昴くんはなにもしない 作:あまも
お盆休みいっぱい貰ったのに気が付いたら残り日数少なくて宇宙背負ってます
更新出来るかと思ってましたがすいません、余裕ありませんでした……
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森園家自体にはやっぱり何にもなかった。
でも森園家の長男、森園菊人の経営する会社からは経費の水増し、リベートの受領……横領の形跡がぽこぽこ出てきた。家族の他の人は関与していないため、彼1人が彼の会社で起こしたものである。私物化か?
……色々と可能性が出てきて、伝えてはみたものの……コトは起こってしまい。
森園家の人は誰も死ななかった。
森園家の人は死ななかったけれど、重松さんは包丁で胸を刺され、出血多量。意識不明の重体で病院に緊急搬送となっている。
そっちか〜
服部くんと新一くんが姿の見えない重松さんを早々に探し始めて、密室状態の部屋で意識のない重松さんを見つけたらしい。
事の顛末まで聞いて、私はこの事件を2人に任せてよかったのかどうか、わからなくなってしまった。
私がいたら何か変わったのかと言われれば、他人の家で勝手に動く訳にもいかないのだから、そう満足の行く結果になったとは思えない。
重松さんの容態は、なんとか意識不明のままではあれど峠は越えただろうということで、犯人の菊人さんも殺人未遂で済みそうだ。
他の罪もあるけどね。隠すことは出来なくなっただろう。
あの4人だけで登場人物紹介が終わらなかったのは……失敗だった。
そりゃそうだ。あの時点では当主すら分からなかったのだし……
行動的にも、せめて当主の方にご挨拶くらいはしても良かったかもしれない。
では全員と出会う事が出来て人となりも確認したとしよう。
重松さんが菊人さんに襲われて、それを桜庭さんの犯行と見せかけ、片桐さんの想いを自分に向けさせよう……という画策まで見えていたかと言われれば、無理だ。
天才小説家じゃあるまいし。
ちゃんと見ようと思って見ないと分からない。可能性を思い浮かべてからでないと、そのサインがわからない。
注目すべき点の目星が悪いんだろうな、私の人を見る目。
さて……よもやまさか、桜庭さんと片桐さんがそういう仲とはなぁ。
結婚間近の花嫁さんと説明された上で、その相手のお家の執事さんと恋仲だなんて想定してない。
ドラマか何かかよ。
……漫画だったわ。
勘違いで、好きな人とは別の人を紹介してしまう、なんて……重松さんも私と同じく余計なことしちゃうタイプの人?
お互い強く生きてこうな。
■
安室さんからお電話。
かなり真剣な声で、家に行っていいか聞かれたので何時でもおけまる水産待機。
真面目な話されると怖いから、わざとコミカルに返したけど、安室さんは華麗にスルー。
「少し待たせるかもしれないが、家で待っててくれ」
と……特に怒ることもツッコミすらも無く。
はてさて、なんじゃらほい。
彼に家にいろと言われてしまったからには、大人しく待機するしかない。昼過ぎから阿笠さんの作ったゲームのデバック作業しつつ待っているけど、もうすぐ夕方なんだが。
しかもさっき、新一くんから電話がかかって来て、今から車で来れるかを聞かれたのだけれど……この通り待機命令が出てるもんで。すぐには無理で、人を待ってる最中だと答えたら、では他を当たる、とすぐに切られてしまった。
他って、阿笠さん?まーた使いっ走りさせて。
タイミングが悪いのだよ、タイミングが。
なんだか切羽詰まった様子だったし、手助けになるなら行ってあげたかったが、安室さんもなんだか真面目な話があるみたいだし……
うーん……景光くん……じゃないや、小林くんに連絡入れて、新一くんとこに行ってもらおうか。
…………と、連絡したのに留守電になってしまった。なる早で折り返しを求める旨をメッセージで送っておいて……なんか、みんなしてタイミング悪いな。
これ、もしかして何か起きてるか、これから起ころうとしてる??
怪しいな。安室さんまだ?
阿笠さんの開発したゲームをカンスト目指して周回しながら待ってたけど、安室さんからの連絡も本人の来訪もなんもない。陽も落ちてしまった。
小林くんからは、『今ちょっと手が離せない案件中で鳥取に…(´・ω・`;)すまん』」とメッセージが来ている。
なんで鳥取? とりあえずこっちの件は関係なさそうだし、彼は彼で忙しそうだ。
更にもう一度、新一くんから電話がかかって来て、小林さんに連絡が取れないことと、ピスコという名前に聞き覚えや見覚えはあるかを訊ねられた。
生憎と小林くんは電話に出れない程度には手が離せないらしいし、そのお酒は私は知らない。ワンチャン、バーボンに聞けば酒も人物も情報が出てきたかもしれないが、彼も取り込み中。
なんならついつい、訊かれた直後に「え、私にお酒聞きます?知りませんよ」とか口滑らせてしまったので、私が完全に知らない事は新一くんもわかってる。もし聞けて、情報を手に入れても経路の説明が出来ない。
ああ、このままだと夕飯考えなきゃいけない。この際茶漬けでいいか。
……うん。
これ私、7割くらいの確率で、何もさせない為に部屋に待機させられてるな。
2割は安室さんが想定していた予定より手こずってる。1割は、景光くんと零くんで私に内緒で何か進めてる。
私が動くと困る理由がある、と仮定しようか。
「……ノア、居場所出ました?」
『ごめんねお兄ちゃん。景光くんと零くんがみつからなくて……江戸川くんは、阿笠博士の車で杯戸シティホテル近くに来てるみたいだよ。灰原さんも一緒』
「なるほど。では……引き続き、れーくんを探してください。景光くんは一旦後回しで、新一くんの追跡を。優先度は変更、現在より過去数時間の東都内の彼らの動向を知りたいです」
『わかったよ』
ノアズ・アークにそれぞれの場所を監視カメラで探してもらっているけど、まーた杯戸シティホテルで何か起きてるの?
お客様駐車場に阿笠さんのビートルが入ったらしい。
さて。
最近の零くん……いや、安室さんの様子と、電話越しの新一くんの感じからすると……
これは零くんに考えがあって、組織のメンバー、ピスコが杯戸シティホテルで何かやるから、私を近寄らせないために部屋に待機させてた……かな。
さらに組織の目に景光くんを入れないために彼に忙しくなる案件を頼み、東都から彼を離した……って所か?
だとすると、組織としての仕事が入ってないならそろそろ安室さんが来るはず。……仕事が入ってるなら、連絡でもう少し待ってろとかの指示が来るかな。
詳細の説明がないなら大当たり、説明ありなら組織とは別件で本当にただの予定外。
大穴で、景光くんが鳥取なんて適当行って実は勝手にこの組織の仕事の邪魔に来たから、慌てて零くんが追っかけして引っぱたいてる、とかかな。大穴過ぎるかな。
さて……どれだろう。
ノアズ・アークには人探しを頼んでいるわけだし。
……どれどれ。たまには真面目にね。
杯戸シティホテル……調べてみようか。
■
表に、独特なエンジン音。
玄関で待機して、車のドアを閉めた音、歩いてくる足音でタイミングを測り……チャイムが鳴る前に扉を開けてお出迎え。
丸くしたその目はバーボンだし服装も黒のベスト。
瞬きひとつで安室さんになったけど、不意打ちにはまだ非対応らしい。
「っと、待たせてたか。悪い――」
「杯戸シティホテルで何してるんですか?バーボン」
「――――……」
安室さんの綺麗な顔が僅かに剣呑な色を滲ませた。これが灰原さんの言ってた“匂い”ってやつ?それとも単純に零くんが隠しきれてない動揺?
なんでも良いけど。
「何を……」
「では今から直接向かいます」
「やめろ」
とぼけるようなら向かうだけだ。つっかけたサンダルのまま、車の鍵と免許証だけもって出ようとするのを首に腕を絡まれて部屋へと押し込まれ、そのまま部屋の中に押し入られた。
きゃあ!押し込み強盗!
……なんて。ちゃんと真面目な態度をとらないと、この零くんは教えてくれなさそうだ。
「説明は?」
「……どこまで知ってる?」
どこまで、ねぇ。大っぴらにやっている今日の夕方からのイベントは、だいぶ大々的だったから気合い入れて調べる事でもなかったか。
「酒巻監督を偲ぶ会、でしたっけ。クリスさん、来日してたんですね。
あとは…著名人が何人か……作家さん、大学教授、大手メーカー社長……最近の週刊誌を賑わせてる議員さん……」
なるほど、クリスさんとメーカー社長と議員さんが肝ね。ほんの僅かに私の首に引っ掛けた腕に入る力具合に変化があった。
表情を変えないのは流石だけどね。逆に
クリスさんは組織の人だからここでは重要でなくって……なら、残りのどちらかが殺して、どちらかは殺される、かな?
クリスさんがこんな大っぴらな所でひとコロするような人には見えないし……議員さんは逮捕も間近と噂されてる。
となると。
「枡山憲三ですか」
「――――」
ため息でのお返事。それどういう意味?
「お前は本当に……どうして普段は抜け作なのにこういう要らんところで冴え渡るんだ」
「抜け作?!」
呆れられてはいるけれど、肯定と捉えて良いのだろう。
ならターゲットは議員さんで、クリスさんは……お呼ばれしただけか、死亡確認かな?
徐々に締め上げられていた首にかけられていた腕が緩んで、解放された。助かったわい。
零くん、私の首をフックか取っ手かなにかと思ってない?
「大体察してるのか。確定させに直接行かれるよりはマシだな」
「でも大体合ってました?」
「ああ、大体合ってる」
認めるのが早い。『だから行くなよ』、と。そういう事だろう。
そりゃ私だって、興味はあるけどわざわざそんなドンパチ見に行くほどイベント大好きではないからね。行く気は元から無い……と言いたいのだけども。
ただねぇ。零くん。
「透くん」
「? 何だ?」
わざわざ私が呼び方を変えたことに眉を上げて首を傾げる。
「江戸川くん、杯戸シティホテルに行ってます」
「なんだと?」
事件ホイホイ……この場合は自ら赴いてるから、新一くん風に言うなら血の匂いに誘われたサメちゃんだね!!
……なんで私の事睨むのさ。関係ないでしょうが!
■
行くのは断固として拒否された。
それはもう真剣に、真摯に、懇願の色まで含めて頼まれてしまったので、ここまでされてしまっては私は行くことは出来ない。
だがこちらとしても、江戸川くんや灰原さん、阿笠さんが心配で、彼らの安全を確認したいという思いは譲れない。
そんなわけで、本来の計画には無いものの、『気になることがある』、としてバーボンが件の計画の進む、監督を偲ぶ会に行ってくることになった。
「もしもし、ベルモットですか?」
最初の第一声で日本語で掛けた電話は、二言目には英語に変わっていた。クリスさんは今回、日本語よく分からないアメリカからのVIPとしての参加であるため、英語しか使わないつもりだ。
興味無い連中と真面目に話すつもりが無い、ともいう。
「突然の連絡すいません。実は、そちらの会に参加する大学教授に少し気になることがありまして……ええ、接触出来ればと……はい。そうですね……ついて行っても?」
バーボンにヒロキくんと私の面倒見るよう頼んだのはクリスさんだから、そこ関係と思ってもらえれば御の字。
大問題なのは、阿笠さんちに電話しても誰も出なかったので、最悪、灰原さんが新一くんについて行ってる可能性がある。
(工藤新一くんこと江戸川コナンくんを見付けたらついつい目で追ってしまいそうな)クリスさんの視界に、灰原さんが入り込むのはマズイのでは?
そんなことを進言した所、考えがあるのか無いのかと、頭抱えてため息つかれる等して。
こればっかりは新一くんに私も言いたいところなのでね。
考え……そうだ、私がクリスさんの気を引いてる隙に新一くんと灰原さんを逃がして貰えば良いのでは?
「私もクリスさんにご挨拶したいです」
「お前俺が今頼んだこと忘れたのか」
「ハッ!」
そういや絶対行くな来るなの代わりに危険な所に安室さんを送り込む約束だった……
「でも灰原さんをクリスさんや他の組織の人に見られたらあまり良くないですよね?」
「そうだな…………扱いとしてはヒロと同じだが、ヒロより危険な状態なのは間違いない」
スパイとして2年前に処理されたはずの景光くんと、未だに研究途中の重要な薬品製造に必要な灰原さん。
同じ脱走兵……もとい組織脱退した人間でも、どっちが重要かなんて言わずもがな、だ。
今、安室さんは“組織の人”、という言葉に反応があったから、クリスさんやバーボン以外の組織の人が誰か、会場に居るんだろう。
となると実行役っぽい枡山さんが組織の人で、ターゲットらしい議員さんをどうにかする作戦……なのは間違いない……のか?
…………それだけでこの零くん……じゃないや。安室さんが景光くんを県外に飛ばして、私をここに待機させてるほど近寄らせない理由が……クリスさんは少なくとも私にはそこまで危険な人ではないのだし……
よっぽどその枡山さんがヤバい人なのか、それとも、他にさらに組織の人が?
…………………………新一くんがこのイベントに組織が関わっている、と気づいた理由は?
クリスさんはそんな隙を見せないだろうし……枡山さんは大企業社長。
……組織の話をしてる所に居合わせた、テキーラこと教授パターンか……既に見覚えのある組織の人を見かけて、追跡したか盗聴した、とか?
いや、灰原さんも一緒にいたのだから、一目見て組織で見かけた人だと気付いた?でもそれなら既に相手からも灰原さんが見られてしまってるよな。
うーん?
「ハル、今何考えてた?」
「江戸川くんたちは、一体どんな経路で今回の件に組織が絡んでる事に気付いたのかと。
盗み聞きか、灰原さんが気づいたか、たまたま居合わせたかのどれかですよね」
指を3本立てながら私があげた可能性に、安室さんが頷く。
「もしくは、そのどれかを合わせて、かもしれないな。たまたま居合わせた車が連中の愛車で、それを彼女が知っていた、とか」
「ああ、確かに……私たちみたいに、白いRX-7見たらとりあえずナンバー見て透くんの車かどうか確認してしまう、みたいなやつですね」
全く走ってないとは言わないが、そう多くもないのが安室さんの愛車。色違いの赤だの黒だの、東都を走っているのは走っている。白は基本見かけたら安室さんのやつであることが多い気もする。
私がひとりで考えていた事を聞いて、安室さんは何か得心がいったらしい。
「……なるほどな、大体わかってきた」
何を??
「東都であのアマガエルはそうそういないからな……」
とか呟いてるけど、雨蛙?
梅雨の時期は半年前だぞ。……うわっ、税金の話を役所に問い合わせして以来、季節の話は考えないようにしてたのに!
「江戸川少年たちが既に会場に行っている以上、ベルモットやピスコの目に留まる可能性は極めて高い。俺が邪魔出来るのはせいぜいベルモットくらいだが、なんとかしてみるさ」
頼もしいお言葉を頂いた。安室さんなら子供たちをどうにか上手いこと逃がしてくれるだろう。
持つべきは頼りになる友人だね。
よっしゃ、ここから私が出来ることはサポートくらいだ。状況を逐一安室さんに報告して……
「ただし。約束だ。俺が行く代わりにハル、これは守ってもらう」
「おや。はいはい、なんでしょう?」
「今回の事件についてこの後一切の調査を禁ずる」
ええっ! 戦力外通告?!
サンダルで600mの山登りは怪我のもとだから皆はやめようね!
読んでいただきありがとうございました!