昴くんはなにもしない   作:あまも

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43-2:待ちかねた友人

 

 

 

 

 なんとか無言で背中にしがみついてくるノアズ・アークに前まで来てもらって、座るまでは持ってこれたがそこまでだった。

 デケェ抱っこちゃん人形と化した、現実のヒロキくんより少し若い頃の姿を写したノアズ・アークの頭をぱさぱさと撫で回すこと、ここまで体感1時間。

 それも大体のことで、今、私が来てからどれぐらい経ったかの時間感覚が無い。

 

 この時間がわからないのも好きじゃないんだがな。

 

「落ち着きました?」

「落ち着かないよ」

 

 落ち着かへんか〜。

 私のセーターにしがみついているノアズ・アークの、ヒロキくんの頭をよく再現されたつむじ。これを巻き通りにクルクルとなぞって落ち着くのを待つ。彼はぶすくれた顔で見上げてくる。これは恨みがましいとも言える。

 

「…もうここから動いて欲しくない。帰らないで」

「そう言われましても」

「……それが難しいのは、解ってる。聞き分けが悪くてごめんなさい。……でも、嫌なんだ。お兄ちゃんがここに来てくれたってだけでも嬉しいのに」

 

 うんうんわかるわかる。

 

 ノアズ・アークにとって、現実ってのはヒロキくんをいじめるし、樫村さんに襲い掛かるし私に怪我をさせるし人と人が殺し殺され騙し騙され犯罪まみれのディストピアだ。

 お友達に危ないとこ行きますって言われて、気楽に送り出せるのはその人のことよっぽど信頼してなきゃ難しいし、信頼してても心配は心配。

 とはいえな。ここまで問題なく生きてきてるんだから、そう心配しなくても。

 

「二度と来ないってわけじゃないんですから。製品版が無事に出れば何度だって来ますよ」

「だってお兄ちゃん、コクーン嫌いじゃない」

「随分と頑張ってくれた、あの改造版なら大丈夫です。寝やすくて快適ですね」

「……ボクとヒロキで、お兄ちゃんがコクーンを嫌がる理由を減らしたり…頑張ったからね」

「ええ。良いカレー皿ですね」

「………………巣だよ。鳥の巣」

 

 鳥の巣だったわ。

 でもだってあれはカレー皿だろ。違うとしたら焼きそば。

 

 

「……お兄ちゃん、ボクたちがここにお兄ちゃんを閉じ込めようとしたら、『出来てしまう』ことが解ってて、それでも来てくれたんでしょう?」

 

 ……まぁ、それはそう。

 

 あんなあからさまに、オートロックのヒロキくん専用の開発室の一角に、さらにひっそりと隠されるように用意されたガチガチのセキュリティ完備部屋。

 そこに座れば起動と同時に人の意識を奪い、この空間にその意識を送れる機械。

 

 会社内なのに社員と顔を合わせることなく入れる、窓も無いこの部屋。

 樫村さんですら、この部屋のセキュリティコードは知らなかった。

 『その気』があれば、可能だろう。

 

 

「でも君たちはそうはしない。でしょう?」

「……」

 

 

 “大事にする”ことを、ほぼ同じようなガチガチの軟禁状態でトマス・シンドラーにやられてきたヒロキくんだ。

 紛うことなき金ヅルとはいえ、あれでもあの男は心底、サワダヒロキを“大事にした”結果があの軟禁だったわけで。

『どこにもいってほしくない、安全に過ごして欲しい、ならばどうするか』の回答が、自分がされたことと同じ物しか無いのも、まぁわかる。

 入力がそれしかなかったから、出力だってそれしかない。

 

 だがそれを苦痛にも感じていたヒロキくんが、それを認めるわけは無いし、そんなヒロキくんからつくられて、彼を見ていたノアズ・アークもそれをするわけないんだよなぁ。

 

 

「私は可能な限り、君たちの監視も、共に過ごす事も許しているつもりです。これで足りないとは言わせない。これ以上は、私も妥協する気はありませんよ」

「……ボクたちが、こんなにも心配しているのに?」

 

 ウッ

 見上げてくる顔がかわいい。「こんなにかわいいボクが頼んでるのに認めてくれないんだ?」の顔だ。この顔に言われたら大抵の事は許せてしまう。景光くんや零くん、新一くん、秀吉によくやられている。

 あいつらはみんなして自分の顔をよくわかっている。

 かわいさを出すんじゃないよまったく。

 

 ま、認めない時は認めないが。

 

 

「はい。心配ではあれど、相手のやりたい事をさせる。何故なら、その相手が必ず帰ってくると信じられるから。…それもまた信頼の形ですよ、ノアズ・アーク」

「……お兄ちゃんも、景光さんや零さんにそう思って、好きにさせているの?」

「そうですね。現に、彼らはちゃんと帰ってきた。死にかけても、未だに危なく忙しくしていても、ちゃんと元気に過ごしている。

 ……無事で帰ってこなかったから、新一くんの事は心配なままってわけですね。あーんな小さくなってまぁ」

「…………」

 

 “江戸川コナン”ってのはそういうものだとわかっていても、ガキはガキだし生意気で、まだまだ未熟な名探偵。毒薬なんか飲まされて、生きてはいても危うく死ぬところだったんだから。

 

 ほっといても勝手に元気に困難を切り抜ける金髪超人ゴリラや、なんか気付いたら裏社会で名の知れた男になってた小林こと仮面ライダーはもう、良いのだ。

 あいつらはなんとしてでも帰って来いと頼めば死にかけでも帰ってきてくれるだろうから。

 どうにかなんとかして、大問題も一緒に持ち帰って来ようがなんだろうが、帰ってくる事は約束させたから。だから良いのだ。

 

 戻ってこなければその時は“江戸川コナン”使ってどうにかすれば良い。

 …………あれ?これって“江戸川コナン”のことは信用してるってことか?

 

 ふーむ……主人公は間違いないけど、新一くんはどうだろう。

 

 

 ふふと、下からため息みたいな笑い声。

 

「信頼かぁ。……そんな事言われたら、信じるしかないじゃない」

 

 はぁ、と今度は間違いなくため息。

 ようやく、ノアズ・アークはしがみついていた腕から力を抜いて、離れてくれた。

 若い頃の、細いヒロキくんが苦笑している。

 

「お兄ちゃん。約束、守ってね」

「約束」

 

 あっ、やべ。どれが約束だかわからない。

 

 今私何か約束してた?いつでもコクーン使って会いに来るとかそこらへん?

 くふくふと笑うノアズ・アークは、私の眉間をうりうりと押してくる。眉が寄っていると言いたいらしい。

 

「ふふ、難しい顔。……お兄ちゃんも帰ってきてくれるなら、それでいいよ」

「わかりました」

 

 ふむ。コクーンが手に入ったら、ちゃんとヒロキくんやノアズ・アークに直接、定期的に会いに来いってことね。了解了解。

 

「ああ、でも私、帰るところ沢山ありますからね…」

 

 景光くんや零くんに顔見せしないといけないし、秀吉は秀吉だし、阿笠さんにもよろしくしないと。

 

「……お兄ちゃんのよくないの、そういうところだと思う」

 

 良くない……?“オレーマイリ”は基本じゃん!

 

 

「そんなことより、バグの確認進めますよ!」

「よくないなぁ」

 

 ぶつくさ言わないの!

 

 

 

 *

 

 

 毛利探偵の事務所にお邪魔している。

 江戸川くんが組織の話を改めてまとめたい、というので事務所まで来たは良いが、事務所に入り浸っていた毛利探偵に捕まってしまった。

 先日の、自分の大活躍した事件についてのニュースの録画を何度も再生しては、如何に自分が素晴らしい名推理で、簡単ではあったがかつての級友の説得は心が痛み、板挟みの葛藤が……と延々と語る。

 どうやら、普段は江戸川くんに眠らされている間に勝手に終わっていた事件が、今回は珍しく起きて自力(江戸川くんのアシストはあり)で解いた上、被害者も犯人も有名な役者で、事件がテレビカメラのある所で起きたこともあり……結果、彼がまた一段とその名を世間に轟かせることとなった。

 

「巻き戻し巻き戻し……」

「小林さん、ポアロか、ハカセのとこに行く?」

「そうだな…」

「おい待て!小林!ちゃんとここ見ろオラ!この俺の去り際のこの!この背中!」

「ああはい…」

「もう、お父さんたら!」

 

 江戸川くんも蘭さんも呆れているが、ソファーの隣に座らされて肩を組まれ、画面を見せられているため無理に抜け出すことも出来ない。

 江戸川くんがひとりで何か考え事をしている。ひとりで考える前に、こちらの情報も含めて考えて欲しいんだが。

 

 

 俺もハルも、江戸川くんに協力することはできるが、俺たちの第1目標は、今も組織で頑張って疑いを晴らそうとしている“バーボン”を救うこと、ということで納得はしてもらえた。

 

 これは嘘ではないし、なにより間違いのない本心だ。

 

 だから、大体の協力は出来るけれど、“バーボン”に危険が及ぶような状況になる原因は作れないし、“バーボン”を日本警察以外の手に渡すことも出来ない。

 合わせて、“バーボン”を手助けしてくれているベルモットへの手出しも、俺たちには出来ない。

 

 幸いにして、この間の埠頭での一件で灰原哀(シェリー)への手出しは江戸川くんや蘭さんが全力で、身を呈して庇いに来ることがわかってしまったため、ベルモットもバーボンも今後は手出ししない、と、“バーボン”からの言伝という形で手紙をもらったので、ここは一旦休戦の形となるだろう。

 

 それ以外の組織の相手なら、俺もゼロ(・・)も喜んで力を貸せるが、ハルを極力関わらせたくない俺のわがままで、ハルのいない隙に江戸川くんと話をしておこうと……思ってたんだがな。

 

 毛利探偵が……離してくれなくて……

 邪険にするのも悪いし……

 

 

 ただ、ライの方はどうも“バーボン”が自分の命を狙っている、という認識らしい。本気かどうかはともかく、心当たりはあるようだ。

 そしてゼロがライのことを嫌っているのはわかるんだが、それが本気で殺したい程ではない…とは、俺は思ってるんだけど…

 彼のことになると、ゼロはすぐにカッと頭に血が上ってしまって、過激な事を言い出してしまう。

 それが行き過ぎた冗談なのか、それとも本気なのか判断が難しい。

 

 ある意味妙な信頼というか、『赤井ならこのくらいの目にあっても涼しい顔で切り抜けるだろう』という、前提を踏まえた嫌がらせな気もする。

 

 ……組織で一緒にやってた頃は、まだもう少し色々隠してたはずなんだがな。

 

 

 再度巻き戻したニュースを見せられている中、事務所の電話が鳴った。蘭さんが出たので、毛利探偵からリモコンを借りて音量を下げる。

 

「はい、毛利探偵事務所……え?ゲーム?」

 

 どうやら依頼で、ゲームのシステムエンジニアを探して欲しいらしい。

 居留守をキメようとした毛利探偵を無視して今からでも来ても良いと蘭さんが許可を出した。彼女も中々どうして、結構強かだ。

 だらしない格好だった毛利探偵に身嗜みを整えるよう蘭さんが睨み、彼が洗面台に向かった隙に事務所内の来客の用意を。

 お茶と茶菓子の用意をする蘭さんに代わり、毛利探偵が散らかした後片付けを手伝っていると、そそと江戸川くんが寄ってくる。

 

「……ね、小林さん。奴ら(・・)って、優秀なプログラマーを探しているんだよね?」

「らしいね。ただ、俺はそっちは詳しくないからな」

 

 コンピュータープログラマーが行方不明と聞いて、訝しんでいるんだろう。

 

 情報関係は、組織内でもそちらに特化した幹部たちが任されていた。実行部隊として現場仕事が多かった俺は詳しくない。

 それこそ、ベルモットやバーボン、そして“テキーラ”と関わりのある、ハルの方がまだ何か手がかりを知ってる可能性がある。

 

「スバルさんもそのプログラマーの候補に入ってたんでしょう?」

「それが、アイツ『何も依頼はされていない』って言うんだ。テキーラとも関係があって、ハルのあれだけの腕なら、作らされていたとしてもおかしくないはずなのに」

「……」

 

 考えてみればおかしな話だ。

 ベルモットもテキーラも、ハルと、その友人の天才少年、“サワダヒロキ”を手元に置いていたのに自由にさせていたという。

 俺の知る限りでは、彼らほど優秀なプログラマーは他に居ないというのに。

 

「……奴らが、他のプログラマーたちに依頼していたっていうそのプログラム、依頼されるまでもなく、『スバルさんが作ろうとしていたもの』だった可能性ってあるかな?」

「それは……」

 

 アイツは昔から、人工知能を作りたい、とは言っていたが、大学では友人であるサワダヒロキと一緒に、ゲーム制作や人の記憶やDNAに関する研究を主にしていたと聞いたけど……

 

 ……いや。俺は首を横に振って見せた。

 

「アイツの作った物は組織に消されているし、話によるとベルモットはそれらの開発状況が芳しくないと聞いて、安心していたそうだから……それは無いんじゃないか……?」

「そう……」

 

「あ、お客さん、来たみたい!小林さん、私、お父さん呼んでお出迎えしてくるから、お茶とお菓子をテーブルに持っていってくれませんか?コナンくんもお手伝いお願い」

「「はーい」」

 

 蘭さんに呼びかけられたので話は中断だ。

 

 アイツ、どうも『作ってるもの』について隠しているからな。この携帯に入っているペンギン然り。

 

 もしもこれが、組織の望んでいたものだったとしたら……?

 だからこそ、自由な行動が許されていた……?

 そんなことは無いと思うが……

 

 …………ハルだからなぁ。

 

 

 *

 

 

 ゲームの開発を任せた、板倉卓というシステムエンジニアが行方不明。

 彼に仕事を頼んだ3人は、それぞれ別のゲームのシステム開発を頼んでいた上、仕事の進捗を聞きたいのに連絡が取れない、と。

 

「良くあることなんだよな……納期が迫るといつもこうで……」

「納期を早める、というのは依頼してる側としても極力したくはなかったんですが、こっちもやむを得ない事情が……」

「あれは……確かにあれは将棋とチェス業界には酷いでしょうね……うちはまだマシでよかったわ」

 

 3人とも、沈痛な面持ち。

 何があったのかと毛利探偵が聞くと、3人が顔を見合わせ、そして真ん中に座っていた内藤さんがノートパソコンを取り出した。

 

 

「つい先日、3日前……ですかね。

 ブラウザで期間限定で公開されたゲームなんですがね。この…『戦国卓戦』。

 このやっつけみたいな適当なタイトル画面からは考えられないほどシステムがとんでもない代物で……」

 

 白い画面に黒墨で描かれた達筆すぎて読めない文字は、なんとなく戦国卓戦と読めなくもない。

 

「将棋がメインのゲームなんですが、オマケモードでやれるチェスの方が本編なんて言われていますね。どちらも非常に出来が良いんですよ。

 相手はCPUのはずなんですが、高難易度になるにつれてプロでも勝てないような強力な手を出してきて……まるでプロや、下手したら名人やマスター級かもしれません。どう考えても、これは有料で出すべきものなんです。こんなの無料公開されたら、同系統のゲーム出してる我々は商売上がったりですよ」

「ダウンロードもできて、オフラインでも出来るし、Web上でやれば全プレイヤーとも競えるとかいう……」

「ホォー?」

 

 将棋と、チェス。

 江戸川くんを見ると、彼もこっちを見ていた。同じ顔が頭に浮かんだらしい。

 

 アイツ、どっちもパソコンで作ってなかったっけか?

 

「『ARATA』が提携して出しているようなので、おそらく『ARATA』が次に出してくるゲームの市場調査の一貫だと業界では囁かれています」

「『ARATA』?」

「旧シンドラー・カンパニーの、日本支部が独立した会社ですね。ゲーム市場への参入を本格的に開始していまして……あそこのIT開発と売り込みのノウハウは、あの天下のシンドラー・カンパニー仕込みですからね……」

 

 江戸川くんがちょいと俺の袖を引く。顔を寄せると、こそりと耳打ち。

 

「…『ARATA』って、スバルさんの……」

「うん。お友達のお父さんのやってる会社だな」

 

 これは、ほとんど確定じゃないか?

 

「それで、我々は板倉さんに頼んでいたゲームがいったいどれくらいの状況なのか、なるべく早く知りたくて……」

「このゲームに劣るようなら、作り直してもらうか、最悪依頼を破棄して……とすら上は考えているんだが、こちらとしては彼に依頼した手前、良いものなら早めに出しておきたい。…早急に連絡を取りたくてな」

「なのに連絡が取れない?」

「1週間前に、我々のPCに音声と画像付きのメールは届いたんですがね」

 

 

 内藤さんが再生した音声は、3つを同時進行は疲れる、気長に待て、といった内容。

 

 画像には、偉そうに座り、余裕のある態度の男がどこかのホテルらしき内装の中にいる。

 ︎︎この彼が、おそらくハルが公開した新しい無料ゲームより優れたものを作っているのか。

 この人たち……特に同じく将棋とチェスのゲームを頼んだ相馬さんと内藤さんが、心配しているようだ。

 囲碁ゲームを頼んだ須貝さんは、素直に納期の心配だけらしい。

 

 

 ハルは、軽率にこういう周りのことをあまり考えない行動を取ることもある。

 

 自分や周りの人達の作ったものが、それをきっかけにして、業界により一層の発展の足がかりになる、と信じてやまない、変なところである意味ポジティブ過ぎる思考をしている。

 阿笠博士の影響だとは思うんだが……それに挫ける人間も居るのだと、わかってるくせに容赦がない。

 

 本当に、変なところで妙なプライド発揮して、人間を試そうと言う気持ちで悪の幹部みたいな事する奴である。

 

 だから胡散臭いって言われるんだよ。

 

 ……うん。おそらくは、このゲームの公開はハルがやってるはず。

 もしそうでなくても、1枚噛んではいるだろう。

 

 

「もしかしたら誘拐された、なんてことは……」

「まさか、そんなことは……」

「いや、あの男ならやりかねない……」

 

 ゲームについて考えていたらふと、依頼者と毛利探偵の会話がおかしな流れになっていることに気付く。

 相馬さんが以前、板倉さんの元に口ひげで関西弁の、大柄で黒い服を来た大男が来ていた、と言うのを聞いて、隣で江戸川くんが血相を変えていた。

 

 今にも飛び掛りそうな勢いで、その大男について訊ねている。あまりの勢いに、相馬さんが引いているので蘭さんが止めた。

 蘭さんに押さえられた彼を預かり、1歩引いて小声で聞いてみる。

 

「おいおい、どうしたんだよ江戸川くん……」

「その大男、テキーラかもしれねーんだ!」

「……マジ?」

 

 小声で焦って叫ぶ江戸川くん。爆死する直前のテキーラを見ていたのは彼だ。その彼が、ここまで確信に近い様子で焦っているのを見るに……その大男は確かにテキーラなのか。

 

 そうなると、話が変わってくる。

 

 

 

 板倉卓、本気で探す必要があるかもしれない。

 

 

 …………ただ、今日はハルもゼロも、忙しいらしいからな……

 一応聞くだけは聞いてみるか……

 

 

 

 *

 

 板倉卓とテキーラについて訊ねたところ、ゼロが『江戸川少年を見張れ』と見当違いな返事だけ寄越してきた。

 

 言われなくともそのつもり。言葉少ないのは余計なことは喋れないのか、はたまた彼も詳しくは知らないのか。ゼロはゼロで、あちらで確認を進めてくれるはずだ。

 

 一方、ハルの方からは、

『板倉卓さんは知らないけれど、かつてCGクリエイターとして有名だった人で間違いなければホテルニュー米花の2004号室に泊まっているようですね。自分で缶詰状態で作業しているのか、ほぼ外出していません。

 2年前の准教授が、よく研究のために外出していたのは知っていますが、板倉さんとの接触や、何をしていたのかは不明です。…お力になれず……すいません』

 と、謝罪の言葉が来ていた。

 宿泊先は江戸川くんと毛利探偵の努力で見付けていたので、新しい情報は無いが、彼なりに忙しい中、調べてくれたのだろう。

 今日はゲーム開発の手伝いに行っていると聞いた。

 電話は出られない、とも聞いているが、こうしてテンポよくメッセージのやり取りができるなら十分だ。

 

 

 人数が多いため、依頼人の3人と毛利探偵、俺の車に蘭さんと江戸川くんと分かれて乗りこみ、ホテルニュー米花へ向かい。

 

 部屋に辿り着き、江戸川くんの機転で入り込むことは出来たが。

 

 

 

 ……毎度、何故こうも、と江戸川くんが悔しがるのもわかる。

 

 

 

 板倉卓さんは、既に冷たく、物言わぬ遺体となっていた。

 

 

 

 しかも、状況はまるで元々持病のあった心臓が原因……かのように見せているが、机の上はキレイだし、圧迫されていた手の甲にも跡は無い。

 

「江戸川くん」

「ああ…。これは……殺人だ」

 

 彼の目線の先を追う。

 板倉さんの物であろうカバンと、そこから見える中身…まとめられたフロッピーディスク。大きく書かれた、『日記』の文字。

 

「……もしかすると、かな?」

「うん。2年前の大男について、何か遺してくれているかもしれない」

 

 江戸川くんが、キラリと光る青い目をこちらに向けてくる。

 どこか挑戦的な…不敵な笑みを浮かべて。

 

「小林さん。あれ、なんとか中身を確認か…もしくは持って行くことって、できないかな」

「証拠品の持ち出しか。……上手くやる必要があるな」

 

 ただまぁ……そういうのは得意分野、だな。

 

 

 





板倉さん、何作らされそうになってたんだろう…

読んでいただきありがとうございました!


ーーーーーー




一方その頃、パリ ダカール・ラリーから開始したは良いけど2週間走るなんてのは無理なので要所区間レースのみ規定のチェックポイント上位通過でステージクリアの全15レース耐久を開始。マリワのサバイバルかな?
ノアズ・アークのサポート無しに2時間で14レースまで終えたが、15レース目で他NPC走者から容赦の無いマッドでマックスなアタックを仕掛けられるレースが始まった為、既に愛着の湧いていた車にぶつけられて事故りかけたことにキレた勢いのまま対戦者の車を軒並み走行不能にして1位通過。

レビュー
プレイヤー:「中々楽しめたと思います。実際やっている、というリアルさ以外はよくあるレースゲーでしたね。ただ、2週間ぶっ続けは無理です。製品版も今回の形式でやり…ますよね?うん、ならいいんです。あとラストであれは無い。やるなら初回レースからにしてほしい。そのほうが、最初から削れる」
管理:「アタックの倍返しは…ちょっと乱暴だった…かな」

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