辺り、わかっていることが相当少ないのがわかる。

 

 名前は赤城琴美、神奈川県出身、高校卒業後29歳で結婚、夫の大和行平との間に一子もうけるが、その五年後、突然3人揃って蒸発。

 34の頃に蒸発……前後はするだろうけど、今生きていれば50後半から60代。

 ……旦那と子供か。

 

「何か出てきそう?」

「どうでしょうね。ここまで調べてあるなら、新しいことなんて無さそうですが……」

 

 ひとつあるとすれば、これがちゃんと事件なのであれば、登場人物である人達に無関係ってことはないだろう、ということくらい?

 そう、日向幸さんは父親の形見というからには父親はいないんだろう。なら、母親は?焼け爛れた万年筆なら、死因は火事もしくは火の事故。彼女は五体満足そうなので、彼女自身が巻き込まれたかどうか、その事を覚えてるかどうか……そういえば長門秀臣さんは20年前の事故で火傷を負い、顔を隠してるんだっけ?無関係ってことは……ないだろ。

 

 ってこれ、私が彼女に彼女自身の境遇聞きたいだけなのでは?

 

 ダメダメ、ちゃんと考えないとね。

 

 携帯を取り出し、メールを打つフリをしながらノアズ・アークに依頼。イヤホンから、ノアズ・アークが教えてくれるポイントを、さらにこちらから重点的に調査して欲しいところをピックアップしていく。

 ひとまず顔がほしい。彼女の名前の載った、小学校の卒業アルバムがデータに変換して残してあった。中学校や高校は無いかな……古いと逆に、こういう所に個人情報が残ったままでデジタルアーカイブ化されていたりする。

 流石に住所や電話番号はないけど。顔と名前はわかるからね。

 なんとか、高校生の時の赤城琴美とされる小さな写真を、折りたたみガラケーの小さな画面に、画質の荒い顔写真を出してくれた。の、だが……………………似てるといえば……似てるような……?

 

「ホンマに分かることなんかあるんか〜?」

「ですから、新しくわかることなんか無いとは思うと……ん」

 

 ノアズ・アークからだ。『お兄ちゃんが何か心当たりがあるならそちらを調べてみたら?』とのこと。

 心当たりというか、これたぶん日向幸さんがその初恋の人の娘さんで〜といった話だと思う。

 思うが、当てずっぽうと思い込みで決めつけちゃいけないからな。

  でもとりあえず日向幸について調べてみてもらうか。何か……何かはあるかもしれない。少なくとも、長門秀臣の怪我とは何か関係してるハズ。

 

「…………そいや沖矢のにーちゃん、なんで手袋外さへんの?」

「ああ、あれは……」

 

 あっちはあっちで探偵ボウヤ達がヒソヒソと話をしておられる。別に隠してるわけじゃないから大っぴらに聞いてくれていいのに。

 

 まぁ、ものは試しというところ。

 会長の誕生パーティーの為、会長の部屋へと移動を促され、ゾロゾロと移動する集団の中から日向さんを見つけて話しかける。

 

「あなたは……」

「すいませんね、私は毛利探偵の運転手でして、せっかくのパーティーですし賑やかしも兼ねて同席をお願い致しまして。先程参加の許可を快く……

 ああ、それはそうと日向幸さん、あなたに少し聞きたいことがあったんです。何、お時間はそう長くとらせません、ほんの少し、1つ2つの質問に答えていただきたく。会社の事ではありません。もちろん断って頂いて大丈夫です。お時間よろしいでしょうか?」

 

 グイグイ行っとけ行っとけ。こういう人はこういう面倒臭そうな奴との会話はさっさと断るか面倒臭いから適当に対応して早く終わらせてくれる人だから。

 少し圧ありすぎたのか、日向さんは困惑したじろぎながらも頷いてくれた。3階への階段の踊り場の隅に呼ぶ。

 会長の部屋に入って行く面々とはやや離れている。探偵ボウヤ達が非常に胡散臭そうに……いや、呆れ顔でこっちを横目で見ながら上がっていった。

 新一くん、服部くんに余計なこと言ってないか?

 

「ありがとうございます。

 それで、日向さん。不躾ながら、会長の想い人の捜索に必要な事ですので、大変な失礼を承知でお聞きします。

 あなたのご両親は、幼少期の火事にて不幸にもお亡くなりになられたと伺いました。……その時のあなたのお名前、家のあった場所、旅館での火事の起きた当時の状況、なんでも構いません。何かありませんか?」

「な、なんでそんなこと……」

「このような事を思い出させてしまうことすらも、こちらとしても心苦しいのですが、必要な事なのです。どうか……なんでも構いません」

「…………あの頃の事は、あまり覚えていないんです。家のことも、よく分かりません。これが父の形見だという事だけはわかるんですが……」

「……なぜ、それが父親の形見だと?お父様が使っていた所を覚えているんですか?」

「? ……そういえば……でも、形は特徴的ですがこんなに飾り気のない物ですし、男性物だと……」

 

 彼女が胸ポケットから取り出した、焼け爛れた万年筆。元の色も分からないほどグズグズになっても、形を保っているのは作りが余程しっかりしていたのか。安物では決してない。高い物、けれど最高級とまではいかない。普段使いに向いている。確かにシンプルだけど、子供も使えるような、小さい手で使いやすい細さ。

 ……あれ子供や女性向けじゃないか?

 

「それ、長門会長にお見せしたことはありますか?」

「え? ……っと、実は、今日の昼に、少しつまづいて、その時会長の目の前に転がってしまった事はあります」

「ホー……」

 

 小五郎さんに頼んだ時か。会長の様子が、何か物思いに耽っておられたのがそれが起因しているとすれば?

 

「なるほど。大体わかりました。お時間いただき、ありがとうございます」

「え? あの、何がわかったんですか?」

「まぁまぁ。とりあえず行きましょう」

 

 けれど日向さんは階段を登ってくれない。

 

 そりゃいきなり大体わかった言われてもね。

 

 右耳につけたイヤホンから、ノアズ・アークが日向さんの両親が亡くなられた事件だと思われる火事の記事を読み上げてくれている。20年前、とある旅館での火事。死亡したとされる故人の中に赤城も大和も無いので、両親の名前はおそらく偽名、蒸発を機に変更したのか……周辺の闇金の顧客でもちょっと調べてみてほしい。ぽそりと小声で囁いてみる。

 

 日向さんがとても不安そうにしておられる。うぐぐ、美人のこういう表情やめてほしい。普通に私の罪悪感が刺激されてしまう。

 どうしようかな。……どう言おうか。

 

「……すいません、調査半分、私の興味半分でした」

「興味、ですか?」

「実は私も子供の頃、火事で親を亡くしているんです」

 

 ここで申し訳なさそうにして弱みを見せておけば、大体の良い人はちょっとくらいは聞いてしまった申し訳なさを覚える。

 ほら見ろ、日向さんは良い人だ。

 

「それで、その……私、当時の事は何も覚えていないものですから。幼い自分を慈しみ、愛してくれたであろう、親の事を何も覚えていないのは……なんというか、悪い気がしてしまうでしょう?でも、日向さんもあまり覚えてないと聞いて……少し安心しました。私だけがおかしいのでは無いのですね。

 ありがとうございます」

「……いえ……」

 

 ふはは。バツの悪そうな顔をしておられる。

 

 ……ごめん、ごめんて、そんなに気に病ませるつもり無かったんだよ。

 ただちょっと、なんか悪いこと聞いちゃったなって、思わせるつもりで……心にもないことを。

 いやいやちょっとは思ってますよ。沖矢さんには悪いことしてるな〜って。

 

 …………日向さん、すごく申し訳なさそうな顔してて凄い悪いことした気分になる!!

 この人、元が儚げな薄幸美人で可哀想になってくる!!ずるい!

 私がやっても胡散臭いって言われるだけなのに!

 

 

 彼女の手を取り、階段を登るよう促すと、戸惑いながら登ってくれた。そのまま会長の部屋まで行こうとしたのだが、登りきっての物陰に褐色肌と低い位置のメガネを発見。

 

 

 盗み聞きか探偵ボウヤ共がよォ!!

 

 

 ■

 

 

 誕生パーティーが始まって、楽しそうにしておられる面々。秀臣さんと日向さんとの婚約も会長の口から発表となり、何故か探偵ボウヤ共が可哀想なものを見る目で私を見てきたのはいただけない。

 

 そんな気持ちは微塵もないんですけど。

 

 まるで私の恋が始まると共に終わったみたいな顔で肩に手を添えてくる服部くん。なんだァてめぇ……初対面なのに馴れ馴れしいぞ。

 

 そんな感情で彼女のこと見てないんですけど!!

 

「と、いうか会長さんの初恋の女性、大体わかりましたよ」

「えっ!ホントに!?」

「なんやて!ホンマかにーちゃん」

 

 探偵ボウヤ達が目を輝かせて寄ってくる。声を抑えたまえよ。

 

「……ですが、会長さんも気付いてしまっていると思います。後ほど、隙を見て伺おうかと思うんですが」

 

 今はご家族の方々からの祝福の言葉を受けてひとに囲まれている。ひとが捌けたら確認に行こうかと思っているんだが。

 

「気付いてしまってるって……もしかして、もう亡くなってたのか?……」

「だいたい、会長ハンはどうやって気付いたって言うんや。それも、なにかまずいことみたいに……」

 

 2人とも同時に気付いたのか、もしやとまさかと言葉が重なる。

 

「最近よく思い出すって、面影を見たから……か?」

「ほんであん時、会長ハンとこに飛んでった万年筆がその彼女の持ち物かなんかだった……ってコトで合うてるか?」

「小学校の時に転校したそうですから、その時に別れのプレゼントとして渡したのでしょう。長門グループは昔から大きな企業ですから、子供にあげるような……子供用とはいえ、ちゃちな物ではなく……長く使える、丈夫な物を渡したのだと思います」

 

 赤城琴美さんの高校生の時の顔写真を、画質は荒いが2人に見せる。私には、心做しか似ているような?程度に見えるが、2人にしてみればちゃんと似ているパーツを認識出来るらしい。

 こういう人がいるからちゃっちい変装がすぐにバレるんだよなあ。

 

 …………旅館の出火原因は、火の気の無い所が火元だったとされる。放火の疑いが強いが、犯人は捕まっていない。

 故人の名前を辿ると、赤城琴美の蒸発直後から短期バイトでチラチラとヒットした名前があった。それより前には存在しなかったらしい。

 …………旅館の当日の宿泊客だったのか、住み込みで働いていたかまではわからなかったが。

 

「20年前の火事で死亡しています」

「……そうか」

「だからにーちゃん、あの彼女に話聞きに行っとったんやなぁ。下心丸出しやんけ思っとったわ」

 

 言うなぁ服部くん。

 私ですら一応、君は君の幼なじみとバカップルするらしいって話くらいは知ってるんだからな。何度も告白失敗するって聞いてるんだからな。

 いいか、覚えてろよ。絶対冷やかしてやる。

 

 

 一方で、冷やかされた長門信子さんが部屋を出ていった。婚期の遅れた女性の嫉妬、という、昼ドラや火サスでよく見るヤツだ。昼ドラや火サスがもう無い?おいおいそんなわけ……

 

 その後、秀臣さんを呼んでくる、と光明さんが部屋を後にする。

 

 …………………………さてはどっちかが犯人か被害者か。

 

 部屋には現在、その2人と使用人以外の人が集まっている。ここから、私の中での被害者予想第1位の会長さんを狙うなら……薬物とか?食べ物は見た感じ、全部手をつけて、何も起きてない。少し眠そうだが、今日は私たちとかの対応でいつも以上の体力を使ったらしいし、そもそも病人だからな。

 

 となると……この部屋から人を居ないようにして、襲いに来る、とか?

 

 

「コナンくん、平次くん。警戒を――」

 

 探偵ボウヤたちに声をかけた直後、電話が鳴り出した。ええい、案の定か。

 

 電話口から光明さんの困惑と悲鳴、覗き込んだ下の階のベランダから、包帯を巻いた秀臣さんらしき人物が包丁の刃を銜えた姿が覗いたらしい。

 

 皆で一斉に、下の階へと走り出した。

 

 

 私?行くわけないだろ、こんなあからさまに会長の部屋から人を無くすような……

 

 …………あれ、日向さんだけまだベランダで蹲っている。

 ずっと秀臣さんの名前を呟いていた。婚約者の秀臣さんが、そんな事をしたと、信じられないのだろう。

 

 とりあえず、会長の様子はっと。

 近寄るが、あれだけの騒ぎがあったのに会長はむにゃむにゃと寝ぼけ眼……ん、いや、あれだけ騒がしかったのに、寝てる?

 

 これもしかして、疲れじゃなくて、やっぱり何か盛られて――――――

 

 

 

 ――ガツンと。

 

 視界が揺れて、目の奥で光が散った。

 グラグラとして、立っていられない。

 

 おいおいおい。

 何回フェードアウトすれば良いんだよ私は。

 

 そろそろ本気でハードがイカれちゃうよ。

 

 ソフトもハードもダメダメならもう私に価値なんてないじゃん。

 

 

 

 





ポンコツ機械は叩けば直るってばっちゃが言ってた

読んでいただきありがとうございました!


暑すぎて死にそうなのにまだ梅雨ってマ?
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