昴くんはなにもしない   作:あまも

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特に理由もなく匿名投稿してます

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31-1:名所の旅館と偽探偵

 

 

 

 群馬の葵屋旅館。

 

 

 なんか毛利探偵を名乗る、変なちょび髭が現れたのでとりあえず新一くんに電話しとくか。

 

 

 と、思ったのに繋がらない。圏外らしい。……新一くんの方が。よし、寝るか〜。

 

 ■

 

 毛利探偵に依頼があり、用事ついでにここまで小五郎さんと蘭ちゃん、そして新一くんを送って来たのは良いけれど、散策道の看板を目にした蘭ちゃんが途中から歩きで行くことを提案。森の途中で降りてしまった。

 

 

 フィジカル……ですかね……

 

 

 去年の秋にひと騒動あった森のネームドクマさんこと十兵衛の子供が、こちらの葵屋旅館近くの山の方に来ているとの情報があり、確認のため、様子を見てきてもらえないかと私に声がかかった。

 ここの近くは“頭神の森”などという名称がつき、古い迷信が信じられている土着信仰がある曰く付きの森。

 悩み有る者が立ち入れば、たちまち頭神に魅入られ、二度と森を出ることは無い……的な話だったか、頭痛が痛いみたいな話だったか……

 

 

 ぶっちゃけ、自殺の名所である。

 

 

 土着信仰とはいえ立ち入りを封じる系の禁忌でもないのだが、地元民は皆何となく嫌、という忌避の心があるから人があまり来ない。自然が豊かで山菜も多いんだけど……山菜と一緒によく、身長を伸ばしてる人も見かける山なのだそう。

 

 私だって、好き好んで栄養豊富(皮肉)な土壌で育った山菜を積極的に食べたいとは思わないのであまり来ない。だから私はここら辺には詳しくない。

 

 皮肉って言葉、そのまま受け取るとなんだか二転三転してそれこそ“皮肉”じゃない?ちょっと面白いな。皮肉の由来の話。

 

 などと、ノアズ・アークとの談笑(ひとりごと)を呟きながらひと足先に葵屋旅館に向かい、毛利御一行の荷物を持って来たのだが……

 

 

 ここで、どうも話がおかしいので一旦荷物は預かったまま、新一くん達が森を抜けてくるのを待つ羽目になった。

 

 そう、謎のちょび髭の、毛利小五郎を名乗る妙な男が、既に毛利小五郎としてチェックインしていた。

 

 

 荷物がそのちょび髭に持っていかれては小五郎さんたちは困るだろうし、私が勝手にそのちょび髭にオウオウオウ誰だテメェどこの事務所のもんじゃオラして返り討ちにあい、殺されては敵わない。

 

 成りすましなんて……有名人の名前を騙るなんて犯罪者。立派な詐欺師だ。探偵さん(ご本人)に登場して捕まえて貰うのが良いだろう。

 

 

 幸い、今日は初夏の木漏れ日がいい感じで、エアコン効かせた車内で森林浴して寛ぐにはもってこいだ。

 従業員さんたちに、待ち合わせをしていて、一緒にチェックイン予定の、メガネの利発そうな子供と、髪の長い可愛い女の子、あと髭のおじさんの3人組が来たら呼んでくれるよう伝えて、駐車場にて運転の疲れを癒すとしよう。

 すやぴ!

 

 

 ■

 

 

 新一くんたち、誰かの車に同乗して一緒に来たんだが。しかも車を運転する彼、藪内さんちの事件で見かけた、群馬県警察のヘッポコな刑事さんじゃない?

 

 小五郎さん宛の依頼内容の、謎の死体とアタッシュケースの謎解明がただの事件では終わらない予感がヒシヒシしてきましたね……

 死体の身元確認くらいかな〜なんて思ってたが、こりゃ新鮮な死体も見つかりそうじゃないか?

 

 クマさんの痕跡を実際に現地捜索するより、この旅館の人に、小五郎さんたちの依頼の件についての話聞くついでに、最近クマを見たかの確認をした方が、小五郎さんも私も一石二鳥かも。

 予定では彼らをこの旅館に送り届けたら、夜まで森の捜索するつもりだったけど、今日くらいは彼らと、というか新一くんと一緒に動いてみるか。

 謎のちょび髭偽毛利小五郎もいるし。

 

 

 あ、そうだった。偽毛利小五郎がいるんだ。どう言おうか。いや、もう受付でビックリしてもらうか。

 

 玄関先で屯している御三方に、彼らの荷物を持って合流。はいこんにちはさっきぶり〜

 

「あれ?スバルさん、なんでここに」

「……江戸川くん」

「あ、えへへ、ごめんなさぁい」

 

 コイツ、わざとか?……今のは本心からっぽいし、誤魔化しの笑顔がかわいいから許すけど……人のこと見て、何でここにいるのかって。

 別にいつの何処に私がいても良いだろうがよ。

 

「あぁ?パソコン小僧、オメー、旅館まで荷物持ってきたら、後は山入るって言ってなかったか?」

「はい。その予定だったんですが、どうも何やら手違い、と言いますか……」

「手違い?」

 

 胡乱げな小五郎さんと、不思議そうな蘭ちゃん。小五郎さんに荷物を渡して、蘭ちゃんと新一くんの分の荷物はそのまま持っていってやろうかと思ったんだが、ちゃんと2人とも自分の分は持つとのことで。

 えらいねぇ。

 今回は山歩き用の装備が私の車に多く積み込んであったのを、荷物を乗せる時にでも見ていたのだろう。それで、私の荷物が多いのだと考えてくれたんだろうが、あの全部を旅館にまでは持ち込まないから大丈夫。

 

 ここで、群馬県警のポンそうな刑事さんがあの〜、なんて愛想笑いで入ってきた。

 

「毛利さん毛利さん、こちらは?」

「ああ?コイツは…送迎の足だな」

「どうもどうも」

「あ、どうもどうも〜…え?誰なんですか?」

 

 沖矢昴言います〜。

 さて、こちらは群馬県警の山村ミサオ刑事。なんだかんだ、毛利小五郎名探偵とはいくつかの事件で御一緒しているらしい。

 デコが広くて、賢そうなのに…既にポンなのをこちらは知っている。残念だが彼は今回、警察としての捜査権限を小五郎さん、の名義で新一くんに貸すこととなるだろう。

 でも愛嬌はある。ヘッポコな感じは、大事なところでなければ面白い人だし。刑事とかより、お巡りさんとかの方が向いてそうな人だ。おばあちゃまとかに人気ありそう。

 

「それで、手違いって何だ、沖矢」

「はい。それは入って受付してもらった方が話が早いかと思います」

 

 まぁ入って、入ってどうぞ。私も客だがね。

 

 入ってすぐに応対に来てくれた浦川さんが、今回山村刑事の用事……事情聴取のお相手さんだった。

 偽毛利小五郎の話より前に、依頼の調査対象の謎のご遺体の話になってしまったが、……これ一般人に聞かせるものではなさそうだし、今遮って情報取り逃しても困る。黙っとこ。

 

 

 丁度いい具合に話を聞き出せた後、小五郎さんが刑事さんではなく、“毛利探偵のお連れ様”だと認識されたので、ここから面白くなりそうだ。

 

 ︎︎…………案の定、素っ頓狂な声をあげておられる。

 こそりと、私の裾を引かれて下を見ると、新一くんが迷惑そうにしておられる。

 

「…スバルさん、面白がってるでしょ」

「バレました? でも、面白そうじゃないですか。小五郎さんの言う通り、ニセモノとホンモノのバッタリ邂逅」

 

 偽物が推理ショーなんてやるのか、って話は置いておいてね。

 

 初めは父親の名前を騙られた事に怒っていた蘭ちゃんだったが、小五郎さんも山村刑事も深刻には思っていなさそうな様子に、一転して呆れモード。

 

 小五郎さん、ご隠居さんはやめません?

 

 先程、私を呼びに来たあと山村刑事の車を駐車場まで持って行った従業員が、車内に忘れてきた蘭ちゃんの携帯電話を持ってきてくれたが、蘭ちゃんは呆れて怒って、ひと足先に部屋に行ってしまったので私が預かっておく。

 ありがとありがと。

 

 

 小五郎さん、ござる口調は恥ずかしいからやめません?

 

 

 

 ■

 

 

 さて。

 

 新一くんを連れて、私の用事であるクマの話を聞き込みついでに、“頭神の森”という土地と、偽毛利小五郎、そして件のアタッシュケースや、妙な自殺遺体の話についての聞き込みを従業員の皆さまに。

 

 大体は、明るいうちに浦川さんに聞いた事や、山村刑事の話、依頼内容の話の補完といったところ。

 

「新情報としては、誰かがイタズラか何かで清掃中の札を勝手に掛けた人がいるらしいってことと」

「廊下が濡れてたって話だね。何か関係あると思う?」

 

 ︎︎そうだねぇ…

 

「子供は今日は君しか泊まってないとのことですし、あの札の場所は客からはわからない場所にあるそうです。そも、大人がやるようなイタズラとも思えません。……これ、何かしら理由があって行われたのではないかと。なので、私的には、関係があると見ても良さそうな気はします。209号室付近まで濡れていた、というのが特に」

「そっか…」

 

 

 蘭ちゃんが夕方、本当にあるかもわからない推理ショーが始まる前にお風呂をすませておこうと、大浴場に向かったが清掃中だと帰ってきた。

 ︎しかし、こうした旅館は得てして、客の入りそうな時間に清掃なんかしないだろう。

 

 風呂で何かあって、掃除したのか?なんてのも考えたけれど、その前も後も、蘭ちゃんは何の異常も感じずにお風呂をすませている。

 

 

 そして、廊下を拭き掃除していた仲居さんに聞いたところ、普段なら夕方に清掃は行わないはずだとのこと。

 しかも、何だか廊下が濡れていて、宿泊客から苦情があったのだとか。それで拭き掃除をしていたそうな。

 

 清掃中の札のかかっていた女風呂から、偽毛利小五郎が泊まる、209号室付近までにかけて。

 

 

 

 依頼の話とは関係なさそうではあるが、偽毛利小五郎には確実に何か関係はありそうだ。

 女風呂に直行か……

 

「覗き、とかですかね」

「……毛利小五郎の名前を騙って?」

「名誉毀損罪…痴漢……まだ罪を重ねるのか、小五郎さん」

「おっちゃんじゃねーからな?」

 

 おっと。偽物だったっけ。

 

 

 

 

 旅館の玄関先近くの談話スペースで、地元の特産コーナーにあった絶妙にかわいくない絵本、“かしらさま”を適当にパラパラとめくり眺めながら、情報を整理してみる。

 ︎︎夕飯が終わり、小五郎さんと山村刑事は酒盛り中。蘭ちゃんはお風呂上がりで湯冷めしないよう、部屋でまったりしておられる。

 

 やっぱり偽物、推理ショーなんて、しないと思うんだが。

 

「スバルさん。今回の事件、どう見る?」

「そうですね…私が注目しているのは3つ。アタッシュケース、赤ジャケットと長髪、そして、偽毛利小五郎」

「うん。やっぱりそこだよな」

 

 新一くんが頷いた。偽毛利小五郎は、直接的な関係は無い気もする。

 

「特に…1年の間、預けておく必要があったアタッシュケース。私はがめつい人間なので、アタッシュケースといえば、中に入れるのは取引の要。となると、安直に金でも入ってるのでは?なんて考えてしまいます。

 他にはなんでしょうね?」

 

 1年間、放っておいても、使えなくても構わないもので、でも後々必要なもの。

 他にはなんだろうな。銃とか、書類とか……

 

「何かの証拠、とか?」

「ああ、そうですね。そういうものもありますね」

 

 ︎︎凶器、写真、相手の何らかの弱み……

 

 だが、どうもその預けに来た男が、外見情報を強調したというのが少し気にかかる。

 名前や顔ではなく、外見。

 

「名前や顔を明かせなかった?」

「……受け取りに来る人が、預けた人間とは別人である場合はその格好をしていれば良いよな」

「…成りすまし、ですね」

 

 男、長髪、赤ジャケット。中々ファンキーな組み合わせだ。たまたま、その格好の人間が来る事は…可能性は無いことはないが、確率としては低そう。

 

 その符号を知っている人間が来るのであれば、男の発言、『死んでも取りに来る』にも頷ける。

 執念的な意味ではなく、その通り、その人が死んだとしても受け取りに行く人がいる。かもしれない?

 

 でもこの場合…

 

「預ける為だけに10万円なんて渡したことを起点に。アタッシュケースの中身が金だと仮定してみましょう。預けに来た男は、顔と名前を明かせないものだったとします。

 ……ここに、とあるTipsを追加」

「?」

 

 不思議そうな新一くん。私は、ノアズ・アークが読み上げるそれをまとめて簡潔に。

 

「5年前に起きた1億円恐喝事件。犯人は2人組で、とある製菓メーカーから、1億円が脅し取られました。その奪われた万札の通し番号はほとんど出回っておらず、犯人たちも現在まで捕まっていない」

「まさか……」

 

 私の予想では、その1億が直に入っているか、もしくはその手がかりになりそうな物が入っているか、だ。

 他のパターンをいくつか考えてみても、一度預けてまた取りに来る、の説明が思い付かなくてねぇ。

 

「さて、コナンくん。5年経ってからの偽毛利小五郎が、今になって、本物より先んじてアタッシュケースを回収したこと…偶然、とは思えないですよね?」

「……俺たちが遅れたのは、蘭の思いつきだったとはいえ、…早めに予約していたスバルさんと同じくらい早くに来ていた……俺たちの来る予定を知っていたのかもしれない、ってことだよな」

 

 私が元々取っていた部屋のほかに、小五郎さん達の分も予約したのは先日。結局相部屋になっているが……

 

「ついでにTips」

「まだあるのか」

 

 部屋の音声を、部屋に置いてきた携帯から観察してくれていたノアズ・アークから報告だ。

 

『毛利探偵が部屋を出たよ。偽毛利探偵が推理ショー始めないから、焦れったくなっちゃったみたい』

 

「小五郎さんが行動開始しました。戻りますか?」

「おまっ、当たり前だ!」

 

 へべれけ状態のあの人が何やらかすかわからない。とてちてと走ろうとする新一くんを小脇に抱え、早歩きで部屋へ。

 こういう所は走らないように。早いが夜だ。既に休んでる方もいるかもしれないからね。

 

 

 

 

 209号室の前にふらふらへべれけ小五郎さんと、上がキャミソール1枚で薄着に見えてしまう蘭ちゃん発見。

 寒くないか?風邪、ひかないようにね。

 

「小五郎さん」

「おぉ〜沖矢。今ニセモノにハッパかけに来てやってんのよ。待ってろ、すぐに推理ショーさせてやっからな〜」

 

 待ってない待ってない。

 

 蘭ちゃんが困ったようにして、扉をガンガン叩いている小五郎さんに止めるべきかどうすべきか、キョロキョロと。騒がしいのは良くはないが……

 

「さっき文句言えば良かったのに…もう逃げちゃってるかもよ、そのニセモノ!」

「いや…駐車場の車の数は変わってませんね」

「旅館から出た人はいないみたいだよ」

 

 蘭ちゃんの言う逃亡説は、それとなく外を窺っていた限りではない。私だけなら怪しいが、新一くんも同じ意見なら間違いないはず。

 

 すると、ガチャリなんて音が聞こえた。

 扉が開いた。

 

 

「ったく……おいなんだよ、真っ暗じゃねーか!」

 

 なのに人がいない。小五郎さんが、ドアノブを回し、開いてしまった。

 

 ……嫌な事が思い付いた。新一くんもそうらしい。私は蘭ちゃんの前に。

 

「解けねーからってふて寝してやがるのか?」

 

 酔っていて、その異常に気付かない小五郎さんは止めるまもなくズカズカと室内へ。新一くんが後を追う。

 

「? 沖矢さん……?」

 

 蘭ちゃんはここでステイだ。一旦ね。

 

「おいコラ起きろ!毛利探偵のお出ましッ――」

 

 

 言葉が詰まり、赤らんでいた小五郎さんの顔が一瞬で血の気が引いた。驚いた表情。

 新一くんが振り返り、蘭ちゃんを室内に入れなかった私を見て、そのままにしろ、と手の平を出して、また室内へ目を戻した。今のうちに、室内の隅々を観察しているんだろう。

 おめーも行くぞ、と言いたいが、へべれけ小五郎さん1人は怪しい。

 ……見たところ、酔いは覚めていそうな気もするが。

 

「こ、これは…いったい……!」

「え?何?」

「蘭ちゃん。従業員の方を呼びに行きましょう」

「え?え? …まさか…」

「そのまさかのようだ。行きますよ」

 

 蘭ちゃんも顔を青ざめる。想像したらしい。これまでもよくある展開だから、想像するのは容易かろう。

 

 さて、従業員を呼ぶのは当然として……唯一の刑事さん、山村酩酊ミサオ刑事を呼ぶべきか否か……困るな。

 

 流石にご遺体見たら酔いも覚めるかな……

 

 毛利探偵が死んだとか言ってみるか。

 

 

 




不謹慎!

部屋番号は209以外関係ないので除外します。

読んでいただきありがとうございました!

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