昴くんはなにもしない   作:あまも

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短そうな話まとめ?です

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20-1:片言隻語

 

 

 

 新一くん曰く、警察は小五郎さんが呼んでくれていて、とにかくなる早で来てくれるよう頑張ってくれているらしいのでこの一晩さえ乗り切れば大丈夫。

 

 浜野さんとは、“前”の時の掲示板であった色々な、ネットマナーとネットリテラシーと炎上とその後起こる様々な弊害についての『とってもおもしろいおはなし』を延々と聴かせること2時間、部屋で楽しくお話しして過ごしていたら、自分のマナーが悪かったことを理解してくれて大人しく部屋で引きこもってくれた。

 

 ホントにあった怖い話はホントにあったかはわからないけど、ゾッとはするよね。

 

 

 いやぁ、わかってくれて良かった良かった。

 

 

「なぁ、沖矢さん?あれ本当にあった話?」

「さぁ?ご想像にお任せしますよ」

 

 最初の30分くらい付き合って一緒に聞いていた土井塔さんが聞いてきたけど、ネットストーカーの執念は下手なホラー小説よりリアルの方が怖かったりする。土井塔さんも気を付けなさいね。

 

 他人の家のゴミ袋漁ると、結構色々情報拾えるからおすすめ。でも人に見られると完全にアウトだからおすすめしない。

 逆説的にゴミを捨てる時は気をつけようね。レシート1枚でも危ないぞ。

 

 

 

 そうして、全体的に暗い雰囲気になってしまった皆の雰囲気を払拭してくれたのは土井塔さん。

 

 もちろん私が頼んだ。

 

 でも、土井塔さん自身もこの雰囲気は嫌だったのか、いそいそと用意始めてくれたし……なにより、ここに集まっているのは元々手品好きの面々だからね。

 

 

 園子さんを助手にして、浜野さんのやろうとしたマジックを、けれどサクラも無しに目も塞がずにみんなの前で成功させたり、ワインのボトルを瞬間移動させたり、簡単なトランプマジック……と言いながら、トップだボトムだ箱だ蘭ちゃんのポケットだと目まぐるしく飛び回るクローバーのエース。

 

 しかも私の好みを聞いていた通り、たまに「おっと、違いましたか?」なんてわざと間違えて、その上で一度もカードに触れていない私の袖から「隠さないでくださいよ!」などと取り出してみせたりと、実にユーモラスで楽しいマジックだった。

 

 土井塔克樹なんてマジシャン聞いたことないのに、プロ級じゃないか!普通にやっていけるよ!なんて褒めそやされてまんざらでもなさそうにしておられている。

 

 純粋に楽しんでる面々の横で、胡乱げにタネ探りながら見てる新一くんはいるけどね。そういう姿勢良くないぞ君。

 

 

 

 私の横で、土井塔さんのマジックショーや、園子さんの拙い手つきのマジックを見て、みんなで楽しい雰囲気を取り戻せたのを見ていた田中さんは、静かに肩を震わせていた。

 

 マジックってのは、こういうものだったんじゃないのかね?…なんて、誰もわざわざ口にはしなかったが。

 

 

 「それでは夜も更けて参りましたので……最後に私から1つ、魔法を皆様にお見せしましょう!」

 

 と、土井塔さんがそう言って、朝日が昇ってきた裏庭に皆を出して、彼は1人、ロッジの2階のベランダに立った。

 いつの間にか新一くんがいないんだけど、まぁ、最後というからにはそういう事だろうし。

 

 私としては朝の陽射しがあっても、寒いものは寒い。

 

 

 

 朝日を浴びて飛び立つ白い大きなハンググライダーに、園子さんが感涙し、皆は大歓声を上げる中、怪盗キッドは朝日の中に消えていった。

 

 

 ………………普通にいい事して帰ってったな、あの人。

 

 そういう事するから新一くんが絆されてたまに協力してやるかぁ……みたいな妥協し始めるんだぞ。

 そしてお互いそれぞれで事件に巻き込む、と。

 

 はたしてどっちが悪いんだろうね……

 

 

 

 なにはともあれ、奇術愛好家連盟オフ会、これにてお開き!!

 

 

 あ、園子さん、帰り道くらいは送りますよ。

 

 …………えっ?!カラオケ?私、歌はちょっと……聴いてるだけでいいだって?

 ……4時間?!今から?!感動を歌い上げる?!

 

 

 

 ちなみに零くんも景光くんも、途中から『 俺が行く必要無さそうだな』との判断から来なかったそうです。死体が出てる方に行くのはわからないでもないが。連絡繋がらなかったのも仕方ないが。

 

 ■

 

 

 

 

 あの頃の見るに堪えない下手っぴちゃんだった私だが、そこはそれこの身はやればできる子と巷で噂の沖矢 昴(強ハード)

 

「おおー!ちゃんと打ててるじゃないか!」

 

 でしょ〜?

 

 

 白シャツにグレーのベストとスラックスに身を包んだ景光くんこと小林くんが見守る中、キューを握った私はそれなりにさまになっていると自負している。

 

 ブルーパロットに暇さえあればコツコツ夜に通いつめ、福井さんや寺井さんに特訓してもらったからね。

 

 福井さんは褒めて伸ばしてくれる。

 寺井さんは、何故か私が撞く度に首を捻って不思議そうにしていた。

 曰く、「ポテンシャルは充分あるように見えるのに何故か下手(要約)」をとても遠回しにやんわりと伝えてくれた。下手か…なんでやろな。不思議やな。

 

 なんと手袋も買いました。これ3本指だけで2本は出てるのがオサレでカッコイイよね。

 指出し手袋に憧れるのはみんな一度は通る道。

 私の指だとこれじゃない?なんて小林くんが、甲側が黒で平が赤のカッコイイのを選んでくれてそれだけでテンション上がっちゃう。私の爪の色で選んでくれたっぽいな。

 

 

 酒もたまには飲めば良いのに、と福井さんに散々言われながら、サイダーや牛乳だけで許してもらってきた。今日も今日とてライム搾ったサイダー。爽やかでうま!

 

「さらになんと……バンキング出来るようになりました!」

「お〜。ちゃんと真っ直ぐ撞けてるし、もう対人とかもやってみてもいいんじゃないか?」

 

 真っ直ぐ撞くだけなら上手くなったと思う。

 ここまでひとりでコツコツ修行してきたからね…

 

「ふふ…透くんってビリヤードやった事ありますかね?」

「さぁ……まさか安室に勝負挑む気か?」

 

 いやいや。あの完璧超人でもあまりやった事ない競技ならワンチャンあるでしょ。

 

 真っ直ぐ撞けるなら後は入射角反射角の予測だけでしょ?なぁに、意外とそういうのは上手いもんよ、私。

 力加減まだまだだけど……当てれば良いんでしょ?楽勝楽勝!

 

「俺はやめた方が良いと思うなー。ナインボールとかやったら、アイツ絶対サラッとブレイクエースで終わらせるぞ」

「なんですっけそれ」

「ブレイクで9を落として勝つやつ」

 

 …………可能なの?それ。

 

「んー……沖矢が並べたら有り得るかも?」

「え。なんかあるんですかそういうの」

「このコツはお前にはまだ早いかな〜」

 

 ケラケラと笑いながら、小林くんはいくつかある台の中からひとつを指定して、そこにナインボールを並べてみろという。

 木ラック借りて並べてみて、バーカウンターから出てきた小林くんは、素手のまま、見た感じでは適当に並んだ所から借りたキューでサラッと……ブレイクで9をポケットに落としてしまった。「これがブレイクエースな」……なんて。

 

「やってるじゃん!!」

「この台だからな。ここ、出やすいんだよ」

「そういうのもあるんですか?!」

 

 なんだそれ、オカルトやんけ。

 聞けば眉唾みたいな話がわんさか出てきた。運が結構関係するのは勿論、微妙なフェルトの流れだったり、店の方角がだのなんだのと。

 なんか球同士の隙間だったりもあって、シート使うよりは木ラックで並べるのがよいらしい。……ええ……奥が深い……

 

 

 

「他にも、初手で奥を狙うってのもあるけど。

 とりあえず安室相手はやめとけって。この店バイト始めてからそれなりにやってる俺が、勝てる気しないんだぞ?」

「それは……」

 

 たまに小林くんがお客さんに誘われてプレーに参加するのを見ていると、素人目にも彼の技量が凄まじいのはわかるんだが、その彼がここまで言うとは……

 

「そしてアイツ、万が一負けたら二度と負けないくらいやり込むだろ」

「それはそう……」

 

 なんなら、私が『ブルーパロット行きませんか!』なんて誘った日にはダーツかビリヤードで挑む気だと察して練習してから来そうまである。

 

 そもそも既にプロ級な気さえしてきた。

 

 

 零くんは何が出来ないの?赤井さんと仲良くやること?…………うん……

 

 

 

「えー…透くんに何かしらで悔しそうな顔させたいのに、残念です……」

「なんでわざわざスポーツで挑むんだ? 素直にゲームに誘えば良いだろ。沖矢は、そっちがめちゃくちゃ凄いんだから」

「そっちは……私が負けたら悔しいので」

 

 唯一。零くんや景光くんに、私が勝てる自信があるのがゲームだ。推理とかではなく、アクションゲームやシューティング、RTA形式だったりでね。

 それすら万が一負けたら……

 

「いいじゃん。負けたらリベンジすればいいだろ」

「そうは問屋が卸さないんですよ」

 

 改めてナインボールを始める形に整え、先程小林くんが置いたのと同じ位置に球を置き、同じ角度で同じ様に撞く。カツンとポロポロコロコロ、ブレイク、というだけあって、塊から綺麗にバラけた9つの球は、転がるだけ転がって、台の上で全部で10個、ちょんと収まりよく止まってしまった。

 

 なんでぇ?

 

「今のは威力が足りなかったかな。――いらっしゃい!何名かな?」

 

 他のお客さんが来て、小林くんはそちらに向かってしまった。

 その居酒屋接客、お店の雰囲気違うからやめな〜?

 

 大人しくポチポチと、1番から順に球を落としてみる。まだまだトリックショットは出来ないので、出来るようになったら小林くんに練習試合申し込んでみようか。

 

 目指せブレイクエース!

 

 

 

 

 後日、安室さんにそんな話をしたら。

 

「お前たち、僕をなんだと思ってるんだ。ブレイクエースなんて、そうそう狙って出来るものじゃないぞ?……小林は1回で軽くやってた?……お前、それ」

 

 と、若干引いてた顔をしていた。

 …………もしかして、小林くんの方がヤバいことしてたのか?

 

 

 ■

 

 

 阿笠さんの別荘の件が進展。

 

 事件の調査と屋根裏部屋の清掃が終わり、無事、屋敷と土地の権利書の名前が私になった。

 

 阿笠さんは要らないとは言っていたけど、ちゃんとお金は支払わないとな。無期限ローンみたいなもんだし。

 ならば金稼がねばなるまいて。

 

 そのうち、またクリスさんに何か……いやいや。頼るならそっちじゃなくて樫村さんや三船くんと共同で何か開発するとか……この間の、やる気に満ちたゲームの開発チームに案出してみるとか?

 

 …………案、とは言うものの。既に売れたことがわかっている、“昔”やってたゲームのことだ。たまにやりたくなる時がある。

 けれどこの世界、それらと似たようなものはあっても、同じものは無い。

 満天堂はちゃんと帽子のヒゲの男が主役のゲームを出しているし、他企業にも死に覚えの代名詞やファンタジーの金字塔や怪物を狩る人たちみたいなゲームもある。

 ちゃんとあるし、出来はいいし、操作感はほぼ同じだしあれはあれで面白いのだけど……どうしても何か違うパチモンな気がしてならなくて。

 

 果物を落としてウリ科の果物にして消すやつとか、ストーリーも楽曲も最高の個人開発ゲームとか……

 

 久々にやりてぇ〜!

 

 

 でもパクリは……パクリは嫌……っ!パクリ案を売って稼ぐなんて……!

 

 

 他に金稼ぐ良い方法ないかな……株でもやるか……?

 

 少し前にノアズ・アークが勉強したいからって初期投資と私のIDだけ渡して放置してたけど、そういやあれどうなったんだろうか。

 

 あの後税務署から連絡来てないし、稼いでるわけでも大損したわけでもなさそうだが……

 

 …………あれ?確定申告っていつ……?

 去年私提出したっけ?2年前にはちゃんと出した覚えがある……最後出したのいつだ……?

 

 後々とんでもない請求飛んできたりしないよね……?怖くなってきたな。

 

 まだ仮想通貨出てないよね?あれ?どうだっけ?

 

 

 

 ……まぁいっか。後で考えよう。

 今運転中で、ノアズ・アークに聞けないし。

 

 

 

 いつもならマイク越しに聞けるけれど、阿笠さんに、イヤホンを貸してほしいと言われて貸してるのである。

 最近ずっと耳につけてたもんで、何も無いとそれはそれで違和感があるね。

 

 ノアズ・アークが実は私の使う情報機器に入り込んでると知ってから、イヤホンマイクでやり取りするようにはしていた。目立ちにくいイヤーカフ型とはいえ何かつけてるのはわかってしまう。だから、耳に他にも普段からアクセサリーつけて、その中のひとつにイヤホンを紛れさせたら誤魔化せたりしないだろうかと考えた事はあった。

 耳に穴開けるの怖いし、なんか付けてもそのまま忘れて寝る自信があるから実現してない。視神経出てきたら嫌だし。

 

 そういえば、阿笠さんがイヤリング型通信機とか構想してたな。イヤホン、そのために借りたんだろうか。

 

 

 

 到着した件の別荘には既に先客がいた。黒キャップに金髪を隠した、黒パーカーの黒ずくめの男……バーボンこと安室さんである。

 バーボンは夜が似合うなぁ。

 

「注意して見てるとわかりやすいが、道中のカメラがほとんど無いな」

「やっぱり無さそうですか?」

 

 ここの屋敷に来るルート、ノアズ・アークが以前途中までしか追えないと言ってたので気になって見ていたのだけれど、高速を降りた所のオービス以降無さそうで。せいぜい道中の資材置き場の監視カメラが道路を僅かに映している程度。

 

 高速から出た所で道も別れているし、民家も車通りも少ない。足取りを辿るのは難しいだろう。

 

 案外、内緒の話をするのに向いている物件らしい。

 

 

「それで、晴れて事故物件になったここで宝探しさせるのか?」

「最初からそのつもりでしたからね。警察の検証も終わって危険な物もこれ以上はないと確認が出来てますから、今ならかなり安全じゃないですか?

 もともと阿笠さんの希望ですし、せっかく江戸川くんのお友達も増えたんです」

 

 そして屋敷の最初の持ち主の栗介さんと定子さん、特に、小学校の教師だったという定子さん。

 

 彼らが穏やかに暮らした家なら、ドンパチ撃つような馬鹿がはしゃぐより子供たちが遊ぶほうがよっぽど嬉しいだろうよ。

 

 

 阿笠さんの用意した“お宝”の再設置と、用意していた暗号がズレたりしていないかの確認。

 

 と、ついでに。

 

「かしこいかわいい江戸川くんに特別製の暗号でも用意してやろうかなと思いまして」

「ホー……?」

 

 安室さんが片眉を器用に上げて、続きを聞く姿勢になった。ちょっと興味あるらしい。

 

 とはいえ所詮私だからね。そういう発想は阿笠さんとどっこいどっこいな私だからね。期待はせんといてほしい。

 

 秘密主義でポエミーなバーボンに上手いこと補強してもらったら多少マシになるんじゃないかなって。

 

 

 で。

 

「“宝箱”に入れる予定のこちらのメモから、透くんが答えに辿り着いたら江戸川くんも辿り着けるってことなんで。代走で時間測定させてください」

「随分と彼を信用してるな。まぁいい、僕を呼んだ理由はそういうことか。見せてみろ」

 

 黒い太陽等の事前に彫られた暗号は、一部以外そのまま使う。トランプ自体を私が持ち込んだものとこっそり入れ替えて、色々追加して……最後にとある本に辿り着くように。

 

 それっぽい本がこの家に置いてあってよかった。海外小説の翻訳したもので、1枚の肖像画と、その肖像画に「お前が歳を取れば良いのに」と呟いた絵のモデルの話。

 描写がちょっとばかし……アレだが、ホームズだって読んじゃう新一くんなら大丈夫でしょ。

 

 

 

 ちなみに解かれることは想定済みながら、彼が解けたと宣言した際のタイムは約15分。はええよ。

 そもそも答えを知ってるからじゃないかと思ったら、本がどれかを特定するのにやや手間取ったと。手間取ってないだろこの速さ!……

 

 ……ありゃ?

 本がどれって指定してなかったっけ?

 

 

 






あんまり前書きあとがきいらん気がしてきました。

読んでいただきありがとうございました!
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