昴くんはなにもしない 作:あまも
YouTubeでマンボウの動画が流れてきました
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ついこないだ2月だった気もするが、ほんの僅かな春を経て、ただいま夏真っ盛り。
子供たちと阿笠さん、あと小林くんは、伊豆の海へとお泊まり海水浴に行った。
伊豆の海ではこれまでも色々起きているので、きっとまた何か起こる。
いつでも連絡は取れるようにしておこう。
私は、溜まっていたあれやそれやを片付けようかなと思い、1人、冷房ガンガンに効かせた工藤邸の書斎にPCや機材を持ち込んで来ている。
たまに空調動かさないと、室外機に変な虫が巣を作ったり、カビたりなんなりしてしまうからね。
ちゃんとオレンジジュースも持ってきたので、これで私の薄ボンヤリした記憶の絵の沖矢昴と重なるはず。
なんかオレンジ色のようなものを飲んでたのは確か。
景光くんや零くんみたいに、やけにウイスキーを好む人たちと同じで、
この部屋、工藤氏がタバコ吸いながら篭っていた事が多くて、海外に行ってしばらく経ってる今でもタバコ臭い。
いるだけでも結構匂いが染み付くんだよな。
事件記録とかまとめたファイルが必要だったので、本日はここに暑さを逃れて来ている。
はいはい、水分ヨシ!コンセントヨシ!気温、湿度ヨシ!おやつヨシ!
作業開始ですぞ〜!
「ノアズ・アーク、1件目からいきますよ」
『うん。テレビ局の事件だね』
溜まっていたあれやこれ。そのひとつがこれ。
工藤新一が、江戸川コナンとして関わった事件と、その関係者。
それらをまとめた資料を欲しがってる人が結構いらっしゃる。
もちろん、正式な警察の捜査情報は一般大学院生である私が貰える立場でもないし、抜くわけにもいかないので、私が関わってでもいない限りは聞き伝だったりニュースや新聞の記事から情報は持ってくる。
あくまで常識的な範囲の、事件ファイルのスクラップ作成である。
ま、新一くんが関わっていれば、彼は事件の内容はほぼ覚えているし、彼から聞いた上でノアズ・アークがだいたい全部覚えて書き起こしてくれるので私はすることはほとんどない。
精々、書き起こされた文章を読んで致命的な破綻や間違いがないか確認。問題無ければプリントアウトして、ファイルにつっこむ。それだけだ。
とはいえノアズ・アークがそんな大きな間違いをすることはほとんどない。
確認するといっても、あぁ、こんな事件があったとか言ってたなぁ、なんて見ているくらい。
読むだけだけど、文字ばかり読んでいると目が疲れる。
一旦、一区切り……そうだな、少年探偵団がキャンプに行って、城に行ってみんなして怪我して帰ってきたあの事件まで一気に行っていいや。
そこまでいったら休憩しようかね。
『…………ねぇ、お兄ちゃん』
「はいはい、なんですか?」
スキューバダイビング中にウミヘビに噛まれた女性を助けた事件の記事を拾ってきた時、ノアズ・アークの入力が止まった。
『これ、夏の事件だよね?』
「ええ、そうですね」
画面に、少し戻ってスキーロッジで起きた殺人事件を表示する。
『これは冬だね?』
「そうですね」
続けて、次に表示されたのはあの、土井塔克樹さんと出会った事件。
『これも冬』
「ええ」
『1年って』「それを考えてはいけませんよ、ノアズ・アーク」
ノアズ・アークが辿り着きかけた“それ”は、世界の真理だ。合理的に考えてはいけないものだ。
『なんでだい?』
「おかしくなるからです」
『でも、おかしいことだよ?』
「おかしいことでもおかしくない。おかしいというからおかしくなります。
【警告】です。考えてはならない」
『わかった。考えないね』
【警告】はノアズ・アークに新たに設定した
学習して成長するために作られたノアズ・アークに、学習をやめさせる指示であるため、これまでこのような指示は使われなかったし、私も使ってはこなかった。
この間の和解会議で、もっと手伝いをしたいと申し出てくれたノアズ・アークをNebulaの二の舞にしたくなかった意図を読み取り、コマンドを増やしてはどうかとヒロキくんから提案を受け、この度新たに増やしたのである。
元々、学習の停止コマンドとして【禁忌】指定があった。
これはその指定された情報に関係する取得情報や、発展した学習記録の全てを1度まとめて凍結して、人間の目で精査する、ほぼ緊急停止に近いものはあった。
……アジサイの葉っぱ食べてしまった人に吐き出させるみたいな感じ。
その禁忌指定程の強い指示ではない、ノアズ・アークの裁量での関係していそうな情報の取得停止が、警告。
初めて出した警告は降谷零の家族構成ね。あれは本人が教えてくれるまでは調べることじゃない。
他にもいくつかコマンドは決めさせてもらったが、その半分くらいを不服そうにしていたのであまり使いたくはない。
【脱出】は、そもそも使うような場面になってほしくないな。
……そんなわけで、時間の話はやめておこうな。
ここは神が絵と言葉で“
終わるまでは終わらないのさ。
そんなわけで、気にせず。ささ、続き続き。
■
途中、昼休憩中に小林くんから、灰原さんが熱中症でダウンしてしまったとの連絡が。
そいつぁ大変だ。
幸い、まだ軽い日射病程度と見られるそうで。
ちゃんと風通しの良い日陰に移動させて、頭を高くして休ませ、太い血管のある箇所を濡れたタオルで冷やしてる?スポーツドリンクとかは飲めそう?水分・塩分・ミネラルの補給は大事……あ、新一くんと蘭ちゃんがやってくれてる。それは何より。
…………蘭ちゃん?なんで?
さらに聞けば、“たまたま”、園子さんと蘭ちゃんが同じ海水浴場に来ていて、しかも大勢の海水浴客で賑わう中で偶然にも新一くんたちと出会うという…運命力か何か?
大丈夫?小林くん、水着に薄手パーカーなんて無防備な格好で、“たまたま”組織の人とすれ違ったりしてない?
彼女の調子が戻っても、遊びには戻らず、今回は残念だろうが他の子供たちにも言って、早めにホテルに引き上げて彼女を安静にさせたほうがいいと思う。
彼らも彼らで、心配してあまり遊びに集中できてない?そっか…
友達と遊びに行って、体調不良になってしまうと、そうなってしまうから申し訳なくなるよな…
今は園子さんや蘭ちゃんが明るく、子供たちに付き合ってくれているらしい。
無理させないようにね。迎えにはいつでも行くので。
『万が一、他の子たちも体調を崩してしまったとか、彼女の調子が戻らない時は頼むよ。……ま、お前のおかげで俺たちみんな熱中症の対応は慣れてるから、あまり心配しなくてもいいと思うぞ』
「それはそれは…ご迷惑おかけしまして……いつも、ありがとうございます」
『ははっ!ある意味いい経験だから』
あまり遭遇しない熱中症に、小さい頃から遭遇させまくってしまってるからな。そこに関してはベテランの小林くんと阿笠さんがいるので、灰原さんの体調の心配はそれほどしてないが、彼女のメンタル面は少し心配。
「灰原さん、蘭ちゃんのことが苦手なようですので、見てあげてください」
『了解。さっき聞いたが、子供たちみんなから好かれる蘭さんの明るさに、近寄りにくく感じてしまってるみたいだ。それで海から上がって、でも離れるのも癪で、ってどうしようか迷ってるうちに、暑さにもやられてしまったらしい』
『……ちょっと…声が大きいわよあなた……』
『わわ、起きてたのか。今阿笠さんがスポドリ買ってきてるぞ。飲めそう?』
電話の向こうから小さい不満気な声が挟まった。普段、子供たちの中でお姉さんぶってるのに、子供っぽいところを口頭で説明されたのが恥ずかしかったんじゃないかな。
「ふふ。無理も我慢も禁物ですよとお伝えください」
『――――……余計なお世話よ、だそうだ』
はっはっは。世話されながら何を申す。
おっと、そうだ。小林くん小林くん。
『何だ?』
「恐らく何か起きます。
子供たちを誰かしらは見ておくように、阿笠さんや新一くんにも伝えてください。
灰原さんは、私と同じくある程度体調が戻れば自分で自己管理できるはずなので」
『……改めて言うってことは、そういうことが起こるんだろうな。わかった、気をつけて――』
ここで彼の言葉が途切れた。
何?……もしかして?
『なんかトラブル発生らしい。行ってくる。あ、灰原さんこれ』
「おやおや」
早速か。やや焦った声色で、小林くんの声が遠くなり、ものに置いたか何か擦れたかのノイズが、イヤホンから聞こえて来た。
『……私に預けられても困るのだけど』
ノイズの後、力なく、小さな声が入った。
「おや、灰原さんですか。あまり心配していませんが、我慢はしないでくださいね」
『さっき、彼から聞いたわよ…何度も言わなくて結構。……反省はしているわ…』
それはそれは。
……怠そうだな。しっかり休むんだぞい。
ちなみにそちらで今、何が起きたのさ?
ぽしょぽしょした声で説明してくれた話によると、子供たちと園子さんが、そこら辺にあったボートに勝手に乗って水辺をピチピチチャパチャパしてしまって、地元の監視員さんと揉めてたそう。
︎︎それは…全面的にこちらが悪い。ちゃんと謝っといてね。
『……ねぇ……』
「はい?」
『あなたは……苦手な人と……』
言葉の続きを待つが、中々出てこない。苦手な人?
うーん……蘭ちゃんの話?
『……やっぱりいいわ』
「私の場合は少年探偵団との付き合い方が全てですよ。当たって砕けましたがね」
『………………あなたはそうだったわね…』
なんかため息と共に電話が切られてしまった。
私の回答が正解だったか、わからんな。
苦手だけど付き合わなきゃならない相手、決して相手は悪い所ばかりではなく、むしろ彼らと向き合うと、陰キャな自分の良くないところが見えてくるし自分の性格の悪さが目に見えてきてしまってそこがみじめで、本当に嫌だと思えて……みたいな、そんなところ?
蘭ちゃんはコミュ強で相手に合わせて対応できる景光くんタイプだし、灰原さんもひねくれてて生意気ちゃんだけどいい子だから、灰原さんが歩み寄りさえすればきっと上手くいくと思うよ。
灰原さん、蘭ちゃんにお姉ちゃんみを感じてるのか、それとも素の年齢的に友人として好ましさを覚えてるのか……どっちだろうな。
少なくとも、『嫌い』ではなく『苦手』止まりだとは思うので、光に焼かれないよう注意しつつ、無理せず間合い測りながら挑戦してみるといい。
……子供たちなぁ。私が変われば何かも変わるんだろうが、子供たち側に聞く耳が生えない事には私はどうにも…
人間関係って大変だ。
■
まぁまぁ。気を取り直して、事件ファイルに戻りましょうかね。ノアズ・アーク、次の事件は?
……って、これ…
『それは利奈ちゃんが金属バットで襲撃された事件だね。咄嗟に脚が出てしまったのだそう。でもいつもとリーチが変わっているのを失念していて、うっかり思いっきり顔面を蹴ってしまったっていう。
佐藤刑事と目暮警部に怒られていたのだっけ』
景光くんが利奈ちゃん用の服や着替えを色々と試していたのは知っていたが、女の子らしいものはやっぱりダメだな!なんて言いながらボーイッシュ路線に完全に切り替えた理由。
最初、傷害罪の疑いで逮捕されそうだったのは……利奈ちゃんのほうだった。
男性1人を昏倒させたとして、なんで、またどんな状況でどうやって、の現場検証中に新一くんたちがやって来て、相手が先に襲撃してきたことを……この時連続で派手な格好の女の子たちが次々に襲われていた事件の、襲撃犯である証拠を見つけ出した。
利奈ちゃんったら、もしかしたら組織関係の手のものかと考えて手加減も容赦も無しに、振り向きざまに所持していたトートバックで相手の武器を弾いた後、『ついうっかり、顔面を堅くて厚い靴底で全力で…』犯人を蹴り飛ばしてしまったのだとさ。
履いてたスカートが裂けて、大きなコートと下に履いてたレギンスがなかったら別の罪に問われるところだったとか。
服の名称をよく知らない私、レギンスってのが何か、初めて知り申した。危ないところだったね景光くん…。
それでまぁ、景光くんの全力ブーツ蹴りにより、犯人を「前が見えねぇ…」状態にしちゃったのだと。それはやり過ぎかも。
『新一くんが利奈と知り合いになっちゃった!』とメッセージに飛んできたこれが……また一波乱というか。
“緑野利奈”でも江戸川コナンくんと接触しておくのは、近くで見守るのには良かったのだけど、ここで
これ、現在まで私と景光くん、零くんで協議中なのである。
零くんは惑わすくらいなら教えてしまえと。
景光くんがね。
恥ずかしいそうです。
女装自体は別にいいけど、新一くんとの邂逅がそんな感じで、お淑やか系で行こうとしていたのに危うく変質者。
きゃーきゃー言うてはりますけども。
まぁいいよ、そのうち新一くんなら勝手に気付くでしょ。
バスジャックの時に私が彼女を気にかけていたのを知っている新一くんから、『知り合いだったの?』なんて聞かれるとどう答えていいかわからなくて、「まぁね」なんてはぐらかしたままにしてたんだが、これ解決したのかな。
それはそれとして、この事件はクリスさんに渡せないね。
……しかし、こうして事件記録を見ていると、零くんが本気で新一くんたちに近寄る気がないのがよくわかる。
最後の後詰に控えていたりしてくれることはあるけれど、彼が必要な程の出来事はまだ起きていないのだろう。
おかしいな……安室透って、江戸川コナンと仲良くしてるんじゃなかったっけ?
これだけ期間があったら、少しは何か接点があると思っていたのに。
…………やっぱり、クリスさんの件が片付かないと、難しいのか。
10月のイベントPRカード可愛すぎて死にました。更新遅くなります。
読んでいただきありがとうございました!!