昴くんはなにもしない 作:あまも
犬かわいい
閲覧ありがとうございます!
加納さん、という方が、阿笠さんのご友人におられる。
先日亡くなられた加納さんのおじいさまの家にある物を、
『アンティークとかよくわからないし価値もよくわからないから、わかる人が持ってる方がいいと思うので、この際片付けついでになんでも好きな物持って行ってもらって構わない』
などというとんでもない気前の良さをみせてくれた、紛うことなき阿笠さんのご友人である。
金持ちの気前怖…
というわけで。
後日、阿笠さんと灰原さんと新一くん、あと小林くんと少年探偵団はおもちゃになりそうなものを取りに来るらしいのだが、今回私は先んじてお邪魔させていただいた。
実は私は私で、おともだちがこちらにはおられてね。
ピンポンとチャイムを鳴らし、チャカチャカとした足音が既に向こうから聴こえている扉が開くと、足元に飛び交ってきたふかふかで息の荒い連中。三角耳と蝶のような耳をめいっぱい押し付けて、撫でろ撫でろ、抱けーッ!抱けーッ!と圧をかけてくる畜生共。
「アーサー!ドイル!」
名前を呼ぶと、わんわんきゃんきゃんと騒がしい。
はいはい、お久しぶりでございます。
おともだちの、柴犬とパピヨン。かわいいね。
飼い主の加納さんが苦笑いしながら見てくる中、しゃがんだ私の周りを高速回転しながらたいあたりしてくるこうらポケモンのこうそくスピンかころがるみたいな連続ダメージ出してくる
「なんというか……本当にすごい懐かれようで」
「いや……これは……懐くというか…………」
珍しい客人にはしゃいでテンション爆アゲなだけで、昔散々遊んでくれた人ってのを覚えてるだけかな。
「……ちょっと……うん………………
“まて” 」
低い声で2匹の眼前に手のひらを突き出す。
うんうん。ちゃんと止まったな。
「よし。いい子」
今度は優しい言い方で褒めてやる。頭をそれぞれひとなでしてやると、2匹とも嬉しそうに足元をグルグルうろちょろとしてはいるが、飛んできたりはしなくなった。
しつけの入った人懐っこい犬はやっぱ良いね〜!
「いやぁ、これくらいが1番かわいいですね」
「昴くんの
「ふふ。飼いたくても飼える自信がありませんから」
私に命預かるような責任感は無い。
「キミなら良い飼い主になると思うんだけどなぁ」
「ふふ…ご冗談を」
私が犬なんて飼った日には、弄り倒して構いまくっていじめ抜くに決まってるんだから。可愛がりすぎて嫌われるタイプの人種ですんで。
気持ちよく寝てる猫の鼻とか塞ぎたくなるじゃん。クシャミさせたくなるじゃん。そういう人種だからさ。
うーん。足元が鬱陶しい。
2匹がきゃっきゃあんあんわふわふと、ケツ上げてシッポ振ってサイドステップ。
濡れた鼻を押し付けられたズボンの脛がしっとりと冷たくなってきた。
こいつら、ひとを愉快に遊びに誘ってきやがる。
シェパードのコナンくんが、私によく構ってくれていたのを覚えてるのだろう。あいつは今でもお前たちのお兄ちゃんなのか?
まったく……
ご主人様とお話してる所でしょうが!
……んも〜
「……ちょっと一旦遊ばせて来て良いですかね」
「ええ。むしろ遊んであげてください」
加納さんから玄関に置いてあったリードとお散歩バックを渡されたので、代わりに私のウエストポーチと車のキーを担保に。いやいやと首を振るんじゃない。
ドイルは100万の犬だからね。担保は大事だ。
オラッ!走るぞ犬共!!小さいのは疲れたら抱っこだ!!
■
ちょっとそこの公園までひとっ走りして、シャトルラン追いかけっこしまくったあとドイルを抱えて帰ってきた。
公園でも給水したが、帰ってきてもあっぱぐち開けて舌出してはかはかしている。
これで満足かッ!オラッ!水を飲んでオヤツ貰ったら空調の効いた部屋でお気に入りのクッションで健やかに眠るんだよ!
「うわ…」
「うわって。こんな野生忘れて腹出して寝てる犬見てですか」
「いや、そこまでアーサーを疲れさせる昴くんに。……ありがとうね」
加納さんにドン引かれてしまった。家に帰ってすぐに、2匹とも大あくびして寝てしまったからな。満足したようで何より。
子供と違って、変に生意気なところが無いから犬はいい。
時間さえあれば満足いくまで遊んでやるのもやぶさかではない。そのための体力……ってわけではないが、大型犬とも付き合える体力はある。
体力だけね。飽きたら終わり。
……しつけのされていない、人間の事をバカにしてくるような犬はノーセンキュー。
さてはて。ようやく本題入れる。
「ええと…昴くんはたしか、貰いたいものは一つだけ、でしたっけ」
「ええ。本当はドイルの首輪、と言いたいところですが、ドイルはこの首輪に慣れてるでしょうし」
寝ているパピヨンの首元の毛を、撫でながら掻き分けると出てきたきらりと光るもの。
首輪にはめ込まれた宝石は、加納さんのおじいさまがわざわざドイルに似合うようにと買ってきたもので、大層良いお値段。
これも良いけど、もらえるなら貰いたいものはただ1つ。
「“ファベルジェの卵”をひとつ。お願いします」
「はい。他に欲しいという方もいなかったので、是非もらってやってください」
加納さんが持ってきてくれた小箱に入れられた、両手ですぽりと丁度よく納まりそうな、煌びやかで細やかな装飾の施された卵。
正確には卵型のジュエリーボックスで、ロシアの皇帝に捧げられた物からこの卵型の工芸細工の歴史は始まったとかなんとか。
由来も来歴も、詳しいことは知らないが、ここにあるのはそんな皇帝さんに献上されたような大層な物ではない。
これはおそらく後に工房が再開されてから作られた後期型だろうけど、作りもしっかりしていて、レプリカとか記念品とか、細工師の人がものの試しにお遊びで作ったりしてみた物なのかな、なんて勝手に思っている。
「昔から気になってはいたのですが、結局おじいさまには来歴を訊きそびれてしまいましたね」
「かなり精緻でキレイだし、案外これが掘り出し物だったりするのかもね。
でも、本当に良いのかい?
それ、開かないけど」
うむ。細工師がお遊びしたであろうポイントのことだ。
これ、中身が何か仕掛けがあって、いくつかの手順を正しく操作しないと開かないらしいのだ。
実際、真ん中を押さえて天辺と台座を同じ方向に回すと、格子状の細工の下で何か模様が移動したり、カキンと何か外れる音がしたり。謎の突起が出てきたり、開いた穴からレバーが覗いたり。小さい中にも様々なギミックが盛り込まれていて、精密機械のような……細工箱みたいで面白いよね。
こう……リンフォンみたいに、開けたらなにか起きそうでワクワクしちゃう。
ま、開かなくてもそれはそれでいいんだが。地獄の扉なんて開かない方がいい。
「ええ。中身にはあまり興味がありませんからね。卵型の飾りって所が良いんです」
「へぇ…?」
アイコンに鳥使ってる私だからね。
せっかくだから大学の研究室にでも置いておこうかな。それともヒロキくんや秀吉にみせてみようか。
阿笠さんにみせて、何かの開発のヒントになったらいい。
……景光くんや零くんに渡したら、開くまで返ってこない気がするから危ないな。同じ理由で新一くんも。
まぁいいや。
お宝ゲットだぜ!
■
新一くんが、服部くんと一緒に福井の美國島に行ったそうな。
美國島とは懐かしい。
何年前だっけな。…まだ2人が警察学校に行く前の…高校の頃かな。
当時、流行り物に弱い私がUMAにハマって熱く語っていたところ、その存在を否定する零くんとUMAの存在証明について喧嘩となった。
景光くんが知識人の工藤氏に相談し、工藤氏から「丁度いいから確かめてくるといい」などとにっこり笑顔で言われ、あれよあれよと島流しされた覚えがある。
人魚伝説について3人で調査し、島の神社の巫女さんが120歳を越えてなおピンシャンしているという長生きの秘訣、もとい謎は、
零くんはスッキリドヤ顔。非ィ科学的な事など有り得ないと豪語。
私はUMAの存在証明はこれで終わりではないと奮起。人魚のミイラだってあったし。…後々それは作り物と判明したけど。
景光くんは何故か、ヒバゴンとかツチノコとか、妙に古くに流行った都市伝説に手を出していた。
見たことある気がするって、それ長野の県境で遊んでた頃の記憶か?やっぱ伝説の最後の秘境・グンマーなのか?
なんて……
高校時代の、私の中で一瞬流行った、都市伝説ブームに関連したお話。
全てはそう……伝説上の生き物さ!
それはさておき、あそこは人魚伝説を観光の目玉にしている島。
設備や整備はしっかりしてて、観光客向けの案内もきっちりして、海鮮料理も美味しいし景色もいい。島のみんなで盛り上げようと、活気に溢れた良い島だった。
長寿の御利益があると話題の儒艮祭りの時期で、きっと彼らも……
いや、現実逃避はやめようか。
この2人だもんな。
どうせ事件が起こる。
そもそも行く理由が『人魚に殺される!』とかいう依頼文が届いたからだし。
小林くんに、儒艮祭りの取材名目で後追いでついて行ってもらったが、島行きの船が荒れる海に阻まれて祭りの当日には間に合わなそうだと、福井のホテルから連絡があった。
仕方ない……か?
てか殺されるから助けて!なんて依頼が来てるのだから、十中八九その依頼主はもう亡くなってるか、返り討ちにしてるかのどっちかだろ。
依頼状…海…離島…船……そこに登場小林くん……月影島を思い出すラインナップだが、成ちゃんの時みたいに炎上したり殺人計画進んでたりしてそうな気がする。
二番煎じ?違うよ。
離島で証拠隠滅するつもりなら、消火の難しい火が1番手っ取り早い。あとは海に投棄だが、海流が島に向かってる事もあるので流れ着かれてしまうと困るし。
やはり火。島なら火だよね。
でも人魚伝説か……
網にかかる、とか、みりん干しが如く乾涸びる、とか、水に沈められて湯豆腐みたいにふやけるとか、焼豚みたいに縛られるとか活け造り…刺身とかあるかも。
でもやっぱ焼き魚でしょ。兜焼きとか塩釜焼き?
と、事件性の可能性を、荒れた海が少し落ち着いた隙に出ると連絡してくれた小林くんに伝えたところ「猟奇的が過ぎる」と怒られてしまった。
頼むから食事に喩えるのはやめろとのこと。
でも人魚伝説って食べてなんぼの世界だろ。
「そんな簡単に事件起こらないだろ」と呆れ声の小林くんはフェリー乗り場に行く、と電話を切った。
しかしその行先には探偵が3人とヒロインが2人いる魔境。侮るなかれ。
大概、景光くんも事件体質だが。
船に乗り込んで早々に、「福井県警が乗ってるんだけど」と平静を装いながら情報収集モードに入った小林君が再度連絡くれてたり。
フラグ回収が早すぎる。
……新一くんと服部くんが船に乗ったり海に出ると、必ず人が死ぬような気がする。
結構前になるが、シンフォニー号とかいう客船で鉢合わせした時にもまぁまぁな数の死者が出て、服部くんも海に落とされたとまで聞いている。
服部くんが新一くんと一緒だと、服部くんの方が危ない目に遭うことが多い気がする。
行動原理と気づくまでの速さが同じで、あとは身体的な違いで服部くんが狙われる事が多くなるのだろうけれど。
それでもなお、新一くん連れて「行くで工藤!」できるんだから……
これが愛か……
今回は彼らの出発前に、一緒に毛利探偵事務所に毛利探偵の実力を見定めに来た、という服部くんのお母様からお礼の品のお礼なんてものをいただいてしまったので、返礼品に困っている。
こうして贈り物相互フォローエンドレスがエターナルになっていくんですね。
うーん、何贈ろうかな。
今回も疲れて帰って来そうな小林くんにも、何か労いの品でも用意するか。
■
ややグロッキーで帰ってきた小林くん。
今回も事件モリモリ盛り沢山で大変だったらしい。
祭りのその日に島の人が1人亡くなり、捜査のため遅れながらも福井県警が島に到着したその時に、次の犠牲者が最初の犠牲者の通夜の行われていた建物のすぐ側で見つかり。
初速から飛ばしてるじゃん。
そこで私から派遣されてきた小林くんが新一くんたちと合流。
「今回、江戸川くんはちゃんと俺の目の届くところにいてくれたんだけど……服部くんが」
新一くんは殊勝にも、駆け出す前に小林くんの顔を見上げ、行ってもいいか確認してから向かっていたらしい。エライ。
ところが、服部くんの方が、一も二もなく制止の間もなくスタートダッシュをキメてフットワークの軽さを見せつけてくれちゃったそうで。
その困惑わかる〜!行動が早すぎるんだよね〜!
それでも襟裏掴んだり新一くんをダシにする事によって、幾らかは抑制して見せたと。
さすが、警察学校時代にバージョン違いの零くん×3と保護者のおじさんみたいな人達を相手にしてただけはある。フッ軽への対処が早い。
小林くんの言うこと聞いてくれないなんて、ファーストコンタクト失敗したの?……と聞くと、そういうわけでもなく、純粋にサイズ感的に止めきれなかったそう。
見た目怪しさ全開の私と違って、ノリの良い小林くんは新一くんのおともだちとして彼から紹介され、気前よく愛想良く懐に入り込み、上手いこと彼と和葉ちゃんの警戒心を解いていったらしい。
服部くんに至っては、組織の元メンバーとして紹介されたにも関わらず、別れ際には「工藤の事頼むで!」と背中バシバシ叩かれるほど信頼を得たそうな。
どうやったの…?
私なんか未だに弄られてるのに。
事件の方は幸い、私が想像させた程のあまりにも猟奇的な事件は起きなかった。
女性が滝に吊るされたり、
女性が網に掛かったり、
監禁の後焼き殺された遺体が見付かったり、
服部くんと和葉ちゃんが崖から落ちかけたり。
ツッコミどころ満載だなおい。最後何?
別件で森で捜査中に、普通に崖からバランス崩して落ちかけて、見当たらない服部くんたち探してた小林くんが引き上げた?
……シンプルに不幸な事故!
「犯人の動機は、“
今回の犯人の君恵さんのお母さまは、私たちが島に行った時の“命様”役だった。
彼女は、今回の被害者たちの些細な出来事からくる腹いせで、燃える建物の中に脚を縛った状態で閉じ込められ、焼き殺されたらしい。
そういうの聞くと、仕方なくないか?と思ってしまう心が確かに浮かぶ。
でも復讐なんて虚しいものだ。
みんな軽率に火をつけるのやめな〜?
火ってあとを引くんだから。
しかし、なんとも……悲しいやらむなしいやら。
「“むごい”事件でしたね」
「……ああ。丁寧な計画性でもって、着実に、迅速に…彼女は犯行を重ねていった。彼女は覚悟はとっくに……それこそ、母親が殺された時にはもう、決めてたんだろうな。服部くんや毛利さん達が来ていなかったら、しばらくは彼女が犯人だとは言われなかっただろ」
「……しばらく、ですか。そうですね」
私たちが島に行ったあの頃ですら、島の中年以上の方々は、“命様”の秘密を知っていた事を、私たちは調べて知ってしまっている。
亡くなった君恵さんと、未だに生きている“命様”。その秘密は、誰かが口を滑らせてしまえば終わりの秘密だった。
島のみんなから、『知っていた。知っていて、それでも黙っていた』なんて聞いた…犯行後の彼女の気持ちを考えると…虚しさもひとしお、である。
どちらも善意と好意、そして故郷への愛ってやつ。
そんな昔話があった気がする。賢者の贈り物とはまたちょっと違った感じ?
しかし、“自分”で
思うところが無いでもない。小林くんがしみじみと呟いた。
「俺やゼロはさ、“小林”も“安室”も存在しないから、好きな時に
「ふふ。そうですね」
「そう考えると、怪盗キッドとか、悔しいけどベルモットとか、凄いな。……変装といえばルパン三世もだっけ。いっぺん実物見てみたいかも」
うんうんそだね〜
……えっ、ルパン三世って、実在してるの?コナン世界なのに?
いや、そうか。金田一くんもいるんだもんな。そういう、コラボ開催!みたいな時の話かな。
…………えっ、ルパン三世とコナンくん、コラボなんかしてたの? いや、友人がなんか言ってた気も……うーん。
曖昧すぎて覚えてないや。
ルパン三世のほうもあんまり知らない。たしかルパンのお話って、たびたび世界が終わりかけてた気がする。
カリオストロの城しか見たことない。
カリオストロ……カリオストロ……そんな国、あったっけ?
……ま、今さらかな。あのハイスペ泥棒おじさん達なら関わらなければ勝手に世界救ってくれてるでしよ。
……さてさて。
赤井秀一は、死を偽装するのだとしたら、この
いっそ、別に 沖矢昴 のような誰かを作るんだろうか。
最低限、用意だけはしておかないと。
せめて歩容くらいは寄せないと、景光くんや零くんたら、秒で気付いちゃうからね。
むしろ
きっと実は面白いお兄さんなんだってワンチャン信じてみるか。
イタズラ好きな愉快な人であれ〜!
ポジティブシンキング∩( ・ω・)∩!
言われて気付きました
こちらのお話が他作品とのコラボネタ擦るとした場合、金田一少年と鍵泥棒さんくらいで、タグ追加されるほど入れるとしたら犯沢さんかゼロティーです。
ルパンさんはテレビスペシャルと劇場版程度まではあるかもしれません。よろしくお願いします。
読んでいただきありがとうございました!