昴くんはなにもしない   作:あまも

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あまりシステムに詳しくなく……見づらい編集で申し訳ありません。

閲覧ありがとうございます



2-1:行方不明の男と少女

 

 

 

 ♤

 

 

 博士の新たな発明品、『犯人追跡メガネ』。

説明を思い出しながらスイッチを押すと、ピコピコと光点が点滅している。

 

『昴くんにこの発信機と同じものを付けて、出かけてもらっておる。その位置だと……四丁目の方か。あっちに何かあったかの?

 おぉ、そうじゃった。ついでに昴くんにこれを渡してやってくれ』

 

 そう言って、渡されたメガネケース。

中には、いつもスバルさんがかけてるのとまた違った形の、フレームのある青っぽいレンズのメガネが入っていた。

 

 光点の方へ向かいながら、スバルさん宛てのメガネをかけてみる。

追跡メガネ同様、何か仕込まれているのか、見た目より重さを感じる。

 レンズは青っぽいが、かけても視界が青くなることはなく、度も入っていない。

画面を見る作業の多い彼が、目の保護、疲労軽減の為にかけているブルーライトカット加工のされたメガネは、青い光を反射するから、外から見ると青く見えるんだっけか。

 

 スバルさんのメガネを外し、改めて追跡メガネをかける。やや近付いた光点。ちょっとアンテナが邪魔だな。

 

 スバルさんのメガネの弦を弄ると、スイッチがあった。押してみると、同じように左のレンズにレーダー画面が映る。こちらには光点は映らない。対応する発信機がまだ無いんだろう。機能は同じで、レンズの形が違うだけか?

 

 スイッチを切ってケースに戻し、オレはスバルさんの居る四丁目の方へと進む。

 

 

 この方向……距離……5年前の殺人未遂事件のあった屋敷の方ではないかとアタリをつける。

 

 被害者は屋敷の主人で、犯人はその家の息子。

大学受験の失敗から、主人に酷く叱責され、弾みで…だったかな。

 幸い応急処置が早くなんとか一命を取り留め、犯人は自首。後に逮捕され、母親…主人の妻は、息子が刑期を終えて出てくるのを待っている、と。

 

 諸々あって、屋敷は売りに出されたはず。

 

 

 なんでこんなに覚えてるのかというと、その大学受験失敗した息子はスバルさんの後輩だったので、当時彼が親身になって受験勉強を見てやっていた時期があったからだ。

 

 本人曰く、「勉強というか、息抜きに話聞いてるだけなんですけどね」だったか。

 

 確かに、結局受験失敗してるから勉強してたわけじゃないんだろう。

 

 ♤

 

 屋敷の前に着くと、思った通りそこは光点の位置。

つまり、スバルさんが立っていた。首から手先、つま先まで服を着込んで、顎に手を当てて何か考えている様子で屋敷の門を睨んでいる。

 

「スバルさん」

「おや、し…コナンくん。ちゃんと発信機の場所、わかりましたか?」

「おう。ただ、アンテナが邪魔なのと、表示中向こうが見えないのと、外からも見えるってのはちょっと嫌かもしれねぇな」

「なるほど。改善点ですね。検討しましょう」

「あとこれ、博士から」

 

 メガネケースを渡すと、やや怪訝な顔で受け取り、開くと今度は驚いた顔。

 

「ホー…? 私の分も…?」

「頼んだんじゃ無かったの?」

「ええ。横で物欲しそうな顔はしましたけど」

「それじゃん」

 

 ははは、と、どこか力無く笑い、かけていたメガネと博士から預かったメガネを交換する。ノンフレームのスクエアから、フレーム付きのものになっただけでちょっとだけ、印象が柔らかくなった。でも似合ってる。

 

「うん。重いですね。これも改善点かな」

 

 いきなりダメ出しが出てきた。嬉しそうにしてたのに。

 

「そう?そんなに違和感ないけどな」

「発明家ってのは難しい事言われると燃えるもんなんですよ。コレも、他のアイテムも、どしどし改善要望伝えてあげてください。彼も得意分野で君の手助けが出来て、毎日ちょっと楽しそうなんです。

 ……おっと、ちゃんと褒めるのも忘れずに、ね」

 

 手袋のホック部分から発信機のシールを剥がして、オレの服のボタンに貼り付けながら。スバルさんはパチリと、珍しく、……本当に珍しく、片目を開けてにやりと笑う。青っぽいレンズの奥に、滅多に見えない青い目。茶目っ気たっぷりな表情に、父さんを思い出す。似てるわけじゃないんだけどな。

 いつまでも他人の家の前で立ってるのもなんだからと、家に帰るついでにポアロに誘われたので付いていく。

 

 

「と、そういえば……なんであの屋敷に?」

「ああ。……アッキー…じゃないや。昭夫くんがね。すごい頑張ってて、模範囚として認めてもらえたんですって。それで今度仮釈放で出てくるんです。屋敷はもう他の人の物ですが、お母様がお迎えに来て下さるそうで」

「えーっ! 良かったじゃん!」

「ええ。面会に行った時、とても良い顔だったので…落ち着いたみたいで本当に良かった。……ですが、その。…………あの父親が、また何かやらかしそうで」

「あー…酷かったんだっけ」

 

 あの事件は、一命を取り留めた主人と、息子とその側に付いた母親とで、家族でそこまでやるかと言える様な様相の裁判を繰り広げていた。息子はかなり反省しており、自ら警察に通報、自首した事と、事情が事情だっただけに周囲も同情的だったが……被害者が、酷かった。

 傍聴に行ったスバルさん、事情を聞いて、弁護を引き受けた蘭のお母さんの妃弁護士両名が、口を揃えて「アレは殴られても仕方ないかもしれない」と顔を顰めていたのを覚えている。なんなら妃弁護士は「というか私なら殴ってたわね」と深く頷いていた。

 

 怪我が酷かったのは確か。しかし、それを理由に事ある毎に体調が優れない、あの怪我のせいで頭がクラクラする、会話や物覚えが、仕事に支障がと、これでもかと裁判を延ばしに延ばし、息子さんの罪をそこまでするかと言いたくなるほどあることない事でっちあげ、金を積まれたあちらの弁護士と法廷大バトルを繰り広げていたらしい。『息子さんが心理的なストレスで、おかしくなっても仕方ない』ことが認められ、情状酌量も付いたが、しかし本人がちゃんと罪を償う事を強く要望。結果、4年の刑期となった。

 妃弁護士曰く、「もっと短くても良かったのだけど、多分あの子、心が落ち着く為にも…社会から少し離れた方が良いわ。あのバカ親父に、ずっとあんな言われ方してたみたいだし。慰謝料だけは許さないけどね」とのこと。

 

 あの主人と息子の板挟みとなった母親は、息子を選び、主人と離婚。それで裁判の費用も嵩んだが、妃弁護士が手を貸して離婚調停は、母親の祖父の物だった屋敷を売り、その資金にした、と。

 

「丁度良かったんですよ。母方の祖母が群馬で果樹園やってるらしくってね。家業手伝いに、若い子が欲しいと。うん、アッキーはそういう真面目にこつこつ頑張る所の方が良いんですよ。緊張しいで、試験とか面接とか、どうしても難しい様子でしたし」

「落ちた理由って、勉強不足じゃないの?」

「まさか。あの子頭は良かったんですよ。私から見ても、勉強はひとまず置いといて良いなと思えるくらい。…あのプレッシャーに弱い所と、焦ったら真っ白になっちゃう所さえなんとかしてあげられたら良かったんですが……今思えば、あのハゲ親父さんから離すのが最適でした」

 

 ずっと、どこかやるせない表情でぽそぽそと呟くように話してくれる内容は、昭夫くんへの後悔で。話を聞いてたって、そういうことだったのか。

 

「ですが……あのファッキンチョビハゲ…失礼。クソ親父さんがその果樹園に変なちょっかいかけないか、心配で心配で。

 お母様は、元旦那とは裁判以降完全に関係を絶ってしまってその後がわからないらしいので、とりあえず何か知らないかなと、屋敷の購入された方に話聞いたんですが……まぁ、そりゃ知りませんよね」

 

 うーん、と唸り、首を捻りながら唇に指を当ててまた、考えるポーズ。歩いてる時にそれやめな?

 人とぶつかりそうになっている彼を、袖を引いて逸らす。

 

「あ、すいません。

 …………うん。何かあったら毛利探偵事務所に相談するよう、二人には伝えますから。もし彼らが来たら、力になってあげて下さいね、江戸川コナンくん」

 

 あ、保留した。

 ポアロの看板が見えてきて、今自分がやってた事って探偵の仕事だった事を2階を見上げて気付いて、全部保留したなコイツ。途端にいい笑顔しやがって。

 

 まぁ、でも……頼られるのは嫌いじゃない。

 

 

 

 ■

 

 

 私だって暇では無いんですよ、暇では。

 

 家庭教師を頼まれて、得意でもないメンタルケアやる羽目になり、結果的に血まみれ大惨事を目撃することになってしまった以上、行く末は気になるし気にしてあげたいじゃない。

 

 そんなわけで保留したけど心配は心配なので、とりあえずせめてもの足取りくらいは知りたかった。

 どっこい消息があまりにも掴めなかったもので、ちょっと真面目に気合い入れて探してみたら、どうやらあの屋敷を買い取った人から、奪い取るようにして買い直そうとした奴がいた。屋敷の権利は自分にあると言い張って、売られたのは間違いだと役所でひと悶着した男がいたらしい。

 そのハゲ親父である。

 

 ──って記録が最後。

 

 しかし今の管理者の名前はクソ親父じゃないのも確か。

 今の管理のおじさんに話を聞いた時の、彼の態度を思い返すと……なるほど、何か隠してそうな気配だったかもしれない。いや気のせいかも。自慢じゃないけど私は人を見る目が無い。

 じゃあ人を見る目がある人に任せよう。

 

 

 それで、昭夫くんが出てくる前に、お母様の不安を煽って毛利探偵事務所の扉を叩くよう唆したのである。

 あれであんなんだが、小五郎さんは謎とか関係ない探偵業を真面目にやってる時はしっかりしてるし、残念が出てしまっても最悪、名探偵が代わりに出てくるからね。

 

 

 よし、解決したみたいなもんでしょ。勝ったなガハハ

 

 

 そう思って、その日は自宅に戻って論文作業に勤しんだんだが。

 

 

 

 翌日。お母様から毛利探偵が留守で、相談出来なかったと言われた。

 

 

 おっちゃ〜ん?競馬にでも行ったか〜?

 

 事務所に電話して蘭ちゃんに聞いたら、昨日はほんとに競馬に行ってた。ただし遊びではなく仕事で、人探し。無事競馬場で下手人は見つかり、娘さんと会わせて依頼解決したそうなのだが。

 

 話を聞くと、どうも様子がおかしいらしい。その娘さんと連絡がつかない。

 

『それで、これからそのアパートに行こうとしてて……』

「そうなんですか。実は毛利探偵に依頼したいという方がいらっしゃるんです。今お忙しい様子ですし、後日にした方が良さそうですね」

『ええ、すいません……でも、後日で大丈夫なんですか?』

「はい。こちらも人探しですが、急ぎでは無いですから。では、依頼人の方に調整していただきますね』

『本当にすいません!ありがとうございます!』

 

 電話を切る。うーん。アテが外れてしまった。毛利探偵事務所ならいつでも暇だろとか思ってたけど、コナンくんが現れてからなら、どんどん忙しくなってきちゃうか。確かに。

 

 どうしよう、どうしようかな。唆しちゃったからには、昭夫くんのお母様は不安だろう。

 

 こうなったら、今毛利探偵を占領している様子のおかしな話、手助けしてさっさと解決した方が良いのだろうか。

 

 うん、どうせ昭夫くんのクソ親父については私が調べられることはひと通り調べてしまったし、あちらに直ちに進展はない。お母様には『毛利探偵が優秀なばっかりに、依頼殺到で忙しいところだから、私がなんとか捩じ込んでみますのでお待ちください』とでも言っておこう。嘘は言ってない。既に次の依頼予約捩じ込み済みだけどね。

 

 さて、新一くん達はいったい、なんの事件に巻き込まれているのやら。

 

 

 

 ■

 

 

 アパートに行ったら「警察署に行った」と言われ。

 警察署に行ったら「やる気に満ちて帰った」と言われ。

 毛利探偵事務所に行ったら、コナンくんはあははのはとか言って走り去っていって帰ってきてないとか言われ。

 仕方ないから探し回って、夕方頃にはなんか面倒くさくなって来たので自宅に戻り。

 最後ようやく新一くんに出会えたのは、阿笠さんの家だった。つけてて良かった盗聴機…ゲフンゲフン。

 

 さて。各所で後追いしながら話は聞いて回った。

 件の探し人、アパートの大家のおばちゃん曰く家出した父親は、見付けて依頼人の娘と引き合わせたその日の夜には首を吊っていて、しかもそれは殺されたらしく、挙句に娘は父親を殺した犯人に連れ去られ、恐らくは…と考えられているそうで。

 そこから先の話を、新一くんは神妙な顔で語った。

 

 新一くんがうっかり運良く、追跡メガネの発信機を娘につけていたので後を追った所、新宿のパチンコ店に辿り着き、大男が彼女に着けた発信機をつけていたらしい。

 その男も家出して首吊って殺されてた父親のことを探して別の探偵に頼んでたとかで、この二人の言い分が食い違っている。

 やはりこの大男が怪しい。

 

「ってコトで捜しに行きたいんだけどよ、博士が…」

「今回の事件は人捜しから殺人事件になっておるじゃろ。前のトロピカルランドの時だって、不用意に首突っ込んで、今こうなっとる。じゃから、焦って動いても駄目。冷静、沈着、かつ慎重に…じゃと、言っとるんじゃがのぉ」

「──って。わかってるけどさ。でも小五郎のおっちゃんは頼りないからさ。……なぁ、スバルさん。アンタなら……」

 

 私に説明してくれる間に追跡メガネの充電を終えて、今すぐ捜索に向かいたい所を我慢して、私に協力を頼んでる所は評価ポイント。ただし、目的地が危ないのでグリフィンドールにマイナスです。

 

「人殺しですからねぇ。危ないのは危ないですよ。それに小五郎さんや蘭ちゃんのほうが、実際動くとなったら私より優秀です。まぁ、ホラ、私ってば……腕っぷしは……ね?」

 

 あと体動かすのは絶対蘭ちゃんの方が強いからね。ラン・ネー=チャンつおいから。インドアひょろもやしは基本屋内こそが主戦場なので。

 

「でも車は出してあげますよ。タクシーよりは融通利きますし」

 

 急いでそうな彼に、車くらいなら貸す。軽い足替わりのつもりだったのだ。どうせ謎解きは名探偵がやってくれるし、荒事もそうそう無いだろうと。だって所詮人探しだし。

 

 毛利探偵事務所前に乗り付けたら、大柄な男性二人と蘭ちゃんまで乗ってくるとは思わなかった。

 

 乗用車で良かった〜!!!

 

 

 





('ㅂ' )(特に何も考えずに1-2に3巻の内容を含んだ為番号サブタイトルは巻毎に分けてますという言い訳を使えなくなった顔)

……………………こんな感じで時系列は反復横跳びします。すいません。

読んでいただきありがとうございます!
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