昴くんはなにもしない   作:あまも

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ファイルタイトル改めて見てたら中々どうして酷い事書いてありましたね……

閲覧ありがとうございます!


2-2:後に残った悪魔

 

 

 

 

 新一くんのナビに合わせて安全運転で現場に急行。お目目の可愛い探偵さんが、頑張って体を縮めてくれているのが申し訳ない。

 広めの車内だけど、真ん中に座ってるのが可愛い女子高生の蘭ちゃんだからね。触らないよう気を使ってるらしい。

 

 辿り着いたホテルに、探偵たちが駆け込んで行く。

 

 さて、運転手はどうしたものか。

 ここには広田さん達を殺して攫った犯人がいるはず。そこで捕まえる事が出来ればいいが、逃げられた場合は後を追う必要がある。足で逃げるなら、探偵たちが追ってくれるだろう。

 私の仕事は、車やバイク、タクシーで逃げられた時に追うこと。なんだろうけども。

 ……私の車は、誰かを追う車では無い。この作品、カーチェイスが見どころだった気がするが、馬鹿野郎誰があんな危険運転するか。

 私はピカピカの愛車を安全運転でゴールド免許と共にこの先も守っていくんだ。

 私の愛車は、阿笠さんや工藤氏たちを乗せることを考えて、安全性能と乗り心地を優先したからマジでカーチェイス向いてない。そもそもオートマだし。頼むから今回そんな事にならないで欲しいと願うばかり。

 

 そろそろホテルマンの視線が痛い。ここはタクシー乗降場でもあるので、あまり長く乗り付けとくのも悪い気がする。

 

 とりあえずロータリーをグルグル回っとくか?

 

 と、発進準備にした所で、丁度良く新一君がホテルから飛び出して走ってきた。後ろから蘭ちゃんも。

 2人だけか?

 手を伸ばして助手席のドアを開けてやり、手元で後部座席のドアも開けてやると、それぞれ新一くんが前、蘭ちゃんが後ろに飛び乗る。

 はいはい、お客さんどちらまで?

 

「あのタクシーを追ってくれ!」

「わ、凄い。ドラマで聞くヤツじゃないですか」

 

 言いながら、新一くんはかなり急いでいる様子なので言われた通りドライブに入れて発進。

 

「距離はどうします?前、横は出れたら出ますか?ビタで良いんですか?」

「ビタ…? あ、ああ、とにかく見失わないようにしてくれると助かる。何処に行くのかわからないから」

「おや。キミなら投げるぐらいするかと。わかりました」

「投げる…?」

 

 おっと、蘭ちゃんも乗ってるんだった。

 

 新一くんなら、発信機投げたり何か細工してると思ったのだが本当に何もしてないらしい。

 見失わない、が新一くんからの依頼だ。相手はタクシーだし、決して速度超過もしない。あちらは自由の利かない車。追跡がバレても良いなら……うん、それなら安全運転で行けそうだ。

 後部座席に見える長髪と、肩幅からすると…

 

「女性ですね。広田さんを捜して追っていたから……彼女が娘さんですか?」

「ああ。でも、あの3人は恐らく…」

「あ、一応すぐに降りられるよう準備しておいてくださいね2人とも」

 

 バッカ、お前、蘭ちゃんが乗ってるんだってば。

 

 推理を披露してくれようとしている新一くんの言葉を遮り、左へ曲がるタクシーを追う。

 6台前方に路線バス。先に右車線に入り、前との車間を少し開けてやれば、自然とタクシーが前に入った。素直な運転手で良いね。

 路線バスを抜いてすぐに左に戻ったってことは、この後も左らしい。この方向と道順だと、海の方へ向かっている?

 誘拐されたと思ってた娘さんが生きてて、自由に動いている。ホテルにいるはずの大男の所に、探偵2人が残った。新一くんの、あの3人は恐らく…の言葉。

 ここから考えられる可能性は?

 

 1つ、あの女性が真犯人。2つ、過剰防衛で大男を行動不能にしてしまった。3つ……

 恐らくは、3人ともカタギじゃない。

 

 この世界はミステリーバイオレンスハートフルアクションラブコメ世界だ。今回はどうやら、バイオレンスミステリーらしい。

 じゃあバイオレンス路線で考えよう。

 

 

「説明は後で聞きます。今は彼女が車を降りた後、どう確保するか考えてください。尾行はバレていると考えて。相手はタクシーですから、料金の支払いは発生するでしょうが、どうせ既に余剰に払っているでしょう。タイムロスは無い。

 蘭ちゃん、この面子で頼りになるのはあなたです。彼女が武器を所持している可能性を考慮して、充分に気を付けてください。し…コナンくんも、冷静、沈着、慎重の3つをお忘れなく。お2人に怪我させたとなれば、私が小五郎さんや阿笠さんに顔向けできません。

 良いですか、無理は承知です。無茶はいけません」

 

 所詮この3人とも学生だ。約2名鯖がピチピチしてるがね。やっぱり無理でした!は、許される。だってハナから専門でやってないのだから。探偵なら探偵、警察なら警察が、動けば良いのだ。

 ……本当なら、今もう警察に連絡したいんだけど。

 

「目標曲がりますね。到着です。降りる準備を。

 ドアロックがありますので、こちらで開けるまでドアを触らないでください」

 

 タクシーが停まったのは、商港。コンテナ埠頭の駐車場だった。こちらが入った時点で、遠目にコンテナの方へと走っていく女性の後ろ姿が見えた。やっぱり逃げられたか。

 タクシーが動き出す前に、その鼻先真ん前に車を回して進路を塞ぐ。そしてドアロックを外して、2人に女性を追わせる。

 

 タクシー強盗の手口かな?

 

 2人がコンテナの方に向かったのを確認しながら、自分も車を降り、目を白黒させているタクシーの運転席の窓を叩いて開けてもらう。いやはや、すいませんね。急いでまして。

 

「あ、あの、なんでしょう…」

「すいません、緊急事態です。無線で貴方の会社に繋いでください。警察へ連絡して欲しいんです。

 ──先程あなたが乗せた女性、殺人犯の可能性があります」

 

 ヒュっと息を飲んで、運転手さんが顔色を変えた。わかるわかる。突然そんな事言われたら怖いよね。でも急ぎで警察呼んで欲しいからね。多少の嘘だってついちゃうさ。彼女が何故新一くんに追われていたのか、私は今でもわからないからね。

 私も今も怖いよ。勢い付けすぎて愛車がタクシーと擦れるかと。

 

「え、え?あ、は、はい!無線…無線ですね!」

 

 正気を取り戻して、慌てて無線室に繋いでくれている。いやぁ、助かる。素直で。米花自動車交通ね。良い会社だと覚えておこう。

 無線室の方で慌ただしい声の後、警察に繋ぎますとの声。やや待つ。

 ちらりと、運転手さんがこちらを見た。チラチラと、女性と、新一くん達の消えていった方向を見ているが……

 

「あの…あの子ども達は?」

「あの子達には、あの女性が狙っていると思われる人の確保に向かってもらったんです。まだその人は、自分が狙われていると気付いて無いですからね。そうだ、救急車も呼んでください。怪我人が出る可能性もあります」

 

 あわあわと慌ただしく、運転手さんが頷いて連絡してくれている。とりあえず連絡はこれでOKか?

 

『そちら、現在地は何処ですか?』

「あ、場所…えーと、場所は…」

 

 場所?

 キョロキョロ周りを見ている運転手さん。めぼしい所に場所を示す看板は無い。彼がいくら町に詳しくても、こんな所にはお客さんはこないんだろう。

 手元を見る。

 

「──米花海運埠頭コンテナターミナル第二駐車場です」

「ありがとうございます!」

 

───ボーー────

 ──────────

 

 運転手さんがお礼を言うと同時に、停泊しているコンテナ船が汽笛を鳴らす。ほとんど聞こえなかったが、微かに聞き分けた私の耳が、破裂音を捉えた。

 

 

 

 ■

 

 

 

 結論から言うと、今回は"無理" の話だったわけだ。

 

 

 娘さんこと広田雅美は、正体は10億円強奪事件の犯人グループの1人だった。

 しかし、その彼女は拳銃で自らの腹を撃ち、自殺。罪に耐えかねたのだと警察の見解。

 件の大男もホテルで青酸カリを服毒し自殺。これは広田雅美による犯行の疑いもある。

 父親…父親でも家出人でも無かった彼も、首吊りの形で殺されていた。こちらは大男が殺害したものと見られる。

 奪われた10億は新一くんが広田雅美から所在を聞き出して無事全額見つかり、犯人グループ全員死亡の形で事件は終わったのだが……

 

 もちろん、実際は違う。

 

 

 たまに相手が手伝って欲しい時に、連絡が来る電話がある。

 そこに連絡が来て、すわお手伝いかと意気揚々に出たら最近私が受けた仕事内容の確認と、10億円強奪事件についての説明を求められたのだった。

 

 だから私が新一くんに聞いた、広田雅美が死ぬ間際に組織について教えてくれたことまでの全てを含めて、電話の向こうに教えた。

 

 

「そこで彼らに殺されたそうですよ」

『──そうか……』

「ここまでが私の知るところです。約束ですからね。私は深追いしません」

『……ああ』

「本当に、この事件追わなくていいんですね?」

『ああ』

「調べれば、少しは情報がでますよ」

『大丈夫だ。この件はお前が触れなくていい』

「……その。あなたは、大丈夫なんですか?私はいつでも協力を『 大丈夫だ。 』………。」

 

 一も二もなく遮られてしまった。頑なだな。

 

「私は力をつけました。あの頃より強くなりました。頼ってください」

『────……知ってるよ。わかってる。お前はあの頃から強かった。今も強い。……でも、頼むから……お前は、お前だけは…………』

 

 …………いやいやいや……暗っっ

 

 かけてきた時から暗かったが、電話の向こうの声は、重く暗く、あんまり彼らしくない調子だった。きのこでも生えてそうだ。

 こちらのことを心配してくれてるのはわかる。

 

 ついつい大きなため息が。

 こっちだっていつも同じくらい心配してるのを、努力していつも通りにしてるんだぞ貴様。

 

「わかりました。この件は手を引きます。

 ですが。あなた。私をもっと使うべきだと思います。連中以外の事も調べているのでしょう。使えるものは使うのがあなたたちでしょう」

『──……ああ』

「あなたねぇ。そもそもこの回線、あなたのために引いたのに全然使ってくれないじゃないですか。便りがないのが元気の証拠とか言ったら風邪ひかせますからね。何も頻繁に連絡しろとは言いませんから。近況報告しろとも言いません。

 ……死んだかと思う程久しぶりに、死にそうな声で掛けてくるのは止めてください」

『──…………風邪は、困るな』

「ならせいぜい暖かくして寝る事ですね。裸で寝たりしてませんか」

『──………』

「あっ! コラ!あなたホント何なんですかその癖!」

『──チッ…そっちの調子はどうだ?』

「ゲッ…悪くない、ですよ。そちらの調子はどうですか?」

『────ああ、こちらも悪くない。じゃあ、な』

「ちゃんと暖かくして寝なさいよ」

『ハハ…』

 

 とんでもなく乾いた笑いで切りやがったぞアイツ。

 私の仕事の確認とかロクにしないで終わったけど、良かったのかな。

 

 異様に落ち込んでたし、あっちで何かあったんだろうけど、こっちから聞くのはルール違反だから聞けないし。今現在のアイツについて調べる事もダメだし。

 蘭ちゃんじゃないけど、たまにかかってくる連絡だけが頼りなのだ。

 正体を隠して生活してる人って大変だなぁ。

 

 ……新一くんは新一くんで、自分を死んだことにしたいのか生きてることにしたいのか……態度が曖昧で、イマイチ協力の手段に困る。

 ハッキリしろぃ!と言いたいが、蘭ちゃんを悲しませたくないって気持ちがわからんでもないからね。

 難儀だなぁ。

 

 

 

 ■

 

 

 昨日は1日風が強かった。

 私は阿笠さんちの広い庭と、工藤邸の中と庭の軽い掃除を済ませ、2階ギャラリーで日向ぼっこしながら優雅に大学の論文用の計算待ちをしていた。

 夕方頃になにやら新一くんがやって来たので、阿笠さんとの会話に耳を傾けていると、どうやら昨日、昭夫くんの屋敷に小学校の友人達と忍び込んだらしい。

 

 お前。いやお前。

 

 思わず素っ頓狂な声が出てしまい、1階で話をしていた新一くんと阿笠さんを驚かせてしまったが、いやお前な。あそこ管理の人居るって知ってて、なんで忍び込むとか出てくるかな。「オレは止めた?」入っとるやないかい。

 

 なんでも、昭夫くんちは巷では恐怖の館と恐れられ、一念発起しお化け退治と相成ったそうな。

 

 なんでぇ?

 

 確かに、あそこ近くに小さな森があって烏のねぐらになってたし、夜とか怖いかも…? いやそうでもないか?

 

「アイツら、止めたのに勝手に入ってくから仕方なくってさ……」

「この間の話で興味が湧いたから、『コイツら止めるためです』って言い訳が出来て丁度良かったんですね」

「ほんとにアイツら止まんなかったんだって!」

 

 はいはい犯罪者はみんなそういうこと言って責任転嫁するんだから。

 

 順調に侵入して、ちょっと怖い思いをして、どうやらあそこに今住んでいる人は何か隠してるらしい、と考えて。

 色々してたらなんと地下室への扉を見つけた。

 

「この伸縮サスペンダー、役に立ったぜ。サンキューな、博士」

「わっはっはっは。そうかそうか、役立ったか」

「なんです?それ」

 

 知らない間に知らない発明品をあげてたらしい。見せてもらったら、これまたとんでもない。なんだボタン一つでゴムが伸び縮みって。耐久性どうなってるんだ。

 

 ……そういえばいつだったかの劇場版で、大活躍してた気がする。欲しいなって顔しとこう。

 

 

「で、地下室で一部白骨化した遺体を見付けたんだ」

 

 

 なんでぇ?????

 

 

 

 ■

 

 

 

 遺体は昭夫くんのクソ親父さんだった。

 犯人は今の管理者のおじさん。

 

 屋敷を買い取って、地下室を作り、そこでいけないお薬の製造をしようとしてたらクソ親父さんが怒鳴り込んできて、屋敷の権利はまだ自分にあると主張。

 ズカズカ入り込んできて、地下室を勝手に作ったことに激怒。

 ずいずい地下室に入っていき、見てはいけないものを見てしまった彼のあまりの行動に、今の管理者のおじさんは困ってしまって、つい突き飛ばしてしまったそうな。

 そしたら植木鉢にコツン。2回目はダメだったと、そういう事だったらしい。

 

 自業自得と言うべきか、身から出た錆と言うべきか。

 

「……あー…………アッキーは無事、邪魔されなさそうですね!」

「本心は?」

「本心なんてそんな。……昔助けてあげた人間が、己を省みる事なく残念な結果になった。仕方ないことです」

「あぁ、応急処置したのは、昴くんじゃったか」

 

 そう。昭夫くんが殺しかけた人を、一命を取り留めさせたのは私だ。

 どうやら本当に私は人を見る目が無いらしい。

 

「結果はそうなったけど、昭夫さんは今、頑張ろうとしているんでしょ?彼に人殺しをさせなかったんだから、スバルさんはやるべき事をしたんだと、オレはおもうけどな」

「そうかな?そうかも。…そっかー…」

 

 元気だせって!とニコッとしている新一くんと阿笠さん。

 そうだね、確かに昭夫くんは生きてるし、元気になろうとしてるし。クソ親父はクソ親父だった。それだけなんだ。

 

 よし。

 

「いや!元気出ませんね!阿笠さん、私にも伸縮サスペンダー下さいね!!」

「元気じゃねーか!」

 

 

 昭夫くんにいい報告が出来そうで良かった。今はそれでいいだろう。

 

 

 ■

 

 

『どうした、いきなり電話かけてきて』

「いえ。1度たすけた人が、知らない間に亡くなってたのはツラいなぁと、思いまして」

『……で、俺か』

「はい。元気ですか?」

『ハハ。元気元気、心配するなって。こないだ届けてくれたやつ、重宝してる。また何か出来たら届けてくれ』

「はい。…大丈夫ですか?」

『大丈夫だ。お前こそ大丈夫か?無理してないだろうな。

 頼りにしてるんだから、風邪ひいたりするんじゃないぞ』

「────フッ」

 

 堪えられなくて、笑い声が響いてしまった。近所迷惑なので、急いで抑えるけれど、くつくつと喉が鳴るのが止まらない。

 似たような事を言った覚えがある。似てるのか似てないのか、まったくもう。

 

「大丈夫ですよ。裸で寝てませんから」

『クックック…そうかそうか。────そちらの調子はどう?』

「ええ、悪くないですよ。そちらの調子はどうですか?」

『────ああ、こちらも悪くないよ。じゃあ、また』

「ええ、また」

 

 

 まったく、もう。

 困った人たちだ。

 

 





おそらくこの頃もう秋です


読んでいただいてありがとうございます!

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