昴くんはなにもしない   作:あまも

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服部くんってオカルト寄りのファンタジー適正ありますよね(偏見)

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18-2:似た者同士

 

 

 

 

 大阪旅行中、新一くんが包丁で刺されたらしい。

 

 危うくノアズ・アークの入ったスマホ落として割るところだった。今買い替えられないんだから絶対気をつけなきゃいけないのに。

 

 聞くところによると、本当になんの事件も関係なく服部くんプロデュースな大阪観光を満喫していたが、工藤新一は工藤新一なので出かけた先でも事件を起こ(させて自ら巻き込まれるマッチポンプを)し、て、…………

 逃走中の連続殺人犯に、不意をつかれて包丁で思いっ切り腹を刺されたと。

 

 

 何故私はついて行かなかったのか……!

 くだらねぇ連中に構ってる場合ではなかったのに!

 

 

 けれど、そんな新一くんのピンチを予知夢で察知し、服部くんは彼に鉄の鎖の入った御守りを渡す事により刃が新一くんの肉体を貫くことを防いでくれたのだという。どういうことなの。

 

 服部くんのこといけ好かない生意気探偵ボウヤ2号とか思っててマジでごめん。今度から西に足向けて寝ません。

 

 代わりになのかなんなのか、服部くんは自殺しようとする犯人を止めるべく、銃を持った相手に飛びかかって、その銃で腹を撃たれたらしい。そんな傷を負いながらも弾を撃ちきって、引火して炎上する小屋から皆救出……なんて無茶を。

 

 お歳暮送ります。

 

 

 予知夢とかいうオカルトが由来だなんてどうでもいい。守ったという事実が大事。

 ︎︎おまけに身代わりの概念まで持ってきたか?本当に凄いな服部くん。

 

 なんなら、それ聞けたのだから同じ理論だして「なんとなく嫌な予感がして……」で服部くんに新一くんのピンチを見てもらう事が可能になったということ。

 

 

 なにより、服部くんはそれだけ新一くんのことを大事に思ってくれているらしいことがわかった。これはとても大きい。

 

 ネタにされるほど工藤工藤連呼してるのは伊達じゃないってこと。

 

 

 そうか、そうか……これが愛か……

 

 

 

 ………………友愛だろうな?一応お前幼なじみちゃん好きなんだよな?新一くんと蘭ちゃんの間に挟まるのは許せないぞ。

 

 とりあえず服部くん宛に東京ばな奈送ろ。あとなんだろう。各地の銘菓送りまくるか。

 

 

 

 今ならクリスさんと、酒飲める気がする。

 

 

 ■

 

 

 

 

「なぁ、スバルさん。オレに、組織担当の警察の人を紹介してくれないか?」

 

 

 などと、もの凄く思い切った提案をしてきた新一くん。

 

 

 月に一度の工藤邸の大掃除に、珍しく付いてきて手伝いしてくれるなんて、何が望みかと思ったら。

 

 突然どうしたのかと問うと、少し考えて、今度はアンタはその人と、まだ連絡は取ってるのかと聞き返された。

 

 とっ……てはいるけど……

 

「なんでまた?」

「アンタが……」

 

 新一くんは、言いかけた言葉を飲み込んだ。苦々しい顔で言い淀み、躊躇い、とても言いにくそうにしている。

 

 ふむ。

 

 ハタキを置いて、頭を纏めていたバンダナも取り、居住まいを正して新一くんの前にしゃがんだ。目と目を合わせる。

 

 今回くらいは目を開けてしっかり顔を見て話を聞いてやろう。なんだか真剣な話の様子だ。

 

「大丈夫です、新一くん。今日の私は真面目に話を聞く気分ですよ」

「……なんだそれ。いつも真面目にしててくれよ」

 

 上目遣い。口元に浮かぶ笑み。少しは気が抜けたかな。

 こちらもなるたけ柔らかい表情を心掛け、新一くんの言葉を待つ。

 

 

 こうして面と向かってちゃんと見ると、幼い頃の新一くんが、大きな今の新一くんの知性を持って存在している奇跡が素晴らしい。

 かしこさと可愛さの両面で、キッと決意を込めた視線で私と目を合わせてくる。

 

 うおっかわいい。

 

 

「真面目に聞いてくれるんじゃなかったのかよ」

「おっと、そうでした」

 

 つい緩みすぎてしまうところをすんでで留め、顔を作り直す。よし、新一くんカワイカワイネ。

 ひと息入れて、改めて。

 

 

 

「スバルさん。アンタはあの小林って人が何者なのか、知ってるよな」

 

 

 うーん、本題。直球勝負と来たか。

 

 

 困ったな。新一くんにこんなに真剣に聞かれては、答えないわけにはいかない。どう答えていこうかな。……よし、決めた。

 

「……何者なんです?」

「おい、とぼけないで……」

 

 ここで新一くんは言葉を止めた。私は真面目に答えるつもりで、そんな私がその質問に対して聞いている。

 

「……あの人、スバルさんのことを監視してる人か?」

 

 質問はもっと明確に。その意図が伝わったようでなによりだ。

 

「いいえ、違います」

「なら、何をしている人?」

「君も知っている通り、色々な依頼をこなす何でも屋に近いフリーターです」

 

 そうそう。考えるといい。

 

 私が言った言葉では直ぐに信じるのは難しいけれど、自分で考えた上で質問した答えなら、それは新一くんの中で組み上げるパーツに使えるか使えないかの判断だけで済む。

 

 例えば、今の質問は使えない。なら?

 

「以前、何をしていた人?」

 

 その質問は惜しい。

 

「そりゃ色々していましたよ」

「例えば?」

「ネズミ捕り、ドブさらい、浴室清掃……ギターの路上ライブ……」

「……」

 

 ちょっと違うことに気付いたかな。満更間違いでもないんだが。

 

「“以前”の範囲が広過ぎるのか?」

「そうですね、もう少し狭めて貰えると助かります」

「…………2年前、小林さんは何してた?」

 

 その指定は絶妙だ。おそらく私が放浪していたのと組み合わせたんだろうが、さて、どう答えたものか。

 

「山にいましたね。山菜やキノコを採って暮らしていました」

「仕事としては?」

「無職ですね」

「じゃあ、その直前までは何の仕事をしていた?」

 

 ああ、その路線は良い。

 

「上からの指令を受けて、危ない場所に危険な情報を取りに行ったりしていたそうですよ」

 

 これか、と。新一くんがメガネの奥で目を光らせた。

 

「それって悪いことだった?」

「ええ、悪いことでした」

「それはまだ許されていない?」

「どうでしょうね。最初から許されていたとも言えます。二度と許されないかもしれないとも言えます」

「どうして許されていたの?」

「彼がそれをする必要があると、認められていたからです」

 

「…………誰から?」

 

「公的機関から」

 

 

 私の答えを聞いて、新一くんがヘナヘナと膝を折り、詰めていた息を大きく吐き出した。

 ちっちゃい体でずいぶんでっかい安堵だこと。

 

「……小林さんは警察の人なんだな?」

「正確には元・警察官です」

 

 新一くんの中でどのような推理の組み立てがあったかはわからないが、あれらの質問からすると、彼の中ではほとんど2択だったに違いない。

 

 

 灰原さんの存在により、悪事を働く組織にも、望んで所属したのではない、望んで悪事をしていない人物がいることを知った。

 

 組織を抜けるためには命懸けで、何か大きな代償を要求されたり、殺されてしまうことを知っていた。

 

 組織に狙われてしまえば、存在を隠し、身分を偽り、一般人に紛れて生きるにも、日々怯えて暮らす必要があることを身をもって知っている。

 

 

 

「組織について調べている人がいるとは言ってた。でも、アンタが得た情報を流すその人が、警察官だとは言ってなかったよな」

「ふふ。そうでしたっけ?」

 

 自分の発言に責任持てないからなぁ、私。そうだっけ?いつだったか漏らしてないっけか。

 それに、現役のお巡りさんもいるにはいるんだが。

 ……そうだな、流してるのが2人とは言ってないか。警察の知り合いも1人とは言ってない。

 

「……小林さんって、……組織に潜入とかしてた人なのか? 」

「……彼が何かの任務で、身分を偽る必要があったのは間違いないですよ。その彼から例の組織については深追いするな、調べるなとキツく言われていたのは確かです」

 

 そこら辺からは、出来れば本人に聞いて欲しいところだ。私では余計なことまで喋ってしまいそうになる。

 

「その……人を、殺す、ようなこととか」

 

 これとか。……知らんよ。ハロウィン弾があったとて、絶対に消さなきゃいけない相手は居たかもしれない。景光くんも、零くんも、そういう話はしてくれないからな。

 

「…………どうでしょうね。私は彼に、仕事の内容までは聞いてませんからね」

 

 特に、そういう話は聞きたくもない。今更聞いたところで、誰も何にも変わらない。

 

「……どうして組織も、警察も辞めることに?」

 

 んー……これは……いいか。

 

「死んだことにしたからです。……そうでもしなければならない事情があったそうです」

 

 私もよくは知らない。その立場は守ったまま、“私”であればこの聞いていた情報から、考えつく有り得そうな可能性で勝手に推測くらいはする。それは曖昧で確定の話ではないから、新一くんには言えなかった。

 ︎︎というてい(・・)でね。

 零くんにバレて、三者面談説明会することになる、前くらいの知識と気持ちでお送りします。

 

「それでも尚、今も組織を追っているのか?」

「彼が今もその組織を追っているか、の断言を私はできません。けれど、彼はちゃんとまた、表に出てきて、調査を再開しています。私からの情報も受け取り続けている。……細心の注意を払いながら、まだ追っているのではないでしょうか」

 

 そういえば、組織について調べてるのか…って景光くんに関してはそうなのか知らないな。彼がフリーターNINJAなのは間違いないけれど、その技術で各地に潜り込んで何調べてるんだろうか。

 言われてみたら、そこまでしてまだ組織について調べるのも不思議。零くんの為かな?

 でも零くんの話まで勝手にするのはちょっとね。

 

「……スバルさんから見て、あの人ってどんな人?」

 

「とても素直で、かしこく、真摯で、行動力もあって……とてもしっかりとした正義感のある、いい人ですよ」

 

 あと美人。

「……あと美人?」

 

 心の声と耳に入る声が副音声された。

 

「ゲェッ、なんでわかったんですか」

「あはは! バーロー、アンタがそんなこと考えてるの、すぐわかるって」

 

 にんまりと、笑顔の新一くん。聞きたいことは大体聞けたらしい。彼の顔いつ見たの?と思ったけど、そうか、月影島か。

 

「わかった。アンタがあの人のこと、本気で疑ってない理由も大体わかったよ。

 逆なんだと思う。オレと、スバルさん」

「逆、とは?」

「オレは灰原が命懸けで組織を抜けてきたけど、確かに悪い奴じゃないのを見てしまった。

 スバルさんは小林さんが命懸けで組織を抜けてきたのをわかっていて、でも悪い人じゃないのを知ってた。

 信用したのはそれぞれで、それとほとんど同じ内容で、似たような手段で抜けてきたと主張して、接触してきたなら……疑っちまうよな」

 

 ふむ。ふむ?

 ……あ、灰原さんへの私の疑念のこと?

 

 あー……あれか、それこそ私の例え話か。

 何人も同じ方法で抜けてきたら、そのどれかに敵側のスパイが紛れててもおかしくない。

 あとは出会ったタイミングと、その見た目の話。

 

「……えー……と、そうか、だから私、灰原さんのことそれほど核心を持って信じきれて無かったんですかね?」

「わかってなかったの?」

「だって、あの子が悪い子じゃないのはどう見てもそうじゃないですか。だから君たちの言い分を信じてるのは本当ですよ」

 

 そもそも主要キャラだし。

 

 私が信じきれていないのは、にわかの私の知識では、この先灰原さん経由で阿笠さんや工藤家の人たちに危険が及ぶ事になるかどうか、わからないことだ。自分の記憶が信じられない。信じるに値しない。

 

「小林くんのこと、どう疑ってらしたんです?」

「組織がスバルさんのことを見張る為の監視かなって。それで、優秀な彼に騙されて、信じ切ってるアンタが良かれと思ってオレたちに会わせたのかなと」

「よ、良かれと思って……」

 

 その言葉は私の脳内にとある顔がドドンと思い起こされるんだが……

 あのキャラクター、良い人顔でにこにこ近付いてきて、友人になったかと思えば敵組織を調査中の警察の警部で、そうなのだと信じてたらどっこい敵組織の幹部でした!みたいな三段活用で……

 

 あれ?展開同じようなもんじゃない?大丈夫か?

 イヤだぞ、景光くんが土壇場で『楽しかったぜェ、お前らとの!友・情ごっこォ!!』とか変顔で言い始めたら……私、泣くぞ。

 え、違うよね?大丈夫だよね?

 景光くんてば最近忍者過ぎて分身まで使えるようになっててもおかしくないからな。……いや流石におかしいか。

 あの顔に似てる人なんてあんまりいないでしょ。スッキリ系イケメン。思い出しても顔がいい。

 

「……真面目なスバルさん終わっちゃったか」

「へっ? え? いやいや、真面目ですよほら」

 

 気が抜けて百面相してたのを見られてた。直ぐに取り繕ってみたけれど、ハイハイ、なんて軽く流されてしまう。まぁでも本日の営業は終了かな……

 

「小林さん、オレが聞いたら答えてくれると思う?」

「ええ。新一くんの思う様にするといい。ひとつだけ言えるのは、彼は信じるに値する人です」

 

「……わかった!ありがとなスバルさん!」

 

 そうにこやかに笑って手を振り、新一くんは駆け出して行った。

 

 

 

 ︎︎さてさて。ノアズ・アーク経由で先程の問答を景光くんに共有してもらう。ぽこんとメッセージを受信。

『了解です( ̄^ ̄)ゞ』とのこと。顔文字気に入ったの?

 

 景光くんの出した、謎のヒーロー案に乗っかったのは私だ。

 

 何言ってるかわからなかったけど、詳しく真面目に聞いたところ、要するに私と似たような考えだったのは違いなかったので。

 

 景光くんの提案が私の考えと違ったのは、零くんのこと。

 

 零くんに繋がることは隠したままでいるべきだと、そうなった。でも潜入捜査官がもう1人いることは伝えるべきじゃないの?とも思ったんだけど、そこは景光くんなりの考えがあるらしい。

 

 わからんけど、私がものを考えるよりよほど彼の方が良い案が出るだろうと。

 

 

 零くんは情報公開には未だに懐疑的だったけれど、私が最終的に疑われたとしても、新一くんに出せる『信頼を得る担保』の用意が出来たのを確認して、渋々了承。GOサインを出してくれた。

 

 

 作戦としては、詳しいことはあまりよく知らない私が、彼が元警察官である、とする情報を流す。

 

 当然詳しいことはわからない。けれど、元警察官という肩書きは大事だ。

 

 なんせ小五郎さんもそうだから、探偵まがいとはいえ似たようなことやっててそのステータスはかなり重要だろう。正義感の期待が持てる。

 

 

 後は、新一くんに訊かれた景光くんがどこまでをどのように話すかだな。健闘を祈るしかない。

 

 上手くいくといいな。新一くんが頼りにできる大人は多い方がいいから。

 

 

 

 私はバンダナを頭に巻き直し、ハタキを手に取り……

 

 

 …………あれ?これ屋敷掃除すっぽかされてない?

 

 

 

 

 ︎︎んもー、そういうとこだぞ!

 






この疑念、別に長引かせる気は無かったのでサクッと解決してもらおうかと……景光くん、どう説明してるんですかね。

たぶん彼が警察の人に組織の話するやでと明言したところは無かったと思うんですが、あったら誤字報告かなんかでおめェは本当に馬鹿だなと指摘していただけたらたすかります

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