昴くんはなにもしない   作:あまも

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いよいよですが、基本主人公視点でいくので目隠しと認識違いが多いです。
書いてる方も気をつけてみるつもりですが、できあがってみたらなんかおかしい事に気付いて直す可能性がかなり高いので、修正の時はお知らせします。気をつけては……みるんですが……
25/11/11 12時 :というわけで少し分かりにくかったところを情報追加しました。蘭さん周りの情報です。

誤字脱字報告いつも本当にありがとうございます!

閲覧ありがとうございます!


41-1:季節外れに蠢く怪物たち

 

 

 

 11月の終わりなのに、ハロウィンパーティーが行われるらしい。

 この1ヶ月まともに過ごさせてくれた反動で1年飛んだのかとも思ったが、ちゃんと事前に招待状が来ていた通りだ。

 

 そう、これ招待制。そしてその招待状の届け主が『Vermouth(ヴァームース)』って方。

 

 

 これクリスさん(ベルモット)である。

 

 

『つまり?』

『ああ。あの女が動く』

『ついにか…』

 

 新しく立てたグループメッセージに、3人を集めた。作戦会議だ。

 

『あの爆弾犯と違って、こちらも上手くやらねば諸々まずいことになる。気合い入れろよ。ヒロ、ハル』

『了解』

『頑張ります』

 

 今回は状況が複雑怪奇なため、あえて私はクエストとして見ている。

 メインミッションと、サブミッションがいくつか。

 それを、それぞれの陣営が抱えている形。

 

 陣営は大きく分けて、組織と、FBI。

 

 そこに、それぞれこのハムちゃんズが参戦。

 今回はバーボンとして動くとのことで、組織側のバーボン(零くん)

 赤井さんと連携を取って、お手伝いを申し出た景光くんがFBI……の手助け…………なのだけど、身を守るため、の条件付きで今回だけ一部目を瞑る約束をした公安の、それでも何しでかすかの確認はしなければならないから駆り出されるくたびれおにいさんの、お手伝い。

 だから決して、FBIの手助けじゃないぞ!!という零くんの主張。

 ……めんどくさいから景光くんはFBI陣営ってことでいいね?

 

 で、ここにさらに新一くん。

 FBI…ジョディさんと話をつけたそうで、彼もFBI側で動くみたいね?

 いつの間にそんなことをしてたのかと思ったら、私が飛んで帰って別荘で療養(軟禁)中に色々してたそうな。

 そうなると、バランス考えて私は組織側か?なんて考えてみるが、4人から『何もするな』と言われてしまい。私ぽつねんフリータイム。

 この4人の内訳は、景光くん、零くん、そして新一くんと、クリスさんである。

 

 みんな口を揃えて、『あんたが動くと理解の外で事が動くから、動くな』だとさ。

 ……どういう意味?

 

 まぁ良いですよ。

『沖矢 昴は動かない』、やっていきましょう。

 それともルーブルでも行ってくる?

 

 それでも、この間の爆弾事件で味をしめたのか、皆して『目と耳は借りたい』らしい。連絡の手早さは折り紙付き。

 まぁ良いですよ。レンタル沖矢くんも開業しましょうね。分割セットで割引だよ。

 

 

 

 まず、達成しなければならない条件。

 

 ひとつ、組織に灰原哀、江戸川コナンを連れて行かせない。

 ふたつ、FBIにベルモットを確保させない。

 

 これが、それぞれの陣営の勝利条件であり敗北条件。そして、両方の面倒を見ているハムちゃんズとしてはどちらも達成しなければならない。

 

 喧嘩両成敗!(ラプトルを抑えるポーズ)

 

 組織に潜入中のバーボンと、あと私目線、普通に良い人で私や工藤家や蘭ちゃんに優しいクリスさんは組織の足掛かりとして重要なので、こちとら全力で守護(まも)る。

 一方、工藤新一こそが世界のルールだから、彼の命が奪われることなんてあってはならないため彼は絶対に守護(まも)らねばならない。

 そのためには必然、彼の秘密に直接繋がる灰原哀の守護も必須項目。

 ……ならなんで、工藤新一を大事に思っているはずのクリスさんが灰原哀(シェリー)を狙うのか、これがわからないんだが、零くんは理解っているみたいなのでそこは気にしなくて良いらしい。

 なんにせよ守ることは変わらないからね。

 

 組織、FBI両陣営の計画は、それぞれ零くんと景光くんが共有して、事前のすり合わせを彼らで進めてしまっている。

 マジで私に関係ない話を完全シャットアウトして、口を滑らせないつもりだ。

 …秘密主義に戻っちゃって、ちょっと寂しい。

 

 必要で関係がある話だけ教えてくれる話によると、どうやら今回、『一方その頃』作戦が行われるようで。

 

 その『一方その頃』の舞台こそが、この季節外れのハロウィンパーティーなのだとさ。

 

 

『ここに江戸川コナン(工藤新一)を隔離して、彼の邪魔を入れずにこちらで灰原哀関連の事を進め、且つ彼の保護を両立させている』

『名探偵毛利小五郎もそちらに招待しているから、蘭さんも行くだろうって計画みたい。蘭さんのこと、江戸川くんは大事にしてるしね』

 

 あえて事件を起こして、あの謎だいすき探偵ボウヤの興味を縛り付けようって魂胆だ。クールガイのこと、よくわかっておられる。ファンの鑑。

 ただ、これは早速計画に穴発見。

 

『それ、蘭ちゃん行かないですよ』

『なんだって?』

『でも、毛利探偵と江戸川くんが行くなら、もちろん蘭さんも行くでしょ?置いていっちゃうの?』

 

 本来ならそうだが。

 クリスさん、これ知らなかったっけ?

 知らないわけないよな。……彼女はマイエンジェルのこと、神格化して見てるからな…

 

『蘭ちゃんはオバケやホラー系、苦手で大嫌いなので、こんな化け物仮装必須なんてパーティー来ないです』

『そ、そうか!( ºωº )』

『なるほど』

 

 となると、知っててあえてこの化け物パーティーにしたと考えるべきか。

 …………つまり……いやでも……でもやばい組織なわけで……うーん。どうだろう……

 私が悩んでる合間にも、勝手にメッセージ欄は進む。それはそれ、バーボンがクリスさんに再確認することとした。

 

『パーティーで目立つなよ、ハル』

『何故?』

『組織の監視がいる可能性が高い』

『それはクリスさんの手の者では?』

『こっちにも派閥争いなんて面倒なものがあってな。ベルモットはかなり自由を許されているが、それでも最近の行動は目立っている』

『ベルモットの行動に不信感を抱いた厄介な連中が、今回のパーティーを見逃すはずがない。特にその厄介な連中に目をつけ、行動を見ていた組織の他の者からの確かな情報だ。必ず確認に来るだろう』

 

 組織ってのも大変だねぇ。

 お互いに見合って見合ってはっけよいってか。

 ……あのフランスのヤンチーおにいさんとか厄介そうだけど、ああいう人かね?

 

 ここ、景光くんが参加してこない。組織の今の動きは、彼も詳しくは知らないのか?

 ……しれっと組織の他の人の話も出てるが……あちこちから注意されてるってなると、その見に来るであろう組織の人ってのがかなり厄介なんだろうな。もしくは、その上司の人が?

 

 ……ジンニキ?来ちゃうの?

 …………しかしなぁ。悪気なくてもなぁ。

 

『目立つつもりなくても目立っちゃう時ってありません?』

 

 何故かこう、事件が私をほっといてくれないというか、正確には私ではなく新一くん以下探偵共事件ホイホイ死神勢がほっとかないしほっとかれないというか、事件くんは彼らのことがいっぱいちゅきな相思相愛だから、横で見ているだけの私もそのだいちゅきの波動に跳ね飛ばされてしまう。普通に過ごしてたはずなのに、気付いたら容疑者筆頭で怪しくなっちゃってるとかね。

 

『絶対そういうと思ったんだよ(´・ω・`)』

『お前が“目立たない行動”をとろうとしたら、逆に目立ちそうだからな。この際、もうパーティーに参加さえしてくれているならそれでいい』

『ただ、不自然な行動だけは避けろよ。あともし何か考えてるなら、名前と顔は隠せ。参加の際名簿記入の必要はあるが、本名でなくとも芸名と言えば問題ないし、順番を後回しにすれば記入した名前は見られにくい』

『無理しないでね。怪しい行動は控えて。同伴も可能だから誰か誘って、その人に行動見てもらってアリバイ確保してね(´・ω・`)?』

 

 ……これは……私がそう言い出すの待ってた程度にそのつもりだったなお前ら。アリバイ確保て。

 

 ええと、呼び出せる人か…月末……集合が夜だから子供はダメ、正体が察せる人もまずい、阿笠さん……は新一くんのサポートしてるはず…演技……演技?

 …………いけるか?

 

『それじゃ、ハルは蘭さんの様子も見れたら見てもらえる?あと、船の方の様子とかもわかったら教えて欲しいんだ』

『ベルモットは今回、工藤新一にも“Vermouth”の名前で招待状を出している。酒の名前だからな、彼も組織の関与を疑ってそちらに行くだろう。だが彼は今、江戸川少年となっている。だから……『工藤新一』の代役を立てるはず』

『てか現に小林が頼まれたんだが、俺も船ではなくクリス・ヴィンヤードの方を見とく用事があるし、難しいという事を伝えて、断ったんだ(>_<) 』

『そのうちハルにも話が行くと思う』

『悪いんだけど、話が来たら断って(。-人-。)』

『可能な限り、灰原哀とターゲット以外の人物をこちらの現場に入れたくない。江戸川少年とその周辺の人間を隔離できるなら、そちらにどんどん連れて行ってもらいたい』

 

 ふむふむ。

 

『邪魔されると困るってことです?』

『簡単に言えばそうなる』

 

 三角耳の日本犬がキリッとした顔で端的に。

 何する気だよそっち。……阿笠博士の研究所でやらかす気じゃないよな?

 

『今回、こっちで銃撃戦がある可能性も視野に入れててさ。だからFBIにも、……仕方ないから身を守る程度の行動許可くらいは…って』

『そもそも来るんじゃないと言いたいがな』

『うん』

『……組織の実行部隊の男が、入国した可能性が高い。ベルモットに忠実な、あの女に心酔してる連中の中でも特に戦闘に長けた男だ。赤井対策だろうからそのまま赤井にぶち当てる。赤井はあの男と遊んでればいい』

『言い方』

『なんなら赤井ごとヒロがぶち抜く』

『ライはぶち抜きません。俺、今回ゴム弾か麻酔弾しか使わないぞ』

『そのゴム弾で赤井の脳天狙ってやれ』

『狙いません。あれかなり痛いんだからな』

 

 よしよし。悪ふざけする元気が出てきたみたいだ。……悪ふざけだよね?零くん?

 

『……私は仮装の用意して当日まで待機ですかね?』

 

 ややメッセージの間隔に間が空いた。逡巡?

 そして零くんのメッセージがぽこんと。

 

『それなんだが、あの女がお前にと、何か用意していたぞ』

『あら。何でしょうね』

『おい、嬉しそうにしてるんじゃない』

 

 え〜?仮装用意してくれたの〜?

 

 

 

 何着せられるんだろ……怖……

 女装じゃないだろうな?

 

 

 ■

 

 

 来る11月の末日。某港。

 

 我々は、百鬼夜行を行う!

 

 

 ……っていよいよ当日、もこもこと仮装してきたんだが。

 

 ここ、の、あの船。

 覚えがありすぎる。

 

 まさにクリスさんとデートコース()で回ったところだ。

 

 このためか〜。

 

 

 となると、同じく回ったあの埠頭か、林道が“あっち”の舞台かね。

 なるほど、行かなきゃなって思ったら、来てもいいぞってことか。

 

 ……むしろ、私がそう考えると見てこれをブラフに、さらに別の場所を用意したか……?

 

 

「いやー、やっぱりちょっと寒いね」

 

 横、そして下。足元から声をかけられる。

 しゃがみこんで、ケープコートの中にすっぽりと収まった黒い子泣きじじいみたいなのが私の足元にいる。

 へぷしゅん、とか可愛いクシャミして、マスクが邪魔で鼻がかめずに啜っている、私の本日の同伴者。

 妖怪?

 

「普通に耳にかけてるところ外せば外せますから。ちゃんと鼻かんでください」

「はぁーい」

 

 ちょこちょこ動いて後ろを向いて、モゾモゾゴソゴソとしている。

 動きが妖怪じみてる……。

 

「うー、寒…おまえ寒がりだけど大丈夫?これ船、海に出るんだろ。相当寒いよ」

「いやですねぇ。寒過ぎたらそのケープコートも返してくれます?」

「いやだねぇ。なんならおまえのそのマントもくれよ」

「嫌です〜」

「ちょっと〜」

 

 ケラケラと笑って、下から見上げてくる同伴者と顔を見合わせる。暗い紫とも青とも言えそうな、けれどきらりと光る目。

 

 ……見合わせてるんだが、マスクで顔の大部分が隠れて見えない。

 フードまで被ってるので、お互い今は目しか見えない。

 フードで頭を覆い、鼻から下をマスク。普通に歩いてたら不審者だな。

 

 ぷいと目をそらされたので、私の勝ち。

 ま、勝負してないけど。

 

 視線の先には、つらつらと船に乗り込む化け物の群れ。今日のパーティーの参加者達だな。

 ……結構多い。

 

「こうして見てると、同じ種類のオバケが多いんだね」

「やりやすいですからね。あとオーディションも兼ねてるので、ひと目で分かりやすいのは人気なのでは?ゾンビとか、ミイラ、狼男。あとは……魔女かな。逆に少数派が目立つからいいんじゃないですかね。ほら、あれとか親子かな?宇宙人」

「こんな時間に?大丈夫かな」

「それこそ親ならちゃんとお世話するんじゃないですか」

 

 船を眺めながら、続々と乗り込んでいく化け物の列を眺めていると、そこからひとりが外れてこちらに寄ってきた。

 

 メデューサのおば……おねいさんである。

 後ろから、列を先に行かせて、おねいさんの同伴者らしき包帯ぐるぐる巻きのスーツの男?もやって来た。

 

「あなたたちは乗らないのかしら?」

「ぼくらは最後に乗ろうかなって」

「なんかお化けいっぱいで怖いしね」

 

 「「ねぇ〜」」なんて声揃えて言ってみたりね。

 おねいさんが、私たちを見て首を傾げた。

 

「……それ、何の仮装?鳥なのは分かるのだけど……あえてメジャーどころじゃないのを選ぶなんて渋いわね」

「見たまんまですよぉ!」

「見ての通りですよぉ!」

 

 同伴者が立ち上がって胸を張り、私は両腕をパタパタとひらつかせて見せる。マントと袖に着いた羽根飾りがパサパサと揺れ、裏にも張られた羽根がわさと揺れる。

 包帯男がメデューサのおねいさんにこそりと耳打ち。おねいさんは、さらに訝しげに首を傾げた。

 

「もしかして、“烏人間”なの?」

「せいかーい!」「正解です!」

 

 片や、目より下を嘴を模したマスクで覆った、黒いケープの肩から羽をわさわさと揺らす、羽みたいな光沢のある黒のタキシードの細身の男。

 片や、頭のフードから足まで届くような長いマントを羽織った、黒いコートで着ぶくれ気味な男。

 てか私。

 ……いや寒いし。

 なんならさっきまでマントにくるまっててるてる坊主してたしね。

 

「本当はきつねとたぬきか、烏天狗にしたかったんです」

「でも、スーツで来いって招待状に書かれてて」

「でも、この時期の海なんて寒いし」

「じゃあどうしますかねとなりまして」

「じゃあ羽毛で保温しようとなりました!」

 

 モコモコと、片や黒い羽毛のケープ、片や黒い羽毛のマントを羽織っているわけだが、どちらもクリスさんが寒がりな私用にと用意してくれていたもの。

 これを同伴者様にと分けたのだ。

 

 なのでもれなく、ちょっと寒い。私は足元が。

 中にセーターだの股引だの着込んでるから、ちょっとスーツがもふもふしている。だせぇけど仕方ない。寒いからね。

 

「……もしかして、そういうキャラクター?」

「まめつぶ!」

「門番です!」

 

 ついつい延々とやり続けてしまう呼んだりあつまったりとびだしたりするあにまるずの森の店番のふたごちゃんだったり、門番さんだったり。

 

 キャラクターの性格というか、昔からたまに友人たちとやってる宴会芸のお遊びだ。

 

 学生時代、ゲームのNPCによくある、交互に喋るニコイチ系キャラクターの真似して遊んでてね。

 ルールも決まりもないが、始めた側が終わらせたら負け、なんて勝敗とも言えないけど終わりはある。

 大体毎回私から誘って勝手に始めて、景光くんや秀吉が付き合ってくれて、最近なんかはヒロキくんやノアズ・アークも構ってくれたりしている。

 お子様に構ってもらって楽しくなってる大人?いやいやこれは学習の一環として相手の思考を読み取る高度な心理戦が……

 

 ちなみに私はこれで零くんに勝ったことがない。

 何故なら彼はほとんど乗ってこないから。

 ごくごくたまーにやる気出して乗ってきた時はあの野郎、ニヤニヤしながら際限なく続けて、完全に人の発言に同じこと被せて来るんだもん。

 それで私が音を上げるの待ってるんだからほんと、性格悪い人だよまったく。

 

「ええと、そちらの魔女さんたちも乗船で良いんでしょうか〜?列に並んで受付お願い致します」

 

 受付の、頭まさかりかち割れスタッフさんが呼んでいる。見れば列はすっかり短くなっていた。

 

「ふふ。良い時間つぶしになりましたね!」

「はは、良いお相手に構ってもらったね!」

 

 おねいさんと包帯ぐるぐる男さんをそれぞれ背を押して、列へと戻る。

 

 ……包帯ぐるぐる男さん、細身に見えるけどこれ背中とかガッシリしてるな。ちゃんとスポーツとかして、身体作ってる人だ。そして若い。

 

 彼も彼で、押されながら私の方をちらりと見て、探っている様子。……そらおねいさんも一緒か。

 ……と、がっつりそのまんまな『眠りの吸血鬼』さんと鈴木の魔女っ子の後ろに並ぶ。

 

「お先にどうぞ、Mr!」

「お先にどうぞ、Ms.」

「あらあら、ではお言葉に甘えましょうか」

 

 先を促すと、2人は前に並んでくれた。

 順調に列は進み、吸血鬼さんたちも、2人も受付に向かった。

 受付のお姉さんが、包帯ぐるぐる男さんの書いた名前に驚いている。

 

 ……あ、やっぱりそうなんだ?

 

「良かったらあなたもお先にどうぞ?」

「…………」

 

 後ろに新たに並んだ、体格のいい脳天ぶち抜かれ顔したゾンビさんへ、同伴者が声を掛けたがゾンビさんは首をフルフルと横に振った。モノクルのチェーンと口から垂れたシリコンがプルプルと揺れる。

 

「良いんですか?ではお言葉に甘えて」

「おにいさんおひとり様?お先に失礼しますね」

 

 ……後の方が嬉しいんだが、変にごねるのもおかしいか。

 チャチャッと受付!

 

「招待状を。……はい。確認しました。ではこちらに記名を――え?」

 

 私がサラサラと記入した名前に、まさかりかち割れスタッフさんが首をかしげる。

 

「本名の方がいいです?」

「芸名でも良いって、招待してくれた人が言ってましたよ」

「あ、ああ……なるほど。すいません、存じ上げませんで……」

 

 存じ上げ無いのはそらそうだ。この芸名の人間、タレントでもなんでも無いからな。

 これ同伴者も名前書くの?いらない?良かったねぇ。

 

 私が適当に書いた芸名の横に燦然と輝いて見える文字。

 

『工藤 新一』

 

 

 ………………キレイな文字書くね。

 

 

 

 ……一応、新一くんから大体の流れは聞いている。

 あの『おねいさん』が有希子さんだということも。

 

 新一くんと有希子さん、元々、私に『工藤 新一』させようとしてたからな。

 ただ今回、組織関係だという理由もあり、私は小林くんに止められたので、残念だが力を貸すことは出来ないと伝えてある。

 とりあえず全部小林くんのせいにしといていいって言われた。

 

 代わりに、ワイヤレスイヤホンマイクをいくつか彼らに貸して、通話も複数名で出来るようにしたことで許してもらった。

 

 では結局、彼らは『工藤 新一』をどうしたのか、だが。

 灰原さんの協力を得られなかったからには代役を調達したのだと思う……工藤氏まで帰ってきたとは、聞いてないし……さて、誰だろう。

 

 ……服部くん?

 いや、でもわざわざその為だけにはるばる大阪から東都に呼び寄せたの……?いやまさか……フッ軽にも程があるよな……?でも可能性としては……

 

 そういや、灰原さんは協力を拒んだ為、研究所に寝かせて来たとも聞いている。

 その灰原さんの様子を見ておいてほしいとも。

 ……ふむ。明らかに罠なこのイベント。危険だからと止めてきたであろう彼女を寝かせたなら、麻酔針使ったな。新一くんたら、悪い子め。

 

 手っ取り早く“セキュリティ”を阿笠博士の研究所に置いてきたから、何かあったらノアズ・アークが教えてくれるけど……

 

 絶対何かはあるんだろうな……

 

 

 うーん。中途半端に色々知らされて、すごいモヤモヤする。でも、教えて貰えなかった以上余計なこととして、バラされたら困ることなんだろうし……蘭ちゃんっていつもこんな気持ちなのかな?辛すぎじゃん。最低だよ新一くん。でも私、こういうのって考えたくなっちゃうし……

 前途多難だぁ〜!

 なんなら渡されたタロットも不穏すぎる。

 

 ナンバーは“XVI”。神のいかづちによってガラリと砕けた、“塔”のイラスト。

 

 私、占いニワカだけど、これ良くないカードって知ってる。

 

 …………えーい、なんとかなれ〜!!

 

 とりあえず、色々気にしないために、同伴者様に構ってもらうか!

 





このあと、某モモンガみたいにかまえかまえしてるアラサーの謎のカラス面の男が目撃されたり仕方なく構ってやるかわいそうなカラス面が目撃されたり巻き込まれた体格のいいゾンビさんがあうあうしてる姿がそこにあったりなかったりするかもしれないです


読んでいただきありがとうございました!
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