昴くんはなにもしない 作:あまも
本日中に用事は終わるはずです…
投稿が早くなるわけではないですが
終始コナンくんからの視点です
閲覧ありがとうございます!
♤
蘭と園子のゲーセン遊びに誘われ、ついて来てみれば現役大学院生のはずのスバルさんが居た。
アンタ、本当にいつ大学行ってるんだ?
クレーンゲームで取れたから、と俺に菓子や、蘭と園子にぬいぐるみのマスコットキーホルダーを配っている。
ここまでは、まだ良かった。ゲーム好きと公言して憚らない彼がゲーセンでゲームしてるのは当たり前だから。
帝丹高校の新しい英語教師のジョディ先生という、アメリカから来た女性が、高校教師の身分だというのにも関わらず、ゲーセンで、元気よくゾンビを撃ちまくっていた。
しかも、その美人で派手な格好の彼女が、スバルさんにとても親しげに抱き着きにいき、スバルさんも慣れた様子でハグし返しているのを見てしまい、ミーハーな蘭がはしゃいだり、園子が冷やかしたりと。
「Yes,yes!オキヤとワタシ、アメリカで出会いました!日本のゲーセンで偶然再会出来まーした!それから、日本のゲーセンについて、教えて貰っていまーす!」
「何も間違いではないんですが、友人ですからね?」
付き合っているわけではない、とキッパリのスバルさんと、付き合ってくれてるじゃないですか、ゲーセンで!とカタコトのジョディ先生。2人の距離感は近く、美男美女だと女子高生達がはしゃいで仕方ない。
……また美人に押し切られて負けてるだけで、スバルさんの言う通り、友人、なのだろうが…この人が、ジョディ先生に飛びつかれてからずっと、公の場に出る時みたいな、普段と違う取り繕い方なのが少し引っかかった。
彼女は、積極的に仲良くしたい人ではないのか…?
そんな2人にゲーセンでの面白いゲームについて聞きながら、ジョディ先生おすすめのゲームである、バーチャルリアリティの対戦型格闘ゲームを紹介され、空手部の蘭が挑戦している様を園子とジョディ先生が横から指示。
…している間に、スバルさんに訊いてみる。しゃがんで話をきいてくれる距離に来てくれた。ゲーセンは音が大きくて騒がしいから、寄ってくれたんだろう。
「ね、スバルさん。あの先生のこと、苦手なのか?」
「ん? ああ。苦手なんですよね…このゲーム。普通にレバガチャでやりたかった」
「…え?」
「彼女は好きみたいですが…野蛮ですよね、殴り合いなんて」
「なぁ、スバルさん…」
「でも駆け引き、探り合いも大事なんです。叩いて被ってじゃんけんポン、みたいなもんですよね」
普段にも増して人の話聞かないな、と思ったが、『苦手』で、『彼女は好き』で、『探り合いが大事』?
蘭のプレイ中の画面から、突然警告音が大音量で高らかに鳴った瞬間、スバルさんが耳打ちしてきた。ひと言。
「(彼女には注意して)」
驚いて彼の顔を見ると、何も無かったように普通に、「乱入者ですね。対戦相手が来たんです」ともう1台の席を指差す。
警戒してるのか?ってことは……まさか、あの人は組織の人間で、こっちに探りを入れに来た女か?!
聞こうとしたのに、スバルさんはいつになく厳しい表情で、ジョディ先生の肩を軽く叩いて、俺を預けてどこかへ。
注意しろと言った矢先に、その相手に預けて行くって…何が言いたいんだ?警戒してるんじゃないのか?
それにあの顔……乱入者のあの男に、何かある?
戻ってきたスバルさんは、1人の男性と店員を連れて来ていた。乱入してきて蘭を負かした男は、ニヤニヤとした表情でゲームの筐体から出てきた所で、店員を見て怒気を滾らせ、盛大に騒ぎながら応援に来た店員たちに囲まれ、バックヤードに連れていかれた。
大騒ぎに、ゲーセン内が騒然となるが、すぐにそれもなくなる。
店員さんと一緒に来ていた若い男性は残っている。スバルさんと話をしていて、蘭もゲームをそのままにしていてくれているので2人の会話がよく聞こえた。
「知らせてくれてありがとうな」
「いえいえ。ダサい男に初狩りなんて邪魔をされたくなかっただけです。ルール違反は良くないですもんね」
「流石、『東都のヴルドIII』。他の店でも『米花のシーサー』は出禁になってる。アンタのおかげさ」
「おや。やだなぁ、『杯戸のルータス』も頑張ってくれたじゃないですか」
あの連れていかれた男について事情を知っているジョディ先生が教えてくれた。
あの男は以前からこのゲーセンでもほかの店でも問題ばかり起こしていたが、暴力団関係者との繋がりの証拠を、今来たあの男性とスバルさんが集めて店に持ってきた為、各地のゲーセンで軒並み出禁になったのだという。景品があるゲームもあるため、そういった繋がりは敏感なのだそう。
ジョディ先生も、あの男関係の騒ぎで警察がバックヤードに来ているのを何度も見たそうだ。
「お騒がせしました」とスバルさんと彼と、戻ってきた店員さんの1人がゲームの周りの人達に断りを入れ、スバルさんが戻ってきて……ようやくこれまでの楽しいゲーセンの時間が戻ってきた。
「さて。ここは基本1プレイ交代制です。蘭ちゃん、次の人に替わってあげてくださいね」
「は、はい!どうぞ!」
蘭が空けた席にスバルさんと話していた男が座り、その後ろでスバルさんが何か話をしている。ややあって、戻ってきたスバルさんはにこやかに微笑んでいた。
「ジョディ先生、蘭ちゃんに改めてこのゲームについて教えてあげてください。今から彼がお手本操作してくれるので、ジョディ先生に解説をしていただいて。
VR、なんて大層な名前付いてますが、実は動きを完全にトレースしているわけではないので、あんなに大きく正確に動く必要無いんですよ」
「そうなんですか!」
「もう!蘭ってば、突然気合い入れるからビックリしちゃったわよ」
今更、気合いの大声を思い出して恥ずかしくなってきたのか、蘭が顔を赤くしている。
「さっきの敗北の記憶で終わるのは、ゲーム体験として好ましくありませんからね。せっかくなら『楽しかった!』で終われるのが一番です」
「OK!操作方法とコツを教えてあげまーす!」
「せっかくですから園子さんも覚えてやってみますか」
「ええっ!あたしも!?で、出来るかなぁ…」
園子の言葉に何故か咳き込んだスバルさん。大丈夫、大丈夫と、男性の周りに誘った。
「で、江戸川くんは危ないからこっち来ましょうね」
「えっ」
何故か抱えられ、空いていたもう1台の筐体側へ。そこに座るのは、スバルさん。
「あの人、志水さんっていうんですが、お手本をする代わりに1戦を頼まれちゃいました。でも私、VR苦手なんですよ。だから江戸川くん…側で誰も私に触らないよう見てていただけます?」
「良いけど…苦手なのか?」
「苦手です。嫌いまであるかもしれません」
にこにこと笑顔で言っている彼からは、嫌いなくらい苦手だと言うほどのものは見て取れないが、腕や足にカバーを着けて、最後に「お願いしますね、江戸川くん」と言い残してヘルメットを被った。
……ああ、なるほど。
このゲームの為にここに座ると、周りの状況がわかりにくい上に、身動きが取れなくなるから苦手なのか。
ルールは2点先取。
1戦目を説明のためなのか、スバルさんの操作する画面の中の髭の生えた壮年の男は、ほとんど攻撃せずにダウン。
あちらからプレイ中の説明の声は聴こえないけれど、ジョディ先生の時折あげる歓声から、何かの小技を教えてくれているようだ。
2戦目は、画面の中の壮年の男は動いた。今度はあちらの防御や回避の仕方を教える為らしく、相手の筋肉量の多い男性キャラは攻撃してこない。1発当てて、同じ攻撃をガードされる、もしくは避けられる。という動きを繰り返しているうちに、相手のキャラクターがダウンして、スバルさんがポイントを取った。
画面の中では動いているが、スバルさんはほとんど大きな動きをしない。
さっきの蘭の操作が、大きすぎたのは間違いないが…にしてもこんなに動かなくても操作できるのか、このゲーム。
3戦目を前にして、ジョディ先生が近寄って来たので途中で止めた。
スバルさんから頼まれているのもそうだけれど、彼が警戒していた相手なら尚更。
「どうしたの?ジョディ先生」
「Round3は『お互い一本勝負』だと伝えに来まーした!彼の操作、見ていてもよろしいですか?」
「うーん?どうだろ。スバルさん、集中したいんじゃないかな…」
ゴーグルの前に回り込んで見ると、聞こえていたのかスバルさんは苦笑い。
「ジョディさんですね。良いですよ。ただし…」
「Of course!!わかってまーす!Don't touch me.でーすね!」
「ふふ。よろしくお願いします」
あれ?良いんだ。
警戒しているのかどうなのか、よくわからないな。筐体にも触らず、横で邪魔にならない程度に手元を覗き込む彼女は、ちゃんとゲームの邪魔をしないようにしている。だから良いのか?
そして始まった3戦目。
このゲームはよく分からないが、これまでの2戦とも説明のための動きだったのはわかった。
けど、この試合は違う。まず試合時間から違う。
一瞬だった。
ジョディ先生の解説曰く、
「攻撃を避けた後のカウンターをコンボでキメて、全てcritical…出血バフを稼ぎ、喉への突きでFinish!相手に何もさせませんでーした!ヴルドIIIはattack、HPのステータスが全キャラ中特に低いキャラクターでーす!だからこその固有能力ですがー、クリティカルヒットは簡単には出せませんねー!操作はとってもDifficult!むつかしいでーす!」
「そ、そうなんだ……」
テンションずっと高いな、この人……
その解説の間にも、筐体から抜け出そうと素早く、ただし丁寧にバンドを外したスバルさんは、筐体とジョディ先生から離れて、俺の後ろに回り込んだ。
何?
しかもそのまま俺を両脇から抱えあげて、無言でぶんぶんと大振りに左右に振り回す。
何????
「何だよ、スバルさん!」
「すいません、ストレス発散させてください」
「はァ!?」
わはは、なんてわざとらしく笑い声を上げながらぶんぶんと。このゲームの設置場所の周りが大画面を設置してある関係で壁際で、少し広いからこそやってるんだろうが…
「迷惑だろーが!」
「えー…」
渋々と振り回すのを止めて、抱え直すだけに……抱えんじゃねーって言ってんの!!!
操作説明を受け、ジョディ先生がセコンドについた園子と蘭が女のキャラクターを選んできゃあきゃあと楽しそうにゲームし始めたのを横目に、大画面を眺めていたスバルさんと、そのスバルさんに両手を握られて足の間に捕らえられている俺。
いつもなら俺が嫌がると止めてくれるが、ストレス発散、と言いながら拘束を止めない。ストレス、か。
…………まー、蘭もゲーム中の間くらいは良いか…
くつくつした喉を鳴らす笑い声。隣に志水さんがいた。
「ぬいぐるみの代わりか?」
「はい。今日は手頃なサイズで良い感じです」
「ぬいぐるみって?」
「私、このゲーム苦手なので、クレーンゲームや景品で、大きなぬいぐるみが取れた日じゃないとやらないんです。そのように周知させました」
「苦手、ねぇ…あんなプレイング見せられて、どこまでホントやら」
スバルさんの言葉に、鼻で笑って返す志水さん。
いつもなら、俺じゃなくてぬいぐるみでストレス発散してるって?何してんの?
あと周知させたって?
「諸事情で、さっきの乱入してきた男を倒せる人を探していた志水さんに頼まれて、彼にコーチングしてた時がありまして。彼、防御と回避がとっても上手だったでしょう?成長しましたよね〜」
「おかげでなんとか奴には勝てたがな……鬼退治に仲間探してたら、バケモンを呼び出しちまった気分だったよ」
「諸事情って?」
俺の質問に、スバルさんは志水さんの方を見た。彼は肩を竦めて、大画面の露出度の高い女キャラクター同士の戦いに目をやった。
「……いいぜ。尾藤とまたどこで出会うかわからねぇ。注意しとかねぇとな」
「だそうなのでお教えしますが、早い話が
諸事情、という事情の内容。ザックリとした概要だけまとめてくれたが、志水さんの妹の元カレがあの男、尾藤で、妹さんは尾藤の大量の借金を返済するために働き過ぎて、栄養失調で倒れ、失明寸前まで追い込まれた。なのに彼女は別れたくないと言う。
それで尾藤に別れてくれるよう、頼みに行ったら、その彼女と別れる条件として、尾藤は『オレに1度でもあのゲームで勝てたら妹と切れてやってもいい』と。
そこから必死で特訓したが志水さんは中々勝てず、遂には尾藤を殺すしかないかと思い詰めたところで――
「ぽっと出の私が東都大会であっさりあの男を倒して優勝してしまったので、彼はついつい声をかけてしまったってワケです」
サラッと言ってのけたスバルさん。ジョディ先生と“ドウジョウヤブリ”と題して、各地のゲーセンや大会で、無名の大番狂わせをしていた時の話らしい。あの先生と、仲良いじゃねーか!!
「そんで、あの男のシーサーより強いキャラなんていねぇと思っていたのに、あれすらも霞む、コイツのキリヌスを見たら……なんか、殺さなきゃとまで思い詰めてたのが途端に馬鹿らしくなっちまってよ……」
「おや、あなたもローマ?」
「ちょっとスバルさんは黙って」
悔しそうに、眉を寄せる志水さん。何故かローマとか言い出したスバルさんを止めて、話の続きを頼む。
スバルさんは真面目な話が苦手だからか、すぐ茶化そうとするきらいがある。どうせあのローマも、何かゲームのネタなんだろ。
「……結局、沖矢のコーチングのおかげで勝つことはできた。……ゲームで勝っても尾藤は妹とは別れなかった。金ヅルを手放す訳無かったんだ。
それで、妹のほうを両親や弁護士を交えて説得することを、沖矢とジョディさんに提案されてな。……皮肉なことに、沖矢の紹介してくれた弁護士を挟んだらあっさり事は運んで、両親の説得で妹は別れることを承諾したし、借金の過払い金まで回収できて妹の治療費にあてられて……俺はこれまで、何してたんだか…って、な」
妹ひとり頷かせられない男さ、と。
自嘲する志水さんを、俺の手を握ったままのスバルさんが、抱き上げて、まるでぬいぐるみみたいに勝手に俺の手で、彼の肩を軽く叩いた。
「それでも、なんとか自分に出来ること考えて、そんなに頑張ってくれるお兄ちゃんなんて、妹なら、嬉しいし…かっこいいお兄ちゃんだと思いますよ」
慰めの言葉なんだろうが…なんでそれを俺の手でさせる必要があるんだよ。
「殺そうとすらしてたのに?」
「うーん? そういう話で反省しているなら、まとめて妹さんに事の顛末まで伝えてみてはいかがです?『殺すとこだったんだぞ〜』って。妹さんが嫌だったのなら、彼女はきっと怒ってくれますよ。『お兄ちゃんのバカァ!』なんて」
「はは…」
スバルさんに可能な手助けを、彼は全て行った後だ。後はみんな、当事者で話して折り合いをつけるべきだと言いたいんだろう。
大画面では、金髪の女キャラが勝利していた。園子のラッキーパンチらしい。
悔しそうな蘭と、空手の強い蘭から勝利を収めた奇跡にはしゃぎ、ジョディ先生に感謝している園子。
もう1戦!とやろうとして、スバルさんの言葉を思い出したのか、次はレーシングゲームで勝負!なんて隣の筐体に移動している。
「ゲームは楽しくやるものですよ。
【ルールを守って、楽しくデュエル!】です」
「ハハハ!それ、他のゲームじゃないか」
何か吹っ切れた様子で、志水さんは店を後にした。3人並んでレーシングゲーム中の高校の面々は、ジョディ先生がぶっちぎっている。
抱きかかえられたままついでに聞いておくか?
「……スバルさん、あの先生って」
「目的不明。悪ではありませんが、考え方は我々とは違います。第3勢力と仮定して小林くんと共に様子を見ています。後日、阿笠さんの家で作戦会議しましょう。それまで気をつけて」
さっきから、抱えようとしてたのはこのためか?と勘ぐりたくなるほど丁寧に教えてくれた。
悪ではない……のに、気をつけて、か。
「わかった。灰原も居た方がいいよな」
「ええ。小林くんもですね」
帝丹高校……つまり、工藤新一について調べているかもしれない。
なにより、蘭がいる。注意しろ、とはこのことか。
気を引き締めないと。
コナンくんがいるのに事件が起きていない?妙だな…
この後バックヤードから悲鳴が聞こえてきたりしない?
男の持ちキャラが露出度高い女の子でもいいじゃないですか
読んでいただきありがとうございました