昴くんはなにもしない   作:あまも

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真面目な話かネタにするかで悩んでたらよくわからなくなりました。


閲覧ありがとうございます!


25-1:牽羊悔亡

 

 

 ■

 

 安室さんが護身術としての合気道を教えてくれる事になりまして。

 

 ぽんぽんひょいひょい2コロリンピッピッと盛大に転がされまくっております。

 

 相変わらず、その身で覚えろというスパルタ式。

 しかもここ最近の朝のトレーニングにメニュー組み立てから口出ししてくれているお陰で、今の私がどれくらい体を動かせるのかわかった上での指導だ。

 ギリギリ私が出来る動きを見繕って、教えてくれている…のはわかるんだけど。

 

「そら、集中が乱れてるぞ」

「ヌワーッ!」

 

 私がヘナヘナと突き出した腕を取られ、よっこらと背に乗せられて、視界が一回転。強かに背中を打ち付けた。受け身ばかりが上手くなる。

 もっと優しく教えてくれてもいいじゃない!

 

「何言ってるんだ。動き自体はもう覚えただろ」

 

 それは……そうなんですが。

 

 動きは覚えたものの、咄嗟にそれが出来るのか、という私の不安を察した安室さんが、組手として技のタイミングを見つけられるように特訓してくれてるのだけどね。

 

 全然隙なんて無いよ!

 

「お前は昔から物覚えは良いんだがな…ほら、立てるか」

「いてて…すいません」

 

 手を貸してくれる安室さんの手を借りて立ち上がる。

 

 いつもの河川敷に、いつもより早い時間に来て転がされてるわけですが。

 朝露やら草の汁やらなんやらでしっとりとしたジャージに、土埃がきなこ餅のように満遍なくまぶされている。帰り道で知り合いとすれ違ったりしたらどうしような。

 

 私の満身創痍な様子と、陽がそろそろ昇る時間という事もあって今日のところはお勉強会終了。いつもの報告会ついでの帰宅路ジョギングとなった。

 今日は色々話があるのか、ペースはゆったりめ。

 

「カウンターが決まらないのは当然だ。いちいち躊躇いを挟むから、動作が遅れるんだ。本番で咄嗟に出せないようでは覚えた意味がないだろ」

「ですが…やっぱり殴ったり投げ飛ばしたりというのは」

「殴られてる時点でお前が被害を受けているんだぞ」

 

 それは…そうなんですが!

 

「この間のクマ殺しの犯人は仕留めたんだろ」

「仕留めたってなんですか。クマ殺しって言うと強そうに聞こえますが、あれは弱いものいじめする、程度の低い卑劣な奴でしたからね。あの時、私の隣にいた人が危うく殺してしまいそうでしたし、何よりもっと危険なものがそばに居ましたし…」

「つまり、土壇場のクソ度胸か。確かにそれはあるな」

 

 それクソ付ける必要無くない?

 

「そういえば、お前が手続きをしていたから知ってはいたが……銃撃てたんだな」

「そりゃ撃てますよ。昔、みんなで優作先生にハワイに連れていって頂いた時、射撃訓練してもらったじゃないですか」

 

 ハワ親研修旅行に、当時高校生の私と景光くんと零くんの3人まとめて連れてってもらったことがある。

 射撃訓練に陸海空の乗り物操縦に謎解き冒険バラエティーに富んだ貴重な経験でございましたとさ。

 あの頃には既に2人とも警察官を目指していたから、良い経験になるだろうとは工藤氏の談だった。

 

 巻き込まれた私はヒィヒィ言いながらついてったが。

 

 そもそもハワイとかいう常夏の想像を具現化したみたいな島で私が元気でいられるわけもない。

 

 意外と涼しかったけどね。潮風も砂も外国語もノーセンキュー。

 

 

「何発か外してたし、自分でも首傾げてただろう」

「あれはゲームとは違うもんだなぁと実感してただけですよ。後からちゃんと当ててたじゃないですか」

「ああ、褒められて調子乗ってたな」

 

 チクチク言葉!調子乗ってたけど!

 

 

「ああいう、人を傷つける武器は嫌いなのだと思っていたよ」

「嫌いですよ。でも山は危ないですから」

 

 無言で見つめてくるの止めな〜?

 山はわかりやすく危ないけど、人里(東都)も大概危険だぞって顔に書いてあるぞ?

 人間はまだ話せばわかってくれる場合もあるから!

 

「……武装するか?」

 

 それ、銃とか持っておきたいのなら公安経由で手に入れて来てやろうかって話?それとも許可とって来ようかって話?

 それとも、武器として何かしらの携帯をするかって話?

 

「いいえ。武器を持ったら『調子乗っちゃう』ので」

 

 私には、使い勝手がいいか悪いか微妙な、この手袋くらいで丁度良いのですよ。

 

 

「そうか。……と、そうだ。あの英語教師とはその後、どうなった」

「ああ」

 

 ジョディさんとは、ドウジョウヤブリや大会荒らし()に行こうぜなんて話をしてたりなんなり。でもしょっちゅう会ってるわけじゃないな。

 

「ゲーセン行くと高確率で出会えるんですが、おそらくわざと私の行くタイミングに合わせてますね」

 

 私だってやることはやってるので、ゲーセンに定期的に行くことはない。

 それでも、高校での業務が無さそうな時間帯であればかなりの確率で出会えている。試行回数が少ないせいもあってほぼ100%。

 だというのに、店員さん曰く彼女が仕事のない時は入り浸っている……わけではないらしい。

 

「やっぱり私、何か探られているんでしょうか」

「だろうな。ベルモットがアメリカを離れる前にアメリカで出会った男が、あの女が狙いを付けていた新出医院に出入りしており、しかもそいつはかつてアメリカから天才を1人、日本に連れて行った当事者と来たら、それは調べるだろ」

「……あっ、ヒロキくんの件も絡んでるんですかこれ」

 

 安室さんに言われるまで思い出しもしなかったが、天才少年サワダヒロキが活躍していたのはアメリカのシンドラー・カンパニーだったっけね。

 すっかり純国産の日本人(ニッポーズ)だと記憶してたや。

 

「もちろん、彼は日本の宝だ。アメリカなんかに権利を主張される筋合いはないが」

「出てます出てます。安室さん、あっちが出ちゃってますよ」

 

 零くんからの本音がモロりしてしまった。ニッポン大好き降谷さんである。

 

「……とにかく、新出先生は既に青森に行って、今の彼はあの女だ。ヘタな動きは控える様に」

「了解。……今度遊びに行こうかな」

「オイ」

 

 良いじゃん!!定期健診もあるんだよ!!

 

「成り代わっている事を教えていないことにはなっているが、知らないフリなんか出来るのか?」

「ふふ。ご存知の通り、知らないフリは得意ですよ」

 

 最初、主治医の件もあり、成り代わり中の診察はまともな医者にやらせるべきでは?と考えてくれた安室さんは、私に成り代わりの話を教えておくべきではないかと、そう、クリスさんと私にそれぞれ打診してくれた。

 …のだが、私もだけどクリスさんも、面白そうにそれを却下したのだとさ。

 クリスさん的には、『沖矢は私の正体に気付くかしら?』だろうし、私としては『他の人も診察するのだから、ちゃんと医者やれてるか、智ちゃんと比較して確認しちゃるけんね』という腹の探り合いをですね……

 

「お前の隠し事、大体バレてるじゃないか」

「マッ! ちゃんと1番大事なことはいつだって胸の中にしまってありますからね!」

「ホー……?」

 

 普段からうっかりポロリしてしまうことがある私だが、絶対に口を滑らせてはいけないことは頭から裏側で除外してサーチも出来ないようにしてあるからね!貪欲!

 だから何か大事なことがあったような気がしてるんだが何だったっけかなみたいなことは……ん?

 

 安室さんが、朝日に似合わない目つきでこちらを剣呑に睨みつけておられる。

 

「つまりデカい隠し事がまだあるって事だな?」

 

 

 あっ

 

 

 

 

 *

 

 

 磨かれたダイニングテーブルに、金色の頭が突っ伏している。

 

「あのバカは!!本当に!!!バカか!!!!」

「落ち着けって、ゼロ。今に始まった事じゃないだろ」

「だが!」

 

 杯戸町のセーフハウスのひとつで、小さな古い一軒家にて。

 すぐそばの豪邸の主人が手放したもので、調度品をそっくりそのままで、何故か格安で売りに出されていた。

 1人で過ごすにもやや手狭か?といった程度の広さ。

 

 そんな狭い部屋にちょんと置かれた丸テーブルから起き上がったゼロ。

 持って来たペットボトルの緑茶を握り潰す勢いで手のひらに力が……怒りがこもって震えている。

 

「隠し事があるのに内容は忘れたってなんだ!!!」

 

「忘れたってんなら忘れたんだろ。いいじゃないか。思い出したら教えてくれるさ」

 

 

 話せない事で、必要なことではないから忘れたことにしたんだろう。必要になったなら、きっと教えてくれるはず。

 ハルはそういう奴だと、昔からわかっている。

 ︎︎……わかっている、はずなんだが……

 

 ︎︎嘆息が2つ。俺と、ゼロからだ。

 

 

「アイツ、あのくだらない考えはまだあるんだろうな」

「……たぶんね」

 

 ゼロが忌々しそうに舌打ちした。ハルの言う“忘れた隠し事”として俺たちの頭に浮かぶ隠していそうな事がある。

 

 たった1度だけ、ハルが『どうせ、そのうち私は居なくなる』と零した。

 

 まだ学生だった頃の話で、咄嗟に聞き返すことが出来なかった。将来の夢の話をしていた時だったと記憶している。

 彼が何故そんなことを言ったのか、なぜそのうち居なくなるなんて考えがあったのか。その理由こそが、隠し事なのではないかと。

 

 必要以上の人と仲良くなろうとせず。

 研究も、部屋も、車も、電話の名義すらも誰かのものだったり誰かから借りていたり、一緒に連名にして。

 自分の部屋には物を置かずに、大事な物だけは阿笠博士の邸にのこし、使うものは全て、あの物を大量に積める車に載せて行動している。

 更には自分をまるごと移した人工知能、なんてものを作ろうとしていた、なんてことをゼロから聞いている。

 

 いつでも居なくなる(死ねる)用意をしてあるように思える。実際そうなんだろう。

 

 新一くんの件が起こるまでは、ほとんど頼ってくることも無かった。あの小さな名探偵に振り回され、組織の件もあって頼らざるを得なかったのだろうと思う。

 

 それまでは、俺やゼロ、阿笠博士や工藤先生達のような大事な人たちのことを殊更気にかけて、献身的なまでに“借りを返そうと”していた。

 

 何故そんな、いつでも死ねる準備をしているのか。

 

 その理由を、工藤先生と相談したこともあった。

 それでも、あの大先生ですらハルの思考は複数の可能性が考えられるため、一概にコレと定めることは出来ていない。

 

 

「ハルは、『モトハル』をまだ待ってるのかな」

「どうかな。あのバカの考えは、考えるだけ無駄とも言える…言い訳の内容を変えるからな。

『モトハル』に体を返すつもりだと言うなら、到底認められないが」

 

 鼻を鳴らして憮然としたゼロが嫌悪感を隠しもせずに声に乗せる。

 

 今目覚めたとしたら、『モトハル』は子供のままだと思われる。だから、そのサポートになるような、自分のコピーを作ったんじゃないかと。

 もしくは、彼が全てを無くしてしまった事故が事件だったとして、その犯人から未だに命を狙われているのかもしれないと。

 あるいは……

 

「以前、アイツが、自分の自殺の原因がわかった、とか宣っただろう」

「ああ。あれ、なんだったんだ?」

「……推測にはなるが、あれは恐らく自分のコピーである人工知能プログラムが自滅した原因に気付いたんだ。

 データを全て抹消する闇の男爵(ナイトバロン)を利用して…………組織にいた、“スコッチ”という男の情報と、その関連する先の情報を全て含めて自分に繋いで、まとめて抹消させたのではないだろうか」

 

「……そんなこと、可能なのか?」

 

 闇の男爵とやらにデータが消されたのだと、ハルが嘆いていた様子は覚えている。だが、それが組織の、スコッチ(諸伏景光)の記録を消す為だったと?

 

「わからない。だが、アイツは今も生きているのだから、“自殺した”という話はアイツの複製についてで間違いはない。そして組織にも、公安(・・)にもお前のデータは残っていない」

 

 その話が本当だとして、それでも、それは本当にそんなことが可能なのかと疑念は尽きない。

 いくらコンピューターの扱いに長けた彼の作ったプログラムだったからって、そんなことが。

 そしてもしもそれが正解だったなら、ハルは、沖矢昴は、恩を返すためなら自死を選べるということ。

 

 ゼロが、不意に俺の顔を見て眉を顰め、またもや舌打ち。なんだよ。

 

「……いや……お前も同じだろうなと、思っただけさ…」

「……」

 

 あの時、ハルやライが協力してくれていなかったら。

 事前に情報も無く、突然NOCだとバレて、組織の者に追われ、追い詰められていたのなら。

 そんなもしもが、あったならばと何度も想起してはどうなっていたかを考えた。どうしたかを想像した。

 

 俺はきっと、ゼロや、ハルの情報を取られない為に……俺を消していただろう。

 

 けれどきっとそれはゼロだって同じだと思う。あいつらだってそう。

 だから、そんな顔で見たって俺は変わらないし、みんな変わらない。

 そういうものだから。

 

「……頼むから、無茶な馬鹿する前に一言伝えてくれよ。絶対に助けてみせる」

「アッハッハ! そりゃ俺のセリフだろ。ゼロの方がよっぽど無茶するクセに」

 

 

 ♤

 

「なんか今、それ2人ともだろって伝える必要があった気がします。なんですかね」

 

 スバルさんがポソと呟いた。見上げると、首を傾げて不思議そうにしている。

 

「いや、知らねーよ…それよりスバルさん、『東都のヴルドIII』って何?」

 

 ゲームプレイを見ていた周りの人達が口々に彼をそう呼んでいた。

 

「ふふ。メカ吸血鬼です」

「へ?!」

「Oh!ヴルドIIIは彼のゲーム内の持ちキャラの名前デース!突き技が多く、クリティカルヒットでダメージが増えマース!」

「ジョディ先生、詳しいわね…」

 

 ハイテンションなジョディ先生の解説に、感心した様子で頷く園子。蘭がそこで「あれ?」と首を傾げた。

「さっきの人が『米花のシーサー』、彼が『杯戸のルータス』なら……沖矢さんが『東都』と呼ばれてるのって…」

 

 つまり、その土地で1番強い人ってことなんじゃ…

 と、彼を見るとまたひとりでブツブツと、別なことを悩んでいる。

 

「なんでメカ化したんでしょうね…これじゃエリチャンですよね…」

「スバルさん?」

「ちなみに海外版ではキリヌス使いなので最終的に日本もローマです」

「スバルさん?!」

 

 いつにも増して何言ってるんだこの人。

 

 *

 

 

 ︎︎ハルは何を目指しているのか。昔も今も、そこだけはよくわからない。悪いことでは、ないのだろうけれど。

 

「ハルから預けられたこのプログラムもそうだが、アイツ……阿笠博士とサワダヒロキ少年の協力で、何年か……下手したら何十年か先の未来に生きているのでは?なんて思ってしまうよ」

「それは、確かに……」

 

 ゼロが携帯を開き、画面に白い子ペンギンが丁寧なお辞儀をするアニメーションが再生される。『ご希望がございましたらお気軽にお声掛けください。』、と無機質な文字列は、俺のもらったペンギンと違って無感情で、ハルに貰ってからほとんど使ってない様子に見える。

 一方で、俺の携帯を取り出す。小さな白地に青い模様のペンギンが、両の翼を広げて目を細め、『お仕事ですか?』と丸っこいフォントを浮かべている画面。

 ゼロに見せると、俺の顔と俺のペンギンを見比べているその表情が固い。

 

「なんだよ」

「無駄に可愛らしいが、ヒロの趣味か?可愛がりすぎじゃないか?」

「話すると成長するんだよこのペンギン」

 

 説明書にもあったが、このペンギンは情報を取り込んで学び、大きくなる。

 構えば構っただけ、成長するのだと。

 しかし、俺のペンギンは大きくならなかった。

 

 この姿になったのを見たハル曰く、「学習した情報が妙に偏ってますね」とのこと。「何調べさせたんですか」とか聞いてきたが、遊んでただけだからよくわからない。

 

 ハルが自分の研究も兼ねて、このプログラムを渡してきたのはわかっているが、これがどのようにして使われるのか、興味がある。

 あいつなら、抜き取られた情報を悪いようにはしないだろう。

 

「てか、ゼロも使ってやれよ。こんなにかわいいのに」

「……怖い話していいか」

「え……」

 

 ゼロの突然の神妙な顔。唾を飲み込む。弛緩していた空気がまた引き締まった。

 

「見ての通り、俺はこれをあまり使っていない…だが」

 

 かちちと操作して、子ペンギンにカーソルを合わせた。途端、子ペンギンはシャキリと顔を正面に向けて口を開く。吹き出しのテキストが出でくる。

 

 

『どうされましたか? 降谷様』

 

 

「俺は、“降谷 零”関連の情報をこの携帯では取り扱っていないんだが」

「…………一応、呼び方の変更させた方が良いんじゃないか?」

 

 うん……このプログラム、本当になんなんだろうな……

 

 

 ︎︎あともうひとつ。1番重要な話。

 

「そうだ。それと……」

 

 





槍のような蹴り技と肘打ちで相手の急所をピンポイントで狙え、出血ステータスという固有デバフが設定されているが何故かグローブをはめた腕にもその刺突設定が付いているためグローブの中にナイフが仕込まれてる設定なのではと有識者の間でもっぱらの噂だとかなんとか

読んでいただきありがとうございました!
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