昴くんはなにもしない 作:あまも
考えたら裏取りとか準備とか陣営判定、ほぼ要らないんですねこの話
色々主人公が死んでたりメンブレしてたり暇を持て余してる裏でジョディ先生について調べたり宮野明美について追ってたりした名探偵がいたりいなかったりするかもしれません。
閲覧ありがとうございます!
小林くんはまだ爆弾の解体特訓に励みたいと言って、阿笠さんのつくる爆弾を片っ端からバラしまくっている。
同じ人の作るものだけで練習すると、その人のクセを覚えてしまってあまりよくない。
5個に1個くらいのペースで私の設計したものや、ノアズ・アークの仕掛けたトラップ付きのものを混ぜてもらっている。
あと爆弾解体用のコンパクトツールを阿笠さんに頼んでたな。日数はもうそれほど無いが、間に合うだろうか。
なんにせよ、練習は大事だからね。
零くんは、サッカーJ1チームの東京スピリッツがついに優勝した記念に行われることとなったパレードの警備計画……という名の、件の爆弾犯の警戒を念入りにしている。
それはもう、張り切って予定を立ててくれている。
11月7日当日の彼らは来日予定の国賓警備で離れられないが、予行ついでに今回のパレードは警察本庁の実力派達にパレード警備に当たらせ、そこにハムちゃんズがちょっぴり混ざる予定だそう。
つまり、目暮警部や佐藤さん、高木くんたち、新一くんと小林くんにとっての融通のきく知り合いの刑事さんたちだ。
普段、連携取ったりはしない人達だから、かなり警戒してるってことなのかね。
爆発物処理班への連絡も、零くんかメガネのくたびれおじさんに頼むとすぐ繋げてくれるそうだから最悪直で連絡してもいいとのこと。
いっそ零くん本人が駆け付けてきそうで怖い。
……いや国賓大事にしなさいよ。2泊だっけ?大丈夫?
そして新一くんは、その東京スピリッツのパレードが行われるというニュースを知って当日をソワソワと楽しみにしている。
指摘すると、別にサッカーをやってるわけじゃないし、わざわざ人混みの中実物見に行かなくても中継やってくれるTVで見れば良いからと素っ気ない態度を取るが、当日に彼の知る中で1番大きなモニターのある阿笠さんちのTV権を予約していった時点で楽しみなんだろ君。
可愛いやつめ。
で、私だが。
「……11月7日に?随分急じゃない」
「はい。元々ずっと前から話は来ていて、先方の手が空いた時に、というお話をしていまして。行きません?」
「何故私に?」
「いや、だって、私の知り合いの中で有希子さんの次に世界中飛び回ってる、外国文化に詳しい方ですし…」
「……無理ね」
「無理ですか?」
「……そんな顔しないの。あなた1人でも行けるでしょう?」
朝もはよから智明くんちに凸して、智明くんに変装前のクリスさんの生着替え(変装)を聴きながらしょぼしょぼ小鳥ちゃんムーブしているなう。お誘い断られて居間の長机に突っ伏すっていうね。
クリスさんたら、ちゃんと前日に『明日、朝早くにお伺いさせていただきます』とメール送ったにも関わらず、玄関開いてるわよなんて言われて上がった先で私の前にあられもない寝起き姿で出てくるんだもの。
きっと寝起き逆ドッキリ…みたいに、慌てる私を見て笑いたかったろうに、私が1周まわって冷静になってしまったのが面白くなかったに違いない。だからこうして断ってくるんですかね。
元々身体もキレイな人なのはわかってるし、この人寝起き姿みたいなふりしてるけど全然バチバチに最低限のマナーと身だしなみは整えてたからちゃんと私の来訪の用意をしてたのは見りゃわかる。起きたてほやほやはもっと小汚いものだ。
馬鹿野郎お前クリスさんが小汚い瞬間があるわけねぇだろ。いつだってキレイな人なんだよクリスさんは。
蘭ちゃんの生着替えは、
いやでも確かにシチュエーションとしては結構男は盛り上がっちゃうやつか…
…………別に……
「アタシと話してるのに、考え事?」
ふと。
背後から頬に手を当てられて、顔を上げさせられる。首ががが
日本家屋の天井の中、クリスさんがクリスさんの顔のまま、智明くんの髪型、茶髪のショートヘアでメガネかけて覗き込んでくる。
ウワァッ!!
いつものキツめな女王様っぽいクリスさんが銀縁大きめウェリントン眼鏡によって優しげなお姉ちゃんな印象の強くなるバージョン違いのすがた!!
これもいい!!!!
「……なんで裸への反応がアレで、顔の反応にはコレなのかしら」
なんか言ってるけど、顔の距離とかの話じゃないですかね!こう……正直身体とかどうでもいいけどこう美人が自分の顔に1番ベストなメイクして最高の状態でお出しされると目が潰れそうな輝きがまちぽいのに目に焼き付けときたくなってきてしまって、総評としては最の高。
は?最高では?」
「褒め言葉だったの?ありがと」
はっ、口から漏れてた。
クリスさんも予定と違ったが私の面白反応が見れたからか、それとも顔は褒められたからか、機嫌を取り戻してくれた。だって顔がいい。
上を向かせた私からメガネを奪い、もちもちと私の顔を捏ねている。
もひゃとほのかに鼻に来る甘い匂い。
……化粧品臭い?
「なんか……私になんかつけてます?」
「ムカつくくらいキレイな肌よねぇ……どう考えてもあなたが肌なんて整えてるわけないのに。天然物はズルいわ」
「あの……ちょっと……むぶぶ」
ディスってるのか褒めてるのか、それどっち?
確かに朝起きて顔を水でバチャバチャと歯磨きやるか、朝シャンする以外の何かをしたことはないが、そりゃこの沖矢昴ボディがそういうふうに出来ているのであって……
「なんで髭もニキビも無いわけ?男なの?有り得ないじゃない。毎日何食べてるのよ」
「き、キウイと…ラムネ……?」
毎日ってほどじゃないが、オヤツは大抵おいしい10種の栄養素と脳直飯かな。
言われてみれば、この顔に剃刀やシェーバーとかいう刃物を使ったことないや。
いつだってぷるつやもちもちお肌の沖矢昴である。
むにむにと、頬を伸ばされたり目を押し開けられたり、好き勝手に何かを塗り込めながら捏ねられている。
えーと……今日はそういう日なんです?
■
デートだよ!
智明くんと!
なんかあのもちもちこねこねの後に
……まぁ、潜入目的で新出医院を通いで調べてたクリスさんだ。助手兼看護師してた麻生成実を知らないわけ無いよな。
でも本土の彼は麻生成実であって、浅井成実じゃないはずなんだが。
今の私、黒髪ストレートを肩くらいまで伸ばして垂らした成実“ちゃん”である。
正確には、それっぽいメイクとカツラを施された私……ではあるんだが。
もっと正確には、麻生成実とも浅井成実とも違う、あくまで私とも違う格好の……………………
女装なんだが。
目の色とか私そのままだし。
ただ、印象は間違いなく麻生成実をモデルに作ったんだろう。
有希子さんや怪盗キッド、そしてクリスさんが智明くんになる時に使う、あのうっすいマスクは装着されなかった。
一応被せようとはしてきたんだが、途中で手を止めてしまったんだよな。
私があれ苦手なの、気付いたのかね?
なにはともあれ、麻生成実の親戚、爆誕!
……なんのために?
「デートですかねぇ」
「デートですかぁ」
海沿いにドライブなう。智明くんの言うルートを走らせているだけだが、コンテナ埠頭だったり、港だったりで私に運転させている。
時々、少し停車させては携帯でポチポチと、ノートPCにカタカタと。
覗き込んでも許されたので見てみれば、計算式やら英語のメールやら、何かの決済完了の話しやら。
見てもなんのこっちゃ。だから見られても問題無いんだろうが、これ零くんが見たらなんか解るかな。
「その、何してるかはこの際良いんですけど、私は何故この顔に?」
「可愛いから」
可愛いからかぁ。なら仕方ないなぁ。
女装……毎日の走り込みの成果で無駄に脚の筋肉がついてて生脚はキモかったのか、ハイウエストなワイドパンツで許されて、胸も装着されなかったのでただの変装に近いんだが、一応女装らしい。
ガタイがデカイんじゃ。
……あれか。朝、私がクリスさんの体の方には興味なくて顔にしか関心向けなかったからって、顔にしか全力出してないのか。確かにこの顔も結構好きである。沖矢昴の顔も好きだがね。
ここでスカート履かされてたら死んでたかもしれない。心が。
……このナリしてると、利奈ちゃんのこと思い出すな。なんとなく利奈ちゃんにも似ていなくもない。
どうかな。どうだろ。
今、私がクリスさんに目を開けてるように言われて、ややつり目気味な私の目と黒髪でそう感じるだけだろうか。
造形がそも純日本人の景光くんと、ちょっぴり異国風な沖矢昴ベースな違いな気もする。
……確かに沖矢昴も浅井成実も緑野利奈もみんな可愛いけどぉ……なんで変装の必要が?
しかし海か……海で何かあるのかね?
コンテナ埠頭なんかでは、私を立たせたあと『待て』して智明くんが何処かに行ってしまったりで、潮の香りに晒されてカッコイイポーズ研究捗ったが。
港では帆船なんて物珍しい物を見た。
帆船と言いつつ帆船でもなんでもない、風ではなくエンジンとスクリューで動く普通の客船らしい。
オンボロ……ゲホン。味のある風体で、沈みそ……ゴホン。こう、事件の舞台になりそうな見た目であった。幽霊船っていうのかな。そんな映画があったような気もする。
そうして、我々は海辺デート()を満喫した。
お昼を食べ、午後は海沿いの林の中の散策道やら散々付き合わされた後。
「行ってあげても良いわよ、旅行」
とのことで、なんだかよくわからないがとてもご機嫌になってくれたクリスさんを7日の日に東都から出す約束の取り付けに成功した。
よくわからんが……
や、やったぜ?
■
「というわけで、11月7日は私、シンガポールにいます」
かの有名な同窓会には行けませんなトーンで言ったんだが、2人から返事がない。
表情を見ると、驚愕と疑念、あと少々の…何?
なんせ2人とも、静かである。
今回、私が緊急招集かけて私の部屋まで2人に来てもらった。
慌てて駆け付けてくれた2人は、まず出迎えた私の格好に驚いて、そしてクリスさんとお出かけしてきた事に驚いて、最後に話の内容に驚いたそうな。
いつも通り、私やクリスさんの監視、してたんじゃないの?何をそんなに驚く事があったのかと、沈黙に耐えかねて私が水を1口。
「――玩具にしやがってあの女ァ…!」
「えっ」
どうやら静かに揺れる水面はその実融けた鉛で、下では灼熱ドロドロに熱されていたらしい。
ついに突沸の如くボッコボコと沸き出した零くんが、怒りよりも憎悪を滾らせて髪の毛逆立つ勢いのまま、手の中のペットボトルを握り潰した。
握り潰……
おいこら!私の部屋!!!
干してたフェイスタオルで慌てて床を拭くが、こういう時真っ先に零くんを宥めてくれるはずの景光くんも静かであることに気付く。
そっちを見てみる。
「――……」
あっ。
目と目が合った。慌てて目をそらす。
やっべ。
なんだかよくわからないが、景光くんも景光くんでとんでもなくお怒りらしい。無言でこっちを見てくる。
「え〜っと、指摘点がございましたら後日書面にて……」
「ふざけないでねハル」
「アッハイ」
おーっとぉ、これはまずあじ。
景光くんが無表情なのが1番まずいんだから。
次点でまずいのは零くんが絶望顔した時。
今回はまだ、2人とも怒りと困惑の方が大きいらしいからまだよい方か。
こーれ、この表情経由してから2人とも笑顔になった時が最もヤバいので、そう考えるとまだ全然余裕あるな。
……良かろう。覚悟を決めて、おふたりからのお怒りメッセージを聞き取ることにする。
「まず何処からいけば良いのか…ハル、その格好何?」
「さぁ…?」
クリスさんが「デートしましょ」とか言ってさせてきた格好だし、新出邸に智明くん送ってから直帰したせいで服の回収も忘れてしまって、面白いからそのままなわけだが。
零くんが口の中に砂利でも突っ込まれたみたいな酷い表情である。イケメンが勿体ない。
「……あの女、今度のハロウィンパーティーで決着つける気なんだ。招待状がそのうちお前にも届くだろうが」
「ハロウィンパーティー?」
既に11月やが。
「……まぁ詳しくは言わんが。お前、余計なことしそうだ」
「余計なこと」
「俺たち、この間のライとハルのやり取りで実感したんだよ。お前に先に詳しく教え過ぎると、余計な事言っちゃうんだなって」
否定できない……!
「その上、気になったからってすぐ調べるし」
「止めても抜け穴さがすし」
「人嫌いなくせに人を妙に信じるし」
「そのくせ無理だと判断したら徹底的に攻撃するだろ」
「攻撃対象の選別は早いのに味方だと認識したら何されても怒んないし」
怒涛のコンボラッシュで小パンチ連打である。
「……れーくんたら、自己紹介?」
「そうか、そんなに俺を怒らせたいか」
すいと伸びてきた零くんの腕によって頭からカツラを抜き取られ、ネット外してアイアンクローされいででででで
パワーで固定された頭をグリンと首おかしなる角度で曲げられたと思えば、今度は目の前に景光くん。変な匂いのする液体を染み込ませたコットンで私の顔面をグイグイと力任せに擦ってくる。目が、目が!
いじめの現場!
「臭いです!」
「クレンジングオイルだよ、我慢してハル」
メイク落としかよ!化粧品臭いのはどうにも慣れない。シンナーとかは全然いくらでもいけるんだが。
メイク落としなら、そう言ってからやっ……何処から取り出した!?
……利奈用?あーね。
「やっとマシな顔になったな」
「あの顔だってキレイに可愛く作ってくれてたじゃないですか」
「声」
「ああ、はい」
首の調声機を少し弄る。あーあーあー?あー……
「こんなもんです?」
「うん」
「いつから変声機能まで付けたんだそれ」
変声機能ではない。調声の範囲だ。ボイチェン…ボイチェンって変声機じゃない?
声の高さをいじれる機能は元々あったが、有希子さん好みのこの高さで合わせてただけでね。
「それで……お前、なんで身内判定出したらそれ以降全部許すんだよ」
「許すってなんですか。別にバカにされたわけでもないのに」
「バカにされてるだろうが」
「ペット扱いはされてますけど」
「それだよ」
……どれだよ。
だって、女装だのペット扱いだのなんか、2人ともそうじゃん。
そんなん言ったら2人とも、バカにされても身内からなら文句言わないし怒りもしないじゃん。
これやっぱ自己紹介?
景光くんが頭を両手で挟んで天井を見上げ、零くんが顔を片手で覆って肩と首をがくりと落とす。
「伝わらないかぁ……!」
「つくづく、お前はなんなんだその……」
なんか私に聞き分けのない子供に叱ってるみたいな空気出してるが……お前らだって……人に散々言ってるけどお前……お前らも大概だぞ!?
なんにでもどこにでも使える有能人材が、身内に甘々でなんに使われようが文句も言わずに女装ハニトラ多少の汚れ仕事もなんでもござれしてる何でも屋がぬかしおるわ!
こちとらキレイなお姉さんと顔面変えて海辺デートして次の約束取り付けてきただけやないかい!
「その相手が敵だからこっちは混乱してるんだろうが!!!!」
怒声と一緒に頭に真上から拳がメテオストライクしてきた。
目の前に星が散って、きらきらひかるおそらのほしよである。ふふ。群星がいっぱい。
クレーター出来てない?大丈夫?私の頭。
「……え、待って、シンガポール?」
ひと騒ぎして冷静になったのか、景光くんがポツリと言った。
そうだってばよ?
誤字脱字報告いつもありがとうございます……指と目が滑ってしまって……
あとまた少し更新遅めになります。すいません
読んでいただきありがとうございました!