昴くんはなにもしない   作:あまも

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話に沿って眺めてると、意外とちゃんと犯人が体型分けされているといいますか、銃や麻薬が増えたり、火の事故が増えたり……トレンド的なものがあるんですかね。

今回彼はあまりなにもしない話です。邪魔しかしないかも

読んでいただきありがとうございます!


23-1:苦手の多い人

 

 

 

 

 キャンプだ!!

 

 

 

 はい。夏の山にてキャンプです。

 

 本日のメンバーは、阿笠さん、灰原さん、新一くん――――そして少年探偵団の初期メンバーの3名様。小嶋くん、円谷くん、吉田さんである。

 

 

 『生活改善ガイド!苦手と向き合おう!!』

 

 

 工藤氏との面談で、最近の私が嫌な事から逃げまくっていて成長が見込めないとのご指摘を受けたので、苦手意識の改善を目指して子供との交流を持ってみようってことでね。

 

 新一くんや灰原さん、阿笠さんとやっていくなら、少年探偵団とは長い付き合いになる。

 

 苦手だ、嫌いだ、わからないからいやだと駄々こねて、阿笠さんの負担を増やしたり、景光くんに余計な迷惑かけるわけにはいかない。

 

 それに、灰原さんも頑張って阿笠さんや、嫌いだろうに私に歩み寄ろうと努力しているのだから、私も努力をするべきなのだ。

 

 

 というわけで、少年探偵団と阿笠さんのキャンプに、阿笠さんのビートルじゃ乗り切らないキャンプ用品を詰め込んで私も付いてきた。

 積載量には自信がある。

 森に住む人(フォレスター)の名の通り、コイツが一番活躍するのは山なのだ。海じゃない。夏の海なんて嫌な思い出しかない!

 ……夏の海も苦手……ってコト?!む、向き合えってコト?!

 暑さは……命に関わるから許してください。

 身体性能に関しての苦手は許しておくれよ。精神面で頑張るからさ。

 

「またひとりで何考えてるのかしら」

 

 背後から近寄って来ていた足音は聞こえていた。小さな彼女は腕を組んで、呆れ顔で私を見ている。

 

「あ、灰原さん。かまどの石、これとかどうです?」

「ええ、そのくらいで足りるでしょう」

 

 河原まで来て集めていたかまど用の石。

 新一くんのお古のサッカーボールネットに、ゴロゴロと平べったい面のある長い石を2個と、服の裾に包んだ拳大の長方形に近い石がいくつか。

 少し多いだろうが、丁度よさそうなのを適当に使えば良い。

 

「男手があるとやっぱり楽ね…」

「こんなんでも力になるならいくらでも」

 

 よいせと担いで、私の裾から両手それぞれに1個ずつ石を持っていった灰原さんの後についていく。

 

 やっぱりパワーは大事なのかもしれない。阿笠さんに重いもの持たせるのも、なんか腰やりそうで怖いし、今後ともこういうのが増えるなら真面目に筋トレ励むしかないのだろうか。

 粛々と自分の筋肉と向き合おう、と思えなくてツラいんだが。……これも苦手というものか。

 とんでもない量のトレーニング毎朝こなしてく零くんは、一体何を目標にしてるんだろう。

 護国?……うん……

 

「子供達は薪拾いでしたよね」

「ええ…」

 

 子供達が戻ってくるまでにかまどを作っておかないとな。

 

「ねぇ……」

「はい?」

「……あなたって一人っ子だったのよね?」

「さぁ?阿笠さんの所に来るまでのことはわかりませんね」

「………………そうだったわね。ごめんなさい」

「いえいえ」

 

 たぶん一人っ子だとは思う。

 兄弟姉妹がどんなものかは……知ってるような、知らないような。

 

 ステレオタイプの凡例なら知ってるが、実感としては知らないから、うん。たぶん一人っ子だったんじゃないだろうか。親戚他に居ないと聞いていたし。

 

 弟みたいなかわいい小さいのは今はたくさんいるけどな!

 

 

「……そういえば、毛利小五郎の娘さん……」

「はいはい、蘭ちゃんですね」

「彼女…江戸川くんの正体に気付いたんじゃない?」

 

「ああ。そりゃ気付くでしょうね」

 

 灰原さんが、私の返事に目を見開いて振り返った。少し驚いた顔。あっさりだった?

 

 むしろここまで気付かないわけないんだよ。

 

 そもそも幼なじみで子供の頃の顔を知っていて、性格も癖も全部わかってる彼女がこれまで『江戸川コナン≠工藤新一』を信じてくれていたのは、ひとえに状況証拠で『江戸川コナン』という個人の存在を他人(江戸川文代、阿笠博士、沖矢昴etc...)が保証している事と、『江戸川コナンと工藤新一が同時に存在している』場面を何度か見せたおかげだ。

 それだってよくよく考えたら口裏合わせてたり何かしらのトリック使ってたりするんだろうなんて簡単に勘づける。

 

 新一くんはずる賢さも持った天才だからな。

 彼の悪戯には蘭ちゃんも昔から手を焼いていたのだから。

 

 テントに辿り着き、簡単には崩れないよう調整しながらかまどを組み立てる。こういうのは得意。

 

 その横で、灰原さんが寄ってきて、ちまちまと野菜の皮剥きを片手間にやりはじめた。さっきの話の続きかな。

 

「……彼、彼女に正体を話してしまうかしら?」

「五分五分?ですかね。現状は……うん、色々な可能性を考えられる」

 

 蘭ちゃんがずっと寂しがっているのを横で見つめてきた彼の事だから、話せる機会さえあれば話してしまうのは簡単に想像つく。

 蘭ちゃんだって苦しかろうが、言うに言えないのもまた辛かろうて。

 

『バレてるんなら、話してしまおう』の思考。

 

 ここはなんせ、私という前例がある。

 こっちの場合、『どうせバレてしまうのだし、話しておこう』の方だったが。

 そして勝手に調べ始めてしまい、踏み込み過ぎてあらぬ所まで潜っていきそうな私が突っ走る前に引き留めようって魂胆だったっけ?

 

 とっくの前からそうとは知らずにズブのズブズブだったりしてたっぽいけどね。教授とか景光くんとか零くんとかクリスさんとか。

 

 

 ……正体ねぇ。

 私には『名探偵コナンは工藤新一が小さくなってから始まる』という記憶由来の知識があったからそういうものだと理解していたので即座に飲み込めたけれど、彼女はどうだろう。

 

 けれども、そう(・・)なのだと気付いても、私のように直接新一くんに訊ねてこないのは……

 

「なんでですかね?」

「…………女心がわかってないのね…」

 

 ため息つきつき、呆れられてしまった。

 わかりかねますね……女心を教えて、灰原先生!

 

「彼から言って欲しいのよ。隠していた理由も、これからどうしたいのか、これからどうして欲しいのか。……ここまで隠してきたのだから、それだけの理由があると彼女は理解しているのでしょう。これまで言い訳みたいに使ってきた、“手が離せない案件”ってのが、とても大きくて危険な事件で、巻き込まれてしまったそれに彼女自身を巻き込みたくないから黙ってるんだって事も……それでも、ここ最近それとなく、わかってる雰囲気出してきてるのは……説明してもらえるのを待っているのではないかしら」

 

 なるほど、そういうものか……ん?

 

「確かに、私も小林くんが大変だった時に何が起きてるのか、聞くに聞けませんでした」

 

 それに、現在進行形で零くんがどれだけ頑張って組織と公安と私たちとの間で上手く事を成そうと努力してるか、何をしようとしてるのか聞くに聞けてないわけで。

 あんなにもクリスさんもFBIも毛嫌いしているのに、やってることだけ見ればクリスさんのために一生懸命安全な場所用意してFBI追い返そうとしてるわけだし……

 

 でもこれ、聞くなって言われたから聞いてないだけで、そのうち事が終わってなんでもなくなれば教えてくれるだろうし、公にしてはいけない話ならそりゃ聞けないし。

 

 そういうもんならそういうもんだから、ね。

 

 ……って、わかっていても気持ちでは納得いかない……ってコト?

 いやぁ、でもさあ。

 

「このままでも大丈夫だって言うのなら、事が終わるまで話さなくても良くないですか?」

 

 ここで灰原さんは呆れ顔に追加で諦めも入ってきた。零くんがよくやってる感情である。

 

「貴方、そっち側に立ってるのになんで気持ちがわかってないのかしら……」

 

 そりゃ……男だからですかねぇ……

 いやぁ、女心って複雑なのね。

 

 

「もし、よ。もしも……もうバレてると確信が持ててしまった場合…この後、彼…どうすると思う…?」

 

 ふむ。新一くんの考え方を良く知る人って意味で、彼女が私に聞きたかったのはそこなんだろう。

 

「先程の通り五分五分……いや、バレてるなと考えたなら、順に3つですね。

 1つ、話してしまう。隠してるのは彼も彼女も辛い事です。今のところ組織に『小さくなって生きてる』なんてのはバレてないのだから、案外このまま工藤新一生存はバレないで済むんじゃないか、なんて……あのホテルでの事で、余計に考えてそうですね。実例が増えてしまった。

 2つ、それでも尚話さない。彼女がわかっていても、聞いてこないし答えない限り確定ではない。なら、確定してやらない。なぁなぁで流し続ける……私が好きなパターンですが、2人にとっては辛いこともあるでしょう。それとなく便宜図って貰えて良いと思うんですがね」

 

 なんとなくでも状況を考えさせて、それでも万が一何かがあった時、『私は何も知りません、知らされていませんでした!』と言わせる―――零くんや景光くんに昔っからよくやられているやつ。

 

 あれ、全部やらせてた側が悪いのであって何も知らずにやってた側は知らなかったのだからしょうがないじゃないかとかいう……『それは……そうだけど……』な心理的な話でしかないんじゃないだろうか。

 

 この通り、逆手に取って『知らなかったからやっちゃいました!テヘペロ!』を常套手段にする馬鹿を生む結果となってるわけだし、あの隠蔽気質良くないよね。

 

 

 …………ってことは2つ目の案も良くない……ってコト?

 

 

「3つ目は?」

「へ?ああ。3つめは……」

 

 おっと。そうだったそうだった。

 灰原さんに可能性の提示の話してたんだっけ。

 

 でもこれ、私の推測を多分に含むから、可能性としてはメタクソ低い事なんだけど……

 

 ︎︎状況的には、最有力。だから3つめ。

 

 

「灰原さんが解毒薬渡して、彼が工藤新一として元に戻る、とかですかね?」

 

 

「―――は?」

 

「ホテルであなたも大きく戻る体験をした。戻ることが出来ることは証明された。戻れてしまうのなら、もう一度工藤新一を彼女の前に出すことはできる。

 後はその持続性ですが……」

 

 あの時、灰原さんは薬のデータは燃えてしまった、と言ってはいた。しかし、返事に1拍置いたのはほんの一瞬、話すか話さないか、話さないならば手に入らなかった理由を考える逡巡があったから、だとすると……

 ︎︎薬のデータ、持ってるんじゃないだろうか。

 それでなくとも、一瞬とはいえデータ自体見ているのだろうし。

 

 阿笠さん所の地下室、薬の調合も出来る。……そこに篭ってることの多い彼女ならあるいは?

 

 

 彼女の驚いてしまった(・・・・・・・)様子を見るに、解毒薬、作ってるなこりゃ。

 

「そうですね……試作品であって完璧ではないから、持続性は不明、ですか?試してみたかったりします?自分で試すのも良いですが、なんだか丁度よく使いたがりそうな生意気なボウヤがいますもんね……」

 

 毒薬の解毒薬と聞くといいものじゃん!って気にはなるけど、変な薬物は薬物で、設備としてはあまり良いところではない阿笠さんの地下室での製作品……気分的には嫌の一言。状況と、お話の流れ(・・・・・)的には成功するけどどうせまた小さくなるだろの一言。

 

 あるならそのうち使う流れではありそう。これは十中八九。

 

「……当たってました?」

「………………貴方、本当に証拠もなしに当てずっぽうで当てに来るのね」

「あ、2つ目のパターン採用してます?」

「貴方のそういうところ、私嫌いだわ」

 

「……他は、好きってコトです?」

 

「は?」

 

 うっわ。スゴくドスの効いた声で睨まれた。なんか話重くなって来たからユーモアを交えただけなのに。

 

 んまぁでも、案外当たってそうだな。この感じ。

 なら近々、そういう葛藤と工藤新一大活躍な事件が起こるってことか?

 小林くんに用意させないとな。帰ったら緊急会議開かないと。

 

 

 ■

 

 長話の片手間に、かまどが出来ましたよっと。

 阿笠さんは折りたたみテーブルや焼き網などを用意してくれている。

 後は子供たちが拾ってきた薪を、阿笠さんに火をつけてもらって……その間にこちらで食材の用意をして……手洗い用の水も汲んでこないと。きっと子供たちはどろどろになって帰ってくる。

 

 皿やゴミ袋の用意も必要か。陽射しは遮った方がいいのかな。あれ、開いてる袋がふたつある。

 昔、阿笠さんと新一くんと3人で行ってたキャンプは、各々好き勝手に役割分担して準備してから遊んだりしていた。

 好き勝手とは言いながら、各々が必要だと思ったものをわかってたから、ああも手早く快適に過ごせたのか、と今更思ってしまった。

 子供3人に何が必要なのかわからない……!

 と、取り皿とか多めに用意した方が良いのかな。

 

 

「しかし、どこまで拾いに行っとるんじゃあの子らは……」

「確かに……少し遅いですね。それほど沢山持ってこなくて良いはずですが、張り切って集めに行ってしまったんでしょうか」

「森の中でも探検してるんじゃないの?好奇心旺盛な探偵さんが引率者だし……」

 

 それは……どうだろう。

 新一くんは彼らに振り回され気味だから、いつぞやの屋敷やどこぞの屋敷のように、勝手に進む彼らを止められないついでに好奇心も抑えきれない新一くんが「まったく、しょうがねーな」とか言いながらついていってるんじゃないか?

 それだと森だけでは子供たちの興味は引けない。とすると……

 

 周辺MAPをスマホに出してみる。史跡、家屋……こっちはキャンプ場の管理棟か。森の中にも何かある。

 

「廃屋、遺跡、良い感じの木」

「……何?」

「どれだと思います?彼らが興味引かれそうなもの」

「…………そうね、遺跡かしら。廃屋なら外から見るに留めるでしょうし、木への興味は彼らはあまり無いんじゃない?」

「なるほど」

 

 動線は遠回りになるが、子供たちが薪拾いに向かった方向は史跡の方向だ。レビューも何もないから、地元民にだけ伝わる伝承か何かの残る石碑とか、その程度だとは思うが……

 

「まさか、その遺跡とやらに行ったって言うの?子供だけで?」

 

 灰原さんが、玉ねぎの皮をバリバリと引き剥がしながら、早とちりじゃないかと訝しげな声をあげる。

 そもそもそんなに規模の大きなものとは思えないが、周りに何かあるかも!なんて言って森深くまで入っていった可能性は無きにしも。

 

「一応、念の為にね。それに、かまどは出来たのですから火を入れないと。

 阿笠さん、管理人さんにここら辺で危ない場所が無いか、聞いてきて貰えますか?灰原さんはコナンくんの予備のメガネと、探偵バッチを用意しておいて下さい。

 私は子供たちを探しに行ってきます」

 

 さてさて、こういう時って新一くんすでに何かやらかしてるはず……いや、少年探偵団の場合、すでに渦中の真っ只中に巻き込まれてることが多かったっけな。

 

 急ぐか。

 

 

 ■

 

 

 目の前に、ポッカリと暗い口を開けた洞窟とかいう子供心擽るアクティビティ(立ち入り禁止)があるんじゃが。

 

 断言出来る。100%この中にいる。

 洞窟の前に、集めた薪が束に並んでこちゃこちゃこちゃと散らばってるのは、子供たちが集めたものを、邪魔だからと置いていったのだろうからね。

 小学一年生って立ち入り禁止の文字読めねぇのかな。あと高校生。

 

 横にはでっかい“と金”の石碑がある。これが史跡の一部だろう。かっこいいことも書いてあるが、大方これ見て少年探偵団が「暗号…ってことは、きっとお宝がある!」とか思って行ったんじゃないの?宝探し好きらしいし。

 

 

   ……………………洞窟……洞窟かぁ……

 

 こういう地面の下〜!って感じのとこ、なんか嫌なんだけどなぁ……

 しょうがない、腹括って行きますか。

 

 靴の踵のスパイクをパチリと立てて、眼鏡やスマホはウエストポーチへしまい、しっかり口を閉めた。

 靴はいきなり雪の降り出す気候になる為、あの時滑って頭打って以来警戒した結果、踵に滑り止めがついたブーツを履くことで解決した。防水万歳!

 ポーチも、灰原さんのクッションがてら買ったけど、案外便利でいい。

 ベルトから、夜散歩などで使われる勝手に巻き付くバンドを取り出す。これは景光くんからの貰い物。

 私の目には蓄光の仄かな明かりで十分だ。眩しいよりは暗い方が得意。暗順応も早いからね。

 

 

 立ち入り禁止乗り越えて、ユクゾー!

 

 




でっでっででででっで


※なおこの後めちゃくちゃ追われる


閲覧ありがとうございました!
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