昴くんはなにもしない   作:あまも

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なんでこの猛暑の中私は雪山の話を書いているのか……
凍えるほどの寒さが恋しい。


閲覧ありがとうございます!



19-1:雪山の奇術師

 

 

 

 祝!!

 

 知らん間に世間一般にネットが広まっておる!!!

 

 

 ……これ祝なんかな。元々あったのに何故か誰も使わなくなっただけなんだけど。

 パソコン通信なんて今は昔!インターネットが主流!!

 

 

 いつから?!?!

 

 もうわかんねぇなこれ!

 

 

 で、なんでそれがわかったかと言うと、園子さんがオフ会に行くというので車を出せないかと史郎さんから打診されたからである。

 

 はは……ご令嬢乗せて雪山行くとか、私、生きて帰れるかわからんよ。

 

 そう、季節はいつからいつしか何故だか冬。私は凍えて丸くなってヒーターの前から動かなくなる時期だ。正直出かけたくない。引きこもりになりたい。

 

 

 しかしてそしてのそのオフ会の日、奇しくも私もオフ会で出かけるので、園子さんの送迎は残念ながらお断りさせていただいた。

 

 

 結構だいぶかなり前だと私は認識しているのだけれど、時期的には先月(・・)マジシャンの真田くんからの依頼で、ネットの掲示板で色々潜ってたら、これから事件起こしそうな気配を察知してね。

 新一くんあたり連れて潜入したらなんとかしてくれるんじゃないかと、新参者の顔でその掲示板で合コンのさしすせそやって、仲良し感出してオフ会参加に漕ぎ着けたのである。『魔法使いの弟子』ちゃんがチョロくて助かった。

 

 …………ってことで新一くん頼りだったのだけど、数日前になって、お子様な新一くんはこの寒さで風邪を引いてしまったらしい。

 私はそんな風邪っぴきな新一くんに無理をさせるような鬼ではない。

 となると、大抵そんな風邪っぴきで寝てるべきであるはずの新一くんが家で寝てるなんて大人しいことしてるわけがないので、事件があったら飛び出すだろうと予想して、そのサポートさせる為には景光くんこと小林くんを米花町から離すわけにはいかない。なので彼も誘えない。

 緊急登板零くんは、申し訳なさそうにその日は予定があって東都を離れられないとのこと。

 あれは雪山行きたくないだけじゃないかと。

 …………探偵の方の仕事かな?一応始動したてで、最初くらいは実績作らないといけないよね。

でも零くんなら部下あたり使って情報集めてそうなもんだが……

 予定が終わり次第向かう、とは言ってくれたので、一応主催さんには1人後から来るかも……とは伝えたが。

 

 『ああなるほどね、わかったよ』なんて訳知り顔なメールが返ってきたので、なにやら変に捉えられているような気がする。

 

 

 

 真田くんとこには出発前に立ち寄って、春井さんの件で再調査に行ってくる旨を伝えた。神妙な顔で宜しく頼まれたので、出来れば良い結果を伝えてあげたい。

 

 これでもし私が巻き込まれても、最悪彼から景光くんや新一くんに繋いでくれるはず。

 

 行先のロッジ、携帯通じなさそうなんだもんよ……

 地図見ても橋は1本で、これはもうクローズド・サークル待ったナシって感じ。

 念の為、荷物に崖登坂用具や雪山登山用具詰めるか悩んだが、置いてく事にした。

 絶対、何かしら起きた時に疑われる原因になる。

 

 

 そして純粋に雪山行って外で作業したくない。

 

 

 はい指差し確認!スタッドレスタイヤ交換OK!各種ノアズ・アーク用機材充電OK!暇つぶし探偵左文字既刊OK!防寒防水OK!

 あとは何かな……簡単なマジック用具?

 要らねぇ!手先の器用さなんか無いからね!

 

 

 

 ■

 

 

 雪山を、道路脇に積まれた雪の間から飛び出した竹箒みたいな小枝にヒィヒィ言いながらなんとか運転して、駐車場に到着。これだから冬の雪深い山は嫌いだよ。

 駐車場に車は既にいくつか並んでいた。5台か……

 見たところ高級車は無し、レンタカー有り……うーん……クローズド・サークル…………

 念の為、一つ下の離れた駐車場に停めよ……寒いけど。

 

 この後、ひいこらなんとか雪道を登り、なんとなく妙な匂いのする、燃やされるかして落とされそうな吊り橋を渡り、寒さに震えながらなんとかロッジに辿り着いた。

 既に撒かれたものを取り除く手段を持ち合わせてない。

 遠隔の機構は無いようだし、燃やされる瞬間に現行犯見付けられたら話は早そう。

 

 そんなことより。

 

「えー、と、あなたは……?」

「で、できれば…中で、話を……させてください……」

 

 出迎えてくれたのは口元のホクロが目を引くきれいな女性と体型太めの若い男性。後ろに覗く目付きの悪い面長な男性もいる。

 凍えて震えてまともに喋ることも出来ない私の様子に、慌てて中に引き入れてくれたが、無理だわやっぱり。寒すぎ。冬なんて外に出るもんじゃない。

 

 ストーブで暖まったロッジの中。生き返る様な心地である。

 暗い印象の面長な男性が私の荷物や上着を預かってくれて、太めの若い男性は、暖めたお湯に粉ココアを溶かしたものを持ってきてくれて、ストーブの真ん前に案内してくれた。助かる。

 

「ありがとうございます……すいません、私、寒さにめっぽう弱くって」

「いえいえ。外、寒いですもんね。けど、あんなに厚着してたのに?」

 

 上だけで8枚くらい着込んでたけどそれでも寒いもんは寒い。

 そういう彼も、随分厚着を……?

 あれ?あまり着込んでないように見える。

 

「?……何か?」

「いえ……あなた何か、防寒着とか内側に着てます?」

「え?」

 

 ストーブのついたこの部屋では、彼の格好は違和感が無い。けれど、何故だか私は彼を厚着だと感じて……何でだ?

 彼は内側のパーカーが裏起毛で暖かいから、それほど厚着では無いと説明してくれた。そうか、そういうこともあるか。

 裏起毛良いよね。私も今3枚くらいそれ着てる。

 

「それで、あなたも今日のオフ会の参加者ですよね。HN(ハンドルネーム)お聞きしても?」

「ええ。私は……」

 

 

 ♤

 

 憧れの土井塔克樹が想像と大違いな外見だった事に、理想のイメージを粉々に砕かれた園子。女子高生の下手な演技を軽く見抜いた面々は、揃ってもう1人を話題に上げた。

 

「そういえば、女性のふりが上手い人、もう1人いたわよね」

「そうそう!あの人も女子高生かそこらの、若い女の子だと思ってたんだがなぁ」

「そうですか?私はもっと若い、中学生くらいの男の子だと思ってました!」

 

 田中さん、浜野さん、黒田さんがそれぞれ、同じ人のことを言っているらしい。

 

「え、どなたですか?」

 

 園子の問いに、ロッジのオーナー、荒さんが、土井塔さんと目を合わせて、笑顔で頷いた。

 

「『レッドへリング』さんや『魔法使いの弟子』さんがよくお話されてましたよね。ほら、最近よくチャットに来ていた……」

「えーっ!まさか、『たとるとてる』さん?!あの人、女性……じゃ、ないんですか!!?」

「ねーっ。僕たちも、みんな、彼が名乗った時にビックリしちゃって!あっ!呼んできますね!」

 

 土井塔さんが今しがた降りてきたばかりの2階に駆け上がっていく。体型のわりに俊敏な人だった。

 その間に、蘭とおっちゃん、そしてオレの紹介を済ませる。オレとおっちゃんはこのまま帰るが、蘭は園子と一緒に泊まる予定だ。

 

 何やら上で、寒いだの、何故わざわざ、だのと言い合う声が聞こえるが……その声、猛烈に聞き覚えがある。

 

「うわ冷たい、開けっ放しは……おや。

 これはこれは…オフ会ってここだったんですね」

 

 建物の中だというのに厚手のセーターにフリースの上着を着込んで動きにくそうな男が、土井塔さんの後に続いて降りてきた。

 紅茶色の髪、薄い糸目、青く反射するメガネに、黒い革手袋。

 

「ス、スバルさん?!」

「こんにちは。し…コナンくん。小五郎さんに、蘭ちゃんと園子さんも」

 

 にこりと笑う沖矢昴がそこにいた。

 彼は当初、予定があるからと懇意にしていた鈴木史郎会長からの頼みを断り、何やらどこかにオレを連れて行こうと誘ってきていた。

 しかしオレが風邪を引いたため、寸前で断った形なのだが……ここで出会うとは。

 

「沖矢さん!用事ってここだったんですか?」

「園子さん……すいません、ちゃんと私の用事の内容を先に伝えていれば、小五郎さんに御足労願う事も無かったものを……」

「全くだ、パソコン小僧。お前が来るんなら一緒に連れてってやれば良かったろーが」

「はは……申し訳ない」

「おじさま、私も沖矢さんに……ううん、パパにオフ会の会場が何処って言わなかったのもあるわ」

 

 心底申し訳なさそうにペコペコと頭を下げている。確かに、彼が言わなかったのもそうだけど、園子の方だって言わなかった。それでおっちゃんに2人して、いや園子の方はなんか平謝り感があるが、ペコペコと頭を下げていると、彼らの様子を見てロッジオーナーの荒さんと土井塔さんがそれぞれ「まぁ、まぁ」と窘める。

 

「まぁいいか……沖矢!ちゃんと蘭達のこと見とけよ!!変なことさせたりしたら、承知しねぇぞ!」

「はい!お任せ下さい、小五郎さん」

 

 おっちゃんは推理した犯人を名指しするかのようにびしりとスバルさんを指差し、スバルさんはスバルさんでやけにキレのある敬礼で応えた。

 

 ……ちらりと、スバルさんがオレのことを見る。『このまま残ってくれないか』と言いたげな、けれど風邪を引いていることを知っているため口に出せずに、結果困った様に眉を潜めて口を引き結ぶ形となった。

 

 やっぱり何か、オレにして欲しい事があるんだろう。

 

「ねぇ、ボクも泊まっちゃダメ?」

 

 ダメ元でおっちゃんに聞いてみるが、案の定にべもなく却下。襟首掴まれて、ロッジを後にすることに。

 

「コナンくん。無理、無茶、無謀はいけませんからね」

 

 寒いだろうに、わざわざ玄関から外に出てきてまで最後に投げかけられたスバルさんの言葉。

 この後の事を予期していたかのような言葉は、その時点でのオレに一抹の不安を抱かせるには十分なものだった。

 

 

 

 そして案の定、帰りの道中でラジオ放送から、3人が参加している集まりのまとめ役が自宅で殺害されていた事を知り、大慌てで引き返すこととなったのである。

 

 

 ■

 

 

 荒さんが気を利かせてなのか……推測では若い女の子と思われていた『魔法使いの弟子』と女子高生と思われていた『たとるとてる』を隣同士の部屋にしていたお陰で、知り合い同士部屋が近くなったことは良かったが。

 

 しかしまぁ、まさか園子さんが手品に興味があったとは。全然彼女の趣味とは関係ないと思っていて、このオフ会日被りも同じオフ会だとは考えていなかったけど……よくよく考えてみれば普通に気付けた筈だった。

 

 あまりにも冬の雪山が嫌過ぎて、しかも危険な雪道をご令嬢乗せて運転なんて怖すぎて、無意識に拒否したかったのかもしれない。

 

「てか、沖矢さんが『たとるとてる』だったんですか?えーっ、意外!!」

「そんなに意外ですかね?『たとるとてる』」

 

 今回、私はフレンドリー感出すべく、沖矢昴より多少素は混ぜてたが、いつもの私だったはずだ。

 あと、素直に手品の知識が無さすぎてナチュラルさしすせそ出てたから、それもあるかも。

 

「ね、園子。『たとるとてる』って人、どんな感じだったの?」

「そうねー……正直、言われてみれば確かに沖矢さんなのよね。沖矢さんから敬語外した感じ」

「へー! ね、ね、沖矢さん!ちょっとやってみて下さい!」

「ええ?」

 

 蘭ちゃんって結構、そういう好奇心旺盛なところがある。女子高生らしくてとてもいいと思うよ、お兄さんは。

 ぐぬぬ……やってはみるけど…

 

「……私ってば結構…素の口が悪いから、普段あんな感じなんだよ?……そう面白がられても、困っちゃうな」

 

 意訳でマイルドに加工するのツラい……とりあえずですますで取り繕えないのがツラい……!

 

「えーっ!なんか……無理してませんか?」

 

 もちろん無理してるよ園子さん!!

 

「だから素は口が悪いんだって。

 ……変なこと言いそうで怖いからやめます!はい終わり!」

 

 えー、えーとぶーたれておられる女子高生たち。やだやだ、コミュ障オタクは冗談やネタやミームが通じない相手と、女の子相手にはまともに会話できないの!

 

 女の子の部屋にいつまでもいるのは悪いのでさっさと退却。逃げたわけじゃないぞ。

 自室に戻って、再度上着を着込み、外へ。目指すは外界との唯一の接続先の吊り橋。

 あの吊り橋の向こう側なら、ギリギリアンテナが立つことは確認しているからね。

 

 

 雪を踏みしめながら考える。

 チャットは送信する前に一度冷静に読んでから発言出来るからまだいいけど、会話は考えながら話さなきゃいけないから困る。

 

『なんならボクも参加してたもんね、チャット』

 

 せやな。手品ネタを私がわからなすぎて、スムーズなチャット進行の為に情報持ってるノアズ・アークにそのまま『たとるとてる』として返事して貰ってたからね。

 そういう意味もあって、今回の主催、『脱出王』の西山務さんは私を1つのアカウントを2人で使用している人だと思ったんだろうけど。

 

 …………春井さんの事件の際、この掲示板にいた人達のことはざっくりとIDから調べておいたけど、ネットの良くないところ100%で絶対アカンの原因そうな『脱出王』と『消えるバニー』のことだけしかガッツリ調べてはいない。

 彼ら以外は、IDの持ち主が手品となんの関係もない人や、わざわざ複数の回線を経由して辿れなくしていたり、明らかに複垢持ちで怪しかった『イカサマ童子』と『影法師』、『レッドヘリング』ぐらいしか詳しく調べていない。

 

 他はほとんど、この事件には関わらなさそうというか……初回で調べたこの5人、いや『レッドヘリング』以外の4人で大体事件の動機埋まりそうで他を調べる必要が無かったというか……

 

 これで他の人も関係ありますってなったら、ロッジごと爆破してあのチャットに参加してた者全員殺す位の気合いじゃなきゃ無理だ。

 あの2人以外の参加者への、犯人が向けるだろうヘイトは全部どっこいどっこいだからね。

 あの春井さんの件ではガチの無関係な、最近参加した『たとるとてる』こと私と、蘭ちゃんと、バイトの須鎌くんがいるから、そこを含めるほどの無差別殺人するほどの自暴自棄な犯人ではないはず。

 

 今めちゃくちゃ怖いのは、主催の『脱出王』の西山さんが来てない事。電話も出ないとなると……ワンチャン、来る前にもう……?

 

 というわけで、景光くんか零くんにしくよろニキしておきたかった。

 西山務は杯戸町在住だからね。東都から離れてはいないから、家に居るかどうかの確認するくらいの時間はとれるはず。

 まだ燃やされていなかった吊り橋を渡り、私たち3人グループメッセージに西山務の住所、氏名、在宅確認申請のメッセージを飛ばす。

 先に確認して、手が空いてた方が見に行ってくれるだろう。

 

『ついでに何か調べてくることはある?』

「調べてもらっても、あのロッジでは受け取れません。それより、ノアくんには私のサポートを頼みます」

『わかった。本体との接続は切れてしまうから解析は遅くなるけど、頑張るね。

 録画を起動しておいていい?』

「ええ。お願いしま――」

 

 雪を蹴って駆けてくる足音。

 

「沖矢さん!!」

 

 土井塔さんが、息を切らせて橋まで来てくれていた。あれ、どうしたんだろう。

 

「そろそろ暗くなり始めちゃいますよ。日が落ちたらグンと気温が下がる。……忘れ物ですか?」

「――ええ。車に、PCの充電ケーブルを忘れて来てしまって。暗くなる前に取りに行こうかなと」

「そんなに大事でしたか?」

「ええ。充電が切れたらと思うと、私、心配で心配で」

「……なら、俺一緒に行きますよ!なんだか沖矢さん、1人だと遭難しそうだ!」

「え〜、そうなんですか?」

「えっ、サッム」

「今のはそういうつもりじゃないですよ!!」

 

 会話はにこやかに、とてもスムーズ。話しやすく、人懐こい。誰かに似てる。

 そう、コミュ障な私が初対面でこんなに楽しく話せる相手はそうそういないのだ。

 例えば、いつぞやのクリーニング屋の店員さんのような。

 

 

 彼もおそらく、この橋が心配で、何故かこのタイミングで1人離れて橋に向かった私を、心配して(訝しんで)後を追って来てくれた。

 ケーブル、予備を積んでおいて良かった。

 

 ……私が真田さんに頼まれてこの掲示板を調べた時、詳しく調べたのは5人。事件に関わりそうなのは、4人。

 

 では、IDに不審な所はあるのに、その詳細はかなり深く潜らないとわからないほど偽装の上手かった残りの1人は?

 彼が個人メールで春井さんと思われる『イカサマ童子』に送った激励の言葉の意図は?

 

 楽しい、彼との会話の合間に、その太めな体格を横目で見る。

 私は確かに寒がりだけど、暖かい室内と同じ格好のまま、外を歩こうとするなんて私はとても出来ないことだ。見た目以上に、厚い何かで覆ってない限りは。

 

 実際来て見て接してみて『レッドヘリング』が俄然別件で怪しいというか……

 

 “どいとうかつき”でしょ?

 

 書き出したら字面で察せるじゃん。“か”と“ど”を最初と最後に回したらもうパッと見で読めるじゃない。

 

 

 ︎︎2人からの返信、見れなくなってしまったな。

 …………あれ?私、また怪しいムーブしてたってこと?

 

 





なんでか知らないんですが、そのつもりないのに犯行現場確認しに行くとなぜか怪しくなるんですよね。
なんでやろなぁ……

感想ありがとうございました!
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