昴くんはなにもしない 作:あまも
故事成語言ったらどうなるのだろうかと思ったら、パリピのこうめいさん観ればおきあゆさんの故事成語聴けるんですね……
ひらめいた
閲覧ありがとうございます!
大学の研究室が開放されたので来てみたが、案の定なんか……荒らされてる気がする。根拠は無いけども。
こういう時は面白い事をしたくなる。
変声機を……こないだ“調声機”と命名を変えてもらったんだっけ。阿笠さんがバージョンアップして少し薄く、防水性を上げたこれ……を試す良い機会。
今までは、遠く響く声、みたいなのは出来なくて大声などは出せなかったんだけど、この度良く通る声は可能になりまして。
この声といったらこれでしょうよ。
「――――『私の理想など、ひとりの人間の妄想でしかない。歴史は日々の積み重ねで作られる』」
……とかなんとか。演劇部ばりに身振り手振りして大仰に語ってみる。
うーん、実に良い声。我ながら惚れ惚れしちゃうね。監修したの有希子さんだけど。
「『この世から戦いはなくならん。ならば常に強者が世界を治めれば良い。人々は強い者に支配される事に喜びさえ感じる』」
これ、特に内容に意味は無くって、盗聴器に聞こえるように思想強いこと言ってあげると、たまに面白い事になるのでこれまでも何回か試してみたり。
この声で真面目に演じてみると、案外なんでもそれっぽくなるもんだなと。
あと何があるかな。……砂漠の虎かな。
「――――『戦争には制限時間も得点もない。スポーツの試合のような……ならどうやって勝ち負けを決める?どこで終わりにすればいい?………
…敵である者を、全て滅ぼして…かね?』」
はい宇宙世紀宇宙世紀。思想が強そうな名言が多くて、
過激な事言うのか一番効くんだから。
今回は、名言集開始5分で白いRX-7が大学に直接カッ飛んで来た。近場だな。どこにいたんだよ。
「私なんかが違和感を感じるなんて、腕落ちましたか?」
「…………」
大学の研究棟に駆け付けた零くんが、相当急いで走って来てくれたのか僅かに息を荒らげて睨んでくるので、安いお茶の500mlペットボトルを箱から出して差し出したら奪い取っていった。常温だけど大丈夫?
今日の零くんは……白シャツのノーマルあむぴ。全体に黒が入ってない、バーボンではなさそうって事は、やっぱり公安か……
「もしかしてこれ仕掛けたの、あの、メガネの苦労してそうな人ですか。あの人、こういうのよく引っかかりますよね。いやぁ、真面目で仕事熱心な方で」
妙な事やってる奴がいたらすぐに上司に報告してくれるなんて、真面目だなぁ。
「……わかってるなら止めてやってくれ。もうこれで何回目だよ」
「5回……いや、カメラも含めると7回ですね」
なにが怪しい行動として反応されるのかと、思想の強そうな事言ってみたり、おせんべい握り締めて「私が天に立つ」してみたり、怪しげな薬品の名前言ってみたり、某人体錬成陣コピーしてみたり良い感じの長さの塩ビパイプと粘土と基板に銅線繋いでみたり、立派な建築物の見取り図広げて適当に線引いてみたりしていると、こうして零くんが駆け付けてきたり、電話してきたり、監視の人が近寄ってきたりして……
どういった行動がマズイのかと、散々学ばせて貰った。ピ〇ゴラスイッチ。
故事成語の羅列では飛んでこなかったから、故事成語はおかしな行動ではないらしい。政治批判とか色々あったと思うんだけどな。
……考えてみたら、こういうことしてるわけだし、確かに私、人のこと試してみたりしているのかもしれない。無意識にもそうとは思わなかったが。
気を付けよ……
この研究室、盗聴器やカメラが度々こうして仕掛けられている。
仕掛けられてる場所はわからないながら、仕掛けられてそうなタイミングだけは結構勘で当たる。機械から出てる変な電波でも聴いてるんかね?
丁度いいや、せっかく零くん……いや、安室さんが来たので、盗聴盗撮ハッキングやめてねという意味も込めて、目の前でシステム少し動かすか。渡したいものあるし。
「そうだ、
「それって、あの消えたあとまた作り直してると言っていたやつか?」
「そうですそうです。進捗見てってくださいよ」
「まぁ、良いけど……ほとんど進んでないって言ってなかったっけ?」
「それを含めて、です」
ちなみに“安室透”、しばらく私と話してみてわかったことは、私と話をしてると、零くんの私への苛立ちと安室透の守らなきゃならない外面と秘密主義ががっぷり噛み合って、それでも安室透を保とうと頑張る結果、私みたいな胡散臭い信用ならない感じになってしまうらしい。
なんのバグ?
景光くんに相談したら、
「そもそも友人の手伝いの延長で探偵始めた設定なら、友人相手に敬語で接するのも“安室透”的にはおかしいんじゃないか?そしてハルも、“安室さん”、だなんて他人行儀だろ。友達みたいに呼べばいいじゃないか」
だそうで。
ってことで、友達みたいに私は透くんと呼び、安室さんは敬語外してラフに接してもらうと、そう落ち着いた。
つまりいつも通りである。
その方が、私も楽だし。どうせいつも中身ではあむぴあむぴ呼んでるんだから呼び方なんていまさら……
安室さんは悔しそうにしているので、そのうち個人練習して完璧に仕上げて来ることだろう。
それに少し乱暴な扱いでも、まぁ……私、よくそんな扱い、友人たちみんなからされてるし…………
なんでみんな私の扱い雑なの??私にも我慢の限界ってものはあってだね?
「…………これは?」
「前に、Nebulaの内容はお話ししたと思いますが、あれを一から作り直してますからね。進捗こんなんです」
画面に出したのは、テキストボックスが1つ。
こんなものを自分とか言ってるのかコイツ……とでも言いたげな目線が降ってくる。
基本的に人とやり取りができるような形を目指しているから、確認用にはこんなもんでもあった方が便利と言うか……
今回は目的が別というか。
【今回は盗聴だけだったという認識であっていますか?録画や、画面共有はされてませんか?】
「……ああ。これで何ができるんだ?」
頷いた安室さん。
ヒロキくんとの交流の場が減るのは悲しいからね。
「何もできませんよ?」
【此処には私たちが進めているものは何も置いてないので、見たい時は素直に言ってください】
静音キーボード置いてて良かった。長文打とうが、音がほとんど鳴らないように打てる。
【今回は私が気付きましたが、他にもセキュリティはあります。何回もやってる通り機械での調査はオススメしません。私をもう少し信用してください。聞いてもらえれば、答えますから】
「ずっとデータ食わせてるんで、今他の事させられないんですよね」
「じゃあなんで見せたんだよ」
「見たいのかな〜と思いまして」
【他のものから守るための盗聴であれば、それはそれで手がないわけじゃないです。
本当に、ここには何も無いですから。
ヒロキくんの自由を許してやってください。】
彼が自由な時間を手に入れたのは最近で、小さい頃はその自由なんて無かったのだから、今取り返そうと、楽しもうとしているのを邪魔してほしくはない。
せっかく、あのプライドバカ高JTR子孫オヤジの手から逃れたのだから。
多少真面目な顔で見やると、神妙な顔で頷いてくれた。よしよし。
もちろんこれだけじゃない。今これの裏で開いて用意してるやつの方が重要でね。
「そしてこちらが、開発に必要な金額でしてぇ……」
【というわけで貸せる携帯貸してください】
「ん? ……貸さないぞ」
「あはは。つまり、資金不足でほとんどなんにも進んでないんですよ。だから最近はバイト三昧でして」
【みっちゃんとの連絡に、専用の連絡用メッセージアプリ入れますね】
金の無心は頼まんさ。
無言で取り出されたのは白い味気ない、特徴もない普通の小型な折りたたみの携帯電話。地味に携帯電話出てきてから、中身の進化が早い。概念が普及してからは早いんだな。
スマホになったらすぐにホームボタン無くなるかも。
この接続用のコード類も揃えるの大変だったんだから……
結局、色々名義ごと買って携帯各社で何台も契約する羽目に……下準備のためとはいえ契約金と本体代が落ち葉の如しで……まぁまぁまぁ。最近使ってるし。いいのいいの。この為の貯金、このためのジャンバリ。
「それで山によく行ってたのか。そんなんで、学業の方は大丈夫なのか?」
「はい、問題ありませんよ。なんせ私の相棒はあの天才ですからね」
【ヒロキくんと制作したものになります。まだ試作段階ですが、セキュリティの方は私たちの使っているものを流用しているので、現状でそこらの木っ端に抜かれる事はほぼ無いと思ってもらっていいです】
白い携帯とPCを接続、あとは勝手にプログラムが書き換えられて……
「資金があったら、どういった研究を進めるつもりなんだ?」
「以前から
【通話をご利用の際はこの、マイクの付いたイヤホンを使って下さい。携帯のマイク、スピーカーはこのアプリの防諜に対応してないので。
みっちゃんと私の連絡先を入れてあります。】
うわ〜、頭が2つある〜!
こんがらがりそうになりながら、口と手を違うことやらせるの、大変だ。軽い気持ちでこれならやれるだろとか思わなければ良かった。
零くんが見ていて、他の人も聞いているような監視下での行動なら、データのやり取りとかそうそう疑われないのでは?なんて……思わなきゃよかった。頭パンクしそう。
なんか動画流せば良かったんじゃない?……うーん、今更!
現在進行形で頭の中別のこと考えてるの無理みが強いな。
なんだっけ、あと何伝えなきゃだろう。
ワードも良いけど資料まとめるの大変なんだよ。気軽にUSB使っても、相手側にUSBポートあるか分からんし。中身対応してない時あるし(クリスさんで2敗)。
「これ見れるかな……デカいか。まぁ、いつでも聞いてください」
【この本体にはオーバースペックで、バッテリー消費は多いので使い過ぎには注意してください。防諜対策はしてありますが、絶対に大丈夫とは言えないので、怪しいデータは口頭のみでお願いします】
「……それは、僕が聞いて良いのか?」
「何言ってるんですか。あなただからこたえてるんですよ」
書き換えの完了した携帯を、再起動かけながら渡すと、やや慌てた様子で中を見ようとしている。しかしいきなりパスワード入力欄が出てきて驚いているらしい。
【そこは0ですね】
ロックにパスワード4桁入力のペケが4つ並んでいるが、4桁なんて関係なしに解ける時は解けるし、めんどくさいから1桁にしただけである。
どうせそのうち指紋認証とか顔認証出るし……
「………………?」
指差して『何これ?』の顔。
ホーム画面にでてきたgifアニメーション。白い子ペンギンが画面端からやって来て、頭を下げて帰っていく。
【そのメッセージの使い方をサポートしてくれる案内役ですね。使い方は本人から聞いてください。
お勉強中なので、可愛がってあげてくださいね】
「いやぁ、まだまだしばらくは、使い物になる人工知能は作れそうにないですね」
おいおい、せっかく安室さんで来たんだから、その零くんがするみたいな胡散臭いもの見る顔やめなさいって。安室さんなら「仕方ないですねぇ……」な顔でしょうそこは。
よーしよし、零くんにも軽量型ノアズ・アーク配れたな。私たちとの連絡用の携帯ならそうそう公務員さんや黒い人たちの人目には出さないだろうし、使ってくれるかはわからんけど、学習素材にはなるだろ。
……逆に人目に付くところで使うやつに入れた方が良かったかしら。変に隠されると怪しまれる?
…………ま、零くんだし上手くやるでしょ!
■
前回の詫びも兼ねてボランティアで害獣対策の手伝いに来ていた群馬。長野との県境まで含めた広い山。
今回こそは巻狩に参加し、皆で協力して猪を2頭仕留める事が出来た。大きなオスとメス1頭ずつで、少しは繁殖に歯止めをかけられたかと皆で沸き立つ。
しかし、一狩りしてきた後、山奥の山小屋で夕飯を頂いた後の事。
山を降りて携帯に電波が入り、通知がぽこぽこと立て続けに入る。
なんだろうかと確認……このまま呑みに行こうと誘ってくれていたおじさんたちに頭を下げて、一抜けさせてもらい、大急ぎで遥々、山道を下って上って、向かうは東都。
辿り着いた阿笠邸に、なんとか大急ぎで駆けつけた朝……まだ太陽の昇る前だから深夜?早朝?丑三つ時?
裏門側に頭から突っ込み駐車をキメて、裏口の鍵どころか阿笠さんちの鍵類まとめて部屋に置いてきたことに舌打ち。
大急ぎで真っ暗なガラス面を見ながら表に回り、チャイムを近所迷惑考えず連打で鳴らしまくる。
やっと出てきたのは小さな新一くんで、まだ目がしょぼしょぼしていたのに、無理矢理起こしてしまった私を怒る事なく出迎えてくれた。
「えっ、スバルさ……あ゛っ!?」
出迎えた瞬間に、新一くんが、『やっべ!』って顔してたが。おい?
「……えーと…ゴメンね、スバルさん。急いで来てもらっちゃったみたいなんだけど……意外と、そんな悪い奴じゃないのかも……っていうか。アハハ…」
などと、頭を搔いているが、あれか。
その『あ゛っ!?』は……私へ『黒ずくめの女を名乗る怪しいやつがハカセのとこに!』ってめちゃくちゃ緊迫した声音で連絡入れた挙句、その後何の連絡も入れてない事と、その連絡した事そのものを忘れていたな?
自分の連絡が遅れたせいで、私がどれだけ阿笠博士の事が心配で、焦って急いで帰ってきたのかと急に不安になったんだろう。
しょっちゅう私のこと忘れるな君。やっぱり私ってその程度の存在なんだろうか。
とはいえそこは、それほど気にすることでもないんだが。
︎︎この反応なら、黒ずくめの女とやらは何も心配いらない存在だった、ということで良さそうだ。…………ということは、その女。予想通りで合ってそう。
『灰原哀』が、やってきたらしい。
うん。にわかの私も知ってる、主要キャラの一人だしね?
本当なら、『灰原哀』なんて存在が生まれないのが一番良かったのだろうが、生憎と私のにわか知識ではいつのどこで何をどうすれば大きい姿のまま組織から逃げられるかわからないし。組織の男ことバーボンもスコッチも頼りにしたらダメな話題だろうし。
そもそも、知ってはいるとはいえ、灰原哀の本名が違う、本当は高校生くらいの女の子なことと、かわいい女の子で、新一くんがコナンとなる原因の薬を作った天才科学者って事ぐらいしか覚えてない。
後は……まぁ悪い子じゃないんだろうってことくらい?
とはいえ、正確な性格はくわしく知らないし、組織から抜けた、なんて存在そのものが危険だ。
たとえ彼女が主要キャラクターで、結構長く続いても阿笠博士に組織の手が伸びたことは無かったような気がしていても、心配は心配。
阿笠さんも、新一くんも“いいひと”だからね。
私は阿笠博士と工藤家と、一応毛利さんちには愛着はあるけれど、この彼女はまだ知らないからな。今後知るかもしれないけれど、現状はなんの感慨も愛着も無い。いなきゃ、今後困る事があるんだろうな、と思う程度だ。
そう、必要な人なのは間違いない。だからちゃんと受け入れる必要はあるので、ここで彼女を追い出すのは悪いこと。…………なのだけど。
心情的には、なにも阿笠博士のところに来なくても良いじゃないかと、思ってしまう。
そういう子を受け入れてしまうような人なのも、仕方ないことなのだけども。うーん。
…………とはいえ。
絶対助かるって保証もない毒薬を自分で飲むなんて、そんなの、自殺するようなものだ。
そんな目に遭う女の子。
普通に可哀想ではある。
いやぁ、黒の組織とかいう上から下から職務内容まで真っ黒なとこ怖すぎワロえない。
あと潜入する度胸もない。
特に何もなければ、こうして命は助かるし名探偵とも会える。
うん、余計な事はしないほうがいいよねやっぱり。無事に辿り着いたようでなによりだ。
こ、こんがらがる〜!
読んでいただきありがとうございました!