昴くんはなにもしない   作:あまも

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案の定今週なんも進みませんでした……

閲覧ありがとうございます!




14-1:クリーニング屋の店員

 

 

 

 杯戸シティホテル屋上での怪盗キッドとのやりとりと、正式な予告状を受け取った新一くんをホテルで回収。

 その予告状の内容を聞き……ミーハーな私が単純なファン心理で、見に行くかぁ!と張り切ったのを新一くんに白い目で見られるなどして。

 

 

 深夜0時に他所様のホテル屋上で打ち上げ花火して警察のお世話になってたお子様が誰にその目を向けてるんですかねぇ?(意訳)

 

 

 ……なんて内心は伝えないが、試しに視線に込めて見つめ返してやると新一くんは所在無さげに目を逸らした。

 ついに私にもアイコンタクト言語が使えるようになったのかもしれない。

 

 

 まぁ、おかげで今の小林やってる景光くんを警察がチラッと見たくらいなら、景光くんだとわかる人はそうそういない、という事がわかったのは良かったけれども。

 

 

 ともかく。なんだかやけにワクワクしているというか……腹が立っている、とも違う、なにかしらのやる気に満ち満ちている新一くんであった。

 阿笠さん曰く、挑戦状を叩きつけられたような気分なんだろう、とのこと。せやろか?

 

 

 そんなわけで、鈴木財閥60周年記念船上パーティに、なんとか2人分、ねじ込んでもらった。

 

 出発は大体3週間後。色々用意しなければね。

 

 

 ねじ込みに結構な融通を頼んだ代わりに、鈴木家に繋いでもらった蘭ちゃんには、当日着ていく毛利御一行の礼服のクリーニングを引き受け。

 ねじ込んでくれた園子さんには当日の船までの送迎と、キチンとした“格好良い沖矢 昴”を頼まれた。

 

 ええ……格好良い(・・・・)ですかぁ?……この間の……この間?の海外でのパーティで、有希子さんに、最近取り繕うのをサボってるのがバレてしまって矯正中なもんで……パーフェクト沖矢昴は休業中で、まだぎこちないんだけど。

 

 上手くできないかもと素直に伝えると、『普段のもっさい沖矢さんじゃなければ完璧じゃなくても全ッ然OK!』と親指を立てられてしまった。

 

 ………………普段の私がディスられてたのか、ちょっとでもちゃんとすればそれだけで十分なのに、って忠言なのか……どっちだ?もしかして、どっちもか?

 

 

 いや、いやいや。普段の姿の私も、親しみやすさと言うか、所帯感というか……これでもおじちゃんやおばちゃま達には人気あるんだぞ一応。

 

 知り合い相手なら生意気な若造ムーブでなんとかなるし、ご老体は皆将棋や囲碁やガーデニングや山遊びやらの趣味で話は合わせやすい。

 私はものを全然知らないから、合コンのさしすせそが使える。ちょっとかしこ(く見えなくもな)いシュッとした若造に物を教えてやる、というのが、おじちゃんやおばちゃま達には好評なのである。

 

 若く見えるから若人を可愛がってるだけなのでは?……確かに。このまま上手くやれば、たぶん働かなくても近所のみんなの孫みたいな顔で10年は生きてけそう。

 

 沖矢 昴、実はヒモが一番天職な気がしてきたな……

 

 女性が引っかかったことは無いけども。

 中身の私が、この顔で情けない顔してるのだけは一等得意なもんで。

 なんせなんの演技もしてないからね。

 

 

 何はともあれ、4月の19日、Q(クイーン)・セリザベス号は横浜港を出航だ。

 横浜港を出て3時間のクルーズの後東京港着の予定だったので、鈴木さんたちの送迎をするなら、代車か、誰かに横浜から東京まで車を回してもらう必要がある。

 

 こういう時に「気軽に呼んでくれよな!」と言ってくれていた景光くんは、船に連れていく。

 

 新一くん達との顔合わせも兼ねて、毛利探偵一行の送迎を頼んだのである。

 

 ……いかにハートフルな怪盗さんとはいえ、新一くんもいるわけだし……荒事ありそうだし。フィジカルをね。ひとつまみ欲しいので。

 

 私は、うん。カイワレなので。そういうのはちょっとね。

 

 当日は容量の大きい私の愛車も景光くんに貸してやろう。私の車なのだから、私の知り合いだとひと目でわかる。蘭ちゃんと一緒に向かうという園子さんと蘭ちゃん、小五郎さん、新一くんを乗せるからね。

 私はてんとう虫で、園子さんのお父様、鈴木史郎さんとお母様の朋子さん、そしてお姉さんの綾子さんを送る予定だ。

 

 園子さんの計らいとはいえ、史郎さんともある程度仲良くしていたおかげだろうか。結構頻繁にお声がけいただいてお仕事もらったりする。

 

 そう、史郎さんは良いんだよ。優しいし。ほのほのしてるし。お姉さんの綾子さんもほのほのしてるし。

 

 一方で朋子さん、なんかこう……強いんだよなぁ。ちょっと苦手だ。私が取り繕ってるのは昔から変わらないので鼻で笑われるし、未だになんか試されてる気がするし。史郎さんとやりとりさせてくれてる限りは、少しは認めてくれてるんだと思うけども。

 

 怖や怖や。

 

 

 

 

 さて、東京での車……

 

 せっかくだから零くんが手が空いてたら頼もうかな、なんて軽い気持ちで連絡したら、開口一番に怪我をしたのにも関わらず一向に報告の無いこと等など……怒られることとなった。

 あんた知らせずとも全部知っとるやんけ。

 

 あと酒なら俺が教えてやる、だそうです。

 いや……酒の席で……美味くもない酒と一緒に含蓄たっぷりな蘊蓄語られると……ちょっと……酔いの回りが早そうで……

 

 というか、どうも零くんたら、すごく頻繁に景光くんと情報共有しているらしい。それぞれの情報がそれぞれからぽこぽこ出てくる。

 私の知らないところでなんて密度だ……むしろなんで私とその密度の連絡をしてないのか…………と考えたことがバレたのか、『お前が連絡してこないだけだろう』と。

 

 

 

 お、お前があまり連絡してくるなって言うからこっちはなぁ!

 

 

 

 

 そもそも、2人とも私から情報取るだけとって、あちらの情報教えてくれなかったこれまでの習慣というか癖というか……それが残っているのか、わざとそうしているのか、あまり、情報を教えてくれることがほとんどない。

 

 あちらから聞いてくるから、私が答える。

 

 そんなことばかりしていたせいで、よくよく考えると私ってば、彼らが今とか普段に何してるのか全然知らない。聞いてはダメだろうと考えてたら仕方ないのかもしれないが……

 

 ええい、秘密主義な公務員さんめ。

 

 でもそろそろ拠点を米花町に置けそうだとも言っていたので、いよいよ“安室 透”が稼働するらしい。手始めに、この私からの依頼を安室透で少し動いてみるという。

 会話とかしないだろうと思ったら、ガソスタや買い出しまでやってくれるらしい。

 おいおい、至れり尽くせりじゃないか。

 

 つまり、安室透で日常生活を送って、その維持が出来るのか、という実験。3時間くらい楽勝だと考えておられる様子だった。

 

 米花町(犯罪都市)では話変わるけどほんとに大丈夫そう?

 

 

 

 ■

 

 

 毛利さんちの御用達の近所のクリーニング店に、毛利さんの礼服と蘭ちゃんの赤いドレスと、工藤家漁って引っ張り出してきた子供服1着と、ついでに自分のと、景光くんのスーツも出してきた。まぁまぁな金額に感じるけども、日頃の感謝も込めてね。

 

 なんか受付のカワイイ系のお姉さんと、ものすごく話が弾んでしまったりして楽しい。

 これがまたとても話しやすい人で、気さくな様子に私も素が出そうになる所をなんとか堪え、美人対応で頑張ってみたけれど……そんな努力しなくとも普通に会話が繋がったし、スーツの生地の話とか、日頃の手入れの仕方とか、私が興味無くてよくわからないこともちゃんと説明してくれる。人の物ではあれど、安心して服を頼むことが出来た。

 

 そうかそうか、良い服というのは立派で大きなお店でなくても、ああいう所でも普通に出して良いのか。

 考えればそりゃそうだ、小さいお店こそ、そういう丁寧さでやりくりしていくものだもんね。

 これぞ職人技、というやつ。

 

 白い服についてしまった汚れの話は、とても親身に、そして丁寧に教えてくれた。ああいうのは早めに少しでも落としとかないと大変。かといって、汚れは目立たなくても黒だと今度はごみちりほこりが目立つし。ああ、ちゃんとした服って大変だ。作って使ってはい終わりじゃないんだもの。

 

 店員さんとの会話があまりにも楽しくて、ついうっかり長話した挙句のせられてポイントカードまで作ってしまった。

 彼女に仲良くしてもらったので、コインランドリーでいつも済ませてる布団とかのクリーニングも出そうかな。

 この私が、初対面なのにこんなに楽しく話が弾むこともあまりない。

 私の会話のきっかけなんて、大体1.同情買う か2.取り繕う か3.煽る かの選択肢しかないからな。ええい、この陰キャのコミュ障め。

 

 本当に、よほどこの彼女は喋りが上手いんだと思う。

 

 あ〜このお店、常連になっちゃう〜!

 

 

 そいや赤井さんって会話はどうなの?…………なんか顔に圧があったのは覚えてるな。怖がられてなかったっけ?

 

 

 ■

 

 三船拓也くんから電話がかかって来た。

 

『今度、鈴木財閥の主催するパーティに行くことになったんだが、アンタもどうすか』

 

 お誘いのお電話らしい。クリーニング店からの帰り道だもんで、タイミングがこの間と重なって、なんだか少し面白い。笑いが零れてしまう。

 

「ふふ。おやおや。この間のパーティ自慢の延長戦ですか」

『あぁ?!』

 

 ふふ。キレるまでが早すぎる。素直でかわいいね。

 てっきり、あの時はあの悪役令嬢(ガチ)との仲間内の小さな集まりに出る一方で、私が海外のパーティに美女と行くなんて話されてムキになって、こんな事言い出したのかと。

 

 なら何故そんなお誘いを?と訊ねると、私……もとい阿笠博士のおかげで、より良い製品の開発ができて、そして鈴木財閥とも繋がることが出来たので――――――お礼にと、とても言いづらそうに教えてくれた。

 

 ライブ画面がなくてもわかる、きっと彼は視線をそこらに彷徨わせながら、照れて口とがらせて言ってることだろう。

 

 あら〜、素直じゃなくてかわいらしいこと。

 

 

 しかしなぁ。

 

「残念ですね……4月19日の横浜港、Q・セリザベス号ですか」

『あ? なんだ、予定あるの――なんでアンタ知って――』

 

「だって私も行きますよ、それ」

 

 

 声にならない、空気の抜ける……丁度歯ぎしりしながら息を大きく吸い込んだような音が聞こえた後、デッカイ舌打ちして電話は切れた。

 

 おこやん。真っ赤になってんじゃなかろうか。

 

 しかしなんだ、三船くんが誘ってくれるなら、わざわざ園子さんに頼む必要無かったかな。

 でも三船くんの招待、という(てい)で行くなら、園子さんのオーダーと同じくらいきちんとした“格好良い沖矢 昴”を取り繕う必要はあっただろう。

 うん、まぁ、三船くんを弄るネタと景光くんを新一くん達と顔合わせさせられること、鈴木会長にご挨拶出来ることを考えればこっちで十分かな。

 

 にしても、四井と別れた後は鈴木財閥と繋がれたのか。私はなんの推薦もしていないから、純粋に彼の会社の努力の結果だ。彼らと鈴木財閥は相性良いだろうし、うん、うん。

 素晴らしい。とても良い事だろう。

 

 

 ■

 

 いざ当日。早めに鈴木邸に向かうと、園子さんはもう既に小五郎さんちに行ったらしい。送ってあげるのにと思ったら、わざわざ私の愛車で垢抜けた格好良い青年がお迎えにあがったので意気揚々と出かけたそうで。

 景光くんは仕事が早い。

 

 ところで朋子さんはどちらに?

 というか、史郎さんも綾子さんもなんだかのんびりしておられる。17時の出航に合わせるなら、そろそろ準備終わってると助かるのだけれど。

 

 聞けば、朋子さんは何やら準備があるからと先に船に向かったらしい。その後警備担当の茶木警視から『船で不審物が見つかったので、確認のため2時間出航を遅らせる』、と電話があったという。

 だから君もゆっくりしたまえ、と史郎さんににこやかに言われてしまい、せっかくキッチリしてきた服と気合いが削がれてしまいそうになる。

 のほのほした2人のゆったりした空気に呑まれて、私までのほのほと、いつものぐでたまな私が……

 

 くっ……こんなトラップがあるとはね……!

 

 

 しかし、不審物をしっかり見つけるとは。

 ははぁ。日本警察は優秀だなぁ。これにはきっと、景光くんも零くんもにっこりしていることだろう。

 

 とりあえずお紅茶かコーヒーなんかいかがですかね。コーヒー淹れるの上手いと評判ですよ私。

 

 

 

 ■

 

 

 出航時間の5分前、右耳からノアズ・アークが『ところでお兄ちゃん』と声をかけてきた。

 

 返事をしようにも、史郎さんや綾子さんの横で執事顔して紅茶のサーブしてたのでいきなり喋るのもな、と思ってたら、そのままノアズ・アークが喋り出す。

 

 

『お兄ちゃん、景光くんからの連絡が無いね?』

 

 

 

 「なんだって?」

 

 脳直で返事してしまった。

 史郎さんと綾子さんがどうしたのかと顔を上げ、不思議そうに首を傾げている。

 史郎さんが新聞を、先程読み上げた言葉を再度読み上げようとしてくれているけれど、右耳でも再度同じ言葉がノアズ・アークから告げられる。

 

「……まさか……」

 

 少々失礼して、部屋を出てから景光くんへ連絡しようとしたが、繋がらない。おかけになった電話は、電波の届かない場所にあるか、電源が入っていないか〜のアナウンスが流れる。いやいや、まだ陸だろうに。貸した携帯にも同じく。

 

 なんなら乗ってるはずの三船くんにも繋がらない。

 

「ノアズ・アーク、なんとか、船の皆と連絡取れませんか?」

『――――――試してみたけど、これ、ここから船への道が全部途切れてるよ。何か、妨害が飛んでるかも。無線に乗ればいけるかもしれないけれど……』

 

 そうだね、そこまでするくらいなら警察に連絡だね。

 

 なるほど、なるほど。

 

 部屋に戻り、不思議そうな……いや、心配そうな2人に、自分が焦っているのを自覚した。

 一旦落ち着こう。スマホに入ってるノアズ・アークはここにいる。最悪でもまだ行ける。

 

「鈴木会長、綾子さん。朋子さんか園子さんに連絡してみてもらえませんか?」

「沖矢くん、何かあったのかい?」

「もしかしたら……既に怪盗キッドにやられたかもしれません。

 

 通信、妨害されてる可能性があります」

 

 私の言葉に、顔を青ざめさせる2人。携帯まで繋がらないとなると……

 お2人に試してみてもらうが、繋がらない。こちらも、ノアズ・アークに鬼電してもらっているが繋がらない。

 

 ……まだだ、まだ潜るのは早い。

 

 

 ヒロキくんに電話をかけてみる。無事通じた。これから樫村さんと夕飯食べに行くらしいので邪魔しては悪い。楽しんできなね。

 

 なるほど?

 

 

 これ……船側方で妨害電波出してるな!

 

 

 ……普通に電波法違反だぞこれ!!船の無線まで妨害してたら……テロだぞ!

 

 

 しかし、鈴木家のマイルドな方々は何かの間違いだったり、ただ繋がりにくいだけでは?なんてことを言う。

 の、のん…………びりしておられるなぁもう!

 

 この場合は結構な確率でやられてる感じなんですわ!

 

「固定電話を試してみてもらえますか?もしそれも繋がらない場合は、こちらの回線の方の確認を。お手伝いの方にも、船やその近くで連絡ができる方がいないか確認してください。

 私は少し、場所を変えて試してきます。

 それでも船に連絡が繋がらないなら……警察に連絡をしましょう。今日かけてきた、茶木警視にリダイアルしてみてください」

 

 十中八九その茶木警視偽物だけどね!

 

 ええい、無駄に広いぞ鈴木邸の敷地面積!!

 

 





たぶん原作のキッドって19日間のどこかでコナンくんのこと調べたんかなと思ってます。
そしてバレる時女の子に変装しているのは確かに多い……

読んでいただきありがとうございました!
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