昴くんはなにもしない   作:あまも

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この事件、ちゃんと東京スピリッツが被害受けてて、劇場版の事も考えるとこのチームってもしかして他のサッカーチームよりも重いハンデ背負ってるんじゃなかろうかと思

閲覧ありがとうございます!


39-2:ライオンの町の悪人共

 

 

 ここまでのまとめ。

 

 Xデー当日を前にして、前哨戦だか模倣犯だか知らんが、なんか爆弾騒ぎだってよ!

 

 怖いねリシくん!

 

 ……ってわけでね。やっていきましょうかね。

 

 それで、ビデオカメラの確認だそうだが……犯人映ってるわけないけど、盗まれたらしいから恐らく犯人はそれを処理したかったのでは?という推理を、新一くん、景光くん、そして話を聞いた零くんでみんな同じことを言っている。

 

 処理しなきゃならないようなものが映る……これで映ってるわけあるか……?だって、新一くんが嫌がるような人混みだろ?

 

「すいません、明日の取材時間を伸ばすので、今日の予定はキャンセルにさせて頂けないかと先生が……どうしました?」

「あ、了解です。それは大丈夫です。そのように進めてください」

 

 リシくんが時間の調整をしてくれている間に、少し考える。

 こっちの予定なんて念の為3日間作ってたのは、先生が忙しくて絶対予定通り行くわけないと考えたからなので、ぶっちゃけ私の聞きたいことが1つ2つと、工藤氏から頼まれた取材さえ出来ればいいから、2時間くらい取れればそれでいい。

 今回、全て調整用に大きく余裕を持たせた日程なのだ。

 むしろ会食とか別にしたくもない。

 強いて言うなら夕飯にリシくんだけ貸してください。

 

 あとはクリスさんをどれだけ楽しくシンガポール観光させて、ここに縛り付けておけるかだけだから。

 彼女のご機嫌取りは慎重にしなければならない。本人も、最終日のチケットの取り直しをしていたから何かしら予定はあるんだろうが。

 ……一応まだご機嫌っぽいので、ヨシ!

 

 それほど長くもないビデオには、案の定特に何も映ってはおらず、高木くんが佐藤さんにビンタされた後、助走つけた小林くんにドロップキックで蹴り飛ばされた所だけ鮮明に映ってたそうな。

 

 ……小林くん、やりすぎ。

 高木くんじゃなかったら危うく暴行罪……高木くんでも立派な暴行罪だけども。

 なるほど、返事が遅かったわけだ。

 ふむ。

 

 現地では、電話ボックスの方の爆弾が爆発したが幸いにして被害はなし。パレードの道順沿いに爆発物があった事実から、これは警察官を狙ったものではなく東京スピリッツを狙ったものだと目暮警部が判断。

 ノアズ・アークは上手く無線を掴めたそうで、現在その他の爆弾を含め、捜索中……

 ……ふむ。

 

「透くん」

「なんだい?」

「“人混みの中”、“ビデオカメラに”、“犯行を行う姿が映っているかもしれない”、と思い、犯人が盗んだ……として、確認したんですが、怪しいものは映っていないそうでして」

「……なら、“怪しいものを撮られた”のではなくて、“撮られていたこと”そのものが問題なのでは?」

 

 ふむ?

 

 よくわからんがクリスさんがそう言うならそういうこともあるか。そのままメッセージに流す。

 3秒ほどで、『そうか』と『なるほど』が立て続けに読み上げられた。

 そして江戸川くんが走り出したらしい。

 

「僕も現場の事はよくわかりませんが…子供たちが警察の知り合いの方たちと一緒にいた時に、事件が起きたんですよね?」

「そうですね。……今、江戸川くんが現場付近のポストに向かったらしいです」

 

 子供たちの手から、知人の警察のおじさんたちに、証拠としてこうして、ビデオカメラが提出される恐れがあって。

 撮られていた事自体がヒント……

 

「そう。流石COOL GUY。…その周辺の全てのポストの回収予定時間をまとめてあげるといいかもしれないね」

『ハル、現場周辺の郵便ポストの、午後以降の回収予定時間をまとめられるか?』

「わかりました」

 

 同じ事をほぼ同時に、透くんと零くんから頼まれた。マップを引っ張ってきて、ポストの場所と予定時間をペトペトとマーク付けしていく。

 

「ついでに、そのパレードの道順も記入してあげたら見やすいんじゃないか?」

「ありがとうございます」

 

 いつの間にか持ってこられていた“コピ”とやらを飲みながら、透くんが楽しげに頬杖ついて、こちらの画面も見ずにアドバイスをくれる。

 ありがたやありがたや。

 

「……それコーヒーですか?」

「ああ。正解」

 

 匂いがコーヒーでびっくりしちゃった。コピって、このシンガポールでのコーヒーのことらしい。

 差し出されたので1口もらうと、めっちゃ甘くて私好み。

 コンデンスミルク?マジで?

 甘いだけじゃなく、他にも種類があるらしい。

 あまいはうまい。疲れた脳に糖分が染み渡ります。

 

 完成した画像を送信。景光くんから『ありがとう』とのお返事。

 

 さてさて。

 私1人よくわかってないまま、アドバイスに沿ってヒントを投げたらあちこちでなるほど納得されてしまったわけだが。

 

「…………つまり?」

「怪しいものが映っていないのではなく、映っているべきものが映っていないことを警察に知られたら困るから、犯人はビデオカメラを盗んだのではないかな」

「……郵便の、回収車?」

 

 安室透フェイスでにこりと。

 さっきから、リシくんがキラキラと尊敬の眼差しで透くんを見つめているのも、彼女がご機嫌でアドバイスをくれる理由のひとつかもしれない。

 

「よくできました。……あとの解説は必要か?」

「いえ、だいたいわかりました。つまり犯人の狙いは郵便局かもしれない、ってことですね」

 

 にこにこ笑顔のままなので正解らしい。

 ちなみに新一くん、景光くん、零くんもそうだと判断した。

 彼らはその推理を確定させるべく、周辺の工事や道路状況の確認等をしているので、こっちもさっさと郵便局の回収車の現在地を探してあげて……ノアズ・アークがもう見つけてしまった。予定ルートを大きく外れ、目立たない場所にて停車中。

 

 …………うん!

 これは、私のすること終わったな!

 

「今、爆弾の逆探知も無事終わりました。結構人数が居そうですね。畳み掛けるか待ち構えるかは江戸川くん(あちら)の判断になるかと思いますが、この調子なら問題なく解決出来そうです。

 アドバイス、ありがとうございます透くん」

「このくらいどうってことないさ。むしろ、お前も5000km以上離れた場所を良くもそこまで見通せるものだと感心したよ。ほとんどリアルタイムだろう?」

「ふふ、そうですね。……ありがとうございます」

 

 こっちでも謎回線が拾えてしまったので、ぐろーばるな感じに謎回線は生きていることが分かってこわやこわや。

 よく頑張ったぞ私の目〜!

 

「随分と成長したんだな」

「?」

「こっちの話。気にするな」

 

 透くんの囁くような声だったが、はぐらかされてしまった。

 なんとなく聞き分けたのは、GoldenEagle……的な事を……金のワシ?なんだっけな。イヌワシだっけ?

 なんでイヌワシ?

 

 

 ■

 

 リシくんが、予定通りいかなかった事を申し訳なく思ってくれたのか、はたまた安室透の推理力に感銘を受けたのか。

 ンションショヨイショのエッホエッホとテンアゲでシンガポール観光を盛り上げまくってくれて、この可愛い後輩感と一生懸命さに透くんも今日のところは許してやろうという顔。

 ダメおしに私の透くん向けのなんちゃってお友達ムーブによって無事、ホテルまで彼女のご機嫌ゲージは7割以上をキープできたようだ。

 

 夕方前に爆弾犯のふりをした強盗団を、新一くんの助言によって無事一網打尽できたという報告が入ったことも理由としてあったのだろう。

 むしろそっちがメインとか言われたら私とリシくんの努力が報われないので我々の努力は確かに功を奏したことにしておいてほしい。

 

 今日はもう遅いから、この郵便局強盗のための爆発物ばら撒き(はた迷惑な)事件の事情聴取が明日に回されるそうなので、Xデーも警察の皆様と新一くんたちは一緒に行動できそうだ。

 

 ノアズ・アークにはそのまま、東都に残って小林くんのサポートを続けてもらっている。

 うまくいってくれるといいが。

 

 

 シンガポールのうまい飯を食いながら、明日の予定を話し合う。リシくんが頑張ってくれて、大体の時間のかからない観光名所はサラッと回れてしまったので、もし明日も大先生殿にすっぽかされたら、今度は学術系の所か、透くんの為にショッピングにするかといったところ。

 

 どっちでもリシくんは良い案内をしてくれるだろう。

 この半日で、私はすっかりリシくんを気に入ってしまった。

 ああいう後輩感出されるとかわいくてしょうがない。

 何がかわいいって、ああも素直に『あなたすごい人ですね!』と尊敬の眼差しを向けてくる感じかな。

 それに、決して彼のせいではないのに予定の調整で暇になってしまった私たちを楽しませようと頑張ってくれた姿。

 あれが愛されムーブというやつか……

 明日朝、またお迎えに来るとのことで、ホテル前で別れたが。

 

「いい人でしたねぇ、リシくん」

「そう? 気に入ったのね」

「はい。何か困ったことがあったら、私に手助けできることなら助けてあげてもいいかもしれませんね」

 

 まぁ私にできることなんて、ネット漁って転がってる情報があれば提供する程度しか出来ないが。

 あ、いや、オススメのゲームの紹介とかもできるよ。

 

「……ふふ。“面白いこと”、教えてあげようかしら」

「へ?」

 

 お風呂上がりのバスローブ姿で、私に髪をタオルドライさせてネイルケアに勤しんでいたクリスさんが上目遣いで目を細めてくる。

 昼に自撮りしながら説明した、上目遣いは“かわいい”のテクニックを、早速活用しておられる!!

 

 そんなんなくても美人やが!!きゃあ!美人だわ!!美人が出たぞ!バカお前ずっと美人やろがい!

 

 

「あの彼……リシ・ラマナサン。あれ、復讐のチャンスを狙ってるんじゃないかしら」

「復讐ですって?」

 

 おっと。それは話変わってくるな。

 

「彼の父、海洋研究をしていた学者なのだけど、海の事故で亡くなっているの。……その事故と、その事故の裁判記録、調べてみたら?」

「ホー……わかりました。見てみますね」

 

 裁判、ねぇ。……その前に。

 彼女の綺麗な髪の水分を粗方拭い、温風でぶわっと乾かしてから、涼しい風で冷やしながら丁寧に梳かす。

 うむ、外人のブロンドヘアーってやつは日本人のそれと違って、ふんわりしてて面白い。クリスさんはこれでもかなりサラサラなほうだよねぇ。

 

 景光くんの髪とかはまさに日本人らしい真っ直ぐトュルトュルで、あれはあれで面白い。

 新一くんの頭はどういうわけかつむじから謎の癖が必ず飛び出す。あれは……なんだろうな。

 あれは何と言えば、1番面白いのは零くんの頭だよなぁ。何をどうしても、分け目付けても必ず前髪クロスするんだもん、笑っちゃうよ。

 ちなみに灰原さんと私の毛は、結構髪質が似ている。こころなしか私の方がごわついてるかな。

 

 ま、私は面倒くさくてタオルでガシガシしただけで寝ることの方が多いからだろうけど。寝癖とかついててもあんま関係ないもんなぁ、私の髪。

 

 

 美人の頭を駆け抜けた風で、なんとなくいい匂いの残った部屋。ベッドに腰掛けてPCを開く。

 昨日も同じ部屋だったんだが、ウチのクッションよりふかふかのマットレスで、こんなので毎日寝てたら車で寝れなくなっちゃうよ。

 

 今ノアズ・アークは送り出してるから、自分で見ないといけない。

 クリスさんがああ言うなら、復讐しようとしてるってのはその通りだろう。確認したいだけならいちいち細かいこと1個ずつ調べるよりは……うん。そうだな。

 

 リシくんなら恐らく日本の若い探偵さんと同等の実力と見て、直接リシくんのパソコンを覗いた方が早いか。

 

 ……昼にも使ったけど、念の為白菜(Nor)使ってこっち辿れんようにしとこ。

 あの時ノアズ・アークと頑張ってコツコツ植えた種が、いい白菜に成ってなによりだ。変な虫もついてないし。

 まだ独占できてるが、そのうち変な虫が集って来るのかね……それは困る。

 悪いことに使うようなら止めてもらわないと。

 

 えーと。彼の電話番号と普段使いのアドレスもらってて良かった。話が早くて助かる。使用中?助かる〜。裏つかわせてもらいましょね。

 自宅自宅……おっ、いい部屋じゃん。クレジットカードあるかなっと。

 パスワード……あらやだ数字だけなの?ちゃんと文字種類増やさないと。いつか不正利用されちゃうぞ。今のうちに気を付けなはれや。

 ファイル……せっかくだから写しておこうね。

 ほんほん。ホーホー。ほっほほ……

 フクロウなっちゃうよこんなん。

 

 なるほどね。ひと通り確認出来たと思う。

 

「中富禮次郎とレオン・ロー、と……海賊です?」

「あら、早いわね」

 

 美容パックを終えて、ベッドにポスリと座ったクリスさんに訊ねると、どうやら正解らしい。

 彼女の指で口にカットパインをねじ込まれながら、当時の記事や裁判公判記録、証言、その後のレオン刑事に弱みを握られた中富禮次郎がちまちまとした小遣い稼ぎしてる証拠などの、リシくんが彼の下でコツコツとまめに集めていた資料を開いていく。あまあまうまうま。

 よく頑張って集めたな。

 確かな執念を感じる。

 

「でもこれ、彼も流石に殺す気はなさそうじゃないですか?」

 

 どちらかといえば、レオン・ローのよくわからん計画を潰して笑ってやろうという計画に見える。

 

「……レオン・ローの計画まで見つけたの?」

「へ? ええ。そりゃあもちろん。やってもらったらやってあげないと悪いですから」

「そう…そうね」

 

 にこりときれいに笑ってくれるクリスさん。うむ、美人。私も笑顔を返す。

 そもそもリシくんのお父様を殺した理由も、沈没船に積み込まれ、海に沈んだとされるでっかいサファイアを先に手に入れることを狙ってたからで、そのサファイアを海賊に渡して協力させ、乗っ取らせた中富海運のタンカーをこの街に突っ込ませてめちゃくちゃにしてやろうという、なんか……

 

「アホらしい計画がありましたね」

 

 森谷帝二とかもそうだけど、なんで賢い人って一周まわってバカになっちゃうのかね?

 

 プライド高くて自分が1番偉くて賢くて皆から褒めそやされて然るべきだから、バカにされたら、すげぇむかついちゃう。

 だからって、自分を認めなかった連中をけちょんけちょんにしてやろってとこまでは良いけどさ。

 それに他人巻き込んでまでやり返そうって考えがバカっぽい。

 煽られたゲーマーでもそんなにやらんぞ。

 色々考えた末にお出しされるのが、なぁんで色んな障害になる人間ぶっ殺したり、気に入らない街の景観ぶっ壊したりになっちゃうのやら。

 関係ない人巻き込むのは違うでしょうに。

 

 こういう人ほどゲームやるべきなんだよ。ゲームの理不尽に触れさせて、自分と世界の限界をちゃんと実感させないと。

 

 リシくんが頑張って用意してる、しかも有名な大先生殿ってことで戦争級のどデカイやらかしを想像してたのだけど……思ってたより、随分下らなくてびっくりしちゃったよね。

 これで成功すると思っているなら、よっぽど身の回りの人間のことを信じて信頼してる人なんだろう。

 ……いや、身の回りの人間に、自身を心酔させることに成功してると信じてやまないんだろうなぁ。自身を裏切るような人間を置いてるつもりも、さらさらないんだろう。

 意識高い高いし過ぎて、自分の実力に過信が見えますわ。

 

「……」

 

 なんじゃら。

 クリスさんがベッドに寝そべって、無言のままカットパインを差し出してくる。

 その位置だと、私が迎えに行かねばならんのだが。……あまあま。やっぱ南の南国フルーツは美味いねぇ。

 

「明日、そのレオン・ローの取材でしょう?何を頼まれているのかしら?」

「これが面白いことに、

『冤罪事件における犯人とされた人物の心理状態について』

 なんですよねぇ」

「――それは本当に面白いわね」

 

 もぉ〜工藤氏ってば〜!

 全部分かってて、訊かせる気か?

 

 ■

 

 そんなこんなでレオン先生のご自宅に来たぞい。

 昨日の夜にあんな話を知ってしまってから見ると、途端に豪勢な屋敷が汚い金で出来たものに見えてくるから心理って難しいものだ。

 ねっ、リシくん。

 

 今朝の日本は何も無し。警戒態勢は依然継続中。

 レオン先生とのお話の間くらいは、何も起きないといいんだがなぁ。

 

 ねっ、リシくん。

 

 昨日と同じく、今日もかわいいねリシくん。

 ……でもリシくん、昨日の私と透くんの様子、レオン先生にしっかり中継していたみたいだけど。

 

 私と……何よりも視線とカメラに敏感な透くん(クリスさん)が、盗撮に気付かないわけないんだよなぁ。

 

 タチの悪いエセ占い師か手品師か、詐欺師みたいな真似をしてくれるもんだ。

 

 そういうことされたから、私も調べちゃおっかななんて気になっちゃったんだぞ。

 

 さーて、ホットリーディングでバッチリ準備した大先生が、どんな“占い”してくれるのか。

 楽しみだねぇ。

 

 ねっ、リシくん!

 

 

 

 ︎どうしたんだい?笑顔が引き攣っているが。

 ︎︎ほら、透くんの笑顔を見なさいな。君には笑顔が似合っているよ。

 ︎︎そーれ、ニッコニッコニー!

 






リシくんが可愛いからしかたないですね。


読んでいただきありがとうございました!
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