昴くんはなにもしない   作:あまも

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すいません作業終わってないです
でも出先とか移動中とか休憩中にポチポチしてたものは出来ました
せっかくなので投稿します

作業BGMにばんぷ聞いてたらキャラクターのイメージに大変あっていたので流石はオタクに刺さるバンド


閲覧ありがとうございます!



36-1:森の中の古い友

 

 

 

 ある日

 

 森の中

 

 群馬県の山奥で

 

 円谷光彦くんに出会った。

 

 

 おめぇ……よくもまぁひとりでこんな所まで。

 

 

 しかも人の顔見るなり、ホッとしたかと思ったら次の瞬間には青ざめて逃げ出す。

 

 まったく。殺人鬼にあったみたいな顔して。

 猟銃は背負ってるけど、私、人は撃たないぞ。

 

 

 そして森の中でガキンチョが、私から逃げられると思うなよ。

 

 

 街中や平地なら零くんに負けるが、森の中なら零くんや景光くんにだって引けを取らない機動性が私にも……

 いや……やっぱり無理かな…あいつら現代のニンジャだから。

 

 誰なら勝てるだろう……阿笠さんには勝てるよ。

 

 

 そんなんでも、山歩きはかなり慣れている私である。

 円谷くんがすっ転ぶ前に早めにさっさと回収して、『お前の苦労をずっと見てたぞ…』とゴールデンな感じで語りかけた。本当によく頑張ったな?

 

 だがしかし相手はガキンチョ。ネタは当然通じない。SNSはまだ全然普及してないし。見たこともないだろう。

 残念ガオガオ。

 ……今始めれば、我慢が報われて莫大な富を得られるってコト?はは。んなわけ。

  なんかレモンみたいなハーブ系の…何かつけてる?虫除けか?

 

 

「な、な、なんであなたがここに」

 

 なんでも何も、君の大体の目的も、目的地も、クエストの達成状況も知ってるさ。見ていたと言ったろうに。

 彼が遥々米花町から、ひとりで電車に乗ってこんな所まで来てるのは知っていたし。

 

 てか、保護団体のおっちゃんから『子供が後をつけて来ていて、撒くにはどうしたら…』、なんてとても困ったような声色の電話相談をされていたのだ。

 駅からは彼を引き継いで見とくので、そのまま森に行ってしまっても構わない。彼のことはそっとしといてと頼んだのは私だ。

 

 

 後ろを気にしなくなった大人と、慣れない森で子供の足。

 

 ……もののみごとにはぐれて、1時間ほど同じ所をグルグルと彷徨って泣き叫ぶことになり、立派な森での迷子が出来上がった。

 

 

 少しは反省させようかと思ったんだが、思ったより早く音を上げた様子に流石の私も可哀想に思えてしまった。うっかりうっかり。

 

 

 

 

 抱えた彼を大きな倒木の上に座らせて、腕や顔、足の、露出した肌の怪我の確認。

 

 幸いにも切り傷などは無し。蚊やブヨにも食われていない。これはこの、レモンの匂いの虫除けの効果かな。

 天然素材とは趣味が良い。褒めてやろう。

 

 しかし残念。塗りが甘かったのか、足の素肌部分にペトリとツイてるお方。

 

 動かないように伝え、私のバックパックを漁っている間にマジマジとそいつを見てしまったのか、円谷くんは蒼白でぎゃあと悲鳴をあげた。

 ……あげたのだが、その声が掠れかけている。

 迷子中、誰か誰かと叫んで助けを求めていたが、あれか?

 水分もロクに摂って無かったようだし。

 やっぱり子供ひとりは危ないね。

 

 仕方ないなぁ。飲み物を分けてやろう。

 

 

 円谷くんの足についていたヤマビルに、塩を振って落としてやると、ポロと落ちる様子におお、と感嘆の声。

 

 なめくじと同じようなもんさ。

 

 …なめくじと同じものが足に引っ付いていた事実に、円谷くんはまた震え上がった。

 都会の雑木林にも気を付けな。案外何処にでもいるぞ。

 それと、龍角散…はガキには不味いか。シトラスオレンジなのど飴とトローチ、どっちがいい?トローチ?

 ははは。こっちは苦いぞ。噛まずに頑張れ。

 

 

 

 さて。お子様のひとり旅。なんでと聞くまでもない。

 

 

 ホタル探しだろう。

 

 

 言い当てられてビックリ顔。

 ははは。

 

 彼が追いかけていた男性たちは、この山のホタルの繁殖地を守る活動をしている方たちだ。

 私はたまたまこちらに来ていたので円谷くんは運が良かった。

 

 ここは十兵衛さんのテリトリーとは離れているが、山は山だし森は森。

 

 危険生物は虫だけではない。クマもだし、その他蛇や猪だっている。

 

 そんな所にガッサガサと、熊鈴もラジオも考えもなんも無しに突っ込んでいく知り合いの子供を見た私の心労はとんでもないものでしたとさ。

 

 

 

 ついつい、悪ふざけに拍車がかかってしまうというもの。

 金虎懺悔版の完全詠唱でもしてやろうかしら。

 

 

 

 ……この間の音無さんの一件で、零くんの部下のメガネの人と少しだけお話ししたが、見た目通りの堅物で生真面目で、零くんに振り回されていそうな人だった。

 それでまぁ、車にいつもの盗聴器がついてたもんで……悪ふざけついでで……アレの懺悔版を、取り繕った『沖矢 昴』で音源配布は飛ばして詠唱してたんだけど、なんか零くんから『頼むから止めてやれ』とメッセージ飛んできたんだよな。

 盗聴器の向こうでどうなってたか知らないが、零くんから『頼む』されてしまったので止めざるをえなかった。面白いのに。

 

 

 だからさきほど、円谷くんについうっかり『お前の苦労をずっと見てたぞ』してしまったんだが。

 ネタやミームは思い出したらついでに口から漏れちゃうものでね。

 

 

 

 円谷くんはどう見ても疲れているが、どうしても蛍を捕まえたいらしい。必死で何やら説明している。

 

 ここの蛍かぁ。

 

 たかが虫1匹と思ってるんだろうか。

 その蛍1匹が成虫になるまでの餌の放流や、環境整備にどれだけがんばった人達がいて、その蛍1匹が次の世代にどれだけの子を作るのかとか、そういう話は、するべきだろうか。

 

 いいかな?いいかな。

 ……せっかく、だろう。

 

 

  ■

 

 

 里山蛍保存会の歴史と理念、活動内容を円谷くんに説明してあげた。

 

 少し前に、パソコンよわよわおじちゃんしか居ない保存会のほうから「紹介用の…ほ、ほーむぺーじ?というやつをつくってほしい」と頼まれてね。お小遣い稼ぎついでに手書きのノートやファイルから書き起こしたのである。

 それらをノアズ・アークに読み上げてもらいながらなので、情報は正確だろう。

 

 

 田舎の人々は若い人がどんどん減って、こういったボランティア活動もおじちゃんおばちゃんたちからおじいさんおばあさんになりかけてしまっている。若い世代を取り込むのだと、そういうつもりでの依頼を、アッキーが相談してくれたそうな。

 

 昭夫くん、地方盛り上げ隊みたいなことはじめたみたいで、中々頑張っているのだなぁ、なんて。

 

 

 この活動は場所を特定されてはまずいので、保存会のHPは真っ当で真面目な感じに作ったが、次は村のPR用のHPも依頼されている。ならばせいぜい魅力的な、過大広告にはならないようなキャッチーで素晴らしいネタを探してくれと頼んだ。

 ……真面目気質な彼には結構難しい話だったかも。まだお返事はない。

 

 

 蛍がどれだけの人の努力と苦労でこの森にいるのか、わかってるつもりでわかってなかった円谷くんは、それでも度々「でも」と言葉を挟んできた。

 

 でも、荒らすつもりは無かった。

 でも、みんなに見せたら逃がしてやるつもりだった。

 ……でも、1匹くらいなら。

 

 保存会所属ではない私だって、小川沿いは踏み込まない様にする、くらいしか注意できないのに、よく踏み荒らさない自信がもてるもんだ。

 何故蛍の生息地が限定されるのか、何故街中では見られないのか。

 その1匹こそが、未来に多くの子を残す可能性の大きな、みんなの期待を背負った個体だったらどうする。それでなくとも、貴重なことには変わりない。

 

 

 言えば言うほど、しょもと落ち込んでいく円谷くんには悪いが、保存会のおじちゃんたちが子供に入ってほしくない、と言ったからには、まだそこら辺は整備されていないのだろう。

 人に集まってほしくない場所だからこそ、隠していたのだというのに。

 

 

 それをこんな……なんでこんな大勢集めてしまうかな。

 

 

 

 この森についての情報を集めてくれていたノアズ・アークが、異変を伝えてくれたのは日も沈みかけてきた頃。以来、逐一関連情報の報告をくれている。

 

 電波状況があまり良くないため、適宜無線のほうも使って情報を集めてくれているらしい。

 

 

「……それで、あの……さっきから、何を、作って、いるんですか?」

 

 円谷くんへのお説教の片手間に作っていたものに、流石に彼も聞きたくなってしまったか。

 本当なら、麦わらで作るものなんだが。

 道中にチガヤがわっさりと生えていたので、せっかくだからとね。

 

 

 

「――器用なもんやな」

「へ? へ、え、あっ、ぎ、」

 

 

 騒ぐな騒ぐな。せっかくちょっと声が戻ってきたのだから。

 無理して叫び声を上げてまた喉を潰す前に、円谷くんの口を押さえ込む。

 

 

 さっきから、木の上から呼気荒くこちらを窺う人の気配はあったろうに。

 

 

 ノアズ・アークから聞いていた話では、彼は身軽な人で、気配を消すくらいは出来たはずなのにこれだけわかりやすく近付いてくれた。

 なら、私たちに存在を知られても構わないという気持ちがあったのだろう。

 

 現に木から危なげなく降りてきた上で私の手元を覗き込むだけで、手錠の嵌った(・・・・・・)腕はだらんと下げてある。この手で何かする気は無いらしい。

 

 

 骸骨に直接皮膚を貼り付けたような痩せこけた顔と、ひょろひょろの手足。

 へらへらニマニマと、何考えているかわからない不気味な笑み。

 

 

 以前、大阪で新一くんを包丁で刺したという男…沼淵己一郎がここにいた。

 

 

 

 ノアズ・アーク曰く。

 なんでも、逮捕後の聴取中、捕まる前に殺していた人の遺体を、以前住んでいた事のある群馬の、この森に埋めたと新たに明かしたそうで。

 その埋めた場所の特定に、大阪からはるばる連れてこられた彼。

 

 ……を、山村ミサオ刑事というとても聞き覚えのある刑事さんが逃がしてしまったらしい。

 

 

 んんんこのへっぽこ!!!

 

 

 それで、保存会のおじちゃんたちが頑張って荒らさないようにしてきたこの森だが、警察さんが逃走地点付近で、これから森に踏み入り捜索計画立てている所なので……

 

 うーん……荒らされちゃいそうで。

 

 

「オマエら……オレと同じなんやな」

「はい?」「えぇ!?」

 

 この後どう動くべきか考えていたら、沼淵が、妙なことを言い出したので顔を見る。

 

 山は暗くなるのが早い。

 薄闇の中、骸骨のような顔はおちくぼんだ目をギョロりとさせて、ニマニマと笑う。

 円谷くんが、小さく悲鳴を上げながら私の陰に隠れた。

 

 同じ……?

 

 

 この男、私の手元を見ていたわけで…

 私が円谷くんに説教しながらも、蛍の生息地から離れるわけでもなくこうして暗くなるまでまだ森で、こんな手わすらしながらも居座っている理由に思い至ったのか?

 

 それと同じってことは。

 

 

「……あなた、ここに来たかったんですか」

「…………ああ。ここは仲間がぎょーさん待っとるんでな……」

「な、仲間っ!?」

 

 

 ……ノアズ・アークが、全然連絡に出てくれない山村刑事への連絡を諦め、沼淵の過去の情報を浚いに行ってくれた。

 へっぽこは携帯の充電が無いか、そもそも持ってきてない説がある。一周まわってかわいいかもしれん。

 

「仲間……“おともだち”ですか」

「……せやなぁ……」

 

 くぼんだ目が、少しだけ光ったような気がする。もうそろそろ飛び始めてもいい時間だ。

 

 回線接続不安定な中、頑張ってきてくれているノアズ・アークからの報告を逐一受け取り、組み立てる。

 隣には、震えながら「逃げましょうよ!」なんて小声で囁いてくる円谷くん。

 彼の帽子の上からガシガシと頭を撫でてやり、そのまま帽子をもう少し、目深に被せた。

 

 

「――場所、覚えていますか」

「忘れるわけないやろ」

「よければ我々も連れていってください。実は私も、大体の場所しか教わってなくて」

 

 

 沼淵は、骸骨が関節を外したみたいな大口でカタカタと笑って、背を向ける。案内してくれるようだ。

 

 突然動き出した彼と、手早く荷物を纏めて背負い直し、後を追おうとした私を引き止める小さな手。不安そうな顔で見上げてくる。

 

「へ、へ?案内って……つ、捕まえないんですか?」

「君は何しに来たんですか。それにつかまえるのは良くないとさっき説明したでしょうに」

「違いますよぉ!」

 

 はいはい。

 円谷くんを小脇に抱え、急いで沼淵の後を追う。

 

 沼淵は後ろを気にしてはくれないらしい。

 彼も相当森を歩き慣れているようで、目を凝らし、耳を澄ませないとすぐに薄闇に紛れて木々の合間に隠れてしまう。

 こうして隠れ潜んで、逃げてきたんだろう。

 

 

 ……景光くんとはとても似ても似つかないが、似てるようなものだ。

 

 

 

 さっきよりずっと暗くなった中、遠くからざわざわと人の声が聞こえた。

 男性の声に混じって、円谷くんを呼ぶ子供の高い声も。

 

 円谷くんのリュックにつけてあった探偵バッジがぴーぴーと電子音で呼び出ししてくるので、もっそり借りて通信状態に。

 

「……もしもし?」

『オイ光彦!?って、スバルさん!アンタ、合流出来てたのかよ!』

「保護はしますと連絡したじゃないですか。皆さんを連れて、迎えに来てあげてくださいとも」

 

 通信先は新一くん。

 

 ちゃんと、昼過ぎに連絡したときの通り、お迎えに遥々群馬まで、この通信有効範囲にまで来てくれたらしい。

 私の眼鏡のあまり使わない追跡機能の電源を入れてみると、ちゃんと少年探偵団の他のメンバー分、光点が表示されていた。

 新一くんも追跡眼鏡は持っているし、間もなくこちらに合流してくれるだろう。

 

『バーロー!

 アンタ、なんで森を出てねーんだ!!今この森には凶悪犯の――』

「沼淵己一郎さんなら今一緒に居ますよ」

 

『――――は?』

 

 新一くんからどシンプル罵倒でバーローって言われちゃった。

 

 通信が聴こえていたのか、沼淵が振り返って、またニヤリと笑う。

 それでも彼は逃げる様子はないし、こっちの通信が終わるのを待っているのか、それとも聞いているのか…立ち止まってくれている。

 

 ……本当に、友達に会いに来ただけなのかもしれない。

 

 殺人犯の、それも死刑確定した男の気持ちなんて、一般人の私にはわからないが。

 

 

 

『えええ!? そちらの声の方!?沼淵がそこに居ちゃってるんですか!?』

 

 

 うわうるさっ。

 

 

 キンキンと、音割れするくらい大きな声で、思わずバッジを手で握り、覆ってしまった。

 かわいい新一くんの声じゃないのが聞こえてきたが、この声には聞き覚えがある。

 新一くんの手の中の探偵バッジにこれでもかと顔を寄せて大声を出したに違いない。どこでも聞こえるってば。

 

「…その声は山村刑事ですね。沼淵己一郎さんは居ちゃってくれちゃってますよ」

『なんですってぇえ!?どどど、何処に居るんですかってかアナタ何者?!』

 

 コイツ、私の事はわかってないらしい。

 

 んもー……名前は新一くんが言ってて、私の声だって特徴あるでしょうに。

 いいや。新一くんが来てくれればどうとでもなる。

 

「コナンくん、追跡眼鏡でこっちに来れないんですか?」

『……電池切れ』

「あらま」

 

 新一くん、あの眼鏡が充電で動く電子機器という自覚が無いのか、たびたびこうして充電切れさせる。

 私なんて、いつなんどきも充電切らしたことはないというのに。

 

 

「ガキが増えんのか」

「警察も来ますね。逃げますか?」

 

 沼淵は鼻で笑って、また草木を掻き分けながら移動し始めた。

 

 変な人だなあ。

 

「…コナンくん、そちらから北東に向かって来てもらえば、小川があります。そちらで合流しましょう。足元に注意して、ライトで照らしながらいらしてくださいね」

『は?オイ――』

 

 暗くなってきて、小荷物抱えての森歩き。喋りながらは危ないからね。

 通信を切って、沼淵を追う。

 

 小脇に抱えた円谷くんが凝視してくるが、無視だ無視。笹団子でも食ってな。

 ……舌噛むなよ。

 

 ■

 

 

 無事、少年探偵団と阿笠さんと、あと山村刑事と合流した。

 

 同時に群馬県警の山村刑事じゃない方々も集まってきて、こちらも無事、沼淵は確保された。

 

 

 沼淵を連れていかれる前に、山村刑事よりか話のわかる刑事さんたちにこそと少しばかり相談事。

 

 何、簡単なことだ。

 

 せっかくここまで来たのだから、蛍見てから帰っても今更変わらない。

 

 どうせ逃がした時点でもう始末書は確定だもんね。

 

 しっかりと沼淵の手錠と縄を確認してもらった上で、場にいる全員の手に持った明かりを消してもらう。

 

 ぽろぽろと、粒みたいな光があちこちから。

 ぽやぽやと、魂やらに喩えられることもある光があちこちから。

 

 羽虫共だってパートナー探しに必死だ。

 

 

 一方の人間様の恋路……この景色を女の子達に見せたかった円谷くんの説教は子供たちに任せて、呆けたような凶悪犯を見る。

 ニヤニヤと、不気味だった男はどこか満足そうに見えなくもない。

 

 

「――増えました?」

「……変わらんわ」

「…………そうですか。それはよかった」

 

 

 昔を知っている人が、懐かしさを覚えながらそう言うのなら、保存会のおじちゃんたちの苦労も報われるってもんよ。

 

 

 

 

 

 ドナドナと連行される痩せこけた背中はさておき、新一くんからお小言をいただいている。

 

「スバルさん、光彦の作戦に乗ってやったんだね。てっきり、とっくに森から出てると思ってたのにさ」

「森から出て、君たちのお迎えがどれくらいで来るかを考えたら、あの時点ではもう夕方以降になりそうでしたからね。なら、せっかくですから、ここで直接見てもらった方があの子の気分も晴れるでしょう」

 

 来ちまったもんはしょうがねぇ〜のである。

 

 色々は言ったけれど、観察のために少し捕まえるくらいで蛍が死ぬ事は無いし、捕獲後に小川から離れたところでこうして観察する分には、大きく荒れる事も無いだろう。

 

 保存会のおじちゃんたちには、最初から許可もらってるし。

 

 

 …………子供だけだと思っていただろうが、警察のおじちゃん達の足跡まで付いちゃったな。

 荒れるほどじゃない、と言いたいが、人数の暴力は簡単に道を作れてしまうくらいには強い。

 あとでおじちゃん達には謝っておかないと。詐欺じゃない義援金送っとこう。

 

 沼淵には場所を聞いたけど、この森の近くは当時良く来ていたから小川の場所も知っていた。

 当時の景光くんの潜伏先こそが、この山の一角にあるからだ。

 

 

 子供たちの方を見ると、灰原さんと吉田さんが円谷くんの小さな手を覗き込んでいる。

 卵型に組まれた茅の籠の荒い網目から、ぼやと蛍の光がもれて、我ながら中々上手く作ったもんだと。

 

 ただのプラスチックの虫籠では風情がない。

 

 話ついでに蛍籠なぞ編んだ次第。ホントは麦わらとか使うと、網目が揃ってナメナメ光って、綺麗なんだが。

 まだ見てるみたいだし、もう少し話に付き合っても大丈夫そう。

 

「だから」

 

 ここで新一くんの言葉が途切れた。賑やかな足音がガサガサドタドタと。

 

「あ、アナタねぇ!連続殺人犯にホイホイついていくなんて!何考えてるんですか!!」

 

 山村刑事は今日もデコが広いなぁ。

 

「襲ってきませんでしたし…話も通じましたからね」

「そもそもその銃なんなんですか!?もしそれが沼淵に奪われでもしてたら…」

「ああ。これ空砲ですよ」

 

 音が出るだけである。大きな音ももちろんそうだけど、火薬の匂いでも案外獣は寄ってこない。

 確かに奪われて銃底で殴られてたら立派な殴打武器だけど、それなら木から降りてきた時点で私たちを押し倒すくらいするだろうし。

 実際、話も通じてしまった。まだ私にも理解できる人で助かった。

 ……理解できていたかはわからないけれど、少なくとも攻撃してこなかったのだから、恐らくは友達に会いに来ただけで正解なはず…。

 

「あれ?今日、スバルさんが山に来たのってクマ退治じゃなかったの?」

「ええ。所用でした。だから円谷くんは運が良かったですよ」

 

 ここの近くに、昔の景光くんの潜伏地があったわけで。

 

 当時のほとんどの足取りは消したけれど、ここでしばらく活動してたのは確か。

 2人がかりで綺麗に片付けもしたが、何かしらの痕跡がまだあるかもしれない。

 確認しに来そうな方が来日しているので、頃合いを見て確認しに来たのは今朝のことだった。

 まぁ……今日は朝から大変だったとだけ。

 

 ねっ、赤井秀一!

 

 





ハム太郎か何かかな

今回はノアくんにめちゃくちゃ連絡係させていたらしいですよ


読んでいただきありがとうございました!
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