昴くんはなにもしない   作:あまも

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最近しょっちゅう予約投稿失敗してる……定時にあげるのはとうの昔に諦めてますのでご了承ください。気づいたら上がってた程度に見て下さい。

閲覧ありがとうございます!


15-1:人を試すような人

 

 

 最近色々あった中、あまり会いに行けていなかったヒロキくんに会いに樫村さんちに来ている。

 今までは部屋を借りていたが、ついに購入したそうで、その新居祝いでもある。

 

 というわけで、新居祝いの品の……阿笠博士の発明した吸引力の変わらない掃除機だぞい。

 サイクロン式じゃないのに吸引力が変わらず、フィルターも要らない。溜まったごみ塵埃をぎゅっと固めて、スイッチひとつでゴミ箱へ……

 らしいが、中で何が起きてそうなってるか、これがわからない。これ売ったら金になりそうなんだが、なんで地味に再現の難しいもの作るかな。

 販売できそうにない理由の最大の問題はデカい。この一言に尽きる。子供なら乗れそうなくらいの、ひと回り小さいドラム缶みたいな円筒型なのだ。狭い日本の狭いお家じゃ使えないって。

 

 ヒロキくんには喜んでもらえたから良いけどさ。

 

 いつもなら、ヒロキくんに会うなら研究室なんだけど、今大学の研究棟は設備点検で閉鎖中。

 …………零くんの手による公安か組織かどっかの何かだと思う。

 

 このタイミングで手が入るとなると、やっぱりノアズ・アークが狙われてるんかね?

 

 

 そんなわけで、チャットではやりとりはあったけれど久しぶりなヒロキくんである。

 

 いや〜……生意気じゃないかしこいかわいい少年!!素直!素直!捻くれてない!!人をジト目で睨んでこないし会話の中にカマ引っ掛けてこないし私のくだらないギャグも笑ってくれる!素直!総評!かわいい!!こういう少年が一番かわいい!!

 

 こんな素晴らしい命がくだらねぇ皮エプロンオヤジのくだらねぇプライドで散ることが無くて本当に良かった!!!

 

「はー……かわいいですねヒロくんは本当に……」

「なんかお兄さん、ものすごく疲れてない?大丈夫?」

 

 私の不審者全開の撫で回しにも不満ひとつ言わずに、逆にこちらを心配してくる始末。

 

 なんだコイツ。マジでどうしてくれようか。天使じゃないの?大丈夫?桜に攫われない?昔の景光くんとは別ベクトルで振り切れてかわいいな。本当に大丈夫?何か事件に巻き込まれてない?学校でいじめられてないか?相手潰そうか??

 ︎︎そういやいじめてた相手、とっくに自滅してたっけ!タハー!

 

「いやねー……聞いてくれますかヒロくん、私のここ最近の不平不満を」

「聞くだけならいくらでも聞いてあげるけど、それ僕が聞いてもいい話なのかい?」

「…………」

 

 潜入捜査官、裏で悪いことしてる組織、生存がバレたら殺される恐れのある人達、復讐果たして死にたがる人に、悪事を働いても尚開き直る連中、いつまで経っても進まない時間、何故か下がった技術レベル。

 そもそも私は何故ここに。

 

 おいそれとバラすのはダメ……ですかねぇ………………

 

 

「ぬわぁああ!」

 

「お兄さん、お兄さん。危ないよお兄さん。やるなら外でやって」

 

 ヒロキくんの膝を抱えて、肩に担いでたかいたかいスタイルでぐるぐる走り回っても尚高い天井。広い部屋。無駄に広い実に良い部屋!!良い眺め!!

 わぁん!空が青いよ!!

 

 ぺちぺちと力なく頭を叩かれたので、大人しく降ろしてあげると、「楽しいけど、中でやる事じゃないでしょう」と怒られた。中学生に怒られた……

 ま、いまさらか!

 

「ヒロくんまでシャトー米花に居を構えているとは思いませんでした」

「相変わらず突然正気に……そうだね、ここの1フロア全部お父さんが購入して、僕に1部屋くれたんだ。サーバーとか、場所取るからって」

「常に冷房ガンガンにしておく部屋は人間暮らせませんからね」

 

 高級マンションの上層階の1フロアを全部?この金持ちめ。

 ……私も今はまぁまぁ金ある方の人種だったっけ。身の回りが桁の違う金持ちばかりで、このままじゃ金銭感覚狂いそうになるな。

 いつまでも庶民感覚大事にしようね。

 

「ここに、私の友達が住んでるって話しましたっけ?」

「そうなのかい?どういうお友達?」

「ふふ。この間、ノアズ・アークが将棋でボロ負けして泣き言零してた時の相手ですよ」

「ああ! へぇ、あの時の」

 

『あれは……あれはひどいよお兄ちゃん!後で調べたらあの人、現代最強とも言われてる人だったじゃない!ボクは騙されたんだ!』

 

 置いてあったPCの画面から、白い輪っかのような光が明滅しながらまだ泣き言を叫んでくる。

 はっはっは、秀吉のノーマルスタイルの見た目で判断して油断していたのはあの時のノアズ・アークの言葉の感じから解ってたからね。

 良く人を見た目で判断して痛い目に遭ってる私を見て、反面教師するべきだったな!(自虐)

 

「……将棋のプロ?」

「そう、将棋のプロ棋士、羽田秀吉ですよ」

 

『将棋の7冠も有り得るって話されてる、タイトルホルダーだよ。直前までの予測ではボクが優勢だったのに、中盤の彼の一手で全部ひっくり返されちゃった……』

「それは残念だったね、ノアズ・アーク。でも君、アマチュアのお兄さんにもチェスで勝てない時があるんだから、まだ早かったんじゃないの?」

『お兄ちゃんはこういう人だって解ってたんだよ!なのに彼は全然……でも次からは大丈夫、ボクは学んだよ。人間は、こういう、そしてああいうだらしない人程見かけによらないんだね』

「ハハ、確かにね。お兄さんも普段だらしないし」

 

 え?何?私、2人からディスられてる?

 

 秀吉は私よりもちゃんとした時のギャップが大きいからね。それだけ振り幅が大きい。その点、私はいつでもスイッチひとつで切り替えられるから。

 ……最近ちゃんとしてる方がちゃんとできてないらしくて故障中だけども。

 景光くん曰く怪盗キッドが変装していた私が、普段の私より爽やかな青年で、園子さんがキュンキュンしてたレベルのイケメンだったらしいんだけど、じゃあ普段の爽やかじゃない私って、何……?

 

「そうだお兄さん。お父さんが今度、新作ゲームについて相談したいって」

「新作ゲーム?……コクーンの話ですか?」

 

 ついつい尻込みしてしまうと、ヒロキくんが楽しそうに笑っている。

 

「あはは。嫌そうな顔。コクーンではないから安心してよ」

『コクーンの計画はまだ止まってるよ。やっぱり資金が足りないみたい。スポンサー探さないといけないのに、噂がまだ残ってるから誰も頷いてくれないんだって』

「噂、ねぇ……」

 

 

 “コクーンの中にはジャックがいる”

 

 樫村さんの新会社で引き継がれたコクーンの開発中から、徐々に広まっていった謎の噂。今では掲示板のオカルト話に上がる程度の知名度の都市伝説と化した噂。

 

 曰く、『とあるゲーム機の中に、殺人鬼のデータが組み込まれていて、どんなゲームをやってもその殺人鬼が現れ、そしてゲームを滅茶苦茶にしてしまう』のだという。

 都市伝説らしく、尾鰭胸鰭口に手足に翼に牙にと取ったりつけたりされまくって様々なバリエーションがあるけれど、共通しているのは『殺人鬼のデータが邪魔して、ゲームが成立しない』こと。

 

「こないだ知り合ったコンピューター会社の人からも言われましたよ。新作ゲーム機はいつ出来そうかって」

 

 金城さんからである。コクーンは基本子供向けのゲームであって、大人向けのゲームは発売しないから待ってても無駄だと言うのに。いくつになっても元気な男性だよ、金城さん。

 

『バグだと思うんだけど、システムは何度ボクがさらっても出てこないんだ。外側はボクは見えないから……』

「そうだ。今度お兄さん、見に来てよ。お兄さんなら何かみつけられるかも」

 

「――それはまた今度ですね。樫村さんの新作ゲームの話ってなんだったんです?」

 

 私が無理矢理に話を区切ったのをヒロキくんが苦笑して見てくる。

 

 ノアズ・アークが探って出てこないなんてことあるわけないだろ。しかもヒロキくんが監修してるのに。

 

 ……おかしいなぁ……彼らが人間の可能性を試す必要なんて無いように、人間という生き物については教えてきたつもりなんだけどなぁ。

 1人だけを参考にするなと言ってきた弊害か?

 でもこのヒロキくんが人を試すようなこと、するかねぇ?

 

「お兄さん、この間借りてきたアドベンチャーゲームのデモですごいダメ出ししてたでしょう?あれでやる気出したチームがあって、またあの人にテストプレイして欲しいんだって」

 

 この間借りてきたアドベンチャーゲーム……ああ。

「……あれか。あれは……言いすぎた気がしてたんですが……えぇ?あれでやる気出したんですか?」

「らしいよ? お兄さんがそんなに悪い気がしてしまうほどって、よっぽどの事言ったの?」

「……あまり……教育上宜しくないので黙秘します」

 

 どうしても、前の記憶での最新ハードでやったゲームと比べてしまったり、ストーリーの展開やUIに不満があったりしてしまって、ついつい、こう……

 どうしても、記憶の名作ゲームにどこか似てしまったものを見ると、それだけでパチモンという認識で見てしまうのが問題なんだとはわかっているんだけども……

 

 いやでもあれはあのまま出てたらクソゲー認定されてたって。

 とりあえず3Dアクションでやるならロックオンはないと難易度がバカ高くなるから。

 

 あの時、簡単なゲームですって聞いてたから新一くんでもやれるゲームかを基準に見てたけど、あんまりにもク…難しくて、最終的に誰が進めるんだこのゲームってコントローラー投げたくなったもんね。

 ストーリーとかそれ以前の話だった。

 

「まぁ、それなら良いですよ。今度予定を調整して……あ、そうでした。

 私今度からバイト始めまして、ちょっと時間の確認が必要なんです。予定を見てからの連絡でも大丈夫ですか?」

「大丈夫だよ。お兄さんに合わせるって言ってたから。バイトって、前にやってたようなこと?」

「いえいえ。なんと……探偵さんの助手です」

 

 私はドヤ顔で告げたのだけど、ヒロキくんはキョトンとしている。

 ありゃ?びっくりするかと思ったんだが。

 

「いつもやってた事じゃないの?」

「…………」

 

 あれ?

 

「私、いつも探偵の助手なんてしてました?」

「だって、工藤先生のお手伝いしていたじゃない。最近はその息子さんとか、毛利探偵の所によく行ってるって。今まで正式じゃなかったんだね」

「あー……」

 

 そんな話をした気がする。小五郎さんの足代わりとか、確かに助手だ。

 

「でも雇い主が違うんですよ。私の友達なんですけどね」

「そうなんだね。きっと優秀な人なんだろうね」

「ふふ。そりゃもう!」

 

 トリプルフェイスは伊達じゃない、ってね。

 

 とりあえず名刺を渡しておこう。もちろん私ではなく、安室 透のものを。

 

 

 ■

 

 

 

「や!おはよう、スバル!」

「……はい、おはようございます……え?何?」

 

 早朝、太陽もまだ上がる前。

 

 日課の提無津川の河川敷を走っていたら、背後から声を掛けられた。

 振り返れば、軽快なフットワークにも関わらず、ほとんど足音が聞こえてこなかったがすぐそこに男が一人。

 ニッコニコの笑顔と煌めく金髪が太陽のように眩しい、爽やかな朝にすれ違うと今日は良い日になりそうな予感さえしてしまうような好青年。

 

 朝焼けの似合う男、安室透である。

 

 

「君、いつもこの時間に走ってますね。寝不足とか大丈夫なんですか?」

「い、やぁ……夜にやってたものを、朝にやるようにしまして……朝活のおかげか、やや改善したんです……」

「そうなんですね!……どうかしました?なんだかいつもより元気が無いようですが」

「…………」

 

 近い近い、顔が近い。眉を下げて当然のような心配顔は子犬みたいな面構え。やっぱベビーフェイスじゃねぇか。

 てか。

 

「……いや、顔が良いなって……」

 

 顔が良いのは元々だけど、改めて……いつもの怒ってるか無表情か笑うとしても微笑むくらいで眉間にしわ寄せた顔がデフォルトな零くんが、こんなにこにこしてると、造形の良さが際立って、この……私の好みじゃないのに貫通してくる光属性オーラがすごい。

 圧倒的かわいいで押し通そうとしてくる。

 何も起きてない時の景光くんの天然光属性と違う、ストロボみたいな夏の日差しみたいなビッカビカのやつ。

 

 私の言葉に、きょとんと目を丸くしたあと……いつもなら無表情になるか、眉間にシワが寄るところを、この男は晴れやかに、きれいに、ニコリと笑顔を見せてきた。

 

 グァッ

 

「ありがとう!早くこの顔に慣れてくださいね?」

 

 降谷零は、顔を褒められても当然だとわかっているから、いまさらそんなくだらないことを言うなと殴ってくるけれど、安室透はそんな事は言われ慣れているのでこんなにこやかに穏やかにお礼なんてものを言える。

 

 なんでこの男、こんな無邪気な顔作れるの?子供の頃にもあんな顔そうそうなかったじゃん。

 

「一生慣れるかわかりませんね……怖いです」

「僕のどこが怖いっていうんですか。普段より3割増で表情筋使ってる自信ありますが」

「それで3割?!8割の間違いでしょう!!」

「コラコラ、朝ですよ。大きな声は迷惑です」

 

 シィ……と、人差し指を口に当てる。そして走り始めたので、ついて行くと、速度を私に合わせてくれているらしい。

 彼としては軽く流すような速さだろうが。

 

「……裏との差別化は出来てるんですか?」

「しているつもりですが、どうですかね」

 

 にこにこしながらジョギングする安室透からは、バーボンの気配はしないけれど、ここは私……人を見る目が無いので、受ける印象が普通の人のそれなのか、それともダメよりのそれなのか、私の身の回りの人の勘が鋭過ぎるだけなのか最近微妙で、よくわからない。

 

「私から見たら好青年なんですが、なんというか、その路線でいくなら参考にするべきはみっちゃんだったのでは?と」

「……」

 

 安室透の走る速度が、少しだけ落ちた。ちょっと下がった彼を振り向くと、さっきのきょとん顔よりよほど自然な驚きが見える。そっちの方が私は好きかもしれない。あれはテレビ見てる気分になる。

 

「……ヒロになってないか?」

「どちらかといえば……私じゃないですか?それ」

 

 私の胡散臭さをにこやか爽やか笑顔に全振りした版みたいな……まさか、これがあの船に乗ってた私の感じか?!

 自分を指差して、安室透を指して、交互に示して見せると、彼はなんとも言えない……いつもなら眉根を寄せて難しい顔をするのに、苦笑いというか……なんだ?その顔。

 喉の奥に小骨刺さった感じってこれ?

 

「そんなに胡散臭いですかねぇ……」

「あっ、今のはちょっとだけ裏っぽかったです」

 

 てか私=胡散臭いって皆の共通認識何?

 いつだって真剣にこの恐ろしいスリルショックサスペンス世界(ワールド)生き抜いてるのに!

 

 なんにせよ、安室透的には目指すところは沖矢昴ではなく諸伏景光の方を予定していたのは変わりなかったらしい。

 零くんの想定外は、私が近寄るとこの胡散臭さに引っ張られるそうで。ギリギリバーボンになりそうな所を、無害好青年で抑えるとあの眩しさになると。そんなことある?

 

 太陽が顔を出し、朝日に照らされた安室透の眩しさは計り知れない。

 

「まだまだ要練習ですね。君も久しぶりにヒロに寄せてみては?」

「あれやってると、みっちゃんが不機嫌になるじゃないですか」

 

 一時期、私の素の口の悪さを直そうとマイルド表現の代表、景光くんを真似していたら、最初は喜んでいたのにどんどん機嫌が悪くなっていって、あの温厚な彼がついには怒り出す寸前まで行ったので止めた、なんてことがあった。

 曰く、「ハルのことが嫌いな人の気持ちなんとなくわかった気がする」らしい。やめるから嫌いにならないでと縋りついたのも懐かしい。

 

 このコミュ障は生来というか魂がそうなので、どうしようもないんだよなぁ……なんとかしたいとは常々。

 

「なんで人のこと煽っちゃうんでしょうかねぇ、私」

「周りを小馬鹿にしてるからでは?」

 

 こらこらこら。零くんたら、それは私だったろ今。

 ふむ、なんて、走りながら……いや、少し早めに走り出し、私より前に出て、朝日を全身に浴びた安室透は輝く様な笑顔で振り返る。

 

「スバルはきっと、人の悪いところが見えてしまうんでしょうね!それで、そこが自分や、周りの人たちにどう影響するかを真っ先に考えてしまうのでは?

 だから、最初に人を試すような事を言ってしまうのではないでしょうか?」

 

 ……

 

「今のは……みっちゃんみたいでしたよ」

「そうですか? それはよかった!」

 

 にこやか爽やか笑顔の安室透が、隣に並んで、またジョギングを再開。

 

 人を試すような事、ねぇ。

 

 ……私、人を試してる……ように見えてる、のか……?

 

 





どちらかといえばこの沖矢昴くんのほうが安室透に寄せて書き始めていたので、そこの差別化がわかりにくいのは仕様ではあるんですがわかりにくいのは間違いないのですいませんが頑張って読み解いて下さい。

読んでいただきありがとうございます!
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