昴くんはなにもしない 作:あまも
しなきゃいけない作業があるのにソシャゲと眠気に負けてます
さらにコナンくん劇場版も8/31までときて作業BGMにしてたら画面見ちゃうに決まってるじゃないですか
そんなわけで作業が全然進まないあまり、続きができました。よろしくお願いいたします。
閲覧ありがとうございます!
30時間24分オーバー。
接種からの時間と摂取量からの計算で、大体の効果時間を計っていた灰原さんの計測結果。
状態やこの一日の行動等、要検証は多々あれど、ざっくり30時間前後、との予測はお見事である。
「どうですかね。負担はありそうでしたが?」
「そうね…起きている現象がどうしても細胞に負荷はかかるものだから、仕方ないところではあるわ」
「全身に回ってる毒を、毒で中和してるようなもの、と言われると確かに」
米花センタービル地下駐車場にて、ひと仕事終えてきた灰原さんと一緒に車へ乗り込む。
回収してきた彼の取っておきのひと揃えのデートコーデは、クリーニングに出しておいてあげよう。
預けてきた江戸川コナンらしい青のジャケットにつけた盗聴器を通じて、聞いていて申し訳なくなるほど真っ直ぐな蘭ちゃんと新一くんの会話が聞こえる。
Bluetoothで車のスピーカーと繋げなくて良かった。灰原さんが聞いたら憤死してしまうかもしれない。
結局バラさないのか……ならもう、正体をばらすことも今自身が危険な身の上であることも、何も喋らないと決めたってことだね。なるほどなるほど。
ならなんでこんな偉い人が集まるようなところに来とるんや!!
『今夜、ベルモットに米花センタービルのレストランでの夕飯に誘われていたが、なんとか杯戸シティホテルの方に変更させておいた』
なんていう疲れきったメッセージが昼に入っていたので、あっちはあっちで相当苦労してあの手この手で誘い出したんだと思う。ほんとにお疲れ様。ありがとう。
ノアズ・アークには帝丹高校の表も裏も、掲示板と学生達のメールの確認をさせているし、小林くんには学園祭の様子を伝える校内新聞用の写真の差し替えに動いてもらったりと……
各方面にてお手伝いしてもらっているのだ。
今日1日、皆さま大忙しなのであった。
灰原さんが、試作品とはいえ解毒薬を軽率に渡してしまった事を悔いておられる。情に流されちゃったよね。
「お説教は明日ですかね…」
「でも明日、探偵団の皆と杯戸町の屋内プールに行く日だけど」
「怪我してて風邪気味の江戸川コナンくんは来ないですよねぇ」
決まりのあるところでならルールは守れる子供たちだし、そっちは灰原さんと阿笠さんで大丈夫なはず。新一くんは行かないはずだからな。
行くとか言ったら、腹に穴あく怪我した奴が何言ってんだっていう……行かないよね?
とはいえ、お説教タイミングがない。
「こうなったら、帰りがけに拉致るしかないか……」
「あなた、もっと真っ当な手段取れるでしょうに」
「こういうのはスリルショックサスペンスですよ」
江戸川文代スタイル踏襲するかな。
■
ってワケで。
帝丹小学校に連絡して、午後のホームルームの時間に病院連れてくので早上がりにさせる事に成功。
聞いてなかった話に首を傾げながら昇降口を出てきた新一くんは、校門脇の私の車と笑顔で待機している私を見て足を止めた。
おう。嫌な予感感じてるんじゃないよ君。
まぁ攫うんだけど。
風のように車の後部座席から飛び出した黒ずくめの男が、驚いている新一くんを俵抱きにして取って返して車まで戻ってきた。
その間に私は運転席に乗り込み、ドライブへ。新一くんが後部座席に投げ込まれて、黒ずくめの男が乗り込んで……扉が閉まると同時にアクセルを踏み込み、車は走り出した。
ピンピン鳴る音もシートベルトを締めると同時に止まり、荷物扱いの新一くんはランドセルに押しつぶされて運転席の後ろでもごもごと何か騒いでいる。
普段ならこんな急発進急ハンドルしないんだけど、ちょっぴりだけ荒っぽくなっちゃうのは許してね。
人気の無い高架下で車を停めて、後ろを見る。横の黒ずくめの男に警戒の目を向けていた新一くんだったが、私が振り返ったのを確認してやや慌てた様子で話し出した。
「スバルさん!いったいなんなんだよ!」
「何って、人攫いですけど」
「当たり前みたいに!」
「でも急ぎでお話ししたいことがあるのは伝わりましたよね」
「……もっとやりようはあっただろ」
あったとは思うが、来る前に毛利探偵事務所の様子を安室さんに見てもらったら依頼のお客様来てたらしいし、このまま新一くんを事務所に帰したら事件に連れていかれそうだったもんで。
左腕を上げるのは面倒なので、シートベルトを外して体ごと向き直り、ヘッドレストを抱き込むような、座席に膝立ちの体勢で新一くんと向き合った。必然、上から見下ろす形となる。
がはは。天井の高さが結構あるのだぞ。私大きいから狭いけど。
「では、お話しといきましょうか」
「その前に、この人って」
「こちらは新一くんもご存知、スコッチさんです。」
腕組んで黒キャップに黒マスクの怪しい男だが単純に小林くんである。
でもわざとスコッチ時代の気配とやらをビンビンにしてもらってるので、服装含めて小林くん感は無いだろう。
私は私で、いつも以上に笑顔を作って見せると、新一くんは僅かに身を強ばらせた。
笑顔は威嚇と言うけれど、この笑顔は歯を見せてる訳でもなし。これは威嚇の形じゃなかろうよ。
ほーら、ニッコニッコニー!
「で。兼ねてより気になってたんです。
新一くんはいきたいですか?」
「は?」
「いきたいですか?」
「生きたいって、生きたいだろ」
「ああ、やっぱりいきたかったんですね。よかった、また早とちりしてしまう所でした」
私は助手席に置いていたファイルから、1枚の写真を手に取る。
黒衣の騎士様が素顔を晒し、学生達と警察官、蘭ちゃんの前でドヤ顔しているとてもカッコイイ写真だ。
「これと同じもの、黒の組織の方にお送りしました。『ジンが殺し損ねた男』だと」
「は?!」
「小林くんが監視していた、灰原さんと君の状態と経過の報告もまとめてお送りしましたが、情報がある程度集まってきたことですし……そろそろジンを蹴落とす良い機会です。
ボスの前でジンの失態を晒し、スコッチが代わりに彼のポジションを奪うのに丁度いい手土産でしょう。是非その命で貢献してください。
いきたいんですもんね」
「オイ、まさか、ウソだろ?!」
ごつ、と。驚愕の表情の新一くんの頭に、銃のような形の物が隣から押し当てられた。
腕を組んでいた黒ずくめの小林くん…この場合はスコッチかな?…が、隠し持っていた
「騒がないでください。…大丈夫です。そんなに心配せずとも、灰原さんも後で連れていってあげますからね。
久しぶりの外の自由。さいごの思い出に、子供たちとプールで夏の終わりを満喫してもらったら、帰りに彼女だけ連れて行きます。君がこうして来てくれたように、私になら彼女も簡単についてきてくれると思いませんか?
ここ最近で随分とリフレッシュになったでしょうから、気も紛れて今後の研究に勤しんでもらえるはずです」
「……いつもの、冗談だよな?」
ヘッドレストに顎を乗せて、工藤氏を真似したパッチリ逆ウインク。
「ええ、冗談ですよ」
途端、ホッと新一くんが息を吐き、安堵の表情を浮かべた。私も思わずにっこり。
オイオイ、油断するにはまだ早いぞ。
「もちろん、彼女だけ連れてはいサヨナラなんてそんな簡単な話では済ませませんよ。
あの子供たちは全員まとめて処理します。灰原さんの目の前で片付ければ、組織の目を欺いて抜け出そうなんて甘い考え、二度と思うことはないでしょう。彼女、優しい子ですし…きっと罪悪感で動けなくなってしまうのかな。ああ、可哀想に…」
新一くんの表情が固まる。
「なぁに、阿笠さんの研究室で、彼の作業途中の実験に問題を起こしておきましたから、彼ひとりだけ家に帰す事は可能です。
代わりに私が子供たちを預かって、送迎車として頑張りますよ。
……そうか、彼らの親御さんも一緒にいかないと可哀想ですね。うん、通報する人がいなければ、子供がいなくなっても暫くはバレませんね。その間に学校関係の書類は用意できます」
青ざめていく新一くんだが、唾を飲み、その手がゆっくりと腕時計に動いていくのを見逃すスコッチではない。
空いていた左手だけで、手練のスリの手つきでもって彼の細腕から麻酔銃を回収。
あらやだ、そんな手癖の悪さ、何処で覚えたの?
にしても、ショック受けてても動けるとは、流石だなぁ。
それとも、まだ冗談だと思ってる?
「あ、小五郎さんや蘭ちゃんですがね」
蘭ちゃん、の名前で、新一くんが目をさらに見開いた。瞳が揺れている。彼女の名前は強いな。
「既に事務所の傍に組織の者が控えておりまして。私からの連絡を待ってるところなんです。
そうですね、小五郎さんは元刑事ですし――昔捕まえた犯人が、逮捕された怨みを募らせ、逮捕してきた元刑事とその家族を狙って――なんてシナリオ、どうです?
うーん、工藤先生に怒られちゃうような、ありきたりなストーリーでしょうか」
なんか、言っててなんだがそんな劇場版あったような気がしてきた。無かったっけ?
新一くんってば、目線がキョロキョロとして…
逃げる手段を探してるな?
「無駄ですよ? スコッチが君の一挙手一投足を見逃す事は有り得ません。この車は現在全てのドアがロックされています」
だから出るには窓を割る必要がある。そんなのは予備動作の時点で彼が許すわけがない。
「それでも新一くんですからね…油断大敵、万が一逃げ出したとしましょうか…あなたが逃げるであろう場所も、駆け込む先もありませんね。警察には組織の者が潜入していますし、服部くんは大阪に帰りましたし。
工藤先生も、海外ですもんね!」
絶望的な状況を実感してくれたのか、後は私のこの発言が全て冗談だと思うしかないところまで来たのか…新一くんはキッとこちらを睨みつけてきた。
「……悪い冗談もいい加減にしてよ、スバルさん」
「そこで反抗的に回れるのが流石ですね新一くん。ええ、もちろん冗談ですよ。
そこで、あなたに許されてる道は3つです。
ひとつは、大人しく我々についてきて、ボスとジンの目の前で処刑される。ジンのことですから、苛立ちに任せてネチネチいたぶってくるんじゃないでしょうか」
ジンニキのこと、詳しく知らんけど。
スコッチが、改めて思い出せとでも言いたげに押し付けていたものをグリと押し付ける。
私はいつもの笑顔を忘れずに。指を1本増やして、その2。
「ふたつめは、情報を渡す訳にはいかないと、覚悟を決めて無理やりにでも逃げるか、戦ってここで死ぬか――ああ、自分でどうにかして死ぬという手もありましたね」
ねっ、スコッチ。
3本目を、逆ピースの要領で新一くんの眼前に差し出して。
「みっつめですが。
『工藤新一姿で推理ショーなんて馬鹿な真似はもうしない』とみんなにちゃんとごめんなさいするか、ですね」
「―――――は」
新一くん、迷惑かけたと口では言いつつ、灰原さんや服部くんにありがとうもごめんなさいもしてないだろ。
私はまだいい。安室さんも仕方ない。
しかし、今回の件では小林くんや智明くんまで協力してくれているのだ。
「できますか?」
「え、ちょっ……」
「できないんですか?」
「待て! い、今までのは本当に冗談か!?」
「ずっと『冗談です』って言ってるじゃないですか」
拍子抜け。呆気にとられた新一くんの顔は面白いけど、スコッチはまだグイグイと銃口を押し付けている。話は終わってないよってことでね。
…………そろそろ嘘か本当か、よく分からなくなってきたかな。
「ね、新一くん。阿笠さんの言葉はちゃんと頭に残っていますか?」
「博士の…?」
「『工藤新一が生きているとバレたら、周りの人にも危害が及ぶ』。灰原さんにも言われたでしょう?『組織の連中は、この件に関わった、組織について知る人間を全員殺す』と。
2人とも、優しいですよね…」
調べるなと言われてはいたが、それにしたって情報が少な過ぎなのだ。多少なりとも、裏について漁っていればいくつか踏むことはあるだろうに。
「関わった時点で全員処理してきたから、ここまで情報が出回って無いんですよ?」
横で、スコッチの口元がむいと一文字を描いた。ちょっと違ったかな。それとも、やり過ぎ?
「沖矢」
お名前ひと言。どうやらやり過ぎた方らしい。ストップかかっちゃった。
こうなったらやだなぁ、って流れを説明してるだけなんだが。
新一くんが、いつもみたいな冗談めかした呆れ混じりの疑わしいもの見る顔ではなく、心底から警戒している表情だ。
いつもの私じゃ君、響かないでしょ?
「……と。灰原さんの忠告を、グレードアップして可能性を含めてお伝えしてみましたが、どうです?」
「…………」
「騒ぐなとは言いましたが、黙れとは言ってませんよ。…新一くんがどういう状況なのか、ご理解頂けましたかね?」
そーれニッコニッコニー…しかし新一くん、にこにこにならない!
「……信じて良いのか?」
「もしも本当に私や小林くんが組織の人間なら、阿笠さん含めて全員消しますしとっくに上に報告してますよ。その方が身の安全が保証されますし安心だ。新一くんもわかるでしょう?」
後顧の憂いは断ちたいものだし?
「昨日の新一くんが、
「……」
「我々の今日の努力、教えてあげたいくらい大変だったんですよ?」
精神的に一番頑張ったのは安室さんで、技術的には灰原さんで、労力的には小林くんとノアズ・アークだろう。学園祭のMVPは服部くんね。
私は…連絡係で……こう……ね!
新一くんは、先程までの張り詰めていた気は抜けたけれど、私がこんなことを真面目にやる程度には怒ってるのだとわかってくれたようで。
ちゃんと、反省の色が見え始めた。
それでようやく、スコッチは右手を懐に戻したが、それでも腕時計は返していない。
さっすが、油断が無いね!
ここまでの新一くんはどことなく、色々上手くいっての浮かれポンチしてたからね。まさに調子乗ってた。
適度な緊張〜!
「悪かったよ…元の姿に戻れたのが嬉しくてさ」
「その気持ちはわかりますが、元々君の好奇心と後先考えない正義感がその我慢しなければならない原因を生みだした、という事を思い出していただきたい。
今の君に青春を送る権利は無い。君はソレを自ら手放した。
灰原さんの方が、よほど弁えていますよ」
この後小林くんに全部投げるので、こちとら好き勝手言っているわけでございますが。
言うてますけどね、若人は青春送るべきだとは思う。
馬鹿はしてもいいけど、積極的な他人への迷惑だけは止めてくれ。学生時代なんて、失敗するもんだし、そこは仕方ないもんだ。
失敗分取り返そうという努力と、繰り返さない努力と誠意を見せて欲しいのよ。
え?ブーメラン?……私が人に説教できる身分じゃないんだよなぁ。
生きたいのか、行きたいのか、逝きたいのか。
そりゃ生命力溢れた彼だ。組織の連中の元へは行きたいだろうが、どうも見ていて生き急いでるというか、『死にたいのか?』と訊きたくなる行動ばかりとるの止めていただきたい。
いくら主人公とはいえ、ね。
「守りたい人がいるなら、守るつもりの動きをしてください。それが出来ない人ではないと、私は君を評価してますが」
「……うん」
うむうむ。
私みたいに、隠すつもりだったことがうっかりバレちゃったり、知らない間に周りに敵しかいなかったりなんてことも無いだろう。
恐る恐る、新一くんが訊ねてくる。
「で、さ。さっきのって全部冗談だったんだよな……?」
「ふふ。ですから、殺すなんて冗談ですって」
バーボンやベルモットには報告してるけどね!
よし、私からはこんなんでいいや。もうお説教続かない。
さっきまでの私のお説教モードは、ブーメラン飛んできて霧散してしまったのでもうあのテンション取り戻すの無理。
じゃ、後はスコッチさんよろしくお願いしま――うわっ、雰囲気がめちゃくちゃ零くんみたいで怖――
みっちゃん、怒ってる時の零くんの真似上手いね〜!
…………あっ、いや、ちょっ、本気で怖いんだけど。
私まで悪いことした気分になるんだけど!
このお話は基本因果応報でやらせているので、やられたらやり返すしやったらやり返されるように書いてますが、結果的に主人公は誰かにお説教できる人間ではなくなってしまったんですね。
スコッチさんの心理解体超魔術的説法は皆さんの心の中で想像してください。
読んでいただきありがとうございました!