昴くんはなにもしない 作:あまも
10月忙しくなりそうです
東に住む人間なもので西のことはよくわからず……、すいませんがエセやにわかな間違いがありましたらどうかご容赦ください。
閲覧ありがとうございます!
大阪来たでやんす。
……やんすじゃないな。やで、やな。
西の方言、イントネーションに耳馴染みが無くて聞いてるとちょっとだけソワソワするよね。
って話を昔、零くんと景光くんにしたら、突然真剣な顔で聞き返されたのを思い出した。なんのタイミングだったかな。
耳馴染みがないということは、西日本に住む人間より東日本に住む人間と交流があったって事で、つまりはこの私に何らかの関係があった日本語を扱う人が、東日本側の人だったってことだろ!……と。
私の何かしらの手がかりになるのでは!?と2人して喜んでおられたのだけれど、沖矢のお父様は東北出身の人だよと工藤氏に言われガッカリしてたんだっけな。
うーん、懐かしい。
色んな人と関わってきたけれど、西の言葉はソワソワしてしまうのは変わらないな。
またもや新一くんが服部くんに大阪にお呼ばれして、せっかくだからあの胡散臭いほうのにーちゃんも呼んだれや、とのことでついてきた。
服部くんへの恩返しの機会があるかもしれないし。
美味しいご当地グルメが食べれるらしいと聞いてね。
今日はなんと、私の愛車は米花町に置いて来てある。
小林くんが使うとかなんとか…傷とかつけないならなんでも良いさ。
ジャックされないバスに乗ったり、色々あって初めて大阪の電車に乗ったり。
それだけでも結構楽しかった。
というわけで、服部くんのお宅で大阪のお鍋、“テッチリ鍋”なる、料理。
赤いかと思いきやあっさり系のお鍋をご馳走になっている。
西の言葉に囲まれて、それだけでもソワソワしている。
だというのに。
服部くんの実家だという平屋の日本家屋が広くて服部くんが良いとこの子っぽくて!
お父様が大阪府警察の本部長だという話は知っていたけど一緒にご飯食べるとは思ってなくて!
しかも和葉さんのお父様の大阪府警刑事部部長の遠山さんまで一緒で!
知らぬうちに警察のお偉いさんに囲まれてしもうて……!
ヒィ……!
「……スバルさん、味わかってる?」
隣の蘭ちゃんを迂回して、背後側からひそりとコナンくんが囁いて来る。
わかるわかる。反対となりに刑事部部長殿がおられて緊張はしてるけど、鍋の繊細なお味はわかるよ。
昆布とふぐのおだしが利いてて良い感じ。ポン酢料理、結構好きである。
「テッチリのチリって、辛いって意味じゃなかったんですねぇ…うん、白菜が美味しい…」
「なんや沖矢ハン、テッチリの事チリ鍋やと思っとったんかいな」
服部くんが遠慮せんと食え!などと、私の取り皿にフグの身をひょいひょい入れてくれながら教えてくれる話曰く。
調理法が確立されてなかった当時、フグ毒中毒で鉄砲みたいに人がバンバン簡単に死んでくからふぐのことを“鉄砲”なんて呼んでいて、白身のことを“ちり”と呼ぶ事と合わせて、“テッチリ鍋”、なのだとか。
人間ってホントばか。食への探究心で何人犠牲になったんだろうな。……日本人ばかりがそうなわけでは……ないじゃん。キャッサバとかも青酸系の毒物じゃん。
でも美味いもんは美味いから……仕方ないね!!
ムチムチほろほろのフグの白身美味しい…正直肉より魚のが好き。
「死んででも食べたいお味ってことですね。とっても美味しいです」
「せやろ〜?オカンのテッチリは天下一品やからな!」
ニッコニコご機嫌な服部くんに、隣の席の和葉さんが寄りかかった。さっきから箸も持たずうつらうつらしていたのは見えていたけど、ついに寝てしまったよう。
今日は服部くんの剣道部の大会があり、その応援に来たはずだったのだ。
どっこい、当の本人が何故か発生した殺人事件の解決に走り出してしまって、和葉さんはずっと、試合に間に合うよう帰ってくるのか、心配しておられたそうな。
そゆとこやぞ!
だいたいそんな、和葉さんのお父様の目の前でそんな、満更でもなさげにイチャついてしまってはお父様の心象が大変な事に!
と、隣を見ると、遠山の銀司郎さんはいいもん見たなのお顔である。
おや?
あらあらまぁまぁ。
お父様、もしかして娘さんの旦那さん、とっくに認めてらっしゃるの?
まぁまぁまぁ。
親公認だなんて!良い事じゃないですか!
「なんや、さっきまでむつかしい顔しよったかと思ったら、いきなりニヤつきよって」
「ええ?だって……ねぇ?」
「ねぇ?」
隣の蘭ちゃんに話を振ると、流れを見ていた蘭ちゃんもニコニコと面白そうに返してくれた。
ご機嫌だった服部くんは、いたたまれなくなったようだが、流石にお父様の目の前で娘さんをぞんざいには扱えず、自分の座っていた座布団を後ろにズラして、そこに和葉さんをゆっくり、優しく、気遣わしげに、丁寧に寝かせてやった。
「……なんやねん!ねーちゃんら、ニヤニヤしよってからに!」
「ええ?だって……ねぇ〜?」
「ねぇ〜?」
蘭ちゃんと2人、またこっそりニヤけてしまう顔を見合わせてそゆことやんねぇと言外に。
視線を下に逸らすと、呆れ顔だがからかい心は隠せていない新一くん。お前も大概、面白がるよねこういうの。
でもまわりのみんなが暖かい目で見守ってるからね。
頑張るといいさ。
アオハルだぞ、少年。
よーし、しいたけもらいまーす。
■
本部長殿も、仕方ないなと口では言いながらも迷惑だとすら思ってない様子で車に乗り込んで家を出ていった。
これがおじちゃんたちの仲良ぴの波動か…
“てぇ”ですね。
景光くんに何もなかったら、零くんと景光くんもこんな、階級の差も何も気にせずに迷惑かけてかけられて、な、対等な関係を続ける……良いおじちゃん達になってたのかな。
景光くん、警察に戻れたりする時って来るのかな。
……階級なんてなくたって、お友達はお友達か。
…………景光くんたちの、警察学校時代のお友達もいい人たちだったろうに。
沈む夕日に照らされて、良い松の形のシルエットを写す庭を眺めていたら、緑が見えた。
部屋の電気が点灯し、背後から照らされて、視界がパッと明るくなっただけだが、明かりをつけた人がいるわけで。
「なんや、しんみりしとるやんけ。オトンらと話したいことでもあったんか?」
「服部くん」
縁側でのんびりさせてもらっていたら、服部くんと新一くんがやって来た。
新一くんに、このお屋敷といって差し支えない自宅案内していたようだ。畳の上をちょろりと新一くんがかけてくる。
同い年なはずの隣の服部くんと、足の大きさから長さから、全部小さくて……いやぁ、猫みたいだ。かわいいね。
「……手入れの行き届いた、良いお庭ですね」
「スバルさん?」
はい、はぐらかし失敗!新一くんもいるので、ここで探偵ボウヤたちの目はごまかせない。しんみりしていたのは確かだが、それは話しにくい話。
「いえ…階級の上下も気にせず、昔ながらのご友人関係を続けておられて、良いなぁ、なんて思って見ていたんです」
「ああ。オッサンたちな。年甲斐もなく、よーく前に出て来やがるもんで、部下の人らが困ってんやと。大滝のおっちゃんとか大変やろな。
偉い上司は後ろで座ってろっちゅーに」
「でも現場に来てくれるのは、うれしいことですよ」
こう……水戸黄門とか、暴れん坊将軍的な感じのノリを感じる。
あの人達、公私混同はしなさそうに見えたが、やる時はやってるのだろうか。厳しそうに見えた。
あれくらいのプレッシャーがあると、私みたいな根っこに小心者を座らせてる人間は吐くもの全部吐いちゃうだろう。
刑事さんらしい人だった。……思い出すは、先日連絡先交換にこぎ着けた山村刑事や、未だに連絡先の貰えていない高木くん。彼らとは似ても似つかぬお人柄。
私はああいう、抜けてそうな、優しそうな刑事さんのが好きかなぁ。誤魔化せそう。
「あと、アレはオッサン同士で内密な話があったんやろ」
「あ、やっぱりそうだったのか」
新一くんの納得の言葉に、事件の話やろななんて頷いて。
あれ、そうだったんだ?
おじちゃん2人の仲良しエピソードかと思ったら、思惑があったらしい。
「今起きとる事件絡みの相談事やないかと思とんのやけど…」
「へー……今起きてる事件…」
そうして、探偵ボウヤ2人の言葉が止まる。
ちらと、日本庭園から2人に目を向けると、眩しいほどの期待に充ちた目と、おもしれ〜もん見たそうな顔。
だから私の事探してたの?
へいへい。任せんしゃい。
携帯を取り出し、ポチポチと。
『ふふ。大阪で起きている事件をピックアップしてみるよ。どういうものが良いかな』
「何か、ありますか?大阪で起きている事は、東都に住む私にはピンとは来ません。なんでも構いませんから手がかりをください」
「服部」
「せやなぁ…大阪城のやつやろか」
私が調べようとしている気配を察して、服部くんにぺちぺちとなんかないのかの催促する新一くん。少し考えてから出てきたキーワード。
大阪城のやつ?ふむ。
『いくつか並べてみたよ。大阪城の、というのはこの事件のことだと思う』
「おや。……おやおや。焼死体なんて見つかったんですか。大阪も怖いところですね」
“数週間前に大阪城の内堀で焼死体発見”だって?
今日、服部くんが発生から遭遇し、新一くんが来る前になんとしてでも終わらせると気合いを入れて、爆速で解決したという事件……剣道の大会中にも死体が出てきて、さらには真剣振り回して大暴れした犯人なんて中々の事件もあったというのに。
ちなみに事件を優先した結果試合には間に合わなくて、当然和葉さんは怒ったし新一くんは呆れていた。
そゆとこやぞ。
東都はいつも通りだけど、大阪も大概だな。
やはり探偵のために事件が起きているに違いない。
「ああ。それってなんかあったんか?」
『13年前にも、大阪城の内堀で焼死体が見つかっているんだ。
それと、これは公開されていないけれど、どうやら謎の焼き物のカケラがどちらの遺体からも発見されているみたい。それで、警察はこの13年前の事件と今回の事件、関連性を疑って捜査中なんだってさ』
『未公開情報をどこから拾って来たんですか?』
『えへへ……』
ノアズ・アークへと携帯の打ち込みで訊ねた言葉に、右耳から照れ笑いの音声が返ってきた。
えへへじゃないが。
しかしまぁ、中々ファンキーな事件らしい。記事を読み上げるように、2人へ概要をざっくり伝える。
「……ホー、13年前と同じような持ち物、同じような遺体、同じような場所――13年前ともなれば、お父様方も現場でバリバリに働いてらっしゃったのでしょう?その頃にあった事件と同じような事件が起きたなら…」
「お、おお…なんやそれ、ホンマかいな」
「スバルさん、その事件、詳しく教えて!」
新一くんが私の肩に飛びかかり、携帯の画面を覗き込んでくる。服部くんも勢いはそこまでなかったが、となりにヤンキー座りにしゃがんで首を伸ばしてくる。
興味を引けたようで何よりだ。
2人に、ノアズ・アークが持ってきてくれた、被害者の所持していたという謎のカケラの写真を見せながら、事件の概要を説明。
かくかくしかじか四角い……四角いのも可愛げはあるよね。
「この形状のカケラ、こら徳利とか壺とかの口んとこ…なんやろけど、意外とちっさいモンなんやなぁ」
「“八百四十八”も、一体どういう意味が…」
2人がピンと来ないってことは、これだけではまだ鍵が足りないらしい。
舞台は大阪。
焼死体……であることは関係あるんだろうか。
お堀で2体も遺体が見つかっているなら、特に大阪城が重要?
ふむ……
大阪城と言えば?
太閤秀吉〜!
『――昴。どうしたの?――大阪? 今日キミ大阪にいるのか? 太閤の大阪城だから僕に連絡した?またよくわからないことを……
大阪城炎上で心当たり?あるわけないだろ』
無いらしい。
念の為、東都で研究会中の現代の太閤閣下に心当たりはないか、電話をかけてみたが『無い』とのことなのであいつはこの事件には関係ないんだろう。
じゃあ歴史上の太閤閣下では?
『炎と大阪城と言うならば、大阪城そのものが2回燃え落ちているね。今建っているのは再建されたものだよ』
ほへぇ。
燃えた後でも、建て直ししてでももう一度、そこにお城が欲しかったのか?
なんにせよ、大阪城に何かありそうとは名探偵のボウヤたちに伝えたし、何かしらはあるでしょう。
今日のところはおやすみおやすみである。
■
そんなこんなで翌日、和葉さんの案内の元、やって来ました大阪城。
大阪を一望できる天守閣からの眺めを、楽しく見ていたのは私と蘭ちゃんだけで、服部くんはやいのやいのと文句を言っている。
大阪の有名なお祭りの時期は逃してしまっていて、前の服部くんプロデュースの大阪ツアーと似たような事を言うしかなくなってしまったそうな。
辛うじて大阪よく知らない私が今回は新顔である。ぷりぷりと言い合いして喧嘩の始まりそうな2人に、見応えがあって楽しいから何も問題はないと伝えると、蘭ちゃんも肯定して参戦してくれた。
新一くんだって、落下防止の網に落ちてるなにやら何かを眺めて想像中なようだし。
なお、小五郎さんは高い所が大嫌いなのでそれとなく、集団の最後尾をキープして、内側の壁から離れようとしていない。
それでも、喧嘩の仲裁…というか普通に騒がしかったのか、服部くんへとそーゆーお前はどうなのかを問う。
「そーやなァ…オレやったら… 大阪城の真ん前に構えてる、あの大阪府警本部ん中隅から隅まで見学さしたるけどなァ…」
「アホ!そんなん面白がって見たがんの、あんただけやって!」
などと言うておりますがね。
見下ろすと、新一くんは行きたげだし、私も興味本位で行ってみたいかも。
景光くんや零くんへのお土産話にはなりそうだが、同時に一般人が隅から隅まで見れると思うなと怒られそうだ。
しかし、大阪府警本部って本当に大阪城の目と鼻の先にあるんだ。
近くに大阪府庁もあって…こういう、城の傍に重要な建物を配置する傾向はお城がキチンと残っていて、その周りの整備や開発が進んでいる所だとよく見られる気がする。
都市開発はよくわからないが、確かに人の流れは操作しやすいかもしれない。イベントとかもやりやすそう。
お城の周りが公園になってるの、良いよねぇ。映えるし……
私がぐるりと天守閣からの1周パノラマでの眺めを堪能している間に、戻って来たら名探偵ご一行はなにやら妙な一団に絡まれていた。
良くない人達、というわけではないようだが、あれか。
大阪城詳しい野生のおじさんが、豆知識教えてくれた事から始まっているらしい。おじさんは珍妙なツアーの参加者で、家康だの光秀だの言いながら仲間と共に去っていった。
変な人に絡まれたからってわけでもないが、そろそろお昼になるし混む前に服部くんのおすすめのお店行こうぜ、と、大阪城を出ることに。
「変なツアーもあったもんやで。なぁくど……コナンくん。……どないした?
いや待て、さては…あの事件についてやな?」
「ああ…」
昨日、推理するにも情報が足りないから推測にしかならないし、
階段降りる途中の考え事は危ないから止めようね!
お昼にと、私の要望で本場のお好み焼きを頼んだところ、とても美味しいお店を案内してくれた。
せっかくだから私が奢って、ついでになんか見たいとこ無いのかと言われて、そもそも通天閣に行ったことがない話をしたらほんなら、と通天閣に。流れで食いだおれ旅が始まりまして。
前は粉もん中心に、名物をたらふく案内したからと、今回はスイーツ巡りとなり男性陣が早々にギブアップ。
私は甘いのもしょっぱいのも大丈夫だから。
みんなの分、奢りますんでね。しょっぱいのとかも挟みましょうね。
意外なことに、ギブアップしながらも服部くんは女子と男子とで別行動にはせず、律儀についてきていた。そうなると新一くんや小五郎さんもついてくることになり、付き合わせて悪い気がして、早々に切り上げて次は何を見ようか……なんて話をしていたら。
「……アカン、財布があらへん!」
と、和葉さんが顔を真っ青にして悲鳴をあげまして。
事件発生である。
……こんくらいの事件なら全然いつでもござれなんだよなぁ。
ノアズ・アークに小声で聞いてみるに、盗まれる要素はほぼ無かったはず、とのこと。
なるほど確かに、人混みの中もいつも後ろから小五郎さんや探偵ボウヤたちがそれとなく目を向けてくれていたし、大阪城以降は財布係の私が金を払っていたから、彼女の財布は鞄の中で眠っていたはず。あったなら。
ってことは?
「「『大阪城で出して、置き忘れて、そのまま?』」」
服部くん、新一くん、そして私のみに聞こえるが、ノアズ・アークの声が重なった。
とんぼがえりである。
でも、早めに見当ついて良かったねぇ。
本場のお好み焼き食べてみたいですね
読んでいただきありがとうございました!