昴くんはなにもしない 作:あまも
しなきゃいけない作業がある時、何故かそれではない方の進捗が良く進む現象
やらなきゃいけない方の進捗ゼロですやばいです
でもキリの良いところにはしたかっ
誤字脱字報告ありがとうございます!漢字間違い、毎回やってて申し訳ない
閲覧ありがとうございます!
小林くんがサポートした新一くんに、怖いものなんかないわけですよ。
小林くんが部屋の中の怪しい点と危険な物をポコポコと見つけ、それが利用されそうな情報を私が聞き込み。
件の女性、出月映子は、森田さん宅のオーディオ機器の揃った大画面テレビで大音量でひとり映画館として楽しむのが、(はた迷惑な)趣味だったそうな。大音量過ぎて、マンションの他の部屋の人々にも、話の内容が解るほど聴こえていたらしい。
で。
その出月映子が、森田さん宅を訪れ、金銭のやり取りと返済についての会話を行っているのを小林くんと新一くんで確認、
そして、森田さんは噂のオーディオルームへと彼女を案内した。
我々3人で、ああ、なるほどと嘆息するなど。
ビデオデッキを使ったトリック、などという、私からしてみたら酷く前時代的な物で彼女の頭上に重い花瓶をぶつけるつもりだったらしい森田さんには残念だが、全て見抜いた新一くんと小林くんが、リモコンのチャンネルを変えてしまったので何も作動せず。
無事でニコニコと帰っていった出月さんに、困惑する彼には諸々の説明をせねばならない。
腕時計をさも今見つけました、という様子で発見して、我々は相談があるので、と阿笠さんと灰原さんに子供たちを任せて、困惑と、1周まわって無力感と憤りに顔を真っ青やら真っ赤やらとコロコロ変えて震えている森田さんをリビングへ誘う。
こういった人は、とにかく困らせると混乱して、全部ワケわからなくなってしまうタイプの人である。
というわけで……
「森田さん。あの人を殺そうとしていましたね?」
名探偵と小林くんに、推理ショーを開催していただきまして。
横で聞いていても、当事者でもなんでもないし、この人とは何も関係は無い私なのだけれど……
自分のしでかそうとした事が悪いことだという自覚を持った上で、どのように計画され、どう準備してどうやって行おうとして、それらが何から何まで、全部見てきたように1から10まで解説されるの、胃がキリキリしてきそうなくらいキツい。
花瓶と枯れかけた花でなんでこんなに言われなきゃならんのだ……
森田さんが、2人から一言一言告げられる度にしおしおに萎れていく様が、かわいそうで見ていられない。
公開処刑かよ。
もちろん、森田さんだって悪いことだってのはわかってたんだよ。でもあのクソババアがあんまりにも酷い女だったから、誰かがやらなきゃいけないと思って、もう森田さんには後がないから、やるなら自分が、1番被害を受けた自分こそがって気分で今回この犯行に及ぼうとしてたのであって……形見の時計だって、ずっと大事にしたかったものだろうにとても質の良さそうなあれが、もしかしたらいずれあの女に奪われていたかもしれないと思うと…
「それで……ハル? どうした?」
「いえ……お気になさらず……」
「いや、解決の方の話なんだが」
ちょっと森田さんがあんまりにもしょもしょもになっていて、かわいそう過ぎてね……
いつの間にかお話が私の方に回っていたらしい。
気を取り直して。森田さんかわいそう問題は後でもかわいそかわいそできるから。
えー、コホン。
「貸金業法というのはご存知ですか?」
「へ?」
落ち込んで、反省しきりな今がチャンス。
こういう状態の人は宗教とかマルチとか通販とか引っ掛かりやすそうで、それはそれで心配になるな。
まぁ今は都合がいいのでね。…畳み掛ける方向で行こう。
「不特定多数の個人を相手にお金を貸し、利益を得る行為は、貸金業登録がなければ違法行為…いわゆる、ヤミ金とみなされる可能性があるんです。あの人は立派な犯罪行為をしている事になります」
「えっ、えっ、あの……」
「彼女には、そういった登録をしている記録はありませんでした。しかし、額と人数は十二分。金利もかなり法外で、被害者…ええ、ここでは被害者とさせていただきますが、被害者の方々の経済的負担、精神的苦痛の件も含めれば、かなりの勝算が見込めます。
これはこちらの、ひとつの提案です。ですが、建設的なものだと思います。あなたには、その暗い覚悟を、戦う覚悟へと切り替えていただきたい。
我々は、良い弁護士を紹介できます。あなたに、長い戦いを強いることとなるやもしれません。いいえ、きっと長い戦いとなるでしょう。ですが、少なくとも……ここで終わらせてしまうよりきっといい話ではないかと。
是非1度、ご相談下さい。
……あなたが首を括るより、あの女の頭を割るより。
良い結果を、奥様の墓前に報告出来るかもしれませんよ」
「……」
こういう人は、愛した人をダシにされると弱いはずだ。
あれだけ設備の整ったオーディオルームがあって、あれだけ沢山のビデオを揃えている人なら、映像作品をそれだけ好んで観ていたはずだ。
棚に並ぶのは、ハッピーエンドの作品が多かった。
きっと、そういう終わりが好きな人のはずだ。
今は奥さんが亡くなったばかりで、心が疲れているだけだろう。
「……森田さん。彼が勧めようとしている弁護士さんはね、ボクも知っている人だけど、とっても良い人だよ。とっても強くて、素敵な人で……悪い人を、絶対に許さない人なんだ。……きっと、森田さんの力になってくれると思う」
新一くんが、あえてとても子供らしい、たどたどしい喋り方でぽつぽつと。
小さな手を、森田さんの手にそっと添えた。
小さくなった外見を最大限に利用した、子供らしい純粋で、真っ直ぐな、無垢な青い瞳が、クシャクシャに歪んだ森田さんの顔を見つめている。
「森田さんのクラブサンド、とっても美味しかったよ。みんなも、スバルさんや小林さんが絶賛してたんだから、絶対、森田さんのお店を待ってる人がいると思う」
「ああ。あんたのサンドイッチ、最高だったよ。是非また食べてみたい味だった。こんな事で、食べれなくなるのは惜しいって」
小林くんは小林くんで、にかりとした笑顔で、とても気さくに、人懐っこく。
暗い気持ちでいっぱいいっぱいの人に、2人して光をぶちまけている。
……なにこれ……宗教勧誘の手口かな……
なにはともあれクシャクシャだった森田さんの瞳に光が戻ってきたし、料理人には料理人なりの、喜びとかプライド的なのがあるんだろう。うん。きっとそう。
■
妃さんの連絡先と、小五郎さんの連絡先、それと妃さんに相談してから、たぶん改めて奥さんの再捜査が必要になると思うので、信頼できてこういう事件に親身になってくれそうな、佐藤刑事の連絡先と、あとこっそり安室透の名刺に私の連絡先を書いたものをまとめて渡して、森田さんの家を出た。
あの女なぁ。あれ、どうももう少し大きな後ろがいそうな気がする。
3人並んで、夕方の赤い光で照らされた、毛利探偵事務所への道をとぼとぼと歩く。
「森田さん、裁判やる気になってくれますかね」
「頑張ってくれると良いけど……お金とか、大変そうだよな」
「まぁ……妃先生なら、支払い期限はかなり待ってくれそうな気はするけど」
妃さんは、森田さんみたいな依頼人にはかなり親身に話を聞いてくれる人だ。
ああいう、大事な人のために何かしたくて、けれどどうすればいいかわからなくて、どうしようもなくなってしまった人の対処はとりあえず妃さんに投げとくと、後日妃さんの信者がひとり増えていることになる。
あの人は9:1くらいで信者か敵を作る人なので、本当に法律で困ったらとにかく投げとけみたいな使い方してしまって、しょっちゅう迷惑かけてしまっている。
チョコで足りないかも。
……小五郎さん、ボンボン分けたかな。
……しかしまぁ、今回な。
「私、ああいう女性は嫌いですね」
「あー、俺も苦手。てか好きにはならないだろ」
「それどういうタイプの好き嫌いの話してる?」
「「人として」」
「それならボクも嫌いかな」
それはそう。
「あれ、こう……趣味の悪い政治家みたいな感じじゃないですか」
「あー…? あれか。『なんか、追い出すみたいになっちゃって悪いわねぇ』のやつ」
「そうそれ!」
「ああ、言ってたっけなそんなこと」
『私はわるくないんだけど、この人が勝手にやってる事なんだけど』みたいな……
『くれるって言うから貰ってあげただけなんだから、文句はないわよね』みたいな……
「私あれ本当に嫌いです」
「いや〜好きなやつはいないだろ」
自分の顔が、渋面になっているのがわかる。小林くんがケラケラと笑い飛ばして、新一くんは頷いてくれている。
この世界の殺され系金持ち(?)の2割にいるタイプの人たちだな。選民思想というか……
あの、自分より下とみなした相手をとことん貶めて楽しんでるタイプ。
いじめっ子気質なんてかわいいもんじゃない。
自分の事を上位の人間だと勘違いしてる連中…?
小物のくせになんかほざいている奴…みたいな?
なんで悪ふざけでも何でもなく、本心から人を虐めて、貶めて、指差して笑って…あんなに下品で不愉快な動きが出来るんだろうか。
他人のこと、どう見ていたらあんなことができるんだろうか。
心底不思議である。
この世界における上位の立場の人間ってのは、この目の前でのほのほと歩いている2人のような、清く正しく、そして強い人達だろうに。
あと美人。
ここで、小さい方のかわいいのが振り返った。夕日でいつもより目の色が深い、複雑な色に見える。
うおっかわい
「なんか今回、森田さんに対してスバルさん、とっても親身になってたけど……あの出月映子さんが嫌いだったからってこと?」
うん?
考えもしてなかった言葉が出てきたな。親身?
「そんなに親身でした?」
「確かに。すっごい心配してたよな」
そうかな?そうかも。
感情移入してたような気がしないでもない。推理ショー中とか、めちゃくちゃかわいそうだったし。
そんなに言わなくても良いじゃん……わかっててやってんだよ……!って庇いたくなっちゃったもんな。
アッキータイプだな。けれどそれほど関わりもないし、彼と彼、似てないと思うんだが。
「なんでですかね?」
「オイオイ、わかってねーのかよ…」
「ハルが彼のことを気にしてた理由かぁ…そうだな…」
新一くんが、また呆れ顔で片袖下げてガックリと。
小林くんが、サングラスをちょりと上げて、ビルの窓を反射した夕日の眩しさにか、すぐにサングラスをおろしてしまった。
この時間帯、サングラス使いにくそうだね。時間帯偏光の調整してみる?
「あれかな。奥さんに怒ってたんじゃないか?」
「『奥さんに?』」
私と重ねて、不思議そうな声が右耳から。聞いていたノアズ・アークも不思議だったようだ。
新一くんがしたり顔で頷いた。
「ああ。そういうことか」
「へ。コナンくんはわかったんです?」
2人とも、私のことよく見てくれてますねぇ。
なーんで私が自分でわかってないこと、わかってくれてるんだか。
「私が奥さんに対して怒ってたって…なんでまた?」
「さぁ?ただの予想だよ。ってか、俺はハルじゃないんだぞ。そんなの自分の気持ちなんだから自分で考えろよ〜」
小林くんはケラケラと笑いながらそんなこと言って、事務所の前まで来た所で1歩、大股で私たちから離れる。
「じゃあ、俺は車、向こうに停めてたからさ。またな江戸川くん!」
「え、言い逃げ!?」
「うん、またね小林さん!」
軽い感じで片手を挙げて、車通りの無い隙に道路に飛び出していった。
ぷんぷんと手を振り返す新一くん。
そして軽快に走り去り、反対車線を越えて、向かいの路地に入っていった小林くん。
謎を残していきおって。名探偵に訊くしかないな。
「怒ってたって…江戸川くん、私怒ってたんですか?」
「さぁ?ボクもスバルさんじゃないからわかんないや!」
さっきなるほど納得してたやんけ。
小林くんのように言い逃げして帰ろうとしていたのか、事務所に上がる階段の途中まで駆け上がった新一くんは、ピタリと動きを止めて、少し降りてきてちょいちょいと、私に内緒話を要求してくる。
何かね。
私からも階段に足をかけ、顔の高さを揃えるべく、しゃがんでやる。
なんか、ガラ悪くなっちゃったな。ヤンキー座りよりはマシか。
「…そういえばさ、スバルさん、いつの間に森田さんについて調べたんだ?事務所出て、歩いてる間も携帯ほとんど触ってなかったじゃない」
「あー…」
流しててくれたけど、せっかくだから気になったし聞いておこう、くらいのノリだな。
私は右手の人差し指で、自分の右耳を指差した。
「博士に作っていただいたイヤホンから、情報を読み上げさせていたんですよ」
「ああ、伊豆の時の合成音声ってやつか。……じゃなくて、その情報ってどうやって集めたのさ」
「そりゃまぁ、ポチポチと」
昨今の世の中にはブラウザの検索機能というものがありますし。
おう、睨むな睨むな。
ふと、眉を顰めて睨んでいた新一くんの目が、私の右手に止まった。ジィと見て、瞬きを1つ。
「?」
「スバルさん、手袋直したの?」
小さな手が、私の右手を握った。自分の右耳を指差していたので、甲の所が見えたらしい。
「これですか。直したというか、この間の大阪での炎上と水没でメンテナンスしてもらった時に改良されましたね」
元々、すべっとした黒い革手袋の見た目だったのだが、今は謎の黒い縫い目が指に沿って2本、人差し指と中指の辺りに追加されている。
なんでも、最近物騒で、私がよく怪我して来るからと……色々と耐久性を高めつつ、工夫してみたうえで……
突きにも対応してみたそうな。
……ピーッス!
…誤爆とかありそうで怖くて、腕組めなかったりする。
改良か?これ。
「……」
「言わんとしてることはわかります」
新一くんたら、暗い階段でなんとも言えないお顔をされて。
私に刺突で相手を倒せるわけないだろうに。
「それじゃなくって」
違った。
「……ま、それはいいや」
良くないぞ。途中で止められると、こちとら気になって仕方なくなる。
なんだってんだい。
「いいの。スバルさんは、森田さんの奥さんになんで自分が怒ってたのか、とか気にしたほうがいいと思うよ」
「それ、本当にわからないのですが、私、怒っていたんですか?」
「怒ってたというか、『苛立ってた』が正解かな」
ただいまー!なんて、事務所の上の毛利さんちに駆け上がって行った新一くんの言葉に、私は階段の途中で腰掛けたまま首を捻ることになった。
小林くんのいい逃げ方を真似しおって!
「ノアズ・アーク。私、怒ってました?」
『うーん…どうだろう』
はて。怒るってなんだろうな。
考えてみたが、よくわからない。
︎︎床を見つめていたら、階段に射し込む夕日に、影が出来た。
「なんだ、こんな時間までかかってたのかおめーら」
「小五郎さん」
呆れ顔の小五郎さんである。出かけてたのか。
︎︎依頼かなにか来ていたんだろうか?
「こんなとこでなーに黄昏てんだ小僧。家に蘭がいたろーが。あの時計探しはどうしたんだ。見つかったのか」
私を足で退かして、階段をのしのしと上がりながら。振り返りもしない。
……みんな、私の扱いがぞんざいだなぁ。
「……時計は小林くんが見つけてくれたんですがね、なんだか妃先生のお力添えが必要そうな事件だったんです」
「あぁ?……なんでそこで英理が出てくんだよ」
酷く不機嫌な声色。
なんだかんだでお互い好いているんだから、そんな喧嘩腰にならんで良かろうに。
蘭ちゃんの計画の、同棲はしないほうが良いと思うけどね。
「色々ありまして。そしたら、是非小五郎さんにもお手伝いしていただきたい内容もあって――」
「だーっ!そこから話すんじゃねーっての!全然わかんねーじゃねぇか!
オラ、上がってけ!…蘭! 追加だ!」
ありゃ。怒られた。……怒られた?
見上げると、上から、小五郎さんちの玄関の明かりで照らされた小五郎さんが、めんどくさそうな呆れ顔で見下ろしている。顎をしゃくって、家の中にふんふん顔を動かして。
「……良いんですか?」
「こっちだって遊んでるわけじゃねーんだ。あの依頼でなんかあったんだろ。聞いてやるからオラ、とっとと来い。今日はこの俺が奮発して買ってやった肉があるからな。…ったく、メシ時に来やがって……
︎︎てかオイ、あのグラサン小僧はどうした!その日のうちに報告まで終わらすのが決まりだろーが!」
「ぇあー…はは。すいません、呼びますね」
いつ決まったなんの決まり?
……これは、あれか。
私があんな所で座り込んでいたから、落ち込んでると思ってしまったのか。
また心配させてしまって……申し訳ない。
言い逃げして逃げた小林くんは、まだそれ程離れてないだろうと電話をかけてみると、ワンコールで出た。早いな。
「もしもし?小林くんですか?」
『うん。あれだろ、毛利さんに報告までしろって怒られたんだろ。わかった、今行くよ』
「……聞いていたんですか?」
『聞いてたっていうか……』
小林くんはそこで言葉を切った。ややおいてから。
「『聞こえる距離にいたっていうか」』
「ワッ」
電話しながら毛利さんちまで階段を上がっていたのだけれど、途中で背後からも電話口からと同じ声が聞こえた。
ビックリしながら振り向いたら、足音も気配も無く、3段下から見上げてにこりと笑う小林くんが。いつの間に!天井にでも張り付いてたのかお前!
「い、いたって、どこに」
「向かいの路地。ちょっと話があったからさ」
「話?」
「ホラ」
向こうの路地が見える段まで何段か降りてからチラ、と覗き込む。
赤い小さな光と、ぷかと浮かぶ煙が路地に浮かんでいた。
……………………路地の闇に紛れた黒ニットと、赤い小さな光に照らされた高い鼻と彫りの深い顔。ちりと輝く緑の瞳。冷え冷えとした美形。
……赤井しゃん!?
「毛利探偵事務所見てたんだってさ」
「なんで!?」
何の用があって?!
「おめーら!!肉が冷めるだろーが!!!!」
階段の途中でそんなわやわや騒いでいたら、階段上から、小五郎さんの怒声と、お父さんうるさい!との蘭ちゃんの怒声。
と、と、とりあえず上に……
いや赤井秀一ナンデ!?
今度こそすいませんが本当に低速になります。
むしろ更新されたらそれはやらねばならないはずの作業が行き詰まっています。まずいです。
頑張って早めに終わらせられるように……集中を……
読んでいただきありがとうございました!