昴くんはなにもしない   作:あまも

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作業無事やっつけました。
お待ちいただきましてありがとうございます。

でもポケモン新作がでました。すいません

今回ちょっとだけ鬱々した話です。
人物像に違和感があるかと思いますが、この主人公から見たもので、だと思っていただければと。

読みにくくてすいません。
読んでいただきありがとうございます。
誤字脱字報告やご指摘や感想、助かります。ありがとうございます。

閲覧ありがとうございます!


36-2:一言芳恩

 

 

 

 バツってどういう意味?と、新一くんからメールが来た。

 女の人が知ってて得するマークらしい。

 

 …………つぶやきのことりの方が私は好きである。

 

 Xねぇ。

 女の子の友人やクリスさん、有希子さんがメールの下につけたりするやつなら、新一くんが知らなそうで、かわいい女の子の特別な可愛さを表す意味にもなるが…

 

 この質問、さては蘭ちゃん関係か。

 なら…

 

『 (°×°)教えなぁい 』

 

 面白そうだから断っておこう。

 今の時間だと、学校帰りだろうか。今日は小林くんが帝丹高校でのジョディさんの様子見をしていたはずだから、小林くんに新一くんたちの様子でも聞いてみるかな。

 

 と、丁度その小林くんからメッセージ。

 ジョディさんが、蘭ちゃんと園子さん、そして新一くんを連れて行ったそうだ。

 それで今追跡中だそう。

 

 別に、蘭ちゃんや園子お嬢様を連れてくくらいは大丈夫なのでは?彼女たちと一緒なら、無理矢理連れ去るってのもないだろうし。

 彼女も何か探ろうとしてるだけじゃないの?

 

 ……探られてるのはあまり良くないことか?

 

 そのままポチポチと、メッセージでのやり取りを続けるうちに零くんも入ってきて、小林くんの方もジョディさんたちが商業ビルの喫茶店でお茶し始めたからと小休止に入ったらしい。

 

 ジョディさんたちの会話内容は……帝丹高校の学生や教員が、ストーカー被害に遭ってるだって?

 

『今じゃん』

『今まさにストーカーしてる男がいることに気付いているのか?』

『それは…無いだろ。俺結構気を付けてるぞ。ちゃんと店も別にしてるし』

『盗聴器は?』

『江戸川くんにつけてる』

『それじゃん』

『ストーカーしてるじゃないか』

『ホントに俺についてじゃなさそうなんだってば(^ω^;)』

 

 まぁ…知り合いがついてきてても、ストーカーとは言わないか。見守り見守り。

 帝丹高校の学生が狙われて〜って話なら、もっと別の……

 なら、何について?

 

『これたぶん…カマかけかな?彼ら自身に、接近してる人物がいないかの確認したいんじゃないか?』

『案外、自分たち(FBI)あの男(赤井)についてかもな。調査されている心当たりは無いか、と訊ねるために』

『それを言うなら小林くんや透くんについてかもしれないじゃないですか。今まさにストーカーしてる人』

『違うってば!たぶん(´ω`)』

 

 じゃあなんだろうな。

とりあえず小林くんにもう少し探ってみてもらうとして。

 

 ああ、赤井秀一といえば。

 

 ■

 

 赤井秀一とはこの間の群馬の森にて“オハナシ”してきたが、正直に言おう。

 

 

 私、あの人苦手だ。

 

 今頃の詳細連絡となってしまったけれど、ちょうどこの2人が見ていて、2人ともが少し余裕のある時間な様なので。次の報告会まで、少し合間あるし。

 

 元々、グループメッセージで『私はあの人と仲良くやれそうにない』と2人に告げてはいた。

 

『そうか!』

『そうか…(´・ω・`)』

 

 その時は、文字は同じだが色の違う言葉が返ってきた。

 音声入力っぽい景光くんより返事が早かった零くんの、なんだかニコニコしてそうなお言葉。

 

『アイツの性格ではハルは絶対に合わないだろうと思っていたんだ!やっぱりな!

 そら、言った通りだったろうヒロ。ハルはああいう男は無理だって!』

『でもゼロとやっていけてるんだから、きっと仲良くなれると思うんだけどなぁ』

 

 とのことで。

 

 零くんも景光くんも、私の苦手は良く知っている。今回は2人の赤井秀一像の違いが出たのかな。

 

 零くんは赤井秀一憎し増し増し。彼が一挙手一投足何をしようが逐一憤慨している様子からわかる通り、そもそも“赤井秀一の良いところ”、と見えるような、気に入る要素が目に入ってない。

 癇と癪に障るような面しか見えてないからな。そりゃ癇癪起こしますよ。

 

 景光くんは元々、助けて貰える前から彼のことを気に入っていて信用していた様子。正しく正義側の人物だったと分かった今となっては、何も気負うこと無く懐いている。

 歳上のカッコイイ男性好きだよな景光くん。お兄さんの影響か?早く会わせてあげたいね。

 景光くんなんかは、仲良しの友人が仲良しになってくれたら嬉しいよね、という感情……なんだろうけど。

 

 改めて、あの時何があったかを2人に伝えておこうかな、なんて。先日みたいに、突然“赤井秀一がこちらを見ている!”されると私、怖くて震えちゃうし。

 

 

『いやぁ……とても優秀で素敵な方なんでしょうが…いきなり銃突きつけてくる人とは私、仲良くやれないですって』

 

 

 私の送ったメッセージの後、着信がスマホと携帯電話の両方に同時に入って面白かったので両方ともに出た。

 

『おい!どういうことだ!!』

『アイツそんなことしちゃったの!?大丈夫なのか!?』

『ラ、…ヒロ!?そこに……いや、ハル!!何してる!』

『あれっ、ゼロ?…これ電話か?聞こえてる? ……うーん…、俺の言葉、信用できなかったのかなぁ…だ、大丈夫?返事がないけど…元気出しなよハル』

 

 はは。2人してそんなに名前出して大丈夫?大丈夫ではあるだろうけど。景光くんなんてモロ外でしょう?

 しかし愉快なことに、電話の開幕怒鳴り声で入ってくる零くんと、困惑しきりな景光くん。正反対な反応で、このまま聞いてようかなんて、

 

『おい!返事!』

「……はいはい。私は大丈夫ですよ」

 

 零くんに怒られてしまったのでそろそろ止めようか。

 

 私の声に、2人とも静かにしてくれた。景光くんのほうから、喫茶店の食器のぶつかる音や、誰かどこかのざわめきだけが洩れ聞こえてくる。賑やかで、こういうところの方があまり目立たないとかなんとか。

 

 

 これは私が赤井秀一に銃を向けられた話ね。

 

 

 

 ■

 

 

 あの日、朝方の霧も深い頃にあの山のあの森近くに行って、手頃な路肩に車を停めたわけだ。

 リアを開けて荷物と装備を整えて、森へ入る用意をしていた所、後ろから赤くてかっこいい車体が近寄ってきて、近くで停車した。車の名前は出てこないけど、車高低めで、かっこいいやつ。

 出てきたのは黒ニット帽を被った黒いジャケットの、彫りの深い顔のイケメンでね。

 

 こいつがうわさの赤井秀一。面と向かうとまたこれまでにないタイプのイケメンだった。

 

 彼は車を降りるなり、懐をまさぐってタバコとライターを取り出すと、火をつけてスパスパ吸い始めたわけだ。

 霧だか煙だかわからんモヤの中、口元に赤い光をポツと灯した赤井秀一は呟いたんですよ。

 

『お前はあの2人と共に、何を企んでいる?』

 

 

『『あの2人?』』

 

 聞いていた2人が声を揃えて。彼らからしても、赤井秀一が言う『あの2人』が即座にはわからないらしい。

 どうせ少し考えさせたらわかるんだろうけど。

 

 良かった、私だけじゃなくて。

 

「彼から見て、私が何かしらの目的で動いてることはわかると思います。ただ、彼視点だからこそ、その段階では私と共謀して企み事をするような“2人”というのが誰のことを指しているのかが、私にはわからなかった」

 

 1つは、彼とのやり取りの窓口は景光くんだから、1人を景光くんとして。FBI視点で見た場合、妥当なもう1人は毛利小五郎だろう。クリスさんがそう仕向けたから。

 もう1つは、景光くんと……毛利小五郎を監視していればわかると思うが、毛利小五郎の周りで動き回る江戸川コナンという少年が何やら普通ではないことが見えてくる。

 素敵で天才な赤井秀一ならそこに気付くのではと。

 なんか、確か赤井秀一(沖矢 昴)ってめっちゃ江戸川コナンのこと信頼してた気がするし。

 こう……いち早く気付くのかな、なんて。

 

 そして……

 

「その時の彼の言い方と雰囲気から、あまり良い感情が読み取れなかったので、私はそうではないと良いなと思いながら…直接聞いたんですよ。

『それってクリスさんのことですか?』って。

 そしたらすごい睨まれてしまって…」

 殺気混じりに銃突きつけられたってワケ。

 

 もう全然意味がわからんかったね。

 

 求められている答えがわからないのはよくあるけれど、どういう意図かからわからないのは久々でさ。

 久しぶりに会話が通じないというか理解させてくれないタイプとの会話で、この2人や新一くん、ヒロキくんや秀吉がどれだけいつもの会話を噛み砕いてくれてるのかとしみじみ思い出しちゃったよ。

 私は1で10がわからないのに、開幕から8の話を聞かれたってわかるわけないだろって。

 

 ここでなんでもできちゃうほうの天才こと降谷零くん…嫌々言いながらもなんだかんだで赤井秀一を理解出来てしまう男がティンときたらしい。

 

 

『――まさか、あの女(ベルモット)と……(バーボン)のことかと訊いたのか?』

 

「そうですね」

 

 

 景光くんが、感嘆の声なのか何なのか、電話の向こうでため息みたいな声を出している。

 

『そうか…………あいつ、ゼロも“そう”だとは、知らないのか』

 

「そうだったらしいです」

 

 

 そう、赤井秀一は、組織幹部のバーボンという食えない男の正体が、日本愛に塗れた日本警察の若きエースだとは知らなかったのである。

 知らなかったんだ!?と驚いてしまった。

 その時は表面をいつも以上に取り繕ってたけどさ。

 

『…ヒロ、お前それ伝えてなかったんだな』

『そりゃ一応、継続中の他部署の任務だし…』

『……そうか、そうだな。ありがとう』

 

 そうだけど、そうじゃなくて…そうではあるんだけども!

 

 これだから潜入捜査ってのは複雑で困りますわ!!

 

 話してしまえればこの疑念の話は爆速で終わるんだけど、ここはそれ、お偉いところの話になってきてしまって、一般人な私や景光くんでは勝手に進めるわけにもいかず。

 変なこと言って変なことになったら、色々と迷惑だろうし……

 

 あと当の本人がこんな感じで赤井秀一と見たら隙あらば刺しそうな男だもんで、彼からの理解は求めてなさそうだし…

 

 

「結果的に、私は元NOCの景光くんの信頼を得た上で、彼を助け、また赤井秀一というFBIが潜入捜査していた事を知りながらも景光くん以外には報せず、なのに今現在は組織随一の情報通であるベルモットとバーボン両名の下で何事かを画策するチグハグで奇妙な行動を取る、情報戦に強い一般人ってことになってまして」

『それ一般人じゃなくないか?』

『それもう立派な構成員じゃないか?』

 

 言わんといてください、話聞いてたらそんな気がしてきたから。

 

 赤井秀一がそういった意図や細かいことを説明してくれてはいないので、これらは全て彼の質問内容からのこちらの憶測では、あるのだけど。

 だいたいそんな認識されていそうな感じ。

 

 

 クリス・ヴィンヤードと安室透の正体を知っているのか。

 彼らの狙いと思われる、毛利探偵事務所を何の目的で調べているのか。

 スコッチ(小林くん)を利用しているのか、それとも本気で友人として助けたのか。

 

 と、これらを確認されたので。

 

 

「2人の正体は知ってると答えたら、なんか…本当に殺す気かってくらい睨まれました。あ、一応れーくんのことは喋ってないですよ。シャロンさんのことは言いました」

『……あの男は…』

『はいはいどうどう。彼女とお前との付き合いがわかったなら、組織関係者だと考えてしまってもおかしくないよ』

『だが…クソっ』

 

 零くんったら、お口が悪いですわ〜

 

 怒りに声が震えている零くんを、景光くんと一緒に宥めているが、なんというか…恐らくは赤井秀一と零くんは相当、相性が合わないんだろうなと。

 

 

 赤井秀一と実際会話してみてわかったが、彼は一般人とは思考速度が違い過ぎる上で我が道をゆく人だから、“他人が理解する前に自分で動いた方が早い”を地で行くタイプなんだろうな。

 そのせいで勝手に動いてるように見える。

 彼の中では、それが成功に繋がるとわかっている…けれど、それを行動前に誰かに相談も話もしない。時間があればするかもしれない。でもする必要をそこまで重要だと思ってないから抜ける。この人たぶんあの森に来たのも上司や仲間に相談もなく無断で来てたんじゃないかな。

 

 で、零くんは零くんで赤井秀一ならできると踏んだから動いたのだろうとわかってしまって、それが手っ取り早いこともわかってるけどプライドエベレストキングなこの男は勝手気ままする赤井秀一を頼りにするのが段々嫌になってきてしまったと。だんだん組織時代のウイスキーな方々がどう動いてたのか分かってきたな。

 この確執も、最初は些細なこと、手柄取られた…みたいなもんから始まってるのかな。最初からこんなんだったわけないし……

 案外、景光くんが先に懐いててそれでマイナスから評価値がスタートしちゃったりしたのかもね。

 彼ら3人組んで何をどう進めたりしたのか気になるわぁ。

 

 

 自分が出来ると思って、それを自分がやるのが1番早くて手軽で安心って考え方は零くんもよくやっているが、その点零くんは(善良な日本人相手には)ちゃんととっても愛想の良い“安室 透”っぽい好青年が演じられる。

 子供相手も、面倒な私みたいなやつの相手も、老若男女問わず相手に合わせることも出来るし、もちろん自分以外にも出来そうだと思えば仕事を分けている。その人の成長を待てる人だ。

 ……1人、それで無茶ぶりみたいな仕事を振られてひいひいないてるお兄さんいたけど。

 零くんから期待されてるのってすごい事だから、頑張ってほしいね。

 

 

 そんな零くんに対して、赤井秀一は自分の仕事は自分の仕事。遅せぇやつは置いてく。あれは新人教育できない人じゃないか?FBIの新人のこと、ストレスで辞めさせたり殺しかけたりしてない?大丈夫?

 彼の部下、は…嫌だなぁ。

 

 零くんも大概言葉足らずだけど、赤井秀一絶対背中でしか語ってくれないタイプじゃん。

 

 

 …………あの時の印象と行動から私が思うに、あの人……

 

 あれ、人の上に立てない人だ。

 

 あえて立たないように見えるけれど、あれは立たないのではなく立てない。

 上に立たせちゃいけない。本人もきっとそれをわかってる。

 

 あれは、人の下に付く人だ。

 

 それも、自分で自分の上の人を選んで、そのうえでどのように自分を使いこなせるかを、楽しむような。優位は手放さない。

 

 

 ……新一くんと仲良さそうだったのって、もしかしてそういうことなのか?

 新一くんも、任せたらなんとかしてしまえる有能な人材が側にいるとものすごいイキイキした顔するの、“小林”くんと一緒にいる時の様子でわかっちゃったからな。

 そりゃ…新一くんは赤井さんや零くんが言う通り動いてくれたら、はしゃいでしまうんじゃないか。

 

 

 ――性能差はめちゃくちゃあるけど。

 これなぁ。

 あの人と、変な所が似てしまっていて、これもきっと零くんが嫌がるところなのかなとか。

 

 あぁーーっ上位互換〜!!!

 

 

 

 ■

 

 

 景光くんが『停電だ』と言った数秒後、深く息をつき、『……なんか事件らしい』と続けた。

 

 ……新一くんがいる場所だもんね。そりゃ事件は起こるか。

 大丈夫?と思ったら、『大丈夫か』と声が返ってくる。そりゃこっちのセリフで…

 

『脱水症状になりそうならちゃんと人呼ぶか救急車呼ぶかしろよ。じゃ、行ってくるな』

 

 と、言い残して景光くんからの電話は切れた。

 

 ……やっぱり気付いちゃう?

 

「……バレてました?」

『喉はあの機械で誤魔化せてるが、説明中の空元気は振り絞り過ぎだったな』

 

 呆れたような零くんのお返事。さすが。

 状態異常中だから、いりょく2倍でハリキリボーイし過ぎてしまったか。

 こりゃうっかりうっかり。

 

 私、ただ今、自宅の台所床にて死んでおります。

 

 呼吸のたびに胃液っぽい苦くて酸っぱい味がして、空気がなんか甘い。

 ノアズ・アークがさっきまでずっと大丈夫か大丈夫かと、しきりに心配してくれていた。あんまりきれいなものでもないので、機器類全部水回りから離してたんだよな。

 電話が終わったら、また心配させてしまいそうで、この零くんとの連絡を切るのがちょっとだけ怖い。

 

「年2回くらいあるんですよね、こっちの症状でひどい日」

『…上か』

「頭痛と吐き気ですね。今何も腹には入っていないので、なんとか水と薬が飲めないか挑戦してます」

 

 胸焼けというか喉が詰まるというか。咳き込むと込み上げてくるものがある。

 水が飲めないレベルのは困る。いつもならこの症状の時は朝イチで智明くんところ駆け込んで点滴ぶちこんでもらうんだけど……

 今の新出医院は無免許闇医者営業してるから行けないなぁ、なんて躊躇って二度寝してしまったのがまずかった。

 

 寝過ぎで頭は痛いし寝れないから薬飲んで寝とけば治るが出来ない。

 水分が足りてないのはわかっても、ちびちびと舐めるようにしか入れられない。

 

 どうしようかなぁなんて思いながら、メッセージのやりとりと、赤井秀一の話を2人に伝えていた。

 

『見舞いは要らないと言うんだろう』

「ええ、危なそうなら勝手に病院行きますから大丈夫ですよ」

 

 最終手段として、荒療治にはなるが水と薬飲んだ後に阿笠さんから貰った虎の子の麻酔針で気絶してみる手だってあるし。寝られればいいのさ。

 

『……そんなにあの男がキツかったか』

「いえ、いいえ。彼はまぁ…そういう感じの方だと分かったので、お会いできて良かったです。

 これは……別件ですね」

 

 

 赤井秀一がきっかけではある…のかはわからないけれど。

 

 もしかしたら、そうなるのかはわからない。まだ、わからないことではあれど、彼に“沖矢昴”を任せるかもしれないのかな、なんて考えた。しかし彼がそれを受け入れそうにはとても見えなかった。

 少なくとも、既に名前のある他人に成りすますのは無理だ。

 あれは有希子さんと同じで、中身が隠せない。

 あれで中身が私みたいな胡散臭くてちゃらんぽらんなポンコツを作れるわけがない。勝手にスパダリ感の滲み出る、胡散臭さと頼りなさを威圧感に振り直した、有能で素敵な大学院生になるだろう。

 

 あれが“私”をやるわけない。

 “そんなこと”になった時、きっと彼は彼なりのガワ(・・)を創るだろう。安室透や、小林唯景みたいなガワを。

 

 

 じゃあ私は何なのかと。

 私の役目は何なのかと。

 森の中で彷徨って泣いている円谷君を追いかけながらぐるぐると、そんな答えの出なさそうな事を考えてたら、よくわかってなかったがどうもメンタルに来ていたらしい。

 円谷くんも沼淵も、ちゃんと会話してくれて話を聞いてくれたから、気も紛れてだいぶ助かっていた。

 電車で帰った新一くんたちと別れて、帰りの車内でひとりで考え込んでしまったのも良くない。

 ノアズ・アークが心配してくれて、どうしてそんなに気疲れしているのかと問うてきたのも、実は良くなかったかもしれない。

 答えている間、自問自答に近くなってしまった。

 

 だから彼が切っ掛けではあるが、問題なのは自分でね。

 

 

 何のために私はいるのか、わからなくなってしまってね。

 

 

 ……うーん、酸っぱいものが込み上げてきた。

 いやだねホント。

 景光くんが通話からいなくなったから、零くんが指摘してきたのかなとか。いや、景光くんにもバレてたっけなとか。平気なフリ出来てなかったのかなとか。

「……零くんは、私が私じゃなくても友だちでいてくれますか」

 

 そんなくだらないことが、頭で考えてたと思ったのに口から出てしまっていて。

 あぁまずいな、なんて思う間もなく。

 

『友人なわけないだろうが』

 

 即答で、呆れ半分怒り半分な言葉が返された。

 ……そんなもんか。そんなもんだよな。

 

 …………ん?

 

『お前は昔っから胡散臭くてバカで怪しくてやらかしそうで何考えてるかわからん奴だが』

 

 ボロくそ言うじゃん。

 

『もし、なんて話は必要ないだろうがな。あえて言うぞ。“もし”、そんな面倒くさい奴と、今いきなり会っても、俺は友人になんかなれない。お前だって俺の性格は知ってるだろ。

 自分とか自分じゃない自分とかまたわけわからんことで悩んでるようだが……

 俺の友人は、あの病院で会ったお前(ハル)だからな。それは変わらないし、代えのきかないものだろ』

 

 …………

 

 ……なんでホント、この人、私の友人やってくれてるんだろうな。心底めんどくさそうに言ってるのに。

 ああでも、当たり前でくだらないことみたいに言われた言葉が、じわじわと来る。

 なんでこの人、友人なんだろう。景光くんのためだろうか。

 

 面倒に付き合わせてしまって申し訳ない。それでも、本当に、なんでこの人、友人でいてくれるんだろうか。

 

 不思議でしょうがない。

 

 





一方その頃、女子高生と小学生に別々に×の意味について訊ねられ、アオハルの気配を察して黙った男がいたとかいないとか

赤井さん、そう硬い人でもないんじゃないかなと思うんですが、初期赤井さんのプレッシャーで迫られたら怖すぎてこんな感じになる小心者でお送りさせていただいております。よろしくお願いします。

ちょっとカロス行ってきます!!すいません!!

読んでいただきありがとうございました!
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