昴くんはなにもしない   作:あまも

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なんもしなくても話は動くのでやっぱり何もしなくてもいいのでは?


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21-3:早朝飯と役立たず

 

 

 

 でもノアズ・アークはダメって言われてないし……

 

 でもでも前のやらかしはこっぴどくシメられたし……

 

 

 でもでもでも、今回はあの零くんがあんなに頼んでくるほどだから、よっぽど今回来る組織の人とやらは危険な人物なんだろう。

 

 

 ここは堪えて待つ事も大事……

 

 と待ちぼうけてたら夜が明けた。

 

 あむぴ、遅いッピ!

 

 

 

 さて、ゲッソリした零くん……うん、零くんが帰ってきた。

 格好はバーボンらしいパーティー向けの礼服なのに、態度は安室さんでもバーボンでもない。

 零くんがわかり易くやってくれてるというのもあるが、鈍い私でも彼のトリプルフェイスの切り替わりがなんとなくわかってきた。

 

 でも景光くんの小林くんとの切り替えは一生わかる気がしない。むしろ変えてないだろあれ。

 

 

 

 さてさて、ストレスフルな様子の零くんである。

 出かける前にしっかりと『俺はあの女が嫌いだ』と明言して出ていったので、大層お疲れで帰ってくるのは予想してたけど、ここまでとはね。

 

 とりあえず白米だけは炊きたてにして、冷蔵庫に食材適当に突っ込んでおいたけども。

 台所は散らかってないのでご自由に。

 

 着替えに手洗いうがいに顔洗いまで念入りにした零くんは、灰色のジャージ姿に似合わない剣呑な顔のまま湯気をほこほこと燻らせた炊飯器を開けて中の量を見て、冷蔵庫を物色し、調理器具を確認して…………料理し始めた。

 

 

 これは相当ストレスたまってたらしい。無言で黙々とテキパキ料理を進めておられる。

 オーブンが無いことやIHで火力が出ない事に舌打ちしながらも、一工夫しているのか火にかけたまま水道や冷蔵庫や電子レンジと行ったり来たり。

 たいへん手際が良い。

 私はああいう段取りが下手でねぇ。見てて楽しい。

 

 

 ものの30分ほどで豪勢なおかずが並んだが、ちゃんと冷凍や冷蔵で保存しておけそうなものを作ってくれている。

 フライパンでできる薄いチキンカツ、切り干し大根の煮物、豚バラ大根、にんじんしりしり……またいっぱい作ったこと。

 まだ作るんです?誰が食べるんです?

 

 

 ……いいよ、好きにしたまえ。美味しい作り置きおかずは大歓迎だ。

 3時間の凄腕レンタル家政夫雇った気分。あんた公務員だろうに。

 

 

 

 ■

 

 

 作り過ぎたと言いながら、やけ食いに近い勢いで食べていく零くんの食べっぷりを眺めていると、若いって良いなぁなんて感想が出かけるがこの男、こんなベビーフェイスだが私より年上なんだよな。

 

 やっぱ零くんも景光くんも、組織に変な薬物投与されてない?

 10年前から顔変わんないじゃん。

 

「お前もな」

「私はほら、若くてピチピチの現役の学生なので」

「ほざけ」

 

 凄い端的に罵倒された。まだ苛立ちはあるらしい。

 零くんの作ってくれた、アボカドのコブサラダとじゃがいもコロッケを分けてもらっての早すぎる朝飯だな。間もなく朝日が昇る。

 

「そんなにクリスさん嫌いだったんですか?」

「大っっっっっ嫌いだね。あの腐った林檎はダメだ。お前も気を許すんじゃないぞ。あの女に手を出すような阿呆ではないのはわかってるが……」

「でも良い人ですよ?クリスさん」

「それはいい人を粧ってるからそう見えるだけだ。あの皮を1枚剥いだら極悪人が醜く笑ってるだろうさ」

 

 よっぽどなんだな。これだけ嫌ってる相手にもニコニコ笑顔の安室・バーボン・透くんスマイルで対応してポエミッシュな事言い合いしながら悪い事しなきゃいけないの普通に大変そう。

 正義の味方もお疲れ様やで。

 

 で、そこまで頑張ってきてもらった結果を聞いても良いのかね?

 

「……ああ。ちゃんと約束通り調べてないんだろうな?」

「もちろん。ちゃんと仮眠して待ってましたよ」

「…………うん……」

 

 流石にパーティー中は戻ってこないだろうと思って出かけて直ぐに2時間ほど仮眠したからまだ私は元気です。

 調べに行ってくれてる間何もするなって言われてたし……言ったからにはとやかく言えまい。

 テレビも見てないしノアズ・アークにも訊ねてないからな!耐えた!

 

 ところで帰ってきたしノアズ・アーク動かして良いかな!ダメかな!

 

 なお零くんは良く見る諦観顔。

 言われた通りにしてやったってのに!

 

「――悪い話題から行くぞ。ベルモットに灰原哀を見られた」

「いきなり最悪じゃないですか」

 

 開幕から飛ばして来たな。まだ表情は固くないから、零くんには策があるんだろう。

 ささ、続きをどうぞ。

 

「確信を持っている様子は無かったが、米花町に活動拠点を築いたバーボンに、米花町での調査……特に帝丹小学校の生徒の名簿を要求してきた。

 本人も……何か調べ事があることを電話で他の幹部に伝えていたことから、どうやら東都にシェリーが居ると見ているらしい。しかも、それが子供の姿になっている可能性までもあの女は考えている。

 恐らくこのまま、米花町で潜伏先を見繕うつもりだろう。

 これら諸問題には俺が介入出来ないか試してみるが、対策は必要になる。お前もあの女から頼まれる事があるかも知れない。連絡を密にするように」

「OK、了解。クリスさん以外に気付かれませんでしたか?」

 

 ここで1拍。

 

「……気づかれてはいる。あの会場で、というよりは、江戸川くんたちが情報を抜こうとして近付きすぎてバレたんだろうな。バーボンに『シェリーが生きている可能性があるため、状況をもう一度洗い直すように』と依頼が来ている。

 元々、シェリーの捜索は下っ端連中に調査させて俺には回されていなかったんだが……あの下っ端共、処罰前に拾えないだろうか……」

 

 捜索上手くいってないってだけで怒られてしまうの?下っ端可哀想……てか下っ端……

 

「あれ、シェリー捜索を任されてたんじゃないんですか?」

「ああ。シェリーの管理は別の幹部がやってたから、バーボンには脱走した話だけ聞かされてな。

 連中の失態の詳細を調べるついでに恩も売れ、上手くいけば組織の進めている計画の情報も手に入る。調べない理由はないだろ」

「ああそういう……」

 

 まーたこの男、それっぽい態度ではいいいえ断定しないで勘違いさせて、まるで自分がシェリー捜索任されたので米花町来ましたよみたいな顔してたのか。そういや、私の管理目的としか言ってないや。

 

 探り屋バーボンが探り始めたなら、情報は見つけないと役たたずになっちゃうよね。

 

「…………じゃあ、灰原さんのこと報告してしまうんです?」

「………………いや。シェリーが小さくなって潜伏している……なんて事は普通思い付かない。薬の詳細がわかるまでは隠せるだろう。だからコイツらは急ぎではない。ベルモットの対処が最優先だな」

 

 なるほど。良くも悪くも小さくなったお陰でバレそうでもあり隠し通せそうでもあると。

 

「……そういえば、なんでジンは彼女の生存にあれほどの確信を持っていたんだ?小さい頃から知っていたとでも言うのか?」

「ジン……って人がシェリー担当の人だったんです?」

 

 呟きに混じった酒の名前。私でも知ってる、江戸川コナン誕生の第一人者。悪役筆頭たまにネタキャラ扱いされるジンニキのことだね。

 私は知らない人だから、聞いてみたけど案外あっさりと答えてくれた。

 

「ああ。名前だけは知ってるな。江戸川くんに毒薬を飲ませたとされる男だ。所業を聞いて分かる通り、冷酷な奴で、長い銀髪の大柄な見るからに近寄り難い怪しい外見の男だ。見かけても近寄るなよ。声もかけるなよ。江戸川くんもお前も、盗聴盗撮追跡しようなんて馬鹿なこと考えるんじゃないぞ。アレは別格の悪党だ。甘えなんかない。

 いいか、絶対に近寄るな。わかったな」

「はい……」

 

 この厳命するために教えた感あるなこれ。放っておくと今回の江戸川コナン事件ホイホイ少年やらかしの再演することになるだろうと予測したんだろうけど……私は自主的にそんな危ないことしませんしおすし。

 

「というかそもそも組織の連中だと感じたら逃げろ。逃げて俺を呼べ」

「はい……」

 

 なるべくそうしてるじゃん……いや、私組織の人とされてる人物、クリスさんと教授とバーボンとスコッチとシェリーちゃんとしか会ってないな。

 …………これ意外と会ってるな。

 でもみんな良い人だよ?

 

「お前に利用価値があるからな。さもなきゃあの女もテキーラも、そんな扱いはしないだろうさ」

「……バーボンも?」「怒るぞ?」

「はい……」

 

 そうだよねぇ。クリスさん、私に利用価値……大方、工藤家の最新速報とヒロキくんのお友達特権があるから構ってくれてるだけだろう。教授だって、ヒロキくん連れてきたから好き勝手させてくれてたんだろうし。

 灰原さんも、まぁ、私が阿笠さんの盾になる程度には動けるのを知って、多少コンピューターには強いのも知ってようやく態度変わってきたし……

 

 零くんと景光くんには、そういう価値だけでなく情もあってまだ構ってくれてるもんだと信じているけど、うむむ……ちゃんと役立ててるか心配にはなる。

 

 特に今日とか本気でなんにもしてない。

 

 景光くんは鳥取で何やら頑張ってるらしいし。

 零くんはこんなにやつれてドカ食い料理部するほど疲れるような接待業務してきてくれたようだし。

 

 

 エェーン、自分に価値が欲しいよ〜

 

 

 

「ちなみに呑口議員と枡山憲三ってどうなったんです?」

「ニュースで報道しているが、現状の速報以上は流れないだろうな。……組織で処理されたよ」

「ああ……」

 

 また罪のない命が…いや罪ありまくりだったなそういや。罪あるなら死んでもいいのかって話は難しいからやめとこうか。

 速報なんか流れてるの?

 ……パーティー中の殺人事件で、新一くんがいたなら事件は解決するか。

 なら衆人観衆の中推理ショーがあったのだろうし、であれば犯人と名指しされた枡山さん……ピスコとやらが、組織の人としては目立ち過ぎだとジンニキに処理されそうなのもわかる。

 

 ……ああ、ジンニキがジンニキ(ネタキャラ)たる所以、なんか江戸川コナンくんの正体に近付いた組織の人を処してくれるからだとか友人が言ってたっけな。今回そんな感じだったのかもしれない。

 だとしたら死んでよ……っわっはぁ。

 

 間違っても考えちゃいかん。

 難しいからね。やめとこうね。

 

 

「とりあえずみっちゃんが戻ってきたら作戦会議ですね」

「――――ああ。予定空けておけよ」

「了解」

 

 私が考えても答えのでないことだからね。

 保留したのだが、零くんは目ざとく何事か保留したことに気付いてしまったらしい。

 べつにこれは投げっぱなしでもいい話題だから。別件なんか用意しとくか。そうだな、ジンニキがなんでシェリーちゃんが生きてるとわかったのかについて考えてた事にしようか。

 

 ところでマジでなんでわかったの?

 

 

 ■

 

 

 ざっくりあらましを、ランニングしながらバーボン視点で聞いた。

 ベルモットさんの通訳として潜入し、大学教授の俵芳治にIT関連の研究についての興味を探り入れてもらって無事なんの成果も得られず、ベルモットさんには苦笑で残念がってみせて……この時点でだいぶ疲れてそうだが、その後暗闇の中シャンデリアが呑口議員の上に落ちてきたりその犯行で使われたとされる重要なハンカチを配られた7人にベルモットさんが入っていたりして余計な手間が入り苛立つ彼女の機嫌をなんとか宥めるのにも神経使って、ピスコさんの犯行のアリバイ作りにも協力してやったにも関わらず最終的に銃で天井付近を撃とうとしているとかいう決定的過ぎて逆に何かの意図を感じる写真が撮られていた、なんていう決定打まであり……最終的にジンニキが処理したそうな。処理ってなんだろね。怖いね。

 挙句ホテルでは火災まで起きるし、ベルモットさんの機嫌は最悪かと思いきや何故か上機嫌だしで色々起こりすぎて、怪しまれないようベルモットさんの傍から動かず一通訳として動いていたバーボンからしてみると全ての把握はしきれてはいないらしい。

 一応ベルモットさん経由であるが会場にシェリーが居たことをジンニキが確認していたそうで、その手助けをしている男共々調べる様にとちゃんと依頼されたから探すふりくらいはしないとね、と。

 そういうことだそうな。

 

 

 ちなみに内容の人物名は全てカネシタさん、ヒサモトさん、クロサワさんで説明されたので途中よくわからなくなった。

 その場合バーボンって何?ババ?馬場かぁ。安室どこいった?

 

 早速情報補完のため、新一くんと灰原さんに話を聞こうかと阿笠邸に向かうと、包帯やガーゼであちこち覆った灰原さんが松葉杖でびっこ引いていた。小さい子供のこういう姿は痛々しい。

 零くんに止められていたとはいえ、手助けしてあげられなかったのは心苦しい限りである。

 

「前にオレが大きく戻れた時があったろ?その時と同じ方法で――」

 

 脱出方法を新一くんが教えてくれているが、大きく戻るのも一時的なもの。

 それは果たして良いもんなんだろうか。

 

 そもそもこの状態だって毒でこうなっているのに、そんな軽々しくおっきくなったりちっさくなったりしていいものなのか。細胞から小さくなってるわけでもあるまいし、体積が変わってるのだから大増殖と大量死滅してるんだろうから……

 さ、細胞の寿命……長生きしてくれよ……

 

「すいません、こんなに大変なことになっていたのに……」

「ちなみにあなた、どこに居たの?」

「実は鳥取に……」

「鳥取ぃ?」

 

 途端に胡散臭そうな表情。そりゃそうじゃ。続きを聞きたまえよ。

 

「行ってた小林くんが、帰りの道で事件に巻き込まれ足止め食って予定時間に帰って来れなくなって、迎えに行ってたんですよ」

 

 ああそっちかと新一くんが頷く。だから連絡付かなかったのか、と頷こうとして灰原さんが首を傾げた姿にはたと、同じく首を傾げた。

 

「あれ?スバルさん、小林さんと連絡付かないって」

「そうです。帰ってくる予定の時間を過ぎても帰ってこないし、連絡付かなくて、立て込んでるにしても夜でしたし……向かった先が山奥だったので仕方ないかもしれませんが、私が車で遥々向かうっきゃ無いかと腹括った頃にようやく、羽田に飛んでくると連絡してきてくれました。そこから駅まで車取りに戻ったり……

 してましたら、こんなことになっていたのに連絡付かず手も貸せずとなりまして……本当に……」

 

 申し訳ねぇ……あむぴの話はできないから、彼から今回の件に係わるなと厳命された話も出来ないため、丁度よく鳥取でひと事件解決してきた景光くんをダシにするしか無かった。

 

 ちなみに当の本人は遥々8時間かけて高速道路走って帰ってくるので未だに運転中。

 休憩は挟みつつなので、予定よりは遅くなるだろう。

 メッセージは入れておいたので口裏は合わせてくれるだろうけど、どうせ後で景光くんからも文句言われるに違いない。

 覚悟しとけよ零くん。

 

 しっかし、Shineをローマ字読みか……景光くんがざっくり大まかに、鳥取で何があったか教えてくれたけど、言語の壁ってのはコミュニケーションには響くよな。

 いやローマ字でやり取りしてたのにいきなり英単語混じらすなって話だしたった1単語の一言それだけで死にたくなっちゃった状態の彼女から目を離した家族も家族だ。

 てかしれっと鳥取の山奥で麻薬取引が横行してた事実。

 

 日本が危ない……!

 

 

「……そう」

「そういえば、薬のデータの入ったMOは手に入ったんですか?」

 

 灰原さんに投げかけた疑問は、1拍置いてから彼女に首を振られる形で返ってきた。

 

「いいえ、大きくなった時に着替えたツナギのポケットに入れていたから、きっと燃えてしまったわ……」

「そうですか」

 

 それは……信じるべきか?

 いやいや。信じてあげるべきだろう。うん。1拍隙があるのが零くんと一緒だなぁなんて思ってないよ私は。

 

 

 

 





この休み中に見直してまとめようと思ってたのに休み終わっちゃってましたね
時の流れが早すぎる

読んでいただきありがとうございました!
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