昴くんはなにもしない 作:あまも
すいませんが別の人視点な話です
ほとんど変更は無いのでサクサク行くと思います
誤字脱字報告ありがとうございます!
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給油のために立ち寄ったガソリンスタンドにて。
店員と談笑しつつ、こちらの様子をそれとなく確認してくる『安室透』を見かけた瞬間に、ここに彼が居てはいけない状態で存在している矛盾から、解像度が低い人間による
案の定怪盗キッドだったので、今回も今後とも、安室透にだけは絶対に変装しないほうがいいことを真っ先に勧める。
諸々の事情もあるが、怪盗キッドもゼロも、ついでにハルや俺と、その周り含めてまで危険すぎる。
察しのいい彼は、その勧めと俺の焦った態度から、最低でも
その時点では彼の狙いであるビックジュエルは目的地には無いとされているため、何しに来たのかと問うと、『自分の名前を騙った者が何するつもりかの確認』及び『大富豪・烏丸蓮耶の求めた財宝の中にビックジュエルがあるかもしれない』とのこと。むしろそれだけだった。
確認作業だけということであれば、今回はこのまま悪事を企むことなくついてくるなら真相解明まで手伝ってやるが、このまま逃げるなら警察に通報するだけで済ませてやると2択を迫…選んでもらって、無事、彼を保護下に置くことに成功。
彼がここに来るまでの間に、既に『安室透』が目をつけられている可能性もある。
本物の安室透ことゼロに連絡を入れて、注意勧告。及び周辺警戒用意を頼んで、こちらの方も、彼本人にも警戒させる。
やる気が見えない怪盗キッドに、ここで油断すると最悪お前のせいで10人近く死ぬことになると“説明”した所、真剣になってくれたのでいつもそれくらい真面目にやってほしい。
最近の彼は少し油断しすぎじゃないか?
俺は決して、怪盗キッドの完全な味方ではないって何度も言ってるのにさ。
そしてこのまま怪盗キッドを連れて行くには彼のガワがないので、仕方なく車から毛利探偵を呼んできて、彼と代わってもらった。
キッドはオッサンより女の子がいいなどと口を尖らせて文句を吐かしていたが、こんな僻地のガソスタに女子高生を置いていくわけにはいかない。
先程から不安定な回線をなんとか安定して送れる場所を探して、ゼロに後の処理と確認作業を依頼。
そしてハルに業務連絡と怪盗キッドと合流した旨を伝えたところで、戻りの遅い俺たちを心配した蘭さんと江戸川くんが車を降りてきてどうしたのかと訊ねて来たのではぐらかしながらガソスタを離れることとなった。
ハルには返事をしそびれたな。屋敷が圏外じゃないと良いんだが……
*
道中で車のエンストで立ち往生してしまった千間降代という老人を追加で乗せて、辿り着いた屋敷は残念ながら圏外。
集められた探偵達から離れて、少し電波を探してくる、と江戸川くんに伝えて屋敷を出ようとしたが、控えめに屋敷のメイドに止められてしまう。
なんでも、1度到着したお客様には説明があるまで帰らせないように、と雇い主から厳命されているのだと。
でも俺は招待されたお客様じゃない。
「客じゃない?なら、毛利探偵と千間のバァさんと一緒に来たアンタは誰なんだい?」
携帯のアンテナがなんとか立たないかと、振ってみたり腕を伸ばしてみたりしていた所にそんな声をかけられて、その声の主、茂木探偵からの視線をもらった。
千間探偵、元検視官の槍田探偵、鷹を連れた白馬探偵が揃って見つめてくる中、俺は人当たりの良い笑顔を探偵たちに見せる。
「あぁ。俺は毛利探偵の運転手として来たんで、探偵とかではないんだ。だから招待された客じゃなくてさ。ともかく、別件の仕事の相談が入る予定があったから、連絡取れないと困るんだが……」
「山奥って聞いた時点で電波なんて無いに決まってるじゃないか。来る前に気付かなかったのかい?」
千間探偵の呆れ顔。茂木探偵も喉を鳴らしてくつくつと笑っている。
「そりゃわかってましたが…、まさか外出禁止を言い渡されるなんて」
困り果てた様子を見せてみるが、メイドも雇われの身分のためか立ち尽くし、指の爪を齧りながら視線をキョロキョロと困惑と混乱の様子を見せた。
どうすればいいか、決められないでいる。
つまり、雇い主からの命令は受けているが、臨機応変の対応に関しては自由に決めていいわけではなく、予定外についての命令はされていないし、また雇い主と連絡が取れる状態でもない。
そのことを、この場にいる全ての探偵たちが認識した。
ちなみに蘭さんはずっと我慢していたお手洗に走っていった。
「なんとか……なりませんかね?」
「小林さん、どうしても必要な連絡なの?」
足元で江戸川くんが見上げてくる。ちらりと毛利探偵も目線を向けてくるが、すぐに逸らされた。既に屋敷の内部を観察し始めているようだ。
「そうだなぁ…絶対ではないが、できたら確認しておきたいものだな。
なぁ、さっきの大上探偵との話を聞いていた限りでは、晩餐会の料理も今から作るところで、準備は終わっていないんだろ?なら、少しだけ出てくる分には良いじゃないか」
「ですが……」
「それに、そもそも俺は招待されてない。俺の分とか最初から無いだろうし」
「本日、来られないと断りの連絡があったお客様が3名なので、あなた様の分の席とお食事もご用意出来ますが…」
「そう?でもいいよ。それより可能なら、ここの電話を借りたいんだが…」
「申し訳ありません。当屋敷には電話がございません」
「え〜…そんなぁ。参ったなぁ…他の仕事の連絡とかもあるのに……
あ、わかった。なら俺がまだ来てないことにしてくれ。説明が始まるまでに戻ればいいんだろ?」
俺の提案に、メイドは考え込んだ後それなら…と渋々頷いた。
このままいつまでもゴネられても、他の客の案内も晩餐会の用意も出来ない。
よくハルがこういう面倒臭いやつを演じることがあるが、あいつはこういうのを自然にやれるから凄い。
俺はちょっと、この雇われメイドさんが可哀想に思えてしまう。
フリーターの悲しいところだな。
「ですが、晩餐の支度が終わりましたら皆様を集めるようにとご主人様から仰せつかっております。それほど時間はありませんよ」
「大丈夫!屋敷の外をぐるっと回って、ホントに圏外しかないのか見るだけだから」
チャチャッと行ってくる!と言い捨てて、俺は外に出た。
時間的にはだいたいフルコース料理が出来るくらいだと見ておこうか。本当にそれほど時間は無さそうだ。
俺がいない間の出来事は江戸川くんが見ていてくれるだろうし、
ひとまずは、“ハルの10の注意点”のひとつ、『車は他の人のものよりも離して、指定された駐車場に停めないこと』を真っ先に実行した。パンクや爆破されるから、らしい。
アイツ、一般人なのになんでそんな警戒してるんだ?
携帯の通信状況を確認しながら道を少し下り、橋を渡って更に進んだところで、他の車を発見。
横に乗り付けると、中にはキチリとしたスーツを着た中年から初老程の女性が乗っていた。
先程、白馬探偵が居たが、未成年の彼が他の参加者に同乗させてもらっていないなら、この車に乗せてきてもらったのだろう。
少し離れた反対車線に車を停めて降りてみると、女性もやや警戒を滲ませながら降りてきた。
「白馬探偵のお付きの方ですか?」
「……あなたは?」
「俺は探偵、毛利小五郎の車の運転を任されていた者です。あなたはここで待機を命じられていたのですか?」
「…………お答えしかねます」
中々どうして警戒心が強い。それはそれでいい。
こんなグラサンの若い男に山でいきなり話しかけられても困るよな。
「では、少し先にこの車も停めさせてください。出来れば見ていていただけると助かります」
「……? 私は移動するかもしれませんが」
「それならその時はそのまま離れて貰って大丈夫です。よろしくお願いしますね」
何も考えが無さそうな、屈託のない笑顔で。
すっかり暗くなって、車のヘッドライトが眩しいからサングラスをかけている……という理由はギリギリまだ通るだろうか。
残念ながら、ここまで携帯はずっと圏外。
これ以上の電波探しは無駄だろう。
女性の車のミラー越しに見える位置に車があるのを確認して、道脇の森に入る。
木々や草を足場に駆け抜けて直線で突っ切り、カーブの多い道をショートカット。先程渡った橋に出た。
さて、次はこの橋だな。
“ハルの10の注意点”その2、『橋があったらだいたい落ちる』。
だがここのは良く物語で落ちる橋のような軟弱な吊り橋ではなく、車も通れるような、しっかりした造りの橋だ。
はたしてそう簡単に落ちるだろうか。
……
欄干の下を覗き込み、腕時計ライトで照らしてみると、確かに何か黒いビニール包みが崖と橋の基礎の基点に取り付けられていた。雨に濡れないようにという配慮と、遠目で見てもわからないような細工か。芸の細かいことだ。
ここで“ハルの10の注意点”。『見逃せる程度なら犯人の思惑に乗り、したいようにさせること』。
目的や動機も、何故こんなことを、誰が行ったのかもわからない有耶無耶なままにするくらいなら思い切ってやらせてしまえ、とハルは言うが……
ハルに用心するように言われていたので持ってきていた、阿笠博士からもらったフックショットワイヤーを袖から取り出す。
欄干からぶら下がり、爆弾の取り付け位置を微調整して、片側は崩れたとしてもギリギリ片側の欄干は残るように調整した。
残したい側の爆弾は………解体しておくか。
松田や萩原、ゼロ程手早くはないけれど、俺にだってちゃんとあの頃学んだ解体の知識はある。
上手く行けば、片側は残って身軽な人間ならば渡れる程度にはなるはず……こういう時、あの、爆弾バカたちの話をもっとよく聞いておくんだったと少しだけ後悔する。
……いや、あそこまでの知識はどう考えても必要無いな。テロリスト一歩手前……むしろテロリストよりも詳しかった。
頭に過ぎるいくつかの苦くて酸っぱい記憶を洗い流して振り払うように、雨の中、走って屋敷前の駐車場まで来た。
念の為それぞれの車体の下を覗き込むと、ガソリンタンク付近に連鎖式の爆弾が設置されているのを確認。
これは……どうするかな。
…俺が外に出て、車を移動させたことは爆弾を設置した犯人も気付いているだろうし、ここでこの爆弾を処理したとしてもまた仕掛け直されてしまうかも。
いや、だからこそ、か。
しかし時間的にもギリギリだし、俺では解体は間に合いそうにない。本当に、アイツらの解体は早かった。
帰れたら、ゼロに改めて爆弾解体をおさらいしてもらおうと心に決める。
衝撃を与えないように慎重に全て取り外し、車からとにかく離した隅に隠して置いた。
雨で湿気って不発になってしまえ。
*
ひと仕事終えてすっかり惨めな濡れ鼠で屋敷に戻ると、メイドさんが慌てて駆け寄ってきてくれて、服を乾かすから、と着替えとタオルを渡される。
すっかり遅くなってしまったのに、待っていてくれたらしい。
正直助かる。
スーツとはいえ吊るしの安物だし袖や裾は生乾きでも良いから、せめて胴体部分は早めに乾かして貰えるよう頼んで、やけに古めかしく大きな服で、案内された部屋の内装を確認。
良い生地なんだろうが、かび臭い。
俺の遅い帰還をメイドさんに聞いたのか、毛利探偵と江戸川くんが部屋に来たので情報の擦り合わせを行う。
足を奪うような配置の爆弾の話で一気にきな臭さを実感した2人は、真剣に話を聞いてくれた。
「だから、この後の晩餐会で出される食事にも気を付けるべきだと思うよ」
「食わねーほうが良いってコトか?」
「僕たちを毒で殺す気…?」
「いや…食事自体は大上さんが作ると言っていたし、あのメイドさんはあくまで主催の指示通りにしか動かない。気をつけるべきは――」
「「「――食器」」」
声は3つ揃った。
話しぶりから、フルコースで出てくるであろう料理。なら最初から食器はそれぞれの席に用意されているだろう。
食べる前に拭うかどうにかしてから。……俺は食べない方向で行こう。
勿体ないが。
グルメ探偵とも呼ばれる大上祝善の作った料理……すごく興味あるが。
そして毛利小五郎よ。ちょっと冴えすぎてやしないか。
確かに本人はピンチには強いひとだけど…あまりにも……もしかして道中も今も彼、タバコ吸ってないし、既に江戸川くんは怪しんでる?
……ならいいか。
「……今、俺の服を乾かしてもらってるんだ。その服を受け取る時に、大上探偵の料理に興味がある、とか適当に言って、先に食器を確認出来ないか試してみる」
「それなら、僕たちは他の探偵さんたちに爆弾の話をしておいた方がいいかな?」
「それだとひとりで外に出ていた小林が真っ先に疑われんじゃねーか?」
「どうせまた仕掛け直されて、それが爆発したらその時点で1人行動してた小林さんが疑われるでしょ。なら先に、見つけた報告をしておいたほうが『仕掛けた本人が報告するなんて』って思考が出てくるよ」
その意図はどうあれ、爆弾の報告は本来する必要が無いことではある。わざわざ報せるなんてのは――
――極めて不愉快な爆弾犯を思い出してしまった。
ついでに、目の前の毛利小五郎も視界に入って、何故愉快犯共は揃いも揃って犯行予告なんてものを出して警察をおちょくってくるのかと――
ああいけないな。毛利小五郎がぶるりと身震いしたのを見て、俺は目を伏せた。
努めて冷静に表情を作り直す。
「だが……爆弾は小林が解体してきたんだろ?」
「……いや、時間も無かったし、車の方なんて取り外して隠しただけだ。もう1度仕掛けられる可能性はある。……ただ、俺が車を動かしたのは犯人もわかってるから、車の方の破壊は難しいと考えてもおかしくない。
最低限『橋の爆破で帰還が困難』となった事実さえあれば俺たちをこの屋敷に閉じ込める犯人の目論見は達成のはずだから、犯人はこれ以上動かないと思うんだが……
俺が橋まで行ってる間に車に爆弾を設置出来たのは、今リビングで見合ってる人達を除くと」
「メイドさんはたまに見かけてたよ。主催さんはそもそも見かけてない。……それに、大上探偵もあの後誰からも見られてないよ」
キッと、青い目を鋭くさせた少年が不敵な笑みを浮かべた。
おい江戸川くん。名探偵が出てるぞ。
いくらこの毛利探偵が怪しいとは思ってても、本当にそうかはまだ確定してないんだから…
感心したように頷いてんじゃねーよ毛利小五郎。そこのところ、毛利小五郎は『ガキが生意気な事言ってんじゃねーよ!』って怒るところだぞ。
お前らどっちも、もうそういうもんだと確信してんじゃないか。
……まぁ、それならそれで。
「…………そもそもこの屋敷、所有者は大上探偵らしいからな」
「え、何それどこから……ああ、スバルさんか」
「ああ。あとこの屋敷で起きたって事件の話もいくつかもらったんだが、どれも記録としては残ってなくて、何かあったのは間違いないけど、何が起きたかはわかってないみたいだ」
「あのパソコン小僧でも特定し切れなかったのか?」
「一応、最有力な説はもらってます。後で話すけど……とりあえず財宝がどうとか絡んでたし、主催の目的もそれじゃないかな」
“ハルの10の注意点”、『暗号や伝説がある時は、財宝を狙う人が事件を起こす』。及び、『1人行動した人は犯人かターゲット』。及び、『毒は食べ物には入ってない』。そして、『屋敷に入って以降、不用意に壁や顔に触れてはいけない』。
……あいつは物語を読み過ぎなんじゃないか?
推理小説のあるあるを並べたみたいな注意点だったけれど、確かにそこに関連した何かが起こりそうな気配はずっとある。
状況だけなら江戸川くんの言う通り、大上探偵が1番怪しいのは間違いない。
しかし、決めつけるのもまた良くはない。『1番怪しい人は案外被害者だったりする』らしいからな。
「疑心暗鬼を煽る目的なら、そもそも招待してる人物がまず怪しいしね。主催は別にもいるものだと想定しておくよ」
「そうだね。この後の晩餐会で、主催さんが出てきたらわかりやすくて良いんだけど」
「疑心暗鬼といえば、なんかこの部屋、普通に拳銃置いてあったんだが」
引き出しの中の隠し扉の中に、しっかり弾が6発装填されたリボルバーが置いてあった。弾だけ抜いて戻しておいたが……
「ああ、案内された俺の部屋にもあったな。弾抜いて捨てといたが」
当たり前みたいな顔で頷いた毛利小五郎。
だからお前はもう少し毛利探偵らしくしろって。開き直ってんじゃないよ。
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江戸川くんと毛利探偵が俺の見つけた爆弾の話を皆にしてくれて、メイドさんの制止の声を振り切って俺を引きずって屋敷を飛び出した茂木探偵が、隅に隠した爆弾をひとつ持ち帰って来たことで真実だとわかり、一気に主催とメイド、そして俺への疑いの視線が増えた。
しかし、俺に関しては毛利探偵の命令で確認に出た事になって、毛利探偵の株がやや上がることとなり、流れで何故か俺が彼の助手ということになるなど。
“小林”という助手がいる“小五郎”名探偵なんて、まるであの明智探偵みたいだと各探偵から羨ましがられていた。
蘭さんが嬉しそうなのは少しほっこりした。
江戸川くんまでちょっと羨ましそうにしてるのはなんなんだ。「オレは“和田”が良いな」ってそれワトソンさんの日本版の名前だろ。
そして毛利探偵はニヤニヤしながらこっち見んな。
食事の準備は既に終わっており、メイドさんは雇い主からの命令でサーブの順番も何もかも決められているため、晩餐の用意に俺は介入できなかった。
仕方ない。
ちゃんと俺は注意喚起をした。
皆、しっかり各々の食器を使用前に清潔な布で拭うのも見た。
だから……
だからといって、人がひとり亡くなるのを止められないのは、自身の力不足を感じてしまう。
あれ考えてみても止められるもんじゃなさそうでした
これ本当にサクサク行くのか?
その頃夜道を安全運転してる男がいたりいなかったりします
読んでいただきありがとうございました!