昴くんはなにもしない   作:あまも

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奇妙なナンバリングしてたら気付かなかったんですが、50話過ぎてましたね。
なんで味方がこんなに情報握ってるのに、コナンくんはベルモットの名前も知らないんでしょう。
誰も……教えていないのである……!

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22-1:明哲保身

 

 

 

 灰原さんと新一くんってワンチャンあるんですかね……

 でもやっぱり蘭ちゃんを選んで欲しいな……

 って事は灰原さんは負けヒロイン……ってコト!?

 そんなぁ……

 

「おふたりはそういう(・・・・)人、作る予定ないんですか?」

「お前からその手の話題が出るとは思わなかった」

「ね。意外〜」

 

 2人用のセットのテーブルと椅子しかなかった所に、他の部屋から持ってきた椅子を2脚。4人囲む形になったテーブルの上は今、各々持ち込んだ食料が並んでいる。日持ちするものがほとんどで、今すぐ食べられるものをつまみながらそれぞれ何処にしまおうかと。

 

「何考えてたんだ、なんていきなり訊いてくるもので……いえ、おふたりとも、アレですよね。『僕の…恋人は…この国さ』ってヤツですよね」

「まぁ、確かにな」

「いや俺はそこまで……ごめん、ごめんってゼロ。恋人とか居ないからわからなくって……睨むなよ。日本が恋人だなんて畏れ多いだろ」

 

 私の冗談にノータイムで頷いた零くんと、対してそこまで愛は重くないのか首を傾げて本音を語ってしまい、零くんに睨まれている景光くん。

 

 今日の相談会は件の別荘に集まっている。

 今回の杯戸シティホテルでの江戸川少年、灰原少女が組織と接触した件と、そこからベルモットへの対応の相談のためとなっている。

 ……この間の新出医院での顔合わせから、すでに何か引っ掛かったらしい零くんはひとつ頷くと話を始めた。

 

 

「今度ベルモットが米花町に潜入の予定を立てていてな。その潜入先に、帝丹高校のかかりつけ医の担当になってる新出先生に成り代わろうとしていたそうだ」

 

 緩まっていた空気が、バーボンモードで語り出した途端に引き締まった。主に空気を変えているのは景光くんだが、それはごもっとも。

 良くしてもらっている人が、知らない間に敵にすり替わっていたかもしれない話だ。事前に今知らされていても恐ろしい話である。

 

「……なんで帝丹高校に?」

「私がクリスさんに、工藤新一が最近組織について調べてるとか教えちゃったから、カウンターで調査に来たんですかねぇ」

「ハルの戯言は一旦後回しにするとして、最後まで聞いてくれ」

 

 戯言扱いされてしまった。調べてるのはホントじゃないか。小さくなってるのも教えたけど、その原因が灰原さんの作った薬で、その灰原さんも近くに居るとはまだクリスさんには言ってないが。

 でもクリスさんって世界的大女優だよ?ふらふらそこら辺歩いてていい人じゃないでしょ。

 

「あの女の変装技術は、お前らはまだ見ていないだろう。潜入しての情報操作はあの女の十八番だ」

「それほどなのか……」

 

 しみじみと険しい顔で警戒を強める景光くん。

 変装ねぇ。

 ……そいや有希子さんが変装技術を教えてもらった時、シャロンさんと知り合ったのだっけ。じゃあ彼女も変装が上手いってことだな。

 

「有希子さんと怪盗キッドで比べたらどっちが凄いです?」

「怪盗キッドは良く知らないが、アレも優れた変装技術を持ってるんだったか?

 ……そうだな、顔や体格、そして喋り方や癖まで、一個人をしっかりと観察し、長期間成り代わる事を得意としているベルモットと、一瞬を切り抜けるために速さと正確さを極めているであろうそのコソ泥と比べるのは難しい。

 だが、これは確実と言えるのは…有希子さんよりは技術は上だ。あの人は、自我……素が出てしまうだろ」

「まぁ……」

 

 有希子さんの変装は、内面までしっかりとやれば暫くはバレないだろうけど、段々と彼女の内面が滲んできて、誰をやっても最後には可愛らしい人になってしまう。

 

 一度、『女性の扱いを教えるわ!』と有希子さんが私に変装して、私を女装させて街にくり出すなんてよく分からない逆デートをやる羽目になった時は不覚にも自分の顔可愛いとか思っちゃったしね。

 いや沖矢昴はいつだって可愛くてかっこいいけども。

 女装とその後の記憶までまるっと含めて最悪の黒歴史。しまっておこうね。

 

「それでベルモットがあそこに通い初めて暫くしてから、どうも怪しい外人が新出医院を見に来ていてな。ハル、この間調べさせた連中だ」

「アメリカからのお客様ですか」

「……だからゼロがそんな顔してたのか」

 

 この話の途中から、クリスさんへの嫌悪感以外の色が滲んできたなとは思っていたけど、アメリカの法的機関の方々が見られるようになった事に苛立っておられたらしい。

 大好きな我らの日本で許可も取らずに勝手してる国外からのお客様連中に、零くんは大層ご立腹なのである。

 

 ……零くんから渡された調査対象の中にジョディさんが居たのを見た時は何事かと思っちゃったよ。

 この間他ゲーセンに2人でドウジョウヤブリ行ってきて大会勝って景品掻っ攫ってきたりしたけど。

 

 危険人物なのかと思いきやどっこいアメリカの司法の方でしたと。

 

 流石に20年近くにわか知識でやってきたけど、ガッツリレギュラーでもないキャラクターの記憶は曖昧も曖昧。

 言われてみたらFBIの赤井さんの仲間、ネームドが3人くらいいたような気がしないでもない。その中に女性がいたような……気もしなくもない。

 覚えてらんないよ〜!

 国とか関係無しに正義の味方同士仲良くしてよ〜!

 

「ベルモットは新出先生に成り代わる為、彼の殺害も目論んでいたからハルの主治医でもあると教えておいた。そのお陰かは不明だが、俺の方でなるべく長期出張になるよう仕込む事で了承を得ている。家族ごと青森に飛ばして、あちらで暫く暮らしてもらうよう計画中だ」

 

 いつものように、報告形式で滔々と語る零くんの言葉の中に流しそうになってしまった言葉が混じっていた気がする。

 

「さつ……え?」

「“殺害も(・・・)視野に入れていた。”あの女はそういう奴だ。いい加減理解しろ、ハル」

 

 私がどうにもしっくりこない様子なのを見て、ため息つきつき零くんが諭してくる。

 ……いやでも……クリスさんは昔から優しいぞ?あの人、子供に凄く優しいところばかり見ているし、私にもなんかこう……近所のお姉さんというか……久しぶりに会った都会に住んでる親戚のおばあちゃんというか……正月にお小遣いくれて美味い店連れてってくれるおばちゃんというか……そして美人……

 見かねて横から景光くんが補足を入れてきた。

 

「ハル、組織の連中はみんな、表向きの顔は作ってるんだ。人のいいように見える人、なんてみんな取り繕える人達ばっかりなんだぞ。

 ほら、俺もだけど、ゼロを見ろよ。安室なんて人格がこれ(・・)の何処から出てくるってんだ」

 

 零くんと勝手に肩を組んで、顔を指さしながら。うーん……

 

「失礼だぞ、ヒロ」

「……確かに……」

「失礼だぞお前たち」

 

 だってこの傍若無人唯我独尊完璧主義者な女王様気質の男から、お人好しの気前のいいにこやかさわやかイケメン笑顔の可愛いあむぴが出てくるとは思わないじゃん。

 景光くんはね、うん。わかんないんだけど。

 

「ハルだってたまにあるし」

「ん?」

「まぁ……」

「うん??」

 

 外面は誰だって持ってるよねって話でFA?

 いーや、だとしたらやっぱりクリスさんはそんなに悪い人じゃないね。

 だって私がそんなに悪い人じゃないんだから。やったかやってないかって話だ。

 やったら終わりなんだよなって?それはそう。

 

「まぁ一旦置いときますか。」

「…………」「…………」

 

 2人して『あ〜』と残念がっておられる。だってこれは今語る内容ではないじゃん。今は新出医院のあれやこれをどうするかって話じゃん。

 

「麻生成実、だったか。彼は離島での医療従事経験の豊富な医者なんだろう?彼をこの別荘の管理人にして、万が一ヒロが怪我や病気の際にはここに来て治療してもらう方針で考えていたが、可能か?」

「ええ、恐らく問題ありません。成ちゃんは何処でも大丈夫とは言ってました。ただ、設備がここには無いので……」

「幸いここは敷地も広い。今後のことも考えて、簡単な診療所くらいなら許可は出させる。プレハブにはなるが、中の設備機材は払い下げでどうにか集めよう」

「ワァ……」

 

 確かにプレハブ持ってきてポンと置くだけの敷地はあるし、不況が響いて廃業した病院なんて日本各地にごまんとあるし、裏金問題とか色々便宜が必要になってしまった病院の伝とかもありそうだけど……

 これが……権力……!

 

「じゃあ、俺は新出先生が出張に出たら新出医院には近寄らないようにするよ。でも、俺とベルモットの面識は無いし、俺は元々実行部隊で、名前をもらってからもほとんどライとバーボンとしか組んでない。もし顔が見られても、問題無いと思うんだが……江戸川くんと灰原さんの護衛は続けるか?」

 

 ここで景光くんの言葉にむむ、と腕を組んで天井を見上げる零くん。

 

「……俺としては、あの女がいる間は東都に近寄るなと言いたい……が、あの女が灰原さんや江戸川少年に何かしてくるのは充分考えられるし、その間俺はベルモット側にいるわけだから、彼らの手助けを表立ってはできない。ハルは最悪の時の壁にはなるが、そんな最悪な時にはさせたくない。

 となると、面識が無いのも一理あるヒロに続投してもらうのもアリ……なんだが……本当にベルモットと面識が無いか、判断がつかないのが怖いところだ。スコッチと呼ばれていた男について知っているか、聞くわけにもいかない」

 

 やぶ蛇になっちゃったら元も子もないね。

 

「あ、じゃあ顔変える?有希子さんの変装術、ハル経由で教えてもらったやついけるぞ」

「……すぐ変装とバレるレベルの変装は……」

 

 景光くんの覚えた私経由の変装術は、習得レベルが低くあまり芳しくない。あの柔らかくて脆いマスクに、ターゲットに寄せたメイクするんだが、お絵描きセンスが壊滅的な私のせいで何も伝わってない感覚だけヒシヒシ感じて……ほぼ独学に近いんだもの。

 ――――いや、待てよ?

 

「いっそ、有希子さんに直接頼んでみます?今度、有希子さんと工藤先生日本に帰ってきますよ」

「連絡があったのか?!」「まさか、あの人たちが?!」

 

 そいや本人帰ってくるんだったわ。

 新鮮な驚きが景光くんと零くんから。そう、ちゃんと事前に連絡があったのである。

 

「1週間後のチケットを代わりに取ったんです。北海道行きの北斗星」

「……なんでまた?」

「なんか、昔書いた小説と同じ内容の事件が起こりそうな気がするそうです」

「…………」「…………」

 

 2人して『え〜?』と怪訝そうな顔をしておられる。

 これ言ってんの私じゃなくて工藤先生だからね?

 手元でPCを開くと、ちゃんと話を聞いていたノアズ・アークが有希子さんが乗る北斗星3号の予約ページまで開いてくれていた。話が早くて助かるぞい。

 

「せっかくですし、同じ号で行きます? 開放式の部屋にはなりますがまだ空きあるみたいですし、有希子さん1人よりみっちゃんがついて行った方が2人も安心でしょうし」

「寝台列車で北海道かぁ!良いね、俺寝台列車初めてだ!部屋はなんでもいいや、頼むよ」

「了解〜」

 

 予約制だし早めに決めちゃってから、後でキャンセルなりなんなりするのが良い。

 

「れーくんはどうします?せっかくですし、有希子さんにれーくんも変装術教わって来ますか?」

「……悪くない提案だが、今東都を離れるのは控えたい。ベルモットが野放しになる。

 ヒロ、上手く覚えられたら俺にも教えてくれ」

「お、了解だ。まかせとけ」

 

 直接なら景光くんのセンスでなんとかなるんじゃない?下手だとしても、下手な変装を零くんがやって、それをクリスさんに見せたらワンチャン手解きしてくれるかもしれないし。

 

 あ、1号の方もまだ部屋あるじゃん。しかもデュエット。取っちゃお。子供は同室良いのか?良いのか。なるほどね。

 怪我してて学校休みだろうし、1週間も安静にしてたら気も滅入る。電車旅くらいなら乗ってしまえば揺られるだけで、負担も少なく景色見られて気分転換になる……灰原さん誘って、阿笠さんと小旅行してきちゃおうかな。

 そのうち、北斗星は無くなっちゃうのだから、乗れる時に乗っておかないとね。始発から乗った経験は前にも今にもない。

 ついでに工藤氏に色々相談してきちゃおうかな。

 どう思う?

 

「あまり出歩くなと言いたいが、1つところに居るのも辛いか。……いいんじゃないか?

 俺があの女の世話で苦労してる間、気楽に小旅行してくるといい」

「やだ、トゲがあるわよこの人」

「いやですわね、自分で断ってますのニゲッフォ」

 

 景光くんとコソコソ、ハンバーガーの紙ナプキンを口に当ててお嬢様ごっこしてたらポテト1本ずつ投げつけられた。

 景光くんは見事に指でキャッチしている!

 私?私は喉でキャッチしていましてよ!

 

 お前!私の喉に負担のある行為は控えろ!嫌な咳しか出ないぞ!!

 

 

 ■

 

 

 北斗星にて北海道旅行当日の事。『鉄の棺桶にならないと良いわね』などと不穏なポエムを囁きながら、まだ少しだけ腿を撃たれた傷が痛むのか段差などでふらつく灰原さんを支える阿笠さんと、彼ら分と自分の荷物を持っての私。

 乗車前に工藤氏とは一度顔見せ済みだ。警戒心バリバリの灰原さんだったが、阿笠さんも私もゼロ警戒なもんで拍子抜けしていた。

 この人を警戒するのは、彼が色々聞いてきたりめっちゃ見てくる時だけでいいからね。

 9割取材目的だろうけど。

 

 そんな怪しい男には近寄らない灰原さんは、部屋からの景色を眺めつつ読書に励むとのことで、阿笠さんもそのそばでゆっくりするらしい。

 私は久しぶりの工藤氏に、最近のそちらの様子とこちらの様子を情報交換を、彼の乗るソロの個室で談笑するなどしていた。

 

「なるほど。無事、2人と協力出来るようになったのなら良かった」

「ええ。みっちゃんはずっと、れーくんのことを気にかけていましたからね」

「ああ。だが、油断してはいけない。彼ら2人は優秀な捜査官だ、情報の流出には当然、気を使うだろう。漏れるとしたら、昴。お前からの可能性が最も高い。わかっているね?」

「はい。肝に銘じます」

 

 談笑ではあるんだけど、内容は結構注意喚起色が強かった。

 最近自覚出来るほど油断気味だったので、明確に注意点を言って貰えるのはとても助かる。

 

 相談したいことは沢山あるけれど、工藤氏もこの列車には私のために乗ったのではなく、盗まれた原稿からパクられた強盗事件を解決するために乗っているのだし、時間を取りすぎてしまっては悪い。

 あまり長くいても困るだろうと、キリのいい所を探すが、注意点が2点、3点、・・・とどんどん溢れてくる。いや、言って貰えるのは本当に有難いんですけども。しかと受け止めますけども。

 

「優作先生、今回の強盗、確認や捜査はしなくて大丈夫なんですか?」

「ああ。犯人はこの列車に乗ってないようだからな。どうやら有希子の乗った3号に乗っているようだ。

 終着駅での決着まで、私の出番は無いよ」

「ははぁ……」

 

 事件の概要、私聞いてないんだけどな。

 終着駅で何かあるんだ?

 

 それベイカー街の亡霊ラストのワインの海(ワインは無いものとする)じゃないよね?

 

「だから昴。お前が最近のお前の失敗と、改善点を指摘して欲しいという頼みを、私は引き受けてやれるが…どうするかね?」

「わっはぁ……」

 

 甘えで流してた点を指摘してもらわないと、私は改善出来ないからこの圧迫面接大事なのでぇ……頼みたい所ですけども……

 これメッタメタにメンタルやられるからあまり好きじゃなくってぇ……でも逃げたら1つでぇ……進めば2つでぇ……!

 

「お願い……します……!」

「ははは。では……」

 

 東北の山々でセルフメンタルケアしながら受け止めて行くしかないかぁ!

 

 吾妻連峰〜!今日もいい顔してるぞ〜!

 

 

 




終ぞ北斗星に乗ることはなかったのですが、走る姿は良く見かけていました。
特別な車体はかっこいですね

読んでいただきありがとうございました!
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